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    東京まちかど通信

    「話したい」「聞きたい」人が集いお互いが学びあう“生涯学習”の場

    NPO法人 神田雑学大学 学長 三上卓司(みかみ たくじ)さん

    千代田区で、主にシニア層を中心に生涯学習の場を提供しているNPO法人 神田雑学大学。一般の大学やセミナーなどでは聞けない、ユニークな話が聞ける・話せると好評です。学長を務める三上卓治さんを中心に、幹部スタッフや受講者の方々に活動内容や受講しての感想などをうかがいました。

    人には誰でも好きなことや研究してきたことなど、人に話したい“雑学”の知識がある

    ――神田雑学大学の活動内容をお教えください。

    「人には誰でも好きなことや研究してきたことなど、人に話したい“雑学”の知識があると思います。一方で、そういう話を聞いて自分の関心の幅を広げたい、刺激を受けたいという人がいます。神田雑学大学は、そういった誰もが参加できる、ボランティアによる生涯学習の場で、講演料、会場代、受講料すべて無料の“三タダ”が大きな特長です。また、過去の講座の90%以上を映像化してアーカイブ保存していますので、いつでも見ることができます。受講するだけの一般参加者は無料ですが、年会費1万円の会員になると、会の運営や行政団体との協働事業に参加してもらえます。会員は70人ほどいます」

    ――参加者のうち、シニア層はどれぐらい占めていますか? また、男女別ではいかがでしょうか。

    「毎回30~40人程度が受講しています。65歳以上が90%ぐらいで、男性が70%を占めています。最近は女性が増えていますね。生涯学習と言いましたが、別にシニアだけでなく、老若男女の誰でも参加してほしいと思っています」

    ――雑学、とのことですが、たとえばどういった内容の講座があるのでしょうか。シニア層に人気のあった講座などをお教えください。

    「映画史の講座を11年間で28回持ったという人がいます。映画通のその人は、映画のビデオを約8000タイトル持っていて、“別れのシーン名作選”とか“監督と女優の関係”といったさまざまな切り口で話すことができるのです。本人は舞台俳優でもあり、発声がいいことも人気の秘密ですね。あと、警視庁捜査三課一筋35年という刑事OBが泥棒退治術を話したり、元NHKの相撲担当アナウンサーであり相撲雑誌の編集長だった人が相撲界の裏話をするなど、雑学とはいえ相当なレベルの話が聞けますね」

    ――講師はどのようにして集めているのでしょうか。

    「講演させてほしいと飛び込んでくる人がたくさんいますが、ある程度のレベルでないといけませんので、基本的には会員が推薦してくれる人を優先的にエントリーしています。顔の広い人もいますので、現在までに五百数十人という多くの講師を確保できています。タダでもいいから話したいという人はたくさんいるんですね」

    9月17日講座「患者さんのための入れ歯学」

    毎回面白い話を聞けて知識が豊富になるのは何よりの喜びです

    ――神田雑学大学が発足した経緯をお教えください。

    「1979年に、吉祥寺在住だった音楽家の故・和眞人(やまと・まこと)さんが“三タダ”の『吉祥寺雑学大学』を始めたのがそもそもの始まりです。近くに住んでいる私は、その存在を知って非常に面白いと感じ、週1回の講座に毎回通うようになりました。90年に和さんが入院し、エッセイストの大竹桂子さんとともに私が代わりの世話人(主催者側の幹部)を務めることになり、講師探しを手がけました。講師探しは当初、両名の人脈に当たりましたが、そのうちにお願いした講師の方々からたくさん紹介してもらえるようになり、苦労はしませんでしたね。また、私は当時パソコン通信をしており、毎週の講座内容をパソコン通信のフォーラムに流すことにしたのです。その後、ホームページを立ち上げて画像とともに掲載するようにしたところ、パソコン通信会社の目に留まり、『デジタルアーカイブの先進事例だ』とほめてもらいました。そして、神田にあるパソコン教室の会場を貸してもらうことができることになり、99年に吉祥寺雑学大学の分校として神田雑学大学を開くことにしたのです。2001年には東京都からNPO法人に認証され、千代田区の施設に常設会場を確保できるようになって軌道に乗せることができました」

    ――活動の手応えはいかがですか。

    「神田雑学大学の記念すべき第1回目の講座は、ヨットレースのアメリカスカップ審判員の話で、2回目は現神田雑学大学理事長である作家の吉田悦子さんの『わたしが犬と暮らす理由』でした。当初から50人以上も集まるという盛況で、以来、年末年始を除いて1回も欠かさず毎週開講しています。全国紙に『ネットで生涯学習が変わる』などと紹介され、生涯学習のモデルとして注目を集めました。学生も来てゼミのレポートに取り上げたりしています。いろいろな人が参加していますが、自由な雰囲気の中でみんなボランティア意識を発揮して協力しあっているのもいいですね。もちろん、毎回面白い話を聞けて知識が豊富になるのは何よりの喜びですし、ここに集まる人は前向きな人ばかりでお互いが刺激になり、元気になるのも大きな成果だと思います」

    全国の高齢者にどんどんマネしてほしいですね。声をかけていただければ、全国どこにでも行こうと思っています

    ――今後の抱負についてお聞かせください。

    「神田雑学大学は、まだ若い吉田さんに理事長になってもらったので、より若い人や女性にも参加者が広がることを期待しています。また、私は学長のほかに“雑学大学伝道師”という肩書きの名刺も持って全国に広める活動をしており、現在、三鷹市と杉並区で具体的な計画が進んでいます。事あるごとに『講師は派遣するから、まず初めてほしい』と呼びかけています。これだけ成果を上げられるんですから、全国の高齢者にどんどんマネしてほしいですね。声をかけていただければ、全国どこにでも行こうと思っています」

    講師の解説を熱心に聞いている参加者

    幹部スタッフや受講者の方々にもお話を伺いました。

    吉田悦花(よしだえつか)さん(理事長)

    「私は、吉祥寺村立雑学大学に講師として招かれたことがきっかけで、神田雑学大学創立の際も、講師をつとめました。以来、たくさんの方々との出会いを重ね、それぞれの人生経験に学ぶことのできる神田雑学大学を通して、私の人間力も少しはアップしたかしらと思います。おかげさまで雑学博士号を授与され、このたび理事長に就任しました。就任パーティには、内外から100人を超えるみなさまが応援に駆けつけてくださいました。これから、組織にしばられない女性ならではの感性を生かして、より若い世代にも共感の輪を広げていきたいと思います」

    臼井良雄(うすいよしお)さん(理事)

    「神田雑学大学では、幹部として講演内容の文章化やホームページコンテンツの作成、講師探しなどを担当しています。会社を定年退職した後、いわゆる“濡れ落ち葉”にならないように、友だちづくりのつもりで参加しました。私は退職時、一部上場会社の専務という立場で偉そうにしていたわけです(笑)。秘書がいて、スケジュール管理や身の回りの雑事をやってくれていました。ところが、ここに来てみるとヒエラルキーなど一切なく、自分が一番の若造で、机の並び替えからやるようになったのです。これがありがたかったですね。会社人間だった自分を普通の人間に戻してくれる場となりました」

    山内昭彦(やまうちあきひこ)さん(受講者)

    「7年前に会社を定年退職し、有り余る自由時間に戸惑いを感じました。たまたま新聞の地方面で雑学大学のことを知り、参加することにしたのです。自分はずっとエンジニアとして狭い世界で生きてきたので、文学や歴史など文系の世界に興味を持ちました。そして、受講を重ねていくと、ある知識がほかの知識につながる瞬間があり、自分の頭の中に知的ネットワークが構築できるという喜びがあります。また、自分は西東京市に住んでいますが、週1回都心部に出掛けるいい機会になっていますね」

    梁川美恵子(やながわみえこ)さん(受講者)

    「6月から受講し始めたばかりです。たまたま衛星放送でここの講座を取り上げた番組を見て、とっても面白くて興味を持ちました。10回ほど休まず参加しています。いろんなジャンルの人が専門的な話をしてくれるので聞き逃せないという感じです。それまで家で彫金をつくる仕事をしていたのですが、続けられなくなり、何もすることがない状態になっていました。それでここに通うようになったのですが、いろいろな人とも知り合えて、イキイキするようになりましたね」

    学長の三上さん
    参加者同士の活発なコミュニケーション

    神田雑学大学

    • 住所:東京都千代田区三崎町2-6-2
      ダイナミックビル5階 たんぽぽ舎内
    • お問合せ先:090-7421-3027
    • E-mail:t-mikami@parkcity.ne.jp
    ■プロフィール

    三上卓司(みかみ たくじ)
    1929年、青森県に生まれる。早稲田大学卒業後、日本紙パルプ商事㈱入社。リタイヤ後、吉祥寺村立雑学大学世話人に就任。1999年、神田雑学大学を設立。2001年、NPO法人となり初代理事長、後に学長に就任。自ら雑学大学伝道師と名乗り、全国各地の雑学大学設立に注力。

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