• サイトマップ
  • 都庁総合トップ
    • 大きいサイズ
    • 標準のサイズ
    • 小さいサイズ

    東京まちかど通信

    ニュータウンの一角で高齢者の孤立化を防ぐコミュニティづくりに取り組む

    NPO法人 福祉亭 代表者/理事長 寺田美惠子(てらだ・みえこ)さん
    理事 古川健一(ふるかわ・けんいち)さん
    理事 近藤浩(こんどう・ひろし)さん

    多摩ニュータウンの一角・永山団地で、高齢者を中心とする地域コミュニティの核となるためのさまざまな活動を行っている、福祉亭。地方出身者が多くを占めるニュータウンで高齢者の孤立化を防ぐ取り組みは、研究者や政治家などにも注目されています。その活動について、理事長の寺田美惠子さんとボランティアスタッフの方々にお話しを伺いました。

    NPO法人 福祉亭 理事長の寺田美惠子さんにインタビュー

    活動拠点がサロンになっていて、高齢者を中心とする地域の皆さんにコミュニティづくりの拠点として利用していただいています。

    ――福祉亭の活動内容をお教えください。

    高齢者支援事業、在宅生活支援事業、まちづくり事業、世代交流事業の4事業を主な事業として運営しています。

    4事業の内の高齢者支援事業は、福祉亭の主たる事業です。永山商店街の一角に構えた福祉亭の活動拠点がサロンになっていて、高齢者を中心とする地域の皆さんにコミュニティづくりの拠点として利用していただいています。その手段として、ランチの定食や飲み物を提供したり、囲碁や将棋、麻雀などのゲームを楽しんでいただいたり、カラオケやお酒を楽しむ会といったイベントも行っています。また、ここに来られない高齢者のために、見守りを兼ねて定食を宅配するサービスも数は少ないですが行っています。

    在宅生活支援事業は、高齢者世帯に対し、掃除や草むしり、食事の支度、病院の付き添いといった生活支援サービスを有償ボランティアとして引き受けるものです。

    まちづくり事業としては、現在は主に高齢化社会におけるコミュニティづくりなどを研究する近隣の大学や研究機関に対して、さまざまな情報や調査フィールドを提供しています。福祉亭としても、地域の高齢者の見守りなどの孤立化防止策を模索しています。

    世代交流事業としては、中学生の職場体験をはじめ、高校生や大学生の夏休みボランティア活動の受け皿として活用頂いているほか、近隣の大学の「コミュニティサービスラーニング」という授業にも協力しています。また、月に1回、小さなお子さんとママを招いて「わらべうたの会」も開催しています。

    お花見会

    誕生日会+クリスマス

    お酒の会

    囲碁に熱中

    ――福祉亭の活動をスタートした経緯をお教えください。

    06s

    活動を始めたのは2001年でした。社会的な入院や寝たきりゼロを念頭に、介護保険制度が2000年に施行されたり、団塊の世代が一斉に定年を迎える2007年問題がクローズアップされる中、多摩ニュータウンを抱える多摩市では、「世界最速で高齢化する街」と揶揄され、じきにその住民が高齢化し独居老人も増えるなどの問題が取り沙汰されました。ニュータウンは地方から上京した人が多く住み、地縁・血縁が希薄だからです。そこで、多摩市の高齢者支援課(当時、在宅福祉課)が、高齢者の社会参加活動の立ち上げを呼びかけたのです。そして、2001年8月、「多摩市高齢者社会参加拡大事業運営協議会」が発足し、この協議会で「福祉亭」の概要が決まりました。それ以来、徐々に活動を広げてきています。

    私は2003年にNPO法人となった後に理事に就任しました。2004年2月にNPO法人の認証が下り、理事長を引き継いだのは2013年のことです。

    永山商店街なら、団地住民の人通りもあるし、人の目にも止まりやすくていいと入居を決めました。

    ——永山商店街の一角に拠点を構えたのは、どういった理由からでしたか?

    2001年に構想を話し合った時、資金がなかったので地域の廃校を使わせてもらおうと考えたのです。ところが、翌年の4月、市の制度変更が予定されていて廃校跡を一団体が長期的に使うことができなくなりました。窮した時、あるメンバーが「永山商店街に空店舗がある」と言ったのです。さっそく下見をして、ここなら団地住民の人通りもあるし、人の目にも止まりやすくていいと入居を決めました。実際にオープンしてみると、すぐ隣にスーパーマーケットがあって食材の調達などに大変便利なのです。また、想定どおり通りかかる人に興味を持ってもらえましたね。

    積極的なコミュニティ作り

    商店街のお祭り

    花壇の整備

    ——活動メンバーの構成はどうなっていますか? また、役割分担などはどのようにしていますか?

    ボランティアスタッフは50名弱で、中心メンバーは70代です。男女比率は1対3ですね。最高齢は87歳の女性です。あとは、時々学生ボランティアが加わったり、企業の研修として若い社会人の方々が加わることもあります。発足当初は、100名規模のボランティア集団でしたが、ここ4~5年は、50名ほどのメンバーが、様々な場面で活躍できるようになり、曜日別の担当チームの編成で、運営がなされています。

    ボランテイアスタッフ

    ボランテイアスタッフ

    ――地域住民に対する活動の告知はどのようにしているのでしょうか?

    「いきいき新聞」という月刊の広報紙を300~500部ほど配布しています。公共施設に置いてもらっているほか、200部ほどを周辺団地の個別のお宅にポスティングしています。あとは口コミに頼っていますね。

    「福祉亭に行けば誰かしら話し相手がいる」という拠点になっている意義はとても大きく、また、駆け込み寺的な機能も担わせて頂いています。

    ――福祉亭の活動にどういった意義を感じておられますか?

    まずは、“地域の食堂”という役割があると思います。オープン当初は近くにおそば屋さんやお寿司屋さんもありましたが、500円のワンコインで定食を提供するようなお店はなく、高齢のご利用者に重宝して頂けたかと思います。おそば屋さんもお寿司屋さんも閉店してしまった現在では、なおさらだと思っています。

    この定食の提供は、ある専門家から「食事は健康づくりはもちろん、一日のリズムを刻む上でも大事なものです。温かいものを食べたり飲んだりすれば、心が和みます。そうして健康的な生活を過ごすことを側面的にサポートする意義があります。特に、一人暮らしの男性高齢者に対してその効用は大きいです。」と評価していただきました。前述のとおり、地方出身者が多く暮らすニュータウンは歴史が浅く、住民が心を一つにする祭礼などの文化的なイベントの定着もなかなかすすみません。歳を取ると、住民同士の繋がりのない生活は物足りなく、また不安なものになります。そうした中にあって、「福祉亭に行けば誰かしら話し相手や、相談相手がいる」という拠点になっている意義はとても大きいのではないかと思っています。

    福祉亭の店内の座席はお1人様席がなく、4人掛け以上です。1人で食事に来ても、ほかの誰かと相席して、自然な交流をして頂くためです。

    また、参議院に招かれ、「都市型の居場所づくり」というテーマで議員の皆さんに活動事例をプレゼンテーションしたこともあります。全国から、また、海外からの視察もあり、私たちのような活動が、社会的に注目されていることを再認識する機会ともなっています。

    「福祉亭に行けば誰かしら話し相手がいる」
    高齢者の方々、遠方からのお客様、中学生、子育て
    中のお母さんと赤ちゃん、色々な方が訪れます

    海外交流

    世代交流

    ――一方、活動にはご苦労もあるかと思います。

    定食はワンコイン500円としていますが、年金生活者にとってはそれでも辛いケースがあるようです。とはいえ、活動資金としてギリギリの価格なので、これ以上下げることは、出来かねるかと思っています。けれども、できるだけご満足していただける食事を提供しようと努力を続けています。

    また、利用者もボランティアスタッフも中核は団塊から上の世代です。高齢期の思いがぶつかることもあって、一つにまとめにくいこともあります。

    活動していて一番難しいと感じるのは、ここに来てくださる方々が高齢者が多いこともあって、亡くなる方が出ることです。楽しそうなコミュニティの輪ができたと思っていたら、中心的なメンバーだった方が亡くなって、集団としてのまとまりが続かなくなるということも起こります。次の中核メンバーがなかなか育たない場合もあり、それが悩みの種ですね。

    さらに、ボランティアスタッフも様々な理由で、おやめになる方がいます。日常の運営に支障のないところにまではなっていますが、無報酬が前提ですから、ご無理をお願いすることになります。

    ですから、今後の課題としては、ひとえにこの活動をいかに継続させるかにあると、他の理事さんたちともども、考えています。

    ――では、最後に読者にメッセージをお願いします。

    あなたの中に眠っていて、あなたが、まだ、気が付いていないあなたの宝を見つけてください‼

    地域で活動すると、おそらく今まで気づくこともなかったご自分と、ご自分の力を再発見できると思います。そうすれば新しい人生感も得られ、面白い人生が始まるのではないでしょうか。こうした活動に、肩ひじ張らず、ぜひ気軽に参加していただきたいと思います。まずは一歩、家の外に出て、ご自分の居場所を発見してください。そして、こうした場所で、様々な笑顔を見つけてほしいですね。

    ボランティアスタッフにインタビュー

    古川健一さん(66歳)

    参加したきっかけは、「パソコンが使える人募集」という告知に目が止まったことです。私は百貨店に勤務していますが、65歳になって休みが週3日に増え、時間を持て余していました。そんな時に告知を目にしたので、パソコンならば使えるし、人の役に立つならと応募したのです。

    いざ始めてみると、パソコン作業だけでは収まらず、お客さんが来ればウエイターもやりますし、食材を買いに走ることもあります(笑)。また、「いきいき新聞」のポスティングを申し出て、任されるようになりました。

    ここに来れば、先輩方と気軽に話をすることができます。時には熱く議論することもありますが、そんなことができるのがうれしいですね。先輩方に自分の存在を受け入れてもらえているように思えるからです。

    肩ひじ張らずに「ちょっと出かけてみようかな、ちょっと手伝ってみようかな」そんな気持ちを持って参加してくださる方の力が必要です。家に閉じこもらずに、まず一歩外に出かけましょう‼

    近藤 浩さん(73歳)

    友人がここで料理をつくるボランティアをしていて、その話を聞いて私も2008年頃から参加しています。私は行政書士で、ここで月1回、PRを兼ねて無料相談をさせてもらっています。無料相談した方が何か手続きが必要になったら、仕事として引き受けているという形です。それ以外は、時間がある時に顔を出しています。私は地域の老人会の会長も務めていますので、地域の知り合いをつくり、一緒に活動するという目的もあります。ここに来れば、いろいろな人に会えて気持ちも安らぐので、居心地いいですね。

    私たちの年代の男性は、外に出て人と交流するということが苦手ではありますが、健康を維持するためにも一歩外に踏み出して、自分の居場所や役割を見つけることが必要だと思います。皆さんもぜひ一緒に出かけましょう‼

     

    (取材:2016年1月11日)

    ■プロフィール

    NPO法人 福祉亭

    設立/2003年4月

    代表者/理事長 寺田美惠子

    ページトップへ戻る
    Copyright © 2015-2024 Bureau of Social Welfare, Tokyo Metropolitan Government. All Rights Reserved.