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    地域づくりの台本

    地域リビングプラスワン(板橋区)

    ページ:6 / 7

    すべての人を受け入れる「社会的包摂」

    「地域リビング」ではすべての人を受け入れることを基本的な運営方針としています。多様な人が交わることで新しいつながりが生まれることは、地域リビングの特徴だからです。この理念は美しいものですが、実際に多様な人を受け入れることは簡単ではありません。地域リビングの利用者のなかには、障がいをお持ちの方や、近所でホームレス状態になっている方もいらっしゃいます。ここでは、具体的なエピソードをもとに、多様性を尊重し、すべての人を受け入れる過程で、どのような場面に直面し、それを乗り越えてきたのかをご紹介します。

     

    「すべての人を受け入れる」エピソード①
    〜障がいがある人が来たときの対応〜

    【シチュエーション】
    井上さんが不在のときに、障がいのある人が地域リビングにきました。そのときにいたのは新任のコーディネーター1名とおかえりごはんの準備をしているボランティアが数名。
    障がいのある人と接した経験が少ない新任コーディネーターは不安を感じたようです。こんなときどのような対応をしたのでしょうか。

    コーディネーターさん:(心の声)「障がいのある人だ。あまり障がいのある人と接したことがないから不安。どうしよう・・・。あ、コーディネーターチャット(※)に投稿してアドバイスしてもらおう」

    ※コーディネーター同士の連絡用SNSグループ

    コーディネーターさん:(スマホを使ってコーディネーターチャットに質問を入力)
    『こんな見た目の障がいのある人がきました。どうしたらいいかな?』

    井上さん:(スマホに通知が来て、この質問に気付いた井上さん。書かれている身なりから「きっとあの人だな。」と気付いた)(チャットに回答を書き込み)
    『障がいがある人って慣れていないとちょっと不安に感じるかもね~。』

    コーディネーターさん:(心の声)「え~、それだけ? でも、慣れの問題なのかな?」

    【代表・井上さんより】
    障がいのある人も特に区別はしていません。たまたまたそこで出会った人が、後に話をしているいうちにそうだっただけという感じです。
    このときは、見た目の特徴から自分の知っている人だと分かったので、簡単なやりとりですませてしまいました(笑)。
    コーディネーターの人材育成という観点からも、そういった場面を乗り越えて、色々な方との応対ができるようになってもらう必要もあると思っています。
     
    「すべの人を受け入れる」エピソード②
    〜ホームレス状態の人が地域リビングに来たときの対応〜

    【シチュエーション】
    「おかえりごはん」の時間、ホームレス状態の人が地域リビングに来た。しかし、お酒の匂いがちょっときつい。こんなとき、どう対応したのでしょう。

    ホームレス状態の人:「何か食べるものない?」

    コーディネーターさん:(心の声)「あ、ごはんはあげたいけど、ちょっとお酒の匂いがするな。中には子ども達もいるし、どうしよう・・・。」

    コーディネーターさん:「ちょっと食べるものないか見てきますね。外のベンチでお待ちいただけますか? 今度、お酒飲んでいないときには、中で一緒に食べましょうね。」

    ホームレス状態の人:「ありがとう~。」

    【代表・井上さんより】
    お困りのようであれば、地域リビングにあるものは何でも差し上げる方針をコーディネーターと共有しています。ごはんがなければ、おやつや冷凍ごはんのおにぎりをお渡しすることもあります。
    危害を加えることがなければどなたでも受け入れています。

     

    3. やりたいことをやる/役割を見つける

    地域リビングの特徴のひとつは、多くの積極的なボランティアや利用者が担い手となって運営されていることです。2013年の開設以来、地域リビングに関わる人の数は増え続け、今では50名を超えています。多世代かつ多様な人々の参加は、地域リビングの明るく活気ある雰囲気づくりにもよい影響を与えています。なぜ、地域リビングに積極的なボランティアや協力者が多いのか、長続きするその秘訣を紹介します。

    「役割を見つける」エピソード
    〜利用者からボランティアになる〜

    【シチュエーション】
    「地域リビング」では利用者からボランティアになるケースが多くあります。
    どのようにしてボランティアになったのでしょう。あるボランティアさんの例を紹介します。

    【インタビュー】ボランティアGさん:

    右手の怪我で家事が出来なくなったんです。

    お弁当を買って食べていたのですが、金銭的負担が大きく、栄養の偏りも気になって、近くに「子ども食堂」がないか検索してみたんです。
    近所に「地域リビング」が有ることを知って、早速電話をしてみました。
    その日は「おかえりごはん」の日で、コーディネーターさんから誘われて試しに利用してみました。家庭料理だ!と思いました。
    人が作る家庭料理を食べるのは新鮮で、温かい手作りのご飯が気に入って、手の怪我が治るまで、ほぼ毎回利用しました。

    利用者として食事をしたときに、自分より年長の方が働いてくれている姿を見てご飯だけ食べて何もしないのは気が引けました。
    何かお手伝いできることはないかと考え、お皿を拭きました。
    その後、お皿洗いをするようになり、お料理のお手伝いをするようになりました。今ではごはんづくりも担当をしています。

    ここに来るようになり、人と話す機会が増えました。
    いろんな人と話すと気晴らしになるし、悩みを聞いてもらえることで心に余裕が出来た気がします。

    ここは小さい子どもを持つママたちの助け合いや相談の場にもなっていると思います。ママたちの悩みや相談を聞いて先輩ママとしてアドバイスすることもあります。
    子どもたちがこの場所が好きなことも来るきっかけになっています。

    子どものお友達の中には夜遅くまで一人でお留守番をしている子が何人もいます。寂しいのでラインで話し相手を探して話しているようです。スマホ依存にならないか心配です。
    自分も子どもの頃一人でお留守番をすることが多かったので寂しい気持ちはよく分かります。
    地域にはリビングのような場所が必要だと感じていますし、もっと皆に知って利用して欲しいと思っています。

    こういう場所を存続させるために自分にできることをしていたら、ボランティアになっていました。

    【理事・酒井さんより】
    地域リビングを立ち上げた当初は、食事の提供をすることは決めていたものの、利用者の方も少なく、しばらくは、ただ場所を開けているだけの状態でした。それが、いつの間にか、料理を作りたいという人やお手伝いをしてみたいという人が増えて、いまに至っています。地域リビングでは、一過性のイベントを企画するのではなく、利用者の方の「やりたいこと」や「アイディア」を拾って、それができるように声をかけたり、手伝っていったりすることを続けています。
    もし、これから居場所を始める人にアドバイスするとしたら、立ち上げのタイミングでやることを急いで決めなくてもよい。決まらなくても焦らなくてよい。ということをお伝えしたいです。具体的な「やりたいこと」でなくてもよいです。「こうしたらいいんじゃない?」という「アイディア」は人が集まると結構出てくるので、それをしっかりと拾うとよいかもしれません。私自身もそのやり方にはじめは戸惑いましたが、だんだんと、慣れてきました。

     

    4. 化学変化/小さなイノベーション

    地域リビングに関わった人はみんな共通して、自分自身に小さな変化があったことを感じているようです。代表の井上さんはこの地域リビングに関わった人に訪れる変化のことを、多様な人と関わり合うことで起こる「化学変化」と表現しています。
    地域リビングでは、まさにこの「化学変化」が日常的に起こっているように感じられます。例えば、知り合いが増えたことによって、前よりも元気に日々を過ごせるようになったことを実感している利用者がいます。また、地域の多様な人との出会いを通じて、今までつながりのなかった人からのサポートを得られるようになったという人もいます。地域リビングは、つながりを生み出すだけでなく、そのつながりを通じて、関わった人の「何かしたい」という気持ちを後押しする場としても機能しています。

     
    「化学変化」エピソード①
    〜あゆちゃんのコミュニティスペース立ち上げ〜

    【インタビュー】井上さん:

    あゆちゃんという重度の身体障がいがある女性が作った「あゆちゃんち(家)」というコミュニティスペースを応援しています。
    そもそも、地域リビングとあゆちゃんとのつながりは、当時20歳だったあゆちゃんとお母さまが地域リビングのチラシを見て、「重度の身体障がいがあるのですが、ボランティアとして何かできることはないでしょうか?」と来られたことがきっかけです。

    定期的にお母さまや介助士の方に付き添われて地域リビングに来るようになった彼女は、シュシュ(ヘアゴムアクセサリー)や石鹸作りの講師などをしてくれていたのですが、誰もが気軽に集まれる居心地の良い場所を自分でも作りたいという思いから、2014年、彼女とお母さまはご自宅を開放してコミュニティスペースを立ち上げました。それが「あゆちゃんち(家)」です。

    今でも、地域リビングで出会って、あゆちゃんのファンになった人たちが、「あゆちゃんち」のお手伝いに行っていますし、定期的に親子で通っている利用者の方もいます。地域の方とあゆちゃんのあいだに、そうした関係性が生まれたことは、とっても素敵なことだと思います。
    ときに障がいをもつ人はマイノリティになってしまいがちですが、地域の場に出てくることを通じてファンや知り合いが増え、あゆちゃん目線で考える人がたくさんになっていって、気が付いたらあゆちゃんがマイノリティでなくなっている光景をみたときには、とても嬉しかったです。

    「あゆちゃんち(家)」が成功することを願っていますし、こんな風にもっと地域の居場所がどんどん生まれて広がっていけばいいなと期待しています。

     

    「化学変化」エピソード②
    〜ドリームタウンの実現に向けて〜

    地域リビングを運営するNPO法人 ドリームタウンは、「一人ひとりが夢を叶えられる街にしたい、やりたいことにチャレンジできる街にしたい」という考えをもとに活動しています。人が集まれば自然とアイディアが出る、アイディアを拾って実際にやっていく、そして人が人を呼んで声掛けをして輪を広げていく。利用する人も一緒に対話に入ってもらうようにすると更に輪が広がります。
    代表の井上さんは、「ここでは『小さなイノベーション』の起点、すなわち小さな希望や夢が叶うきっかけを生み出す場であることを目指しています。地域リビングがきっかけになって、新たなコミュニティが創出される、コミュニティ創出機みたいになれたらいいですね。」と語っています。

    【ドリームタウンミーティング】

    【インタビュー】理事・中村さん:

    最近、過去に実施していた「ドリームタウンミーティング」を復活させました。

    コーディネーター・ボランティア・利用者の方が集まって、地域リビングで自分がやりたいことを自由な発想で出し合う場です。今回のテーマは、「地域リビングの理想的な姿を考えよう!」です。やることの形、内容は問いません。ボヤッとしたものでもいいのです。おかえりごはんも、「子どもたちの放課後の居場所があったらいいな」という意見がきっかけで始めました。

    その他の具体的な活動の例としては、民間企業や個人からの支援を受け、食材を提供する「おすそわけセンター」や「おしゃべりカフェ」など新しい活動が始まっています。まだ始まっていないですが、おかえりごはんのあとに、大人が仕事終わりに集まる「夜会(〇〇さんのBar)」や、比較的利用者の数が少ない高齢の男性にとってより来やすい場所にするために、男性限定の「料理教室」を開いてはどうかなど、ウキウキしながら、企画を話しています。
    ドリームタウンミーティングは定期的に続けたいと思っていますし、いまの地域リビングにない、全く新しい取り組みでも、地域の人がやりたいことであればそれを実現する場でありたいと思っています。

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