• サイトマップ
  • 都庁総合トップ
    • 大きいサイズ
    • 標準のサイズ
    • 小さいサイズ

    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ライフシフト

    【レポート】7月3日開催 第1回 ライフシフトセミナー

    2019年7月3日
    3×3 Lab Future(千代田区)
    2019年8月28日

    - お話いただいた方々 -

    NPO法人 Dカフェまちづくりネットワーク 代表
    目黒認知症家族会 たけのこ代表
    竹内 弘道さん

    社会福祉法人いたるセンター 
    地域ケアセンターサポートウイズ ガイドヘルパー
    内田 修二さん

    富国生命保険相互会社 勤務 
    「2018年度ライフシフトプログラム」参加者
    西潟 純一さん

    モデレーター
    ライフシフト・ジャパン(株)CEO
    大野 誠一さん

    ページ:1 / 1

    左からモデレーター大野さん、ゲストの竹内さん、内田さん、西潟さん

     

     東京ホームタウンプロジェクトでは7月3日(水)19時〜21時、千代田区大手町のJXビル1階の3×3 Lab Futureで、第1回「ライフシフトセミナー」を開催しました。東京の身近なまちを舞台に、自分なりのスタイルで社会とつながるゲストたちのライフストーリーを聞きながら、人生100年時代の地域との関わり方を考えるためのセミナーです。その内容をご紹介しましょう。

     

    最初に東京都福祉保健局 高齢社会対策部 在宅支援課長の下川明美さんから、「今、すごいスピードで少子高齢化が進み、支える側と支えられる側の人口比率がアンバランスになっています。企業で働く人に力になっていただけたら、東京の未来は希望の持てるものになると思います」と、挨拶がありました。

    次に、「東京ホームタウンプロジェクト」の説明が、事務局のNPO法人サービスグラントからありました。
    「東京ホームタウンプロジェクトは、いくつになってもいきいきと暮らせるまちを東京に増やしたいという思いからスタートしました。そうした場づくりのために、東京のビジネスパーソンお力を活かすことができないかとう発想から、今日のライフシフトセミナーが企画されました。この活動に加わることが、ビジネス・パーソンにとっても新しい発見につながるのではないかと思います。セミナーの中に、「プロボノ」という言葉がでてきます。プロボノはボランティア活動の一種で、ビジネスパーソンが持っているビジネススキルや専門知識を活かしながら、地域で活躍するボランティア活動のことです」

     

    -「東京ホームタウン検定」

    次に、「東京ホームタウン検定」が始まりました。検定は全6問で、いずれも三択問題でした。

    第1問 2018年9月現在、東京都内に65歳以上の高齢者は何人?

    正解:約300万人

     

    第2問 2040年における一人暮らしをする65歳以上の高齢者は、2015年と比べて何%増加すると予想されているでしょうか?

    正解:47%

     

    第3問 日本の介護保険制度。1年間の保険給付額はいくら?

    正解:9兆2290億円

     

    第4問 友人・知人と会って話をする機会が月1回未満の人は、毎日のように友人・知人と会っている人と比べて、どれくらい認知症になるリスクが高いといわれているでしょうか?

    正解:45%

     

    第5問 家族の介護が必要となったとき、高齢者の健康に関する悩みがあるときなどに相談できる窓口を「地域包括支援センター」と言います。さて、東京都内にはいくつ設置されているでしょうか?

    正解:約450ヵ所

     

    第6問 高齢化が進む中で、80代の親が収入のない社会的孤立状態の50代の子と同居する「8050問題」が深刻化しています。現在、中高年(40代以上)で引きこもりの人はどのくらいいると考えられているでしょうか?

    正解:613,000人

     

    – ゲストトーク

     さあ、いよいよゲストトークの始まりです。最初は「ライフシフト概論」。ライフシフト・ジャパン(株)CEOの大野誠一さんが、ライフシフトとは何かを、説明しました。

    大野:「ライフシフト」という言葉は、2016年に出た『LIFE SHIFT–100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社)という本が注目されて、一種の流行語になりました。この本が売れたひとつのきっかけは、冒頭に、2007年に日本で生まれた子どもたちの半分が107歳まで生きるという、国連の統計が紹介されていたことでした。この本に書かれているのは、主に次の3つです。

    1.スリーステージからマルチステージへ。

    スリーステージとは、20年勉強して、40年働いて、その後引退生活を送るという3つのステージのことです。これまでは、このパターンで生活してきましたが、これからはマルチステージになっていくというのです。学校や会社勤めだけではない様々な働き方が増えていきます。エクスプローラー、インディペンデントプロデューサー、ポートフォリオワーカーなどです。このプロジェクトで推進している「プロボノ」は、会社に勤めながらボランティアをやったりNPOに参加したりするので、この本でいうポートフォリオワーカーに該当すると思われます。

    2.有形資産より無形資産が大事。

    有形資産より無形資産が大事ということです。お金や投資といった有形資産よりも、仕事をするためのスキルや知識やネットワーク、そして活力資産としての健康や幸福感が大事だということです。人生100年時代には、変化や新しいことにチャレンジするマインドを持つことが重要になってきます。

    3.パートナーとの関係を見直そう。

    パートナーとの関係を見直すということ。夫が働いて奥さんは専業主婦で子どもは2人というのが、昭和の標準世帯でしたが、これからの長い人生を生きていくためには、それではもう保たない。この本では「シーソーカップル」というコンセプトが提唱されています。カップルがライフステージに合わせて役割を交換しながら、学び直したり、ボランティアをしたり、お互いに役割をチェンジしながら生きていく人が増えていくと書かれています。

     長い人生の恩恵をみんなが受けられるような時代を作っていくために、個人も会社も社会も変わらないといけない。長寿化には世の中のすべてを変えるようなインパクトがあるので、それをみんなで考えよう。日本は長寿社会の最先端をいっているので、世界が日本に注目していると、この本では強く述べられています。

     「ライフシフト」というのは、日本の出版社がこの本のタイトルの訳語としてつけた、いわば造語です。私は、人生をわくわく生きていくこと自体を「ライフシフト」と呼びたいと思います。会社を辞めたら何もやることがない人生ではなくて、長い人生を活力溢れる生き方ができるよう、みなさんといっしょに考えていきたいと思います。

     

    次に、3人の男性が会場の前に出てきて、自己紹介を始めました。

    最初は、NPO法人Dカフェまちづくりネットワーク代表の竹内弘道さんです。

    竹内「私は今、目黒区を中心に認知症カフェを10ヵ所ほど展開しています。認知症カフェというのは、認知症の当事者や家族を中心に街の人たちが集まって、街の将来のことなどを話し合うカフェです。きっかけは母の認知症でした。母が認知症で歩けなくなったので、目黒区の認知症家族会に、車椅子を押して出かけました。でも、当事者同士で集まっている会では限界があると考えるようになり、認知症当事者とご家族と、街の人たちがいっしょになって話ができる場を作ろうと、2012年に認知症カフェを作りました。当時、私は54歳でした。家をオフィスにしたSOHOで働きながら、自宅を改築してカフェを作りました。

    「Dカフェ」と名付けていますが、Dはディメンシア(認知症)のDであり、ダイバーシティーのDでもあります。でも、デイサービスのDではありません。いっしょに歌を歌ったり、何か作ったりは原則としてやりません。そうではなくて、認知症当事者が普段あまり話せないことをじっくりと聞いたり、介護している人の悩みを聞いたりして、地域でどう解決すればいいかを話し合います。企業にお勤めの人ならば、会社の人事とどういうスタンスで話せばいいかを話し合います。それが、私の考えるDカフェです」

     

    続いて、社会福祉法人いたるセンターの障害者ガイドヘルパー、内田修二さんが自己紹介を始めました。

    内田「私は現在65歳ですが、56歳の時にリストラの波に襲われて、医療機器販売会社に退職届を出しました。現在は、杉並区の社会福祉法人いたるセンターに所属して、障害者ガイドヘルパーをしています。正職員ではなく、時給1,300円くらいで、年間1,300時間ぐらい働いています。障害者ガイドヘルパーというのは、こちらの声は聞こえているのだけれど、自分の意思表示が出しにくい、出せない方たちに、1日平均5時間ぐらいご一緒して支援する仕事です。今日どこに行きたいですかと声をかけても、自分から意思表示できる方は1〜2割程度。その他の方は、ご家族の希望に応じて、映画館や美術館に行ったり、公園や買い物に行ったりします。あるタレントのライブショーに行ったこともあります。行動中は、障害をお持ちの方が前面に立って、ガイドヘルパーはあくまで黒子に徹します。私は障害者という言葉が嫌いでして、ご一緒しているのは、あくまでお客様なのです。障害者福祉の世界ですが、あくまでビジネスだということを押さえた上で活動しています」

     

    次に、富国生命相互株式会社の西潟純一さんが、自己紹介しました。

    西潟「私はサラリーマンをやりながら、去年、ホームタウンプロジェクトのプロボノ研修に参加しました。保険会社で営業の仕事を続けてきて、いろいろな人と接して、自分なりにいろいろ知っているつもりでいました。ところが、去年この研修に参加してみて、いかに知らない世界が多いかを思い知りました。

    まず、プロボノという言葉自体を知りませんでした。プロボノというのはラテン語で、英語だとfor good、地域や世の中のために良いことをするという意味だそうです。プロボノ研修のテーマは、プラチナ美容室という美容ボランティアをされている団体に対して、何か役に立てる提案をするというものでした。保険会社という仕事柄、介護や認知症については、日頃からお客様に情報を提供しているので、よく知っていると思っていました。ところが私が知っていたのは、あくまで紙の上の情報で、実際の生活の中でどういうことでお困りかについては、まったく知りませんでした。

    研修で施設を訪問して、教えてもらったハンドマッサージをやってみると、下手くそなのにすごく喜んでもらえました。喜んでいただくと、なぜか涙が出てくる経験をしました。人のために一生懸命やることで、達成感や満足感が得られるという経験をさせてもらいました。

    今は現役で仕事をしているので、現在、福祉に関わるプロボノはできていません。でも、マンションの自治活動に積極的に参加したり、地域のスポーツ推進委員を引き受けたりして、何年かして会社をリタイヤした時のために、地域のネットワーク作りに取り組んでいます」

     

    マイクは、再びDカフェの竹内さんに渡りました。

    竹内「母が認知症になって、保健師さんから『家族会に入りませんか?』と言われた時、私はそんなところへは行きたくなかった。ところが、保健師さんの顔を立てて行ってみたら、気がつくことがたくさんありました。母の認知症の症状しか知らなかったのが、同じ認知症でもいろいろな現れ方をすることがわかりました。穏やかな家族もいれば、家族の関係性によってこじれてしまった家族もいる。でも、そんなことは街の人にはわかりませんよね。みんな、どうしたら認知症にならずにすむのかという話ばかりしています。

    でも、認知症はそんなに嫌なものなのか。私は、母が認知症になって良かったと思っています。母と深く触れ合うことができましたから。認知症と真面目に付き合った人は、みんな同じような感じを持っていると思います。正確な情報を知り、正確に対応していけば、ほとんど問題はないのです。歳をとれば、みんなニコニコと耄碌(もうろく)していくのですが、それをこじらせるのは無理解な家族なのです。そういう話を家族会でしていても、一般の人にはほとんど伝わらない。だからカフェスタイルにして、他の障害をお持ちの人にも入っていただいて、みんなが一緒に話せる場を作ったのです。

    カフェが10ヵ所に広がったのは、大して難しいことではありませんでした。私は現役でマーケティングやプランニングの仕事をしていた時の方法論を当てはめて、『認知症カフェとは何か』というコンセプトを作りました。そして、それが病院の課題とどう結びつくかというプレゼンをして、まず医療機関の中にDカフェを作りました。それから選択肢を多様にすることが大切だと思って、医療機関や介護事業所を中心に、さまざまなところに提案したら、存外『いいですね』という反応をいただいたので、あまり苦労せずに10ヵ所に広がりました」

     

    続いて、ガイドヘルパーの内田さんが、話し始めました。

    内田「私の場合、家族や身内に高齢者が多かったので、誰かひとり、高齢者や障害者の支援について学んでおいてもいいかなと思って、この分野に注目しました。それで、ヘルパー2級の資格を取りました。ヘルパー2級は、現在は『介護職員初任者研修』という名前になっています。ただ、ヘルパー2級では、視覚障害者の移動支援はできないので、視覚障害者に対する資格や、福祉用具専門指導員の資格を取って、高齢者施設や障害者移動支援事業所などを、1年ぐらい見て歩きました。あるとき、20歳代前半の障害者の移動支援で、とある公園に向かいました。その公園には、キラキラ光る鏡状の外壁があったのですが、その方は自分を鏡に映しながらステップを踏み始めたのです。いつまでたっても踊り続けているので、こちらにも時間の区切りがありますから、そこから無理やり切り離すようにして帰ってきてしまいました。そのことがきっかけとなって、『障害を持った方々と、どうやってコミュニケーションをとればいいのか』ということを知りたくなり、現場に飛び込みました。

    言葉を発することができない、ご自分で意思表示できない方々と、どうやってコミュニケーションをとるのか。それには、見る、聞く、待つ。その上で、会話、言葉かけ。こんなのは常識ですが、それができていない人も多いのではないでしょうか。見続ける、聞き続ける、待ち続ける。そして、相手に理解していただけるように、声、言葉、ボディランゲージやイラストなどを駆使して、意思疎通を図る。これがこの仕事の醍醐味なのです。

    この経験は、間違いなく皆さんの、コミュニケーション力の底上げにつながります。私も40代、50代の時に障害をお持ちの皆さんと付き合っていたら、リストラにならないで63歳まで安泰だったろうなと、今、痛いほど思います。ぜひ皆さんに、福祉の世界に目を向けて欲しいのです。福祉業界の年収は、全国の平均賃金よりも100万円くらい低いと言われているので、それを生業とするのは厳しいかもしれませんが、副業としてでもいいので関わっていただきたいと思います。必ず皆さんのコミュニケーション力の底上げができるはずです」

     

    次はプロボノ体験者の西潟さんの発言です。

    西潟「先ほどプロボノ研修に参加して、知らないことだらけだということが分かったと言いましたが、逆に自分の得意なものは何かが見えてきたということもあります。私は生命保険という仕事柄、保険のお姉さんと呼ばれている年上の女性と接することが長かったのですね。ですからその方たちとコミュニケーションをとることにまったく抵抗がない。美容ボランティアを経験してみて、自分のそういうところは活かせるのではと思いました。」

    3人の話は、ここで終了しました。そのあと、会場の隣の人との交流の時間があり、質疑応答の時間に移りました。会場からいくつか質問が出ましたが、そのうちのひとつを紹介します。

     

    Q:「今日のパネリストは全員男性なので、ぜひ教えて欲しいことがあります。ボランティアの現場に、男性をどうやって誘えばいいのでしょうか。また、仮に誘い出せたとしても、男性は地域活動の中でも、お互いにヒエラルキーを作りがちです。そのことにどう対処したらいいと思いますか?」

    A:「ヒエラルキーを作りがちなのは、昭和30年代より前に生まれた世代の男性の特徴ではないでしょうか。それ以降の世代では、あまり心配はいらないと思います」

    A:「私は男も女もないと思います。大切なのは声かけの仕方や工夫。こんな人が来そうだよというプロフィールがわかったら、それに合わせた迎え方をする。男性がきっちり対応したほうがいい人もいるし、女性がソフトに迎えたほうがいい人もいる。最初に参加した時に、どういう笑顔で誰が迎えるかが重要ではないでしょうか」

    (取材・文 細井 聖)


    ライフシフトプログラムでは、11月に地域活動に足を運ぶ「スタディツアー」を予定しています。スケジュールや訪問先についてはこちらのページをご覧ください。

    様々な現場で、地域の方々がどのような活動をしているか、リアルに見学することができます。このレポートを読んで、地域につながる何かをやってみたいなと思った方は、ぜひ気軽に第1歩を踏み出してください。

     

     

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

    ページトップへ戻る
    Copyright © 2015-2024 Bureau of Social Welfare, Tokyo Metropolitan Government. All Rights Reserved.