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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    地域づくりの将来像を共有するために〜目標を言語化する方法
    「東京ホームタウン大学2023」
    基調講義レポート


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    効果的な物語の語り方

    では、物語はどのように語ると効果があるのでしょう。この図は、マーシャル・ガンツさんという、アメリカでコミュニティ・オーガナイジングを研究されている方が整理した図です。

    物語の構図には普遍的な枠組みがあります。どういうものかというと、物語には必ず主人公がいるのです。歴史の年表を読んでいて感動することはあまりないと思いますが、例えばNHKの大河ドラマなどで歴史の物語に触れたとき、そこに主人公がいて主人公がどのように行動したのか、どのように状況を切り抜けたのかというところに心が揺さぶられると思うのです。

    つまり物語には必ず主人公がいて、そして主人公が「困難」に直面しているという要素が必ずあります。みなさんが最近見た映画であったりドラマであったり、読んだ小説だったりを思い返してみてください。おそらく最初の方に、主人公がなにかしらの困難に直面していると思います。主人公がずっとラクに楽しく過ごしている物語を、読んでいて楽しいでしょうか。多分あまり面白くなくて、途中で読みたくなくなってしまうと思うのです。

    次に、主人公が困難に直面したときに、どういうふうにその状況を切り抜けていくのか、つまりそれが図の2番目の丸の「選択」です。どのような選択をすることでどのような結果が生まれるのか。これが物語の構図です。「困難」と「選択」と「結果」、この構図で物語を伝えることで、伝えたい感情や価値観がより伝わりやすくなります。

    例えば、鬼滅の刃が流行りましたが、はじめに、親や家族を鬼に殺されてしまうところから話が始まります。急に話に引き込まれますよね。そこで主人公は諦めるのか、それともなんとか妹を助けるか、という物語ですが、その選択が迫られる中で、もちろん主人公は頑張って挑戦し続けるわけです。そのような選択をする中、挑戦するという物語を見ることによって、見ている方も勇気づけられるわけです。

    ぜひみなさんも、なぜ私は地域の中でこの活動をやっているのか、という話をするときに、このような物語の構造を意識して語っていただけるとよいと思います。

    私の物語を、私たちの物語に

    では、物語ならどのようなものでもよいのかというと、少しここで整理する必要があります。伝える=「私自身の物語を語る」ということがまずあります。そして、「『私自身は』こういう人間です、こういうことやってきた人間です」という先には、「『私は』こういったことを大切にしています。『話を聞いていただいているみなさんも』、この価値観を大切にしているのではないですか。だからこそ『一緒に』活動しましょうよ」というふうに、私の物語を私たちみんなの物語として広げていく。そういう働きかけをすることによって、問題に関わっているみんなで一緒に活動していく機運を作り出すことができると思います。

    それをここでは「私たちの物語」と呼んでいます。私の物語から、相手の価値観を呼び覚ますように語ることで、私たちが一緒に行動する動機として語られてくることになります。

    一方で、物語の語り方には、この図にあるように「大きな物語」から語るという側面があります。

    大きな物語とは、例えば大震災が起こって、これは放っておけない、行動しなくてはいけないということがあると思います。実際に震災後は多くの人がボランティア活動に取り組んでいます。実はこれは私の物語から出発したのではなくて、大きな物語から出発しているのです。大きな物語というのはまさに、大震災で多くの人が亡くなったり、多くの人が苦しんでいるという物語の中に、自分が取り組む活動が位置づけられるというものです。

    これも物語の効果ではありますが、大きな物語から影響を受けている場合、その活動はなかなか継続しづらいというふうに言われています。

    どういうことかというと、自分発といった内発的な物語の方が、より人は行動しやすいということです。例えば大きな物語で「今、日本は非常に厳しい財政状況にあります。だからこそ地域で活動し、支え合って助け合っていきましょう」というような説明をされますと、「まあ、わからなくはないし、それって大事だよね。確かに頑張らないとな」とは思うものの、なかなかそういった動機は長続きしないと思うのです。むしろ、「実は身近にこんなことがあって、私は放っておけない。だから私は一歩踏み出してこんな行動をとりたいと思う。みなさんも実はそういう思いってないですか?」というふうに、私から始まる内発的な動機から私たちの物語を生み出す方が、長続きする傾向があるのです。

    ですので、物語なら何でもいいわけではなく、大事なのは自分発の物語をしっかり地域活動に生かしていくことだと思います。

    戦略的な活動には「時間軸」を使う!

    ここまで「物語」の方のお話をしましたが、残りの時間でもう片方の「戦略」のお話をしたいと思います。

    物語が、「なぜ」その行動をとるのかという話だとすると、戦略の方は、「どのように」その行動をとるのかになります。

    どのように行動をとるのかというとき、時間軸で考えることが重要になります。戦略的に行動するという事は、計画を立てて行動していくことです。2つの時間の捉え方があります。

    一つは次の図にあるように、矢印のように時間を捉える考え方で、もう一つが、円のように時間を捉える考え方です。

    円のように時間を捉える考え方とは、例えば月に1回は必ず顔を合わせて会議を開きましょうといった、定期的に活動することです。円のように時間を取ると、地域活動は安定性が生み出されますね。必ず毎月集まることで活動は継続していきます。

    しかしどうでしょうか。毎月集まっているのに、2年3年続けても何も生み出さない、といった活動はないでしょうか。達成したいゴールのある活動なら、もう一つの時間の捉え方を活用する必要があります。それが矢印のように時間を捉えるということです。

    矢印のような時間の捉え方は、例えば1年後までにこれを達成するとか、2年後までにこれを達成するというゴール設定をして、そこに向かって取り組んでいく考え方です。そうすると、機運を高めながら時間を使うことができます。

    つまり、円のように安定性をもたらす時間の使い方と、矢印のようにゴールを達成する時間の使い方、これを地域の中で組み合わせることによって戦略的に進めていくことができます。

    ゴールのある活動の場合、どのように目標を設定するかというときに、あまりに大きな目標をゴールに設定すると結果的にうまくいかないことが多いと思います。
    例えば仮に「地域の中で一人も取りこぼすことのない社会を作っていく」といった目標設定をした場合に、途方もない大きなゴールすぎて、何年かかったら達成できるんだろうという気持ちになってしまうかもしれません。

    それより、少し身近なゴール設定に置き換えていく、「ブレイクダウン」と言ったりしますが、少し視点を下げていく必要があります。例えば、「一人暮らしの高齢者が誰かとつながっているような地域を作っていく。それが将来的には一人も取りこぼすことのない社会に結びつく。この考え方に基づいて、まずは高齢者から働きかけていこうよ。誰かとつながっている社会、地域を作っていこうよ」というゴール設定をするとします。

    そうすると、「全ての高齢者世帯や独居高齢者の人が、いざというときに『助けて』を言える関係を地域の中で作っていく」というような具体的な活動になっていくかもしれません。

    このようにゴール設定を明確にして取り組んでいく中で、次の図の一番下にあるように「Aさんが孤立しないようにみんなで支える」というような最初の第一歩を明確にしていくことも大事です。「Aさんが孤立しないようにみんなで支える」状態をBさんやCさんにも作っていく、それが結果的にはその山の中腹にあるような一人暮らしの高齢者が誰かとつながっている地域を作っていく、というゴールに結び付きます。そして戦略が明確になってくると、「これならできるかもしれないね」、「じゃあ私がここを担当します」、「私はこっちを担当し、誰かがあの人を担当する」というように、行動の進め方が見えてくるのではないかと思います。このように、戦略的な側面からの活動は、時間軸を使って進めていくことが一つポイントになってきます。

    >>次ページ:地域活動を維持継続する盛り上がりを作る

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