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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ライフシフト

    【レポート】7月20日開催 第2回 ライフシフトセミナー


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    -仕事から地域へのシフト、その変化の道筋とは?

    続いての話題は、過去の仕事の経験からいまの活動へのつながりについて。
    藤井さんからは定年を機にNPO活動にシフトした様子を、岸さんからは本業のお仕事と並行しながら地域に関わる今の様子について話が進んでいきます。


    藤井:「現役時代は広告代理店で面白い広告を作ることを心掛けていました。私自身も日本笑い学会に所属していて講演の依頼を受けたりしていました。一度講演をすると、今度は隣の町からの依頼があって、自治体はいつでも講師を探していることがわかりました。そこで、シニアの講師リストを思いついたんです。勤続で約40年も仕事をしていたら、それぞれに大変な専門家なんです。その知識を生かした奉仕活動として活躍してもらおうと企んでいたら、新聞やテレビが飛びついてくれました。その「講師リスト」を自治体の市民講座の企画をしている部署に届けたら歓迎され、現在までの講師紹介実績は2700件にもなりました。
    シニア大樂では、「シニアが講師として活躍しよう」、そして「シニアにもっと笑いを」という2つのテーマに取り組んでいます。自治体は「とにかく、面白い講師の方はいませんか?」と言います。自治体が開催するセミナー講師と言えば大学教授などアカデミックな分野の講師を求める傾向があって、知識は豊富だが話は硬くなりがちということがあった様です。市民目線で話ができる面白い講師、面白い話がとにかく求められていることがわかって、我々のシニア講師が面白い話ができるようなトレーニングを始めました。社会が笑いを求めているというのか、地域活動の集まりでも笑いというのは評価が高い。シニアは話が長くて同じことを繰り返すことが多い。私はそれを“オイル(老いる)ショック”と呼んでいますが、それを解消するため、「ユーモアスピーチの会」を最初は秋葉原で立ち上げました。現在は首都圏8ヵ所に広がっています。
    笑いに関して言えばいま落語ブームで、小噺とか落語の勉強をしたいという人が増えてきました。記憶力の低下という現実に果敢に挑戦し、15分もの長い落語を丸暗記する高齢者がいます。そんなシニアの落語家の為に、発表の場をとして「シニア社会人落語会」を立ち上げたら、北海道や関西など7都道府県から出演したいと集まってきました。その他には、サラリーマン川柳にちなんでシニアライフの悲哀を575でまとめた「シニア川柳」(しにあ・せん)も主宰しています。
    今、高齢者の引きこもりが課題になっていますが、高齢者を無理やり引っ張り出すと本人のストレスにもなる。そこでやはり笑いが大事ですね。
    登録講師には専業主婦の方もいて、例えば、旦那が認知症になって介護に10年関わった経験談から、「介護を笑い飛ばそう」「介護はこんなに面白いんだよ」と伝えている人もいます。自分の経験は何でもネタに、なんでも笑いにできます。」


    岸:「地域のニュースや地域で開催されるイベントをまとめた「マチトモカレンダー」などの情報を2ヵ月に1回程度発信しています。東中野五丁目小滝町会の近隣は人口が増えているエリアですが、人と人とのつながりが濃いところではありません。私が子どもの頃にはあった昔ながらの人間関係は失われてきています。それでも、人と人とが一緒に何かをするというのは楽しいことなので、ゆるく、フラットにオープンな形で町会活動への参加を呼びかけたい。まちの住民、仲間を「マチトモ」と呼んで、敷居を下げて、さまざまな人の参加ができるようにしていきたいと思っています。
    今のような活発な活動が始まる引き金になったのは、小学校が廃校になってコミュニティが崩れそうになったことでした。学校中心のコミュニティがなくなってしまう時、違う形で引き継げればいいのですが、やはり地域の核がなくなってしまう状態をなんとかしたいという思いがありました。
    中野区では区民活動センターの運営を住民組織に委託していて、東中野五丁目小滝町会も運営委員となっています。この区民活動センターが発信基地のようになって、ここを通じていろいろな情報が流れたりいろいろな活動ができたり、それらが目に見えるようにしていきたいという思いがあります。
    地域のコミュニティに最初に入るためのきっかけづくりに悩む人も多くて、最初の一歩を踏み出してもらうきっかけづくりは、私たちも手探りでやっています。その中でも当たったな!と思ったのは巨大マンションの新住民向けに町内を案内するツアー企画、これは手応えがありました。
    私自身、町会のあり方としてフラットでなければいけないという思いが強くあります。いろいろなことが言い合える状態でないといけないし、休みたいときは休めるようになっていないといけない。その指針を運営の中心にいる人がしっかり持っていたいと思います。そうでないと、町会活動に気軽に入ってこれない。地域活動は「ちょっと関わってもらえたらいいですよ」と言えないといけないと思います。一人ひとりが頑張って力尽きて終わるのはよくないし、どうやって偏りを避けられるかが大事だと思っています。」

    -ライフシフトにおける“プロボノ”の役割

    続いて、昨年東京ホームタウンプロジェクトを通じて、本業を持ちながら「プロボノ」として地域に関わるライフシフトを実践された尾関さんと岩木さんのストーリーへ。
    尾関さんの仕事現場は「地域包括支援センター」。家族に介護が必要となったときや、高齢者の健康に関する悩みがあるときなどの相談窓口として都内に約450ヶ所設置されています。福祉とビジネス、全くバックグランドが異なるお二人がなぜプロボノに参加してみようと思ったのか、また、具体的に参加したプロジェクトで関わった団体や、プロボノ活動の内容について聞きました。

    (昨年2018年度のプロボノ活動中の様子)

    尾関:「超高齢化が進むなか、地域支援の施策の一つとして「生活支援体制整備事業」という、地域住民を集めて自分たちでできることは自分たちでやる、できないことは国の仕組みに意見として上げる、ということを始めています。
    東京に来て、町会がない地域ががあることに最初は驚きでした。東京で暮らす人はしがらみがきらいで、表札もない人がいるということもある。一方で、つながりたいと思う人もいっぱいいることも分かってきました。
    地域には歴史があって、地域に住んでいる人たちの思いもあるわけです。地主さんがいて50年住んでいても新参者と言われるぐらい断絶しているところもありますが、一緒に何かしたいと思っている人もいる。そういうことを共有する場を作ったりすることが、今私がいる地域包括支援センターの役割なのだなと思います。先ほど、学校コミュニティが崩れたのが地域活動活性の背景にあったというお話もありましたが、子どものころから地域づくりに関わってもらったり、世代を超えて地域でつながることが大切だと思います。

    プロボノ参加の理由は、「自分自身が60代になった事、住民主体の地域づくりを推進する生活支援コーディネーターとして、どのように地域住民と接点を作っていくか?そのヒントを得たいと思ったからです。他コーディネーターと一緒に参加して、自分の区の仕組みづくりを考える参考にしたいと思っていました。プロジェクトで関わった団体は、「プラチナ美容塾」という高齢者を対象に、メイク・美容のテクニックを伝える講座や、メイクの面白さを知ってもらうためのイベント・セミナーなどを開催し、高齢者を元気にする活動に取り組まれている団体さんでした。パワフルな人たちで、楽しさ、目的などを共有して進めていく、その進行の仕方に独自性があり学ばせてもらいました。参加者の中には、地域に興味がなかったけれど、つながり作りのために、同じマンションの人に思わず声をかけた人がいたりしました。いまでもチームのメーリングリストは残っていて、企業の中でプロボノのクラブを作ろうとしているという話もあって、プロボノの楽しさを実感させてもらいました。」

    参考)尾関さんのプロボノプロジェクトの支援先 
    認定NPO法人プラチナ美容塾の記事はこちら
    第2回 スタディツアー 11月23日(祝)開催の訪問先でもあります。詳細はスタディツアーの案内ページをご覧ください。

    もう1人のプロボノ経験者の岩木さんは、ご自身がライフテーマと決めた「社会貢献(地域福祉)」に合致した団体とのプロジェクトを力強く語ります。

    岩木:「毎年春に、新しいプロボノプロジェクトを紹介する発表会(*3)があるのですが、地域福祉に関わる団体があるということで手を挙げたのが最初です。ドリームタウンという高島平のマンモス団地の一角でこども食堂をはじめとした居場所づくり、コミュニティカフェの運営を行なっている団体のプロジェクトに関わりました。もっとも衝撃を受けたのは、地域コミュニティというのは非常にゆるい組織であるということです。カフェ自体、人が自由に出入りして、いつの間にか人が来ていつの間にか人が帰っている。そういうゆるさが、地域コミュニティを継続させていくポイントだと学びました。通常のプロボノ活動では、団体に役立つ具体的な成果物を提供するのですが、私が参加したプロジェクトは、団体の運営の成功例を抽出して冊子としてまとめることがゴールでした。色々とお話を伺う中で、代表をはじめ、中心的な立場の人も誰かが強いリーダーシップをもって引っ張るということではなく、皆さんが、フラットな関係で活動に参加しているといった特徴が見えてきました。企業人なので、どうしてこんなゆるやかな組織で運営が回るのだろう、と思ってしまうのですが、それが地域コミュニティの秘訣だと学びました。
    また、決して成功体験ばかりではなく、ボランティア同士の人間関係とか複雑な問題もいろいろあるわけです。“社会的包摂”といってみんなを受け入れる社会を作ろうということも言われていますが、それはそんな簡単なものじゃない、と代表の方がおっしゃっていたことは私の胸に刺さっています。」

    *3 新プロジェクト発表会・・・東京ホームタウンプロジェクトの事務局が担うNPO法人サービスグラント が主催する年に一度のプロジェクトの紹介とメンバー募集を行うためのイベントのこと。

    参考)岩木さんのプロボノプロジェクトの情報はこちら
    地域リビング プラスワン “誰でも受け入れる”から生まれる日常をシェアする居場所 

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

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