2022年5月25日、「多様な主体とともに取り組む課題解決とは -東京ホームタウンプロジェクト“新”活用法-」と題して、オンラインによる全体研修を実施しました。
東京ホームタウンプロジェクトでは、主に「プロボノ」というボランティアスタイルを通じ、企業人等の経験やスキルを活かした支援による地域課題解決に取り組んできました。
本年度より、個別団体への支援にとどまらず、各地域にプロボノという住民協働による支援を根づかせるべく、中間支援機関へのサポートの強化と新たな担い手との連携に向けた、ノウハウや事例の共有を行いました。
以下、当日のトークの内容をダイジェストでご紹介します。
東京ホームタウンプロジェクトが2019年度に制作した「東京ホームタウン大学の教科書」には、2015年度より年度末に実施してきた総括イベントの基調講演をシリーズで掲載しています。「今の時代に必要なもの」や多様な主体との協働のヒントが凝縮されていますので、今日はこちらを参照しながらお話ししたいと思います。
東京の抱える大きなテーマとして、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年問題があります。孤立者や高齢者が増える中で、どのように地域をデザインしていくのかを考えることはとても大切です。
国際医療福祉大学大学院教授(当時)の堀田聡子さんは2015年度の講演の時から、「複数の病気や障害と付き合い、介護や医療等のサービスを使いながら自宅や地域で暮らす方々が増え、その時間も長くなる」とおっしゃっていました。まさに、2015年より始まった生活支援体制整備事業は、「納得して」生きる方を増やすために、地域がどう準備していくのかをテーマにしています。
人とのつながりという面では、立命館大学特別招聘教授、東京大学名誉教授の上野千鶴子さんが「『地域』って嫌い」とおっしゃっています。「東京の人はつながりを深くしすぎない傾向にある」ということですが、ご近所だからつながらなければならないではなく、何かテーマをきっかけにつながりができていく「選択縁」の考え方。東京ホームタウンプロジェクトがさまざまな地域活動を応援しているのは、つながりができるきっかけづくりを促進するためです。
地域問題に取り組むのは、住民だけではありません。企業や自治体、NPO、家族などさまざまな強みを持った人たちがいます。日本マイクロソフト株式会社会長室業務執行役員(当時)の牧野益巳さんは、企業と高齢化社会とのかかわりについて、「大企業になるほど地域課題との距離感がある」との課題感を挙げられました。
プロボノの存在は、ビジネスパーソンが地域とつながる接点。ですから、中間支援機関のみなさんには、地域に関わりたい人の感覚を肌で知る機会として、また、コミュニケーションの幅を広げるうえでの学びの機会として、ぜひ東京ホームタウンプロジェクトを活用いただきたいと思います。
しかしながら、多様な人と接点を持てる地域共生社会のあるべき姿を考え、伝えていくうえで、「正しさ」から入ると、直感的に「難しい」という抵抗感を呼び起こします。Studio-L代表の山崎亮さんの2017年度の講演は「人を引き込むのは正しさより楽しさ」というお話でした。「楽しい・おもしろい」地域づくりを行っていきたいですね。
また、フレイル予防研究の第一人者である東京大学高齢社会総合研究機構教授/医師/医学博士の飯島勝矢先生は、2018年度の講演で、健康増進のために一人で運動している人よりも、文化的活動や地域活動をしているほうが認知症リスクが低くなるというデータを紹介され、地域と関わることの意味をお話しいただきました。
生活支援体制整備事業や生活支援コーディネーターの必要性に立ち帰ってみると、現状課題を解決していくことも大事ですが、これからの地域をデザインしていくには、さまざまな視点を持った多様な人との関わりが必要になります。
堀田さんは「共有された理念のもとで、それぞれの役割が柔軟にシフト・分担されていくことは、NPOや地域活動団体の強みのひとつ」とおっしゃっていますが、理念の共有をするうえでも、第三者=“よそ者”の力が役に立ちます。例えば、地域の体操の会が、プロボノ参加者のビジネスパーソンから「これはなんのためにやっているのですか?」と、活動の根本にある思いや目的を問われることがあります。そうした“よそ者”からの問いかけに一つ一つ答えていくことが、自分たちでは気づかない視点から地域を見直せる機会になる。実はここがプロボノの価値です。
東京ホームタウンプロジェクトはこの仕掛けづくりに力を入れてきました。東京の強みである、活発な企業活動や多様な人材の経験・スキルを活かした豊富なプロボノ支援事例があります。750人ものプロボノワーカーと協働し蓄積してきた知見やノウハウは有効活用したいもの。
第1層、第2層、地域団体がバラバラに取り組むのでなく、解決策を共有することで面展開ができます。地域の総合力を高めることを目指したいです。
プログラム紹介