レポート:第1回ケース勉強会「課題解決の意外な手法 -第三者の視点による新たな気づき-」
レポート:第1回ケース勉強会「課題解決の意外な手法 -第三者の視点による新たな気づき-」
地域包括ケアの構築に必要不可欠な「多様な主体との協働」について、東京ホームタウンプロジェクトにおいて地域課題の解決や、地域活動の活性化に結び付いた実例からヒントを学び、参加者同士での共有を行う「ケース勉強会」。
2022年7月27日に実施した第1回は、地域団体支援において優先すべき課題のとらえ方と、その解決策の洗い出し・絞り込みについて、第三者的視点の重要性を軸に考えていきました。
本レポートでは、その内容の一部を抜粋してお伝えします。
プログラム
・第1部 生活支援コーディネーターの業務とプロボノ
・第2部 課題のとらえ方
・第3部 解決策の洗い出しと絞り込み
・第4部 プロボノワーカーの横顔
第2部 課題のとらえ方
~第三者の視点を活用した課題の整理~
第三者の視点が入ることで、目に見えていた課題の前に優先すべき課題が見つかった事例
ゲスト:武蔵野市民社会福祉協議会 佐々木 湖都さん
聞き手:認定NPO法人 サービスグラント 代表理事 嵯峨生馬
概要
佐々木さんは武蔵野市内にある地域社協の1つである「中央福祉の会」への団体支援に関わって4年目。2020年度はプロボノ支援に伴走されました。ほかにも4地域を支援されています。
プロボノ支援への応募当初、団体からは創立20周年のパンフレット制作を希望されていましたが、事務局のヒアリングのなかで課題を整理してみると、「住民のニーズを知ること」の方が優先度が高いことがわかり、プロボノ支援では大規模な住民アンケートによるマーケティング基礎調査を実施しました。
※プロボノ=ビジネススキルや経験を活かしたボランティア活動
ゲストトーク
応募時の「中央福祉の会」さんの課題や背景についてお聞かせください。
佐々木さん:運営委員の高齢化、担い手が減っているという課題がありました。私が、別の地域でのプロボノ支援による活動紹介用リーフレットを作成した事例をお伝えすると、「中央福祉の会でも作りたい」ということになり、応募しました。10年前に作成したパンフレットがありましたが、内容も古くなっておりデザインも刷新したかったそうです。また、コロナ禍で活動が制限される中、何かできることに取り組みたいという声もありました。
事務局の「パンフレットを作る前に、住民のニーズを把握しては?」という提案に、「中央福祉の会」のみなさんからはどのような反応がありましたか?
佐々木さん:予定外のことで少し驚いていましたが、実際にプロジェクトに関わった運営委員の方を中心に、「やっぱり必要だね」と納得された様子でした。
「意外な解決策」になったのですね。どこに納得感があったのでしょう?
佐々木さん:「そもそもニーズがあって始まった活動なのに、いつのまにか慣例化してしまっていたね」と気づかされたようでした。自分たちの活動意義に立ち帰り「これからどうしていきたい?」「なんのためだっけ?」と考える機会になりました。
“よそ者”の特権であらためて目指す理想を問われたことが、気づきになったようですね。アンケート調査結果を受け取られての反応はいかがでしたか?
佐々木さん:「実施してよかった」という声しか出てこなかったですね。必要だとわかった上でも、ノウハウもない中で自分たちだけで調査をするのは難しかったと思います。プロボノチームがいたからできたと、誰かと一緒に取り組む安心感があったようでした。
アンケート調査は、どのような影響をもたらしましたか?
佐々木さん:活動のモチベーションにつながりました。アンケートから、「住民はつながりを求めている」という結果が出たのです。コロナ禍で普段の地域活動やサロン活動などは不要不急ではないか、自分たちの活動は必要とされているのだろうか、と悩みモチベーションが下がり気味だったのですが、データによって必要性が明確になりました。
また「情報をどこで得ているか?」という問いには、SNSの有効性が顕著に出ました。この結果から、今まで尻込みしていたTwitterを始め、今では、イベントやサロン活動の時には自分たちで発信されています。
ニーズが見えないと、先行きが分からないものです。目的が明確になることで活動の焦点が絞られますね。
佐々木さん:SNS活用については、以前から話題にのぼっていたのですが、自分たちのエリアで求められているという結果が出たことは、強く影響を与えたようでした。
その後、20周年のパンフレットはご自分たちで作られたのでしょうか?調査内容は反映されていますか?
佐々木さん:はい、アンケート結果で得られたキーワードや、プロボノチームがまとめてくれた「中央福祉の会」の位置づけが可視化された他団体・機関との関係図も取り入れて、自分たちの手で作りました。具体的な成果物として調査結果を得られたので、それを起点にさまざまに活動が広がりました。これは大きな成果だと思います。
佐々木さんご自身にとって、プロボノ支援に伴走された経験が、中央福祉の会以外のお仕事につながっている点はありますか?
佐々木さん:調査結果から、全年代で防災への関心が高いことが分かったため、活動に悩む他地域に対して、防災に関する活動だと若い世代も参加しやすいのでは?と声かけができました。根拠があるので説得力が増しますね。
他地域の活動にも、良い効果が広がっていったのですね。ありがとうございました。
解説編 優先すべき課題の見つけ方
優先すべき課題を見極めるためには、必ずしも団体さんからの要望のままに、顕在化している課題のみに目を向けるのではなく、団体さんに「どのような地域づくりを目指しているのか」を問いかけることが重要です。
目指したい地域づくりの理想像を意識すると、現状と理想像の間にある「優先すべき課題」が見えてきます。
参考までに、優先すべき課題を導き出す質問の流れを挙げておきます。
さらに、「多様な主体の参加」による課題解決を考える場合、課題整理の手順としては、
①活動の中長期的目標を聞く
②課題を出してみる
③目標と照らし合わせて、重要度×自分たちで解決できるかどうかに分類する
そのうえで、どの課題に優先的に着手するとよいかを決めていきます。
まとめ
「優先すべき課題」が見えてきます
課題の深掘りは、生活支援コーディネーターのみなさんが日頃からされている「ニーズの深掘り」に通じるところがあるのではないでしょうか。根っこのニーズをとらえることで本質的な解決につながります。
第3部 解決策の洗い出しと絞り込み
~第三者の視点から得られる意外な解決案~
「解決策」とは
解決策は、「目指したい地域づくりの理想像」と「現状」とのギャップをなくすものです。
課題と解決策は一対でなく、一つの課題に対して解決策は複数あります。「これしかない」と思っていた解決策よりもっと身近に、糸口が見つかることもあります。
重要なポイントは、出てくる解決策に対して「できる」「できない」を考える前に、考えられる解決策を出し切ることです。
では実際、解決策を実行に移すためにどうすればよいのか?
そこで活用したいのが、専門スキルや課題整理の経験を持つ“よそ者の力”です。第三者の力を活用することで、採れる解決策はぐっと広がります。
グループワーク 解決策を考えてみよう
実例をもとに、課題に対して解決策を考えていくグループワークを行いました。
「地域の居場所の立ち上げ」というテーマから、課題を挙げ、解決策として考えられる案をグループで共有しました。
解説編
“よそ者力”への期待として、専門スキルの提供に目が向きがちですが、さまざまな社会経験から、現実的な解決策を見つけ出したり、第三者視点でビジョン・ミッション・課題を整理するという点でも、大いに力を発揮することができます。
まとめ
成果・変化の大きそうな解決策を
「最初の一歩」にします
さまざまな視点から、できる・できないにかかわらず、たくさんの選択肢をまず出してみたうえで、成果・変化の大きそうな解決策を「最初の一歩」にします。その際、”よそ者の力”を活用することで、採れる選択肢はぐっと広がります。