• サイトマップ
  • 都庁総合トップ
    • 大きいサイズ
    • 標準のサイズ
    • 小さいサイズ

    レポート:第3回「課題解決のステップの作り方 -今年度実施事例の振り返りとともに-」

    地域包括ケアの構築に必要不可欠な「多様な主体との協働」について、地域課題の解決や、地域活動の活性化に結び付いた実例からヒントを学び、参加者同士での共有を行う「ケース勉強会」。第3回は、目指す地域像の実現にむけた地域住民への活動の認知、またゴールとなる理想の姿への歩みの進め方など、プロボノプロジェクトの事例を通じて考えました。
    本レポートでは、その内容の一部「事例紹介」パートについて抜粋してお伝えします。

    プログラム
    ・開会挨拶・はじめに(ケース勉強会とは・プロボノとは)
    ・今年度プロボノプロジェクト実施報告・紹介
    ・事例紹介(ゲストトーク・グループワーク)
    課題解決事例集「事例に学ぶ(インタビュー)」のご紹介
    ・オンラインプラットフォーム「地域参加のトビラ」のご案内

     

    事例紹介 ゲストトーク・グループワーク

    課題解決のステップの作り方 -第2層協議体のチラシ制作プロジェクト-
    ゲスト:東大和市高齢者ほっと支援センターしみず 第2層生活支援コーディネーター 岡島明日香さん
    伴走されたプロボノプロジェクト:2023年度「さやま・しみず楽しみたい」
     

    プロジェクト時の様子
    団体の皆さんとプロボノチームの皆さん

     

    活動内容とプロジェクトの背景

    ―― 自己紹介と、「さやま・しみず楽しみたい」の日頃の活動を教えてください。

    岡島さん:東大和市の高齢者ほっと支援センターしみずの岡島と申します。2022年10月に設立したばかりの地域包括支援センターで、団体とはまだ1年少しの付き合いになります。
    「さやま・しみず楽しみたい」は『こどもからおとなまで思いやり・ささえあいでつながる地域』を目指す第2層協議体です。平成31年に発足し、構成メンバーは民生委員、自治会会長、介護予防リーダー、デイサービスの職員、地域で体操している方や、普段から地域活動をされている方々がいます。
    現在のメインの活動としては、東大和元気ゆうゆう体操(介護予防普及啓発事業の体操)の運営があります。地域の狭山神社内にて毎週20名前後の方々が参加しています。一方で、コロナ5類移行を受け、さらに活動内容を充実すべく、さまざまな企画を検討していました。地元を知るための街歩きイベントなども進行中です。今回は、活動を広げていきたい想いの中で、地域の方々に何を目指して活動しているかを知ってもらうため、チラシを配布したいという声が挙がりました。

    ―― 今回のプロボノプロジェクトでの支援内容を教えてください。

    岡島さん:支援内容は、「活動紹介チラシの作成」です。ゆうゆう体操に参加している高齢者層と、さらには子どもやその親世代にも伝わりやすいチラシづくりを目指し、活用法を考えていこうという提案プロジェクトです。

    ―― 応募時にはどのような背景がありましたか?

    岡島さん:協議体は、発足当初から「地域の人が集まれる場をつくりたい」と、美味しいお茶を淹れるためにお茶屋さんに勉強しに行ったり、地域を知るために街歩きイベントなどを開催していました。コロナ禍になりイベントを実施できなくなると、自分たちは何のために存在しているのかが見えなくなったようです。それでもつながり合える場を、ということで、ゆうゆう体操の開催会場を新規で立ち上げることができました。私が協議体と出会ったのは、少し自信が持て、モチベーションが上がってきたという時でした。
    協議体の目指す地域像には、子どもたちともつながっていく姿があります。春休み期間に、ゆうゆう体操に遊びに来てもらうよう地域の小学校に告知をしたのですが、参加者がありませんでした。話し合い、自分たちのことをまず知ってもらう必要があると、チラシ制作に踏み切ったのです。私は支援を通じて、協議体全体の士気を高めていきたいという想いもありました。

    ―― プロジェクトは大きく2つのフェーズに分かれます。前半は、団体への「ヒアリング会」によって、チラシの目的や必要な要素を話し合っていくフェーズ。そして後半は、成果物を作成後、効果的な活用法を提案していく「提案会」です。

    ここからは、プロジェクトの時系列に沿って、実際の様子をご紹介していきます。

    ■ヒアリング会

    ―― ヒアリング会では、プロボノチームがニーズをヒアリングし、チラシを作成する目的や必要な要素を話し合いました。この時点での目的は、ゆうゆう体操の参加者を増やしたい、また子どもたちを巻き込んでいくことでした。配布対象は、ゆうゆう体操の参加者と、体操を軸に対象を広めていくということでした。岡島さんからご覧になって、ヒアリング会はどのような印象でしたか?

    岡島さん:「わあ!なんだか楽しそう!」という印象でした。目指す地域像に合わせて、子育て世代のプロボノチームを紹介いただきました。ポイントを根気強く丁寧に聞いていただき、整理してくださりました。その場でホワイトボードにまとめてくださったことによって、協議体の由来や経過、目指したいビジョンを可視化することができました。自分たちの目指したいものが明確になった印象でした。

    ■提案会(第一回)

    ―― ヒアリング会から2週間後に提案会を実施しました。その時の様子はいかがでしょうか。

    岡島さん:提案会では、プロボノチームが作成した仮案をもとに最終調整と活用方法の確認をするはずでした。しかし、チラシが形になったことで、メンバーから「何かが違う。私たちがやりたいのはこういう活動だけだった?」という疑問が生まれます。話し合いをするうちに、「本当にやりたいのは居場所づくりだった!」「ここに来たら誰かと会えるような、ふらっと立ち寄れる場所を作りたい」。そんな想いを持っていたことにあらためて気が付いたのです。結果、伝える内容をもう一度検討しなおすことになりました。

    ―― この時は、岡島さんはご欠席されていたそうですね。

    岡島さん:はい、この場には居合わせていないのですが、次々にメンバーから興奮気味な報告が届いたのです。その後、プロボノチームからも議事禄をいただいて、納得しました。私個人としても、最初のヒアリング会よりもむしろワクワクしたことを覚えています。
    この日を境に、協議体のグループLINEのやり取りが活発になりました。メンバー一人ひとりが、活動を自分ごとに捉えているのを感じたのです。特に「名ばかりの代表だから」と一歩引いていた代表が、リーダーシップを発揮しはじめ、率先して調整をしてくれたり、意見を取りまとめてくれたりしてくださるように。私は協議体に伴走するというよりも、メンバーに言われたとおりに従って動く役目に徹しました。

    ■提案会(第二回)

    ―― 2回目の提案会は、プロボノチームが再び成果物を作成して訪れ、表現や見え方を調整して納品に至りました。同時に設置場所や連絡・受付手段についての提案もあったということです。最終版となったチラシを手にされた時の感想や反応はいかがでしたか?

    岡島さん:文章の一つひとつにメンバーの気持ちがグッと詰まっていて、あたたかい雰囲気や緑豊かな地域が表現されてありがたく感じ、こみ上げる涙をこらえました。作成過程では、プロボノチームに良い刺激を受けたことで、よりよいチラシにしていきたい思いが強くなり、再検討をお願いするかたちでご迷惑をかけましたが、結果的にとても充実しました。
    メンバーも、想いをカタチにしていただいて自信になったようです。代表が「迷走していろんなことがあったけど、仲間とプロボノチームの力で、こんなステキなチラシになった。これからも頑張っていきたい」と積極的に感想を伝えてくれたのがとても印象でした。チラシづくりを通じて、より一層団結力が強まったと思います。

    成果物の三つ折りパンフレット(表面)
    成果物の三つ折りパンフレット(中面)

     

    ―― さらなる活動へのエネルギーが感じられたのですね。

    岡島さん:チラシ制作を通じて、次の課題も見えてきました。例えばチラシを手に取った人が、電話か現地でしか問い合わせができないのは不便ということも見えてきたので、今後はメールやオンラインツールの導入も検討する必要があることもプロボノチームにご指摘いただき、またメンバー間で考えていきたいと思っています。

     

    ―― 今回の事例は、地域づくりの歩み方を象徴していると感じています。2023年3月に実施した、東京ホームタウンプロジェクトの昨年度の総括イベントで東京都立大学の室田先生から、地域づくりにおける目標設定を山登りに例えたお話がありました。理想の地域像に到達するには、山登り同様、一足飛びでは行けるわけではなく、「まずは〇合目まで」と中間目標に向かいながら、一つひとつ登っていく必要があるというお話です。

    東京ホームタウン大学2023 基調講義  東京都立大学 人文社会学部人間社会学科 准教授 室田 信一氏 「地域づくりの将来像を共有するために〜目標を言語化する方法」投影資料より「目標の設定」のイメージ図

     

    「さやま・しみず楽しみたい」の場合は目指す地域像が明確にある中で、その手前には、ふらっと立ち寄れる場所ができることが中間目標としてあり、さらにその手前には、今回のチラシづくりやオンラインツールでの連絡手段などがあると思います。そして、一つひとつの中間目標に対し、例えばチラシはだれに何を、どこでどう伝えるのかといった課題整理を行い、一つずつ解決していくことで、一歩ずつ前進していくステップが見られる事例です。

    さやま・しみず楽しみたいの場合の「目標の設定」のイメージ図

    グループワーク

    「成果物をどう活用しますか?」
    プロボノプロジェクトが完了し、成果物が納品されました。
    成果物:団体の目的・思い・メンバーをまとめた名刺代わりになるチラシ
    成果提案時の声:
    ・今まで新しい企画やイベントを紹介するにも「さやま・しみず楽しみたいって?」がネックになっていたところ、このチラシとセットで団体紹介や意義が伝えやすくなります!
    ・体操の参加者に配るほか、親子連れが行くような場所にも設置したい!

    これらをふまえ、あなたなら成果物をどう活用しますか?
    次のステップの案もOKとし、グループでアイデアや各地域での事例を共有し合いました。

    ワークのシェア

    ・公共機関だけでなく、スーパーなど民間にも協力いただいて配布することや、イベント企画してみるのはどうか。
    ・QRコードやWEBサイトの情報を載せていきたい。高齢者の方には使い方をご説明して。紙とインターネットの両輪がよいのでは。他地域での、都営住宅への配布と回覧板によって利用者増えたとの事例が出た。人が集まるお祭りや展示会に配布する案も。
    ・LINEなどのオンラインツールを使うと、デジタルに強い若い方からアプローチできる可能性。町会さんなどは、行事を催していたりHPを整備されていることが多いので協力してもらうことも有効では。

     

    ―― 参加者のみなさんの声を聞いて、岡島さんの中で新たな発見はありましたか?

    岡島さん:紙とオンラインは、考えなければと思います。子どもたちと繋がっていくには、デジタルの勉強をしていくことも活動につながるかもしれないですね。東大和市では、デジタルの使い方勉強会が開催されているので、連携できるかもしれません。

    プロジェクト後の動き

    ―― プロボノプロジェクト後の活動や変化を教えてください。

    岡島さん:さっそく、モニュメントめぐりというイベントの中で、参加された方に手渡ししました。
    またご提案いただいた活用方法について、話し合いをし、公的施設やスーパー、コンビニに設置してもらうことでまとまっています。
    とにかく、全体の士気が高まっています。プロジェクトの中で気づいた、協議体が最も手掛けたかったことは「ふらっと立ち寄れる場所」を作ることでした。以前より、ゆうゆう体操に参加している方達から、体操後にもおしゃべりがしたいという話が出ていたため、まず体操に参加している方達を対象に立ち上げようということになりました。協議体メンバーが、ゆうゆう体操を開催している神社の責任総代に社務所を使用させてもらいたいと相談したところ、無料で使用させていただけることになり、来月プレオープンすることになりました。協議体メンバー全員やる気に満ち溢れているので、仕事が早いのです。※
    今後に向けて、いろいろな動きが進んでいます。第2層の交流会で配布するなど計画しています。他の自治会のチラシも参考にし、よりよいチラシにするためのヒントにしようという声もあります。また東京ホームタウン大学のテーマ別分科会で、メンバーとともに登壇することが決まるなど、どんどん動きがあります。
    ※後日談:2024年1月18日に、居場所のプレオープンが実現されたそうです!

    ―― 居場所の開催まで決まったのですね! チラシから急速に活動が広がっていることに驚きました。プロボノと協働してよかったことはどのようなことですか?

    岡島さん:生活支援コーディネーターとしてよかったことは、応募時に考えていた団体の士気を高めていく課題が解決できたことです。
    協議体としてよかったことは、チラシづくり以外にも、活用方法や情報共有についての新たな課題をいただいたこと、そして、気持ちの面での支援にもつながったことがとても大きかったと思います。今、メンバーがもともと持っていた力をそれぞれに発揮していて、目をキラキラさせて活動しているのです!
    プロボノ支援の目的のとおり、運営基盤の強化をしていただけました。メンバーが悩んだ時に立ち戻れる場所として、ぶれない太い芯ができたように思います。当初は気軽な気持ちで持ちかけましたが、得られた結果は本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。

    ―― 事務局が実施したプロジェクト準備時のヒアリングでもパワフルな印象を感じましたが、さらなるエネルギーを感じます。これは活動が言語化され、迷いが吹っ切れたことが大きいのでしょうか?

    岡島さん:今までは、自分たちの活動を説明していくときに、それぞれの解釈や捉え方で話していましたが、10人全員が、同じ気持ちで伝えることができます。より伝わりやすくなったと思います。

    ―― 想い溢れる共有をいただき、ありがとうございました。

    岡島さん:こちらこそ本当にありがとうございました。楽しかったです!

    ページトップへ戻る
    Copyright © 2015-2024 Bureau of Social Welfare, Tokyo Metropolitan Government. All Rights Reserved.