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    事例に学ぶ

    経験やスキルを活かしたボランティア活動=“プロボノ”との協働による
    団体の運営課題解決の事例から、協働のポイントや、支援後に生まれた変化等をご紹介します。

    認知・理解を広げる
    地域内の連携強化

    高齢化するまちで、住民同士の困りごと支援の輪を広げるため、
    活動の立ち上げをサポートする手引きを制作

    日野市高齢福祉課
    地域
    東京都日野市
    プロボノ支援内容
    活動運営マニュアル
    支援時期
    2021年度
    活動カテゴリ
    身の回り支援、移動支援
    この事例のポイント
    抱えていた課題

    住民主体による高齢者の生活支援サービス「訪問型サービスB」を始動するにあたり、活動を立ち上げようとしている住民を行政、社会福祉協議会としてサポートするために、わかりやすい手引きが必要だった。

    プロボノ支援の内容・目的

    「訪問型サービスB」の団体立ち上げに役立つ情報を集め、「一問一答集(仮称)」を制作。その掲載内容を検討するため、ワークショップを開催。

    成果

    活動を立ち上げた住民団体、活動をサポートする生活支援コーディネーターからの生の声を反映し、事業の概要から、立ち上げのプロセス、補助金制度までを網羅した「スタートガイド」が完成。印刷した500部の冊子は、地域包括支援センターを中心に必要な人たちに配布され、近日中に増刷を予定。

    プロボノ支援のまえ、あと、これから

    まえ
    コロナ禍のさなかに決まった、住民主体による生活支援の始動

    都心から西へ35キロほどのところに位置する日野市。北部には多摩川、中央には浅川が流れ、浅川の南側には、緑豊かで起伏に富む丘陵地が広がります。かつては、二つの河川から引かれた農業用水が網の目のように流れる穀倉地帯でしたが、戦後、企業の進出とそれに伴う人口流入、宅地造成が急速に進み、住宅都市へと変貌しました。

    現在の人口は約18万人で、依然、微増を続けています。しかし、戦後の人口急増期から暮らす住民が高齢化する一方、生産年齢人口、特に若年寄りの15〜39歳は減少し続けているのが実情です。今後、2025(令和7)〜2030(令和12)年の間に人口転換期を迎え、継続的な人口減少が始まると推測されています(「令和4年度 日野市人口ビジョン」より)。また、日野市における高齢化率は、区域により大きく異なるという特徴があります。とりわけ、南側の丘陵地を中心に、1970年代前後に開発された団地を抱える区域の高齢化率は極めて高く、高齢者のみの世帯や、高齢者独居世帯の孤立が懸念されています。

    進行する少子高齢化への対策として、日野市では、2004(平成16)年に「日野市高齢者見守り支援ネットワーク事業」を始動。孤立しがちな高齢者を地域で見守り、支援する体制の整備を進めてきました。2008(平成20)年にスタートした「ちょこっと困りごとサービス」も、その具体的な取り組みのひとつ。高齢者世帯の日常生活に生じるちょっとした困りごと(照明器具の購入・交換、家電や建具の点検・修理、重量物の移動など)に対し、協力員(登録ボランティア)が赴き、専門技術を必要としない範囲で支援してきました。その際、協力員には、訪問先の高齢者に異変がないか、気にかけてもらうようにもしていたそうです。

    ところが、新型コロナウイルス感染症パンデミックのさなかの2020(令和2)年10月、「ちょこっと困りごとサービス」が廃止されることに。サービスの内容が限られていたこと、協力員が少ないことに加え、緊急事態宣言の影響により利用実績が落ち込んだことが理由でしたが、住民からは、必要性を訴える声も上がったといいます。

    同サービス廃止後の市の方針は、介護保険法における「介護予防・日常生活支援総合事業」のなかで、地域の多様な住民が主体となる生活支援サービス「訪問型サービスB」を創出するというものでした。2年後の2022(令和4)年に10の活動団体を立ち上げることを目標とし、その活動に対する補助金の交付を決めたのです。

    コロナ禍に見舞われた2020(令和2)年、市では、高齢者の健康な生活の維持を目的として、「高齢者『地域でささえる・つながる』プロジェクト補助金」を創設。「オンライン」、「趣味活動」、「健康促進」、「その他」の四つのテーマで活動する団体に対し、補助金の交付をおこないました。2年目となる2021(令和3)年度には、ここに五つ目のテーマとして「生活支援・見守り」を追加。翌2022(令和4)年度以降、同テーマで活動する団体を、前述の「訪問型サービスB」に移行する方針も決定しました。

    「東京ホームタウンプロジェクト」のプロボノチームが、日野市のこの事業を支援することになったのは2021(令和3)年秋。「訪問型サービスB」の始動を翌年に控えた時期のことでした。

    あと
     活動する住民の生の声が、手引きとして活かされた

    住民主体による生活支援サービス「訪問型サービスB」は、生活支援体制整備事業の第1層生活支援コーディネーター(市全域対象)として市から委託を受けた日野市社会福祉協議会(以下、日野市社協)が全体を把握し、市内9ヵ所の地域包括支援センターに所属する第2層生活支援コーディネーター(日常生活圏域対象)が、住民をサポートする体制で実施されることに。当時、市や日野市社協は、活動の立ち上げを進める住民をサポートするためにも、新たな活動の創出を地域に呼びかけるためにも、このサービスの意義や内容、工程を共有できる手引きのようなものを必要としていました。

    そこでプロボノチームは、活動の立ち上げに役立つ情報をまとめた「一問一答集」(仮称)を制作することに。その中身を検討するべく、当事者(すでに活動を立ち上げていた四つの住民団体と、活動をサポートする生活支援コーディネーター)から聞き取りを行うためのワークショップを開催しました。

    ーーーーーーーーーーー

    ワークショップ概要

    ◯グループディスカッション
     テーマ① 団体発足・活動参加のきっかけ。これまでの活動でうれしかったこと
     テーマ② これまでの活動で大変だったこと。これからの活動で不安なこと
    ◯生活支援コーディネーターとの意見交換

    <得られた回答(抜粋)>
    団体発足・活動参加のきっかけ
     ・地域貢献
     ・課題解決(買いもの難民化の克服、コロナ禍と高齢者の問題など) 他

    うれしかったこと
     ・喜び・感謝 (ボランティア実践後にありがとう!の一言など)
     ・課題解決(地域の活性化、独居の方の居場所づくりなど) 他

    大変だったこと、不安なこと
     ・活動内容(地域ニーズの把握、団体内の合意形成、拠点づくりなど)
     ・マネー(有償無償の決定、資金調達など) 他

    一問一答集への掲載内容について
    (ワークショップ後のアンケート、及び生活支援コーディネーターとの意見交換から)
     ・協働できる企業、市民の志ある人、団体のリスト
     ・ボランティア協力者の声や意見
     ・よくある失敗例、成功例
     ・補助金の一覧
     ・どうして住民の助け合いが必要になったかや、人口、財源について 他

    ーーーーーーーーーーー

    一問一答集に活かすべき、当事者のリアルな声が多数上がったこのワークショップは、同時に、参加した住民が他の住民団体から学びを得たり、市や日野市社協が、事業を進めるうえでの新たな課題を見出したりする場にも。例えば、住民の活動をサポートする立ち場にある生活支援コーディネーターのなかに、この事業に対する理解が十分にいきわたっていないという実情も、ここで判明した課題のひとつでした。

    プロボノチームは、ここで得た情報を盛り込み、一問一答集の制作プランを検討。提案とフィードバックを繰り返したのち、60ページ超の「スタートガイド」として完成させました。サービスの名称は、地域包括支援センター発案の「ちょこすけ(ちょこっと助っ人)」、プロボノチーム発案の「互近助(ごきんじょ)」を組み合わせ、「互近助サービスちょこすけ」に。 

    「互近助サービスちょこすけ スタートガイド」の表紙(左)と目次(右)。活動開始までのステップから、市の補助制度の概要、申請方法まで、役立つ情報集となっている「互近助サービスちょこすけ スタートガイド」の表紙(左)と目次(右)。活動開始までのステップから、市の補助制度の概要、申請方法まで、役立つ情報集となっている
     
    すごろく形式の「団体立ち上げロードマップ」は、プロボノチームのアイデアで作成されたもので、わかりやすいと好評すごろく形式の「団体立ち上げロードマップ」は、プロボノチームのアイデアで作成されたもので、わかりやすいと好評

     

    活動開始までのそれぞれのステップの説明に、ワークショップで住民から聞き取ったリアルな体験談やアドバイスを書き添えることで、より現場感覚に近い、実用的な情報に活動開始までのそれぞれのステップの説明に、ワークショップで住民から聞き取ったリアルな体験談やアドバイスを書き添えることで、より現場感覚に近い、実用的な情報に

     

    この事業の始動と、プロボノチームとの協働を担当した地下有可里(じげ・ゆかり)さん(日野市健康福祉部高齢福祉課・当時)は、当初はこれほど分厚い冊子になることを想定していなかったそう。「制作をとおして、我々自身もわからない部分を確認し、勉強しながら、事業を形づくっていくことができた」と経緯を振り返ります。

    完成した冊子は、主に市内9ヵ所の地域包括支援センターから必要とする人たちの手に渡ったほか、介護保険事業所や、日野市地域協働課が主催する地域懇談会などでも配布。日野市ホームページ上でもPDFデータを公開し、誰もがアクセス可能な情報提供ツールとして活用されています。冊子制作の目的であった、住民主体による10の生活支援団体の立ち上げも、2022(令和4)年度に無事に達成されています。

    これから
    持続可能な支え合いのシステムを地域で育てるために

    2024(令和6)年3月現在、「互近助サービス ちょこすけ」では、高齢者の生活上の困りごと支援を軸として14の団体が活動しています。市では、さらに20団体までの増加を目指しているものの、事業スタートから約2年を経て、「ただ増やせばよいというわけではない、という課題が見え始めている。内容を重視する必要がある」と語るのは、現在、同事業を担当する蛯子泉吹(えびこ・いぶき)さん(日野市健康福祉部高齢福祉課)。住民主体の活動であるからこそ、できること、できないことの線引きに苦心する団体、地域の既存組織とのコミュニケーションに苦心する団体なども出てきており、今後は、それらの調整を生活支援コーディネーターがいかにサポートするかが課題だといいます。

    同じく現担当を務める高橋秀和(たかはし・ひでかず)さん(日野市健康福祉部高齢福祉課)は、活動の空白地帯が生じていることを課題として挙げます。たとえば市内北部は、三世代同居世帯や、身内が近隣に暮らす住民が比較的多いためか、現在まで活動団体が出てきていないものの、「団体がないということは、本当にニーズがないということなのか。地域の方や、『ちょこすけ』以外のボランティアさんから、草の根的な声を聞き取りたい」と高橋さん。

    日野市社協の職員として、地域福祉の現場に継続的に関わってきた大久保江理(おおくぼ・えり)さんは、「ちょこすけ」が、介護保険法における「介護予防・日常生活支援総合事業」の一サービスであることに改めて触れ、その名のとおり、単体ではなく総合的に考えていく必要があると語ります。「総合事業とは、少子高齢化が進むなかでも、一人ひとりがその人らしい自立した生活をできるよう、持続可能な支え合いのシステムを地域につくりましょう、というものです。古くからここで暮らしてきた人たちの『いろんな人に支えてもらって生きてきた』という思いを、後から入ってきた人たちにもつないでいくこと、白の住民か黒の住民かではなく、グレーになじませていくことが大事」。そのためにも、現役世代の地域への関心をどう喚起し、継続的なものにしていくかが課題だといいます。

    10の団体から始まった、住民から住民への困りごと支援という芽吹きを、ここからどう有機的に広げ、根づかせていくか。止まらない少子高齢化の波のなかで、行政と住民との模索が続いていきます。

    (2024年2月取材)

    団体基本情報
    日野市高齢福祉課
    設立
    代表
    住所
    〒191-0016 東京都日野市神明1-12-1 市役所2階(日野市高齢福祉課)
    URL
    https://www.city.hino.lg.jp/
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