東京まちかど通信
各種イベントでシニアライフに役立つ情報と彩りを提供
シニアが元気に楽しく暮らせる情報を提供すると同時に、提供する側も活動に参加することで生きがいを得られ、しいては墨田区におけるシニアライフの活性化にもつながる。そんな「三方よし」を実現しているのがNPO法人「てーねん・どすこい倶楽部」です。活動内容や活動におけるモチベーションアップの源となっていることなど、ボランティアのみなさんにお話をうかがいました。
代表理事 太田雅子さんにインタビュー
自身がシニアでもシニアのための活動ができます。
――てーねん・どすこい倶楽部発足の経緯をお聞かせください。
2001年から2002年にかけて、墨田区高齢者福祉課の声がけで、退職した人が集まり経験や特技を活かせるような社会参加のきっかけづくりの検討会が開催されました。その結果「てーねん・どすこい倶楽部」の設立が提言され2002年9月に設立、2007年にNPO法人となりました。団体名の由来は、定年を前向きに受け入れて新たな一歩を踏み出すという目的と、「相撲のまち墨田」をイメージしたものです。会員数はもっとも多いときで70名ほどいましたが、コロナの影響などで現在は約40名で活動しています。そのうち男性は12名で、メンバーは70代が中心となっています。
私自身は2004年、墨田区役所で開催されたミニコンサートに行った際、隣に座った方が偶然「てーねん・どすこい倶楽部」で活動されていて、誘われたのがきっかけで入会しました。定年までずっと働いていたのでボランティアには縁がなく、「ボランティアとはどんなことをするのだろう」と見当もつかない状態でのスタートでしたが、気がつけば20年経っていて6年前から代表も務めている次第です。
――活動内容について教えてください。
月に一度、墨田区のシニア向け情報紙「どすこいかわら版」の発行、年に4回セカンドステージセミナーの企画・運営、各種生きがい講座・交流会の開催、そして日本語教育支援が現在のおもな活動です。ほか、ボランティアを希望される方が登録し、ニーズに応じて派遣するシニア人材バンクの運営、各種施設で子育て支援や高齢者の支援活動、行政との協働で各種行事の支援活動、関連団体とのイベント連携や情報交換も行っていましたがコロナで活動が滞ってしまいました。これからまた復活できればと思っています。
多くの会員が関わるセカンドステージセミナーは、シニアの方が第2の人生をどう過ごすか考えたときに役立つような内容をテーマに開催しています。企画して講師を依頼し会場を予約、告知をして当日の運営、セミナー後のアンケート収集と分析など、セミナーを開催するために行うことは多岐にわたります。
――太田さんは代表理事としてどのような業務を担当されているのでしょう。
セミナーの企画・運営のほか、定年までずっと経理の仕事をしていたのでそのスキルを活かし、「てーねん・どすこい倶楽部」でも経理関係を担当しています。私のように現役時代のスキルを活動に役立てている人もいる一方、「活動に参加したいけれどなにも特技がない」と、入会前は不安に思う人もいます。けれど実際に参加すれば、できることがたくさんあること、自分が必要とされていることがわかるはずです。それがモチベーションアップにつながり、会員一人ひとりの長い活動につながっていると思います。
私もセミナーに大勢の方が足を運んでくださるとうれしく思いますし、老人クラブへ慰問に行った際はみなさんが楽しそうに一緒に歌ってくれる姿にこちらが元気をもらいました。現在、この団体の最高齢が私なので、1日も長く元気に楽しく関わって行きたいと思っています。
理事 柳田恭子さんにインタビュー
介護の現場で頑張っている外国人への日本語支援にやりがいを感じます。
――てーねん・どすこい倶楽部の活動のひとつ、日本語教育支援について教えてください。
外国人介護事業者が職場で必要な日本語力の向上を地域全体で支援することを目的に、2008年7月、文化庁の支援を受けて「すみだ日本語教育支援の会」が発足しました。
高齢者の増加に伴い介護者のニーズは増す一方です。そのため、おもにアジアからの外国人が介護者として人手不足の現場をサポートしてくれていますが、やはり日本語の壁という大きな問題があります。そこで日本語を学ぶための手伝いをしようというのが始まりです。
私たちは日本語を指導する先生のサポートをするのが本来の役割だったのですが、実際には生徒さんにパソコンのキーボードの打ち方から教えました。日本語で会話することも大事ですが、介護の仕事には申し送りをパソコンで打ち込んで共有するという「読み書き」の知識も求められるからです。そのように現場のニーズに柔軟に対応したことで、生徒さんが同業者を連れてきたり口コミで広まったりと、一時は教室がいっぱいになるほど盛況でした。しかも介護福祉士、さらにはケアマネジャーの難関に合格した人まで出て、努力を重ねてきた生徒さんの姿を知っている立場としては感無量でした。
この活動が認められ、2016年には社会貢献支援財団から社会貢献者表彰を受賞しました。
――活動で苦労された点、やりがいを感じられた点はどんなところでしょう。
活動当初は私たちも日本語を教える知識がなかったため、どうすればわかりやすく伝えることができるだろうと試行錯誤しました。たとえば「しりもちをつく」という言葉の意味がわからない外国人に説明するため実際に椅子から落ちてみせるなど、体を張って伝えることも少なくありませんでした。自分たちが全力で取り組んだからこそ、生徒さんたちを応援する気持ちもより強くなった気がします。
仕事をしながら日本語を学ぶために頑張って通ってくれる方たちを応援したい、手助けをしたいという気持ちは非常に大きかったのですが、やはりコロナは活動に大きな影響がありました。それまで定期的に開催していた教室が開けなくなってオンラインになった結果、ようやく対面での教室が再開できた今も、かつてほどのにぎわいは取り戻せていません。オンラインは自宅にいながらにして学べる利点は大きいですが、対面ならではの学ぶ喜び、楽しさがあることを忘れてはならないと思っています。
――てーねん・どすこい倶楽部が現在抱えていらっしゃる課題とその対策をお聞かせください。
会員の高齢化が進み、今や60代の会員がいない状態です。70代以降も元気に楽しく暮らせている時代ではありますが、団体のこれからを考えると、やはり70歳未満の方が加入して欲しいというのは切なる願いです。イベント開催時などにお声がけするなどしているので、今後も地道に参加者を募っていきたいと考えています。
理事 今本善信さん
私が担当している「生きがい講座」は「てーねん・どすこい倶楽部」の主要な活動のひとつです。年に6回「シニアに役立つこと」をテーマに講座の内容を決め、セカンドステージセミナーのない月に開催しています。これまで取り上げたテーマは「スマホの使い方」をはじめ、「認知症予防」「アンチエイジング」「折り紙」「終活」など、新規の案件から過去に好評だったテーマを再度取り上げるなど、楽しく参加していただけることを前提に実施してきました。
私自身は長く海外で勤めており、定年を迎え帰国したときになにをしようと思案していたところ、たまたま「てーねん・どすこい倶楽部」の存在を知って参加することにしました。ところがその後、再び海外で仕事をすることになり、ボランティア活動も中断してしまいました。65歳で帰国してから再び活動に参加できるようになりました。
「生きがい講座」はセミナー同様、開催までの準備は大変ですが参加者のリアクションを目の当たりにできるのがいいですね。楽しんでくださっていることがよくわかるので次回も来て欲しいと思いますし、それがやりがいにもつながっています。
「てーねん・どすこい倶楽部」は男性会員が少ないのですが、一度でもこのような体験をすれば「自分もありがとうと言われる立場になれるのでは」という思いが芽生えるのではないでしょうか。セカンドライフを一緒に楽しめる同志を心待ちにしています。
渡辺幸雄さん
情報誌「どすこいかわら版」の製作を担当しています。原稿や画像など必要な情報が届いたら誌面の形にするのが私の役割です。ちなみに2024年1月に発行した第244号では、新年のあいさつ、寒い日に食べたい「鍋のような具だくさんすいとん汁」レシピ、健康長寿研究臨床試験に関するエッセイ、窒息事故を防ぐお餅の食べ方といった記事が掲載されています。
最初は製作に必要なソフトの使い方も一切わからず、途方にくれました。しかし任された以上頑張ろうと努力した結果、号を重ねるにつれ慣れていき、今ではスムーズに製作できていることは自分でもうれしく思います。原稿がファクスで届き、それを打ち込むというアナログな作業で時間がかかった時代もありましたが、今はデータでやりとりできるのがありがたいです。
私自身は「てーねん・どすこい倶楽部」のほかにカラオケのサークルも主催しているため、リタイア後も忙しく、そして楽しく日々を過ごしています。常にやることがあるというのは、毎日の活力につながっていると思います。
(取材:2024年2月8日)
■プロフィール
てーねん・どすこい倶楽部
設立/2002年9月
代表理事 太田雅子さん