東京まちかど通信
第5走者 山田博市さん
昨年の4月からセンター長に就任。誰もがいくつになっても安心して暮らせる地域づくりを目指しています。
——仕事について教えてください。
主任介護支援専門員として地域のケアマネジャーさんの相談を、相談員として地域住民の方の相談を担当しています。また、地域や民生委員さんの集まりに地域包括支援センター(以下、地域包括)の職員として呼ばれることもあり、地域の方々との膝を突き合わせての話し合い等にも参加しています。介護予防講座の開催や住民主体のサロンの立ち上げ支援にも取り組んでいます。センター長としては、行政の所管部署との窓口となりますし、センター長会議の運営にも関わります。
——この仕事についたきっかけは何ですか?
進学時まで遡ると、高校生の時にはもともと国文学の勉強をしようと考えていましたが、高校3年の時に、何故か意味もなく「福祉系も受験しようか」と思ったことが最初のきっかけでしょうか。明確な動機があったわけではありません(笑)。その後、大学では福祉系学部に進学しましたが、バンド活動に明け暮れ、ベースを担当していました。黒いTシャツを着てロックをやっていましたね。当初は福祉系学部とはなんとなく違う道を歩んでいましたが、大学3年の実習時期になると障害者の就労移行支援をやってみたい、という意欲が高まっていったことから、肢体不自由児施設に勤めることになりました。しかし、腰を痛めてしまったことがきっかけで、府中市福祉公社に転職しました。ここで初めて、在宅で暮らす高齢者についての相談を受けることになり、平成13年からはケアマネジャーを務め、平成23年に現在の地域包括に異動してきました。ケアマネジャー時代は、相談にこられた方や対象者個人だけを見がちでしたが、地域包括で働くようになってからは、当事者である本人にあった支援方法を考える際に、相談者や本人が抱えている背景や地域の関係者の抱える困難さ、地域の課題を把握・発見することでケースの解決を考えるようになりました。
——この仕事のどんなところにやりがいを感じますか?
なかなかやりがいを感じにくいのではないかとは思いますが、例えば個別のケースについて支援方法、目標を定め、ご本人、ご家族と手を取りながら目に見える形で目標を達成できた時には、やはりやりがいを感じます。例えば、ごみ屋敷に住んでいた方と粘り強く交渉を重ね、本人との信頼関係を構築し、周囲の理解を得て、3年越しで施設への入所までつなげることができました。本人の不安感を解消するために、最初は月1回ぐらいのペースで電話や訪問を重ねました。受け入れてもらえるようになってからは、2週間に1回ぐらい通い、通院支援につなげ本人の状態も改善したことから更に信頼関係が深まりましたね。困難ケースは年に10件近くありますが、最近は病院からの情報提供も増えています。介護職に心を許す方、医療職には心を開きやすい方と当事者の想いは様々ですので、支援する私たちもケースを1人で抱え込まず、3職種の連携を図ることを意識しています。楽しみはやはり同じ地域包括のメンバーと同じ目標に向かって進んでいく一体感、それに尽きるのではないでしょうか。
また、自分がメインになって行う事例検討会で、地域の他職種で丁寧に検討を行い、定めていた目標に収まっていった時には達成感があります。その意味では、地域包括の職員だけで解決策をまとめるだけではなく、地域のネットワークをつくっていくために地域包括からも積極的に情報提供を行い、居宅介護支援事業所のケアマネジャーさんや病院の方など、様々な人を巻き込んでいくことが重要であると考えています。
——たくさんのご経験の中で今でも覚えているような苦い・苦労したといった経験はありますか。
挙げるときりがないのですが、担当ケースが突然予期せぬ形で終了してしまい、それを精神的に引きずってしまったことだと思います。一番ショックだったのは、自死のケースです。ご家族の方と住宅改修の打ち合わせを兼ねて訪問した時に、ベッドにひもをまわされて…。こちらとしては、やっとご本人と前向きな話ができるかと考えていた矢先の出来事でしたので、よけいにショックでした。実は、34歳の時にも自死のケースを経験していて、今回は2回目でしたが、今でも忘れられません。センター長としては、他の職員が同じような経験をしたときに適切な声掛けができるように心がけています。本人が問題と思っていなくても、外から見て悩んでいるなあと思ったときなど、私から声をかけるだけでなく、周りの職員に声掛けをしてもらうこともあります。
——普段の山田さんはどんな方ですか?
バンド活動は、34歳ぐらいまでやっていましたが、今はスノーボードに夢中です。20代の時から始めましたが、年間30回以上ゲレンデに足を運び、今ではインストラクターができる資格も保有しています。家族からはあきれられていますが…笑。おすすめというか、毎年通っているのは湯沢です。初めてスノーボードを滑ったところなので、湯沢に行くと「ここまで上達したな!」と自分の習熟度が分かるゲレンデとなっています。のめり込むタイプなので、目標をたててそれを達成していく過程を面白いと感じます。スクールに通っていますが、そこではグループレッスンを受けます。グループレッスンでは普段接しないような多様な経歴をもった方と一緒になりますので、ここでも仕事に活きるようなコミュニケーションスキルが磨かれていると思います。本当に色々な方がいますし、その中での人と人との関係づくりは何より刺激的で、対人援助の仕事にも役立っています。シーズン以外の時は、テニスや野球、ゴルフなどもしますよ。
——この仕事を目指している方へのメッセージをお願いします。
奥が深く、探究心をそそられる仕事だと思います。特に、個別ケースから地域を見ていく際には、表面的なところだけでなく、背景などを丁寧に探っていくことが必要です。うまくいかない時や辛い時はあるでしょうが、必ず仲間が支えてくれますし、また逆に自分が支えることもあるでしょう。地域包括の職員だけでなく、様々な地域の関係者と、この地域に暮らす住民を中心にしてチームワークをつくっていくことがとても大切な仕事であり、その醍醐味が存分に味わえると思います。そんな仲間にぜひ加わってください。
職場の方から見た山田センター長
服部さん
スタッフをしっかり見ていてくれるセンター長です。書類だったり、ケアプランだったり、ちょっとしたことから丁寧に指摘してくれるので、ありがたいです。プライベートでも多趣味で、タフだな~と思います。センター長がやっていたバンドのDVDも見せていただきましたよ…笑
服藤さん
障害の分野をはじめ色々な分野を経験されているので、モノの見方がとても広いと思います。私自身介護分野は初めてなので、仕事をしやすいようによくフォローしてくださいます。オン・オフの切り替えもうまくて、刺激を受けています。
インタビューを終えて
高齢者分野以外の経験も豊富なセンター長として、相談者だけでなく、同僚の方に頼りにされている様子がよく伝わってきました。一方、プライベートも多趣味で、そのような多様な経験が業務にも活かされているのかなと感じました。
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地域包括支援センターは、地域の身近な相談窓口として、地域で暮らす高齢者のみなさんを、介護・福祉・健康・医療など、様々な面から総合的に支援しています。相談は無料で、電話、来所、訪問など様々な形態が可能です。また、地域の介護予防拠点として、介護予防コーディネーターがいます。お気軽にご相談ください。
(公開:2016年2月22日)