東京ホームタウンSTORY
支援先レポート
2025年に東京が目指す「人」と「まち」の姿とは
運営メンバー座談会
NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター 代表理事 永沢 映
株式会社エンパブリック 代表取締役 広石 拓司
認定NPO法人サービスグラント 代表理事 嵯峨 生馬
東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課在宅支援担当 西沢 佳
(※2017年3月当時)
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「いくつになっても、いきいきと暮らせるまちをつくる」。この目標を掲げ、2017年、東京ホームタウンプロジェクトは活動開始から3年目を迎えます。本プロジェクトを運営する中心メンバーが集い、2年間の活動を通じての学びと浮かび上がってきた課題、これから目指していく東京のまちと、東京における私たちの暮らしについて語りました。(2017年3月17日実施)
都の担当者が語る「東京ホームタウンプロジェクト」の目的
東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課在宅支援担当 西沢佳(以下、西沢 ※所属は2017年3月当時):
今日はお集まりいただきありがとうございます。「東京ホームタウンプロジェクト」は多様な主体が力を合わせて、東京の地域課題の解決に挑戦するしくみです。議論に入る前に、このプロジェクトが生まれた経緯をお話します。
東京ホームタウンプロジェクトの、これまでの支援実績をご紹介します(2015・2016年度)。
今、国を挙げて「地域包括ケアシステム」の構築という大きな目標に取り組んでいます。その背景として、少子高齢化による人口構造の変化により、ケアを必要とする人は増えていくのに、ケアする側の人が圧倒的に不足するということがあります。厚生労働省の推計では、2025年に向けて介護人材が約38万人不足し、要介護認定を受けても人的リソースが足りないため、サービスの利用が難しくなります。
拡大するニーズに応えるには、自らの健康を維持する介護予防活動を広めていくと同時に、身のまわりの生活支援を、専門職だけでなく、地域における人と人とのつながりの中で提供していくことも必要なのではなでしょうか。そして、それは多くの方々の「地域で自立して暮らしたい」という気持ちに寄り添うことにつながるのではないかと考えます。
東京は、「地域コミュニティが崩壊している」、「地域のつながりがない」と言われますが、互助的な活動をしている人たちや、キラリと光るような活動団体が地域にたくさん存在します。こうした支え合い活動をもっと増やしていきたい。東京の豊富な人材と活発な企業活動といった強みも活かして取り組めば、皆にとって東京が「ここで生き切ろう」と思えるホームタウンになるのではないか。「いくつになっても、いきいきと暮らせるまちをつくる」をキャッチコピーとする東京ホームタウンプロジェクトは、そんな思いから生まれました。
介護予防からはじまる地域づくり
株式会社エンパブリック 代表取締役 広石拓司(以下、広石):
最初にこの話を聞いたとき、「都の介護予防担当者が地域活動を扱うとは!」と驚きました。いい意味で、ですよ(笑)。
西沢:介護予防は、自分の健康を自ら意識し、主体的に動くものですが、活動を継続するには誰かと一緒にやることがポイントになります。これにより、自分が元気になるだけでなく、みんなが元気になるとともに、人と人との新しいつながりや活動が生まれ、やがて地域全体が元気になる。この好循環を作りたい。それが都の介護予防担当者としての想いでした。
広石:これまでは医療の予防も介護の予防も専門家側から始まっていました。重篤な人、そこまで悪くない人、その手前の人という視点から予防を考えがちです。しかも医療や介護は申請主義で、専門家は申請された後のことしか知らないので、医療や介護を使っていない状況での地域での生活に目が届きづらい。ところが東京ホームタウンプロジェクトは、専門家側からではなく地域での生活の側から入って予防を考えている。そこが重要なのです。
例えば、病気にならないよう生活することよりも、地域活動に参加し、たくさんしたいことがある暮らしの方が予防になるでしょう。また、誰もが自分の親が認知症だとは認めたくないので、病院に行くのはある程度進行してからになりがちです。医療者は進行する前の人にはアクセスしづらいのです。でも地域のつながりがあれば「あの人、ちょっと大丈夫かな」といった周囲の気づきがある。地域には従来の専門家と違う視点や強みがある。ですから、予防を地域のつながりから取り組むのは画期的な試みだと思うのです。
認定NPO法人サービスグラント 代表理事 嵯峨生馬(以下、嵯峨):
介護にかかっている公的な支出が増えていることは誰もが知っています。こんなに支出がかさむ一方で将来どうなるのだろうという不安もあります。働き盛りの我々にとっては、まず親が元気であることが、自分が元気に生活できるというベースになります。高齢者が元気になり、コストも下がり、介護離職をしなくても済む人が増える介護予防は、現役世代と高齢者をつなげる共通の目的となり得るテーマではないでしょうか。
NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター 代表理事 永沢映(以下、永沢):
国から「地域包括ケアシステム」という言葉が出てきたとき、斬新だと思った点が2つあります。まず、支援が必要な人のセーフティネット最優先から、健康な人は社会参加をしながら健康増進に努めましょう、という自立支援の視点がだいぶ出てきた、それが福祉の世界への大きな投げかけになりました。
そして地域包括ケアシステムの考え方が、地域の特性に応じた仕組みを作り上げていることです。サークル活動、ボランティア活動、コミュニティビジネスなどさまざまなものを組み合わせていけば参画を広げていくことが可能です。
斬新であるがゆえに実行する上ではハードルが高い。そこに迷いがある中で、東京都が区市町村や社会福祉協議会、地域包括支援センターといった中間支援団体に対して仕組みづくりのサポートをすることは、現場からするとありがたいことです。なぜなら、各地域で考えなさいと言われても、意識のギャップが非常に大きいがゆえに進め方に迷ってしまう方々も多いと思われるからです。
地域包括ケアシステムや「介護予防・日常生活支援総合事業」を推進していく上で、都道府県の役割も大きくなっている、ということを感じていたので、東京都が率先して取り組むことが非常に意味があると思っています。
嵯峨:視点の変化という意味では、私の立場にとっては、地域包括ケアという大きな政策の三本柱として、介護、医療、そして、NPOや地域活動が主な担い手となる生活支援・介護予防が入ったことが大きいと思います。
西沢:介護予防や生活支援は、担い手もサービスも、その規模も含めて多種多様です。行政の立場からどのようにバックアップしていくのか?大きな課題だと思います。
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