東京まちかど通信
第15走者 服部将志さん
地域包括支援センター設立当初から10年以上にわたり、
地域包括ケアの様々な主体がつながりあえる「場づくり」に取り組んでいます。
——ふだんのお仕事について教えてください。
地域包括支援センター(以下、「センター」という。)で、総合相談、虐待対応、地域ネットワークづくり、ケアマネジメントの支援、医療と介護の連携推進などの業務を行っています。5名の相談員で運営しているセンターですが、そのうち私を含め3名は、平成19年度にセンターを立ち上げたときからずっといるメンバーです。
当初から地域との関わりを大事にしてきたセンターなので、職員はどんどん地域に出ていくし、それが当センターの強みであると自負しています。今は係長職なので、個別相談ももちろん対応しますが、地域の人が平場で話し合える機会を設定したり、センターの職員が力を発揮できる雰囲気づくりをしたり、そういった場づくりに力を入れています。
——現在のお仕事を始められたきっかけを教えてください。
私は大学時代にアメフト部に所属していたのですが、怪我しがちで、毎日通っていたドクターの所で理学療法士の方に出会いました。そこで理学療法士になって福祉の仕事に携わりたいと思ったのがきっかけです。知人の紹介で今の法人で1週間の実習をさせてもらい、その後、入職しました。最初はデイサービスの職員として7年ほど勤め、異動で在宅介護支援センターも経験し、法人が当センターを三鷹市から受託し立ち上げるというので、その時からずっと当センターにいます。仕事を始めてから出会った先輩方の影響で、社会福祉士の仕事に魅力を感じて、そちらの道を選びました。
——この仕事のどのようなところにやりがいを感じますか?
色々な人と出会うことができるのが楽しみです。高齢者はもちろん、今は生活支援コーディネーターを筆頭に地域に出ていくこともセンターの仕事なので、地域の方々とも出会えます。
生活支援コーディネーターを地域包括支援センターに配置したものの、地域とどう関わったら良いのか分からない、という悩みをよく聞きますが、センター設立当初から地域に出ていた私たちからすれば、「行くだけじゃない?」なんです。地域の方と出会って世間話をして、どういう個人や団体なのかを知っていくのは、センターの利用者をアセスメントするときと同じような感覚でいます。
あとはおそらく、個別ケースの対応と、地域で顔を売ることの、時間的な優先度をどうするかも悩みどころかと思います。私はどちらも同じ重さで関わるべきことと考えていて、状況ごとに、ケース対応が優先されるべき場面もあるし、地域に時間をかけるべき場面もあると思っています。当センターでは、メンバー全員が地域に出ることも仕事と考えているので、職員の地域活動を止めたことは、1度もありません。
地域で持ち味を持った面白そうな人や担い手になりそうな出会いたい人は、私達の担当区域の社会福祉協議会(以下「社協」という。)の生活支援コーディネーターと定期的に話し合いの場を設けていて、そこで情報交換してきます。例えば社協がやっていたファシリテーター講座の受講生が、地域でサロンやお助け隊をやっている。そういった情報を、あれもいいね、これもいいねって言いながら共有して、次の具体的な動きにつなげるということをしています。
——これまでのご経験のなかで、苦い出来事や、苦労されたことはありますか?
在宅介護支援センターに異動して、初めて相談業務に携わったときは、不安で毎日ドギマギしながら過ごしました。アセスメントの方法など「こうあるべき」型があるように思えてしまって、自分が聞くこと・話すこと全てがフリーズしてしまう感覚でした。
そんな自分を打開したいと思って、東京都社会福祉協議会(以下「東社協」という。)がやっていた、ファシリテーション技術を学ぶ研修に参加しました。そこで声をかけて頂いて研修の企画会にも参加するようになり、東社協が主催する介護保険事業者の意見交換会でファシリテーターをやらせてもらったりして、そこから少しずつ地域での活動に取り組むようになりました。その研修が今は東社協から独立して、全国援助職ネットワークという団体になり、私も参加しているのですが、専門職が主体的に、自由に発想して、ファシリテーションを使って職場や地域でネットワークをつくることや人材を育成することができるよう活動しています。
——ファシリテーションをしていて手ごたえを感じた話し合いの場はありますか?
三鷹市内の、介護に携わる幅広い職種の人が参加できるケア専門職交流会を7~8年ほど続けています。普段は介護保険事業所をケアマネージャーが選び、そしてケアマネージャーを地域包括支援センターが選ぶという関係ですが、逆に、地域包括支援センターはケアマネージャーに選ばれている、相談してもらわないと仕事にならないという面もあると思うんです。だからこそお互いに壁を破って、愚痴を言い合いながらも前向きに展開しようというようなコンセプトでやっています。やりとりを通じて多角的な見方を養って、各人のケースで応用できるようになることが目的なので、ある意味、交流会の場の話し合いの結論は、どんな形でも良いんです。話し合いのプロセスが上下関係の無い平場であることが大切なのです。だからこそ言いたいことを言い合えるし、交流会に来たついでだとケアマネさんも気軽に相談ができて、それが困難ケースの発見につながったこともあります。こんな意図で、交流会などを仕掛けにして、関係を構築していけるようにしています。
——地域福祉の担い手の方やこの仕事を目指している方へのメッセージをお願いします。
私は、人間は「誰かのため」に、という時が一番エネルギーを発揮できることだと思っています。誰かを支援するために力を発揮したとき、それは支援する人が支援される人からエネルギーを頂いたということ。人が人を支援するということの醍醐味は、支える側も支えられる側も同じ関係性の中で、エネルギーが循環していることだと思います。そして援助職は、一人の「支えられる」方を通じて得た経験が、自分の糧となって、次の人を「支える」力になる、もう一つの循環を回す仕事でもあります。是非、色々な魅力ある人達と出会ってほしいです。
また、自分が感じたこと、嬉しい、悲しい、悔しい、そういう気持ちは自分を動かす原動力になるので、大事にしてほしいですし、人に伝えていくと良いと思います。何かをしてもらった時には「ありがとう」よりも「嬉しい」という言葉の方が、聞いた相手も嬉しいんじゃないでしょうか。自分を開いて相手に見せることは勇気が必要ですが、人と人をつなげるポイントだと思います。
職場の方から見た服部さん
服部さんの強みは、人との間に壁を作らない、コミュニケーションの敷居の低さだと思います。頼まれごとも基本的には断らない人です。その受け入れてもらえるという安心感が、地域の方から気軽に相談してもらえるところに生きているんでしょうね。
実は寂しがり屋で、職場のスキー旅行に行ったとき、帰り際にものすごく寂しがっていたことが印象に残っています。翌日にはまた職場で会うのにですよ(笑)
人の気持ちを引き出すコミュニケーション術はまさに「服部マジック」(笑)服部さんに相談すると、まずは受け止めてくれて、その後「あなたはどう思ったの?」って聞かれるんです。そうすると自分の考えや気持ちを冷静に振り返れるようになります。地域のケアマネさんから絶大なる信頼感があるのです。聞いてくれるだけじゃなく、自分の思いを自分で語れるように引き出すところがすごいなと思います。
インタビューを終えて
高齢者の支援や地域づくりに対して熱い思いがありながら、それを押し付けることなく、相手の思いを引き出し、そっと後押ししてくれる雰囲気が印象に残りました。地域の高齢者や専門職が、服部さんに話を聞いてもらいたくなる気持ちがよく分かりました。
服部さんの職場はこちら
三鷹市では、地域の高齢者を総合的に支えていくための拠点として、市内7か所に地域包括支援センターを設置しています。主任ケアマネジャー、社会福祉士、保健師などの専門職員が、地域の関係機関と連携し、皆様の生活をサポートします。
全国援助職ネットワークについて
服部さんが発起人として関わられている全国援助職ネットワークについては、こちらをご覧ください。
(公開:2018年7月25日)