東京まちかど通信
第18走者 佐藤志穂子さん
人と人、人と地域をつなげ、地域の中で「その人らしい」生活を送るための支援を行っています。
——ふだんのお仕事について教えてください。
麻布地区高齢者相談センター(以下、「センター」という。)で、社会福祉士と主任介護支援専門員という職種を兼ね、高齢者支援に関する様々な業務を行っています。
例えば、総合相談、介護予防、ケアマネジャーへの支援、認知症サポーター養成講座及び成年後見制度の普及啓発、そして、自治会や民生委員など地域とのネットワークづくりなどが挙げられます。また、最近では、地域包括ケアの一環で、医療と介護の現場をつなぐための研修にも力を入れています。
——特に力を入れている取り組みがあれば教えてください。
特に、認知症サポーター養成講座、成年後見制度の普及啓発等に力を入れています。
港区では、企業が多く立地し、昼夜間人口比率(夜間人口100人当たりの昼間人口)が200を超えているという地域特性から、昼間に働きに来ている方にどう働きかけていくかが課題となっています。
そこで、企業に対し、認知症サポーター養成講座の実施に向けた働きかけを積極的に行っています。
銀行などの区民と関わることの多い企業はもちろんですが、その他の企業に対しても本講座の普及啓発を進め、事前に本講座を受けておけば、今後ご家族が認知症になった際に早期に対応することができるということを伝えたいと思っています。
——現在のお仕事を始められたきっかけを教えてください。
社会福祉学部のある大学に進学し、障害者の福祉サークルに所属して、障害を持った方が適切な医療を受けられない環境にある背景について学びました。そこでは、障害者は福祉的な観点でとらえられることが多く、医療面での支援が不十分な現状を目の当たりにしました。
また、講義の中で、住民主体の活動について学ぶ機会があり、障害がある人もない人も地域で生活するにあたって、様々な意見交換ができる機会の必要性を感じました。そこで「住民たちが自ら地域で行う健康づくり」をテーマに研究に努め、「住民が地域で自分らしく生活すること」の重要性を再確認しました。
そうした経緯から、医療機関で働きたいと考えるようになり、衛生教育について学んだ後、医療ソーシャルワーカーとして働き始めました。
その後、特別養護老人ホームや老人保健施設等での勤務を経て、「もっと地域に関わる仕事をしたい」と思い、当センターにて、センター設立当初の平成18年から働いています。
——この仕事のどのようなところにやりがいを感じますか?
地域や人が支援策につながったときに、やりがいを感じます。
最近、終末期(ターミナル)の相談が増えてきており、家族と一緒になって看取ることが多くなってきました。
例えば、以前、家族の方から「本人は、がんの末期かつ介護保険の申請もしていない状況下にあるが、どのように看取ったらよいかわからない」という終末期の相談を受けました。家族とケアマネジャーと一緒に懸命に何度も話し合うことで、相談者にとって最適な支援策へとつなげていくことができました。看取った後に家族から「よい最期を送ることができました」という言葉を聞けたときに、看取れてよかったと感じるだけでなく、地域や周りの方が自分を成長させてくれているということも実感できました。
業務の中でご家族の方から怒鳴られることもありますが、怒鳴ることも家族のSOSと考え、少しでも家族に寄り添うようにしています。寄り添う中で、家族と信頼関係が結ばれ、家族の思いに沿った支援策が生まれることもこの仕事の魅力だと思います。
——地域の方と信頼関係を構築していく上で、大事にされていることは何ですか?
相談者が困ったときに、支援を行う側が多くのサービス情報を提供できることが大事と考えています。そのために、常にアンテナを張り巡らし、様々な情報を少しでも伝えられるように心がけています。
例えば、認知症の症状で緊急に困ったときにどこの施設で対応してくれるのか、がん末期の方を在宅で診てくれる先生はだれかなど、すぐに情報を提供できるようにしています。その情報は、医療や福祉に限らず、食の好みや趣味等も含めて幅広くとらえ、「支援の縁」が可能な限りつながるようにしています。
そのおかげで、たくさんの地域の方と知り合うことができ、民生委員をはじめとした地域住民の方とも信頼関係を築くことができるようになりました。最近では、姿を見かけなくなった方の情報を教えてくれるなど、地域の方が地域の見守り活動にも協力してくださっています。
——地域福祉の担い手の方やこの仕事を目指している方へのメッセージをお願いします。
人と人がつながること、地域とつながることが実感できるのがこの仕事です。
また、この仕事は、人と話すことが大事な仕事であるため、自分の言葉・考えで、自らの想いを相手に話すことが求められる仕事です。教科書通りに話すのでなく、自分の言葉で話すことで相手に想いが伝わり、信頼関係が生まれます。
時折一つ一つの事例を振り返ると、心に残る方が必ずいます。その振り返りの中で、人が持つ魅力や力の大きさを感じることができ、その一人一人をつなげていけることができる素晴らしい仕事です。
一人でも多くの方に、様々な悩みを抱える人たちを支える社会の仕組みに興味を持ってもらいたいと思います。そうすることで自分たちがどれだけ大事な仕事をしているか見えてくるのではないでしょうか。
私自身、これからも、日常的な業務に追われながらも、その気持ちを大事に歩んでいきたいです。
職場の方から見た佐藤さん
常に目的意識が明確で、目的に向かって突き進む行動力と実行力を持っているとてもパワフルな人です。
センター職員の会議では、様々な意見が飛び交いますが、志穂子さんは、1つ1つの意見を聞き逃さず、深掘りしてくれます。
そのおかげで、方針・考えが固まり、当センターにおける色々な取組を前進させることができています。
港区内に限らず、様々な地域の社会福祉関係の方とのつながりがある人で、多様な発想を兼ね備えたアイデアマンでもあります。
地域の方から「志穂子さんに相談したい」という指名での問い合わせが多々あります。また、民生委員や地域の方がいろいろなつてをたどって、最終的に志穂子さんにたどり着くことがあり、それが利用者さんの支援につながることがよくあります。地域住民、行政、職員、いろいろな立場の方から頼りにされている存在です。
インタビューを終えて
佐藤さんはパワフルな行動力、実行力をもつ一方、相談者にいろいろな支援策、選択肢を提供するために常時アンテナを張って、情報収集するというきめ細やかな対応も行っていました。
福祉、医療の様々な現場で培った経験、実績に加え、そうした住民への思いが、地域様々な方からの信頼につながっていると感じました。
佐藤さんの職場はこちら
港区では、平成23年4月1日から、地域包括支援センターの通称名を「高齢者相談センター」とし、5か所の地域包括支援センターを設置しています。高齢者相談センターでは、主任ケアマネジャー、社会福祉士、保健師などが中心となって高齢者支援を行っています。それぞれの職種の専門分野の仕事だけでなく、互いに連携を取りながら「チーム」一丸となって高齢者の皆さんを支援していきます。
(公開:2019年11月11日)