三ツ藤木の葉の会
- 地域
- 武蔵村山市
- プロボノ支援内容
- 印刷物(パンフレット等)
- 支援時期
- 2021年度
- 活動カテゴリ
- 身の回り支援、移動支援
経験やスキルを活かしたボランティア活動=“プロボノ”との協働による
団体の運営課題解決の事例から、協働のポイントや、支援後に生まれた変化等をご紹介します。
立ち上げたばかりの住民の助け合い活動を活性化していくためには、地域包括センターの協力で制作した既存のパンフレットをリニューアルし、自分たちで継続的に情報発信を行う必要があった。
既存のパンフレットをもとに、必要な発信内容と表現を見直し、より目に留まるパンフレットを制作する。併せて、それ以降の情報発信の方針を立てる。
活動のビジョン、助け合い活動の成り立ち、活動中の住民の語りなどを、より分かりやすく、親しみの感じられるビジュアルで表現したパンフレットが完成。制作の過程に多くの事務局メンバーが主体的に携わったことで発信の重要性を共有でき、以後、成果物のデータをフォーマットに、メンバーの手で会報として定期的に発行・配布できるようになった。
多摩地域北部に位置し、
2021(令和3)年、その三ツ藤団地の人々が、
活動内容は、大きく以下二つの柱に分かれます。
・家事支援
日々の生活のなかで手助けを必要とする住民(=利用会員)と、
・移送支援
自宅から市内の病院、役所、公共施設、
これらの支援活動を活性化していくには、利用者、
コロナ禍のさなかに実施されたプロボノチームとの協働は、オンラインミーティングで始動。「木の葉の会」事務局からは、会長の井上さんのほかにも多くの参加があり、活動のビジョンや、従来のパンフレットの課題などが共有されました。現在60代で、事務局内で最も若い根本明男さんは、この日の話し合いの中身もさることながら、「Zoomという、これまで使ったことのないものをみんなで使ってみよう、というよい機会になった」と、パソコンに不慣れな高齢メンバーが一歩を踏み出した意義も語ります。
その後、プロボノチームは、会からのヒアリングをもとに、新パンフレットへの掲載内容やデザインを検討。最終的に提案されたのは、「三ツ藤を助け合いのまちにしたい」という会のビジョンを大きく、明確に掲げたパンフレットでした。
掲載内容も、利用会員・協力会員・コーディネーターの三者による活動の成り立ちをわかりやすく表した図や、実際に活動している協力会員の写真と体験談など、支援を受けたい住民に対しても、活動に参加したい住民に対しても、心理面、手続き面のハードルが下がるよう工夫された構成に。プロジェクト最終日には、「木の葉の会」事務局9名とプロボノチームが集ってワークショップを開催し、実際にパソコンを開いてパンフレットのデータを触りながら、今後、事務局自身で内容を更新していくシミュレーションも行いました。
一連の協働を、「明るく活発なプロボノの皆さんの力を借りて、私たちもワーッと盛り上がれたプロジェクトだった」と振り返る井上さん。プロボノチームに制作を委ねきることなく、多くの事務局メンバーが主体的に携わったことで、「目に見える形での発信が必要だという認識を、皆で共有することができ、2号、3号と自分たちでつくっていく流れにつながった」と語ります。
インターネットに不慣れで、もの忘れをしやすい高齢の住民にとって、パンフレットという紙媒体が定期的に配布される意味は小さくありません。これまでには、高齢の親が保管していたパンフレットを、訪れた子どもが見つけ、支援につながったという事例もあったそう。また、実際の支援内容を振り返ると、初年度は草取りなど庭仕事の依頼が多く、活動が男性協力会員に偏りがちでしたが、2年目以降、買いもの代行など依頼内容が徐々に広がったことで、女性にも活躍の場が生まれています。パンフレットを使った地道な発信と、事務局メンバー個々による会話の積み重ねが、ゆっくりとではありますが効果を表しているようです。
まもなく発足から3年となる「木の葉の会」ですが、現役世代とのつながりが希薄であるという課題は、いまも積み残されたままで、「現実として、私たちの活動は老老介護になってしまっている」と井上さん。次世代につなげる必要のある活動ではあるものの、「いまの現役世代は、私たちのころとは違ってほとんどが共働きで、自分たちの生活だけで手いっぱいです。仕事をしながら活動にも参加するというのは大変なこと」と、容易には解決できない背景を語ります。
一方で、現役世代にとって暮らしやすい地域をつくることもまた重要な課題で、「木の葉の会」では、発足当初から「子育て支援」を活動のひとつとして掲げてきました。しかし、支援の依頼は未だ届いていないそう。「若い人たちと実際に話してみると、例えば子どもたちを遊ばせる場所がないなど、困りごとはあるにはあるのだということがわかります。そんなとき、『木の葉の会』に相談してみようと踏み出してもらうにはどうすればよいかを思案している」と語るのは、かつて三ツ藤自治会の会長も務めた根本さん。地域には、若年世代の子育てサークルもあるものの、近年は、コロナ禍の影響もあって地域活動が細分化され、団体間の横のつながりが生まれにくい状況にもなっているそう。井上さんは、「そこをいかに突破していくかが課題。子育て支援と、私たちのような生活支援をつなげる役割を、行政に担ってもらいたい思いもある」と率直に語ります。
現在、「木の葉の会」の利用会員、協力会員数は、現役世代に限らず、伸びが緩やかになっているのが実情です。ただし、SNSなどで情報を拡散し続ければ効果があるかといえば、必ずしもそうではなく、「地域の活動は、結局は一人ひとりの顔を見て伝えることが一番大事。特に高齢の男性からは、助けてほしいという声がまだまだ上がりづらく、顔を合わせ、親しくなって、信頼関係を築いて初めて、話してもらえるんです。そういうコミュニケーションが上手なのが根本さんです」と井上さん。
その根本さんが、協力会員として家事支援に赴く際に心がけているのは、利用者に「一緒にやりましょう」と声をかけ、力を合わせること。「支援を利用する人は、自分ではできなくなった家事を私たちに依頼するのですが、そこで一緒になって作業することで、『自分で整えた環境のなかで気持ちよく暮らす』喜びが、その人のなかに残るんです」と根本さん。そのようにして築いた関係は、支援する側にもまた、喜びを残すといいます。
2023年、地域の誰もが気軽に立ち寄ってお茶やおしゃべりをできるよう、毎週日曜に自治会館を開放したり、野菜の直売やちょっとしたレクリエーションなどを行う有志の催し「三ツ藤の朝一」の運営に協力したりと、助け合いの輪を育んでいく糸口を求め、いくつかの試みを始めた「木の葉の会」。決して一足飛びにはゆかない、住民一人ひとりとの関係構築へ向けた歩みが、これからも続いていきます。
(2023年9月取材)