東京ホームタウンSTORY
東京ホームタウン大学講義録
いくつになっても、いきいきと暮らせるまちをつくる
2015年度総括イベント開催レポート
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超高齢社会において、企業に期待される使命とは何か?
――「選択縁」「目標共同体」いろいろなキーワードをいただきました。こうした中、企業は、地域福祉にどのように関わるか、牧野さんいかがでしょうか。
牧野氏:まず東京という地域の可能性から考えてみましょう。第一に東京は企業活動が盛んで人口が集中している、集積度が高い地域で、人・モノ・カネ・情報が集まりやすい特徴を持っています。全国で働く人の2割弱の人が東京都で働き、全国の事業所のおよそ1割が東京都にあります。集積度が高いため、異業種や異なるセクター間での交流や、新しいアイデアや活動、商品やサービス等が生まれやすいという環境にあります。
第二に、稼ぐ力、財政力のある自治体であることが挙げられます。これは、高齢化社会に向けての準備に財政力を活かし、健康・医療・福祉のまちづくりの推進と、企業やNPOの誘致が可能です。
そして第三には、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催を控えており、社会インフラの整備が進み、地域の活性化や安心安全なまちづくりに繋がる可能性があるという点があります。こうした中で、企業がどう地域福祉に役に立つかですが、大企業になるほど地域課題との距離感があると感じます。経営会議でも地域医療や福祉という話題は出てきません。社員も社内目線しか持っていないので、社会課題とビジネスを結びつけると言われてもよくわからない。高齢化というテーマは、社員の福利厚生の延長だったり、CSRとして取り組むものという認識なんですね。
しかしこれからは、高齢者向けの商品やサービスなど、ソーシャルビジネスや社会起業家と連携して、高齢化社会をマネタイズし、新しいビジネスモデルをつくる知恵が出てこないといけないと思います。そういうシナリオを作れるような人材を企業の中に育てていかないといけないと思っています。また、NPOをはじめとするステークホルダーとの連携を、CSR部門に任せてしまわず、経営として考えていかないといけません。中堅中小企業や地元金融機関は地域社会と密接不可分なので、経営者が自ら地域のリーダーになって、顔が見える活動をしているところが多いですね。大企業はもっと力を入れるべきだと思っています。
上野氏:企業には大きな使命があると思います。
ひとつは、関係の作り方。企業には、金とコストによる指揮命令系統がある。NPOはそれでは動かせない。NPOほど人を動かすことが難しいところはないんです。企業人の方たちは、プロボノなどを通じてNPOに関わられた時に学んだことを、企業に環流してもらいたい。企業とNPOや地域団体との人材の行き来が大事です。
ふたつめは、定年になった方たちに、いかに地域や社会へソフトランディングしていただくかです。これは、企業の“製造物責任”です。地域との連携は必要性が高いですね。
牧野氏:上野さんのおっしゃる通りです。特に男性は定年後、なかなか地域の場に出ていけない人が多いです。ボランティア活動でも、会社組織のような指揮命令系統や大儀名文を用意しないとなかなか動かないのが男性の特徴のようです。
地域住民の健康情報の電子化に取り組むある大学の先生のお話を伺ったことがあるのですが、その地域では多くの男性が生き生きとボランティアに参加されているそうなのです。その取り組みでは、数万人の健康情報データベースを構築するという目標を設定し、運動能力の測定のやり方を指導する役割を任せるという、数値目標を好み、指導者の立場を求めるといういかにも会社人間的な性質を利用して、男性を上手に引っ張り出すことに成功していました。会社のヒエラルキーの中でのスキルと、地域で活躍するためのスキルをマッチさせるには工夫が必要ということのひとつの表れではないでしょうか。
そういった意味では、プロボノでは企業人が学ぶことの方が多いと思いますよ。
上野氏:その通りだと思います。NPOや地域は、お金で人を動かすということができないので、やっていることの魅力と人間関係の楽しさだけで人を動かすことを、学ばなければなりません。
そして、それを支えてきた人はほとんど女性。一方、NPOの代表は9割以上が男性です。理事長とか理事会とか、組織を作る時は、がぜん男性が元気になるという困ったところがあります。
こういう選択縁の関係において、人を何の魅力で動かすか、人のつながりをどうやって作るかを、男性はスキルとして身につけておくべきだと思います。超高齢化社会という時代において、人生は想像より長くなっていますから。
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