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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    「地域参加のトビラ つながる見本市」オープニングセッションレポート
    人生100年時代を自分らしく楽しむ!~身近にあるけれど知らない世界へ。はじめの一歩の心得とは


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    クロストーク

    嵯峨:木下さんはかなり赤裸々に具体的なエピソードをお話しいただきましたが、髙橋さん、しくじり先生とおっしゃったところの“しくじり”の部分をお聴かせいただけないでしょうか。

    髙橋:私は、以前いた製薬会社では人事・採用を担当していましたので、再就職で保育園を経営している会社に、保育士さんの採用支援で入ったのです。新宿の大きな保育園で、保育士さんが20人必要だということで10月に携わることになりました。翌3月までに採用しなければいけないのですが、1人採用するのも難しいのです。さまざまな取り組みをしましたが焦ってしまったこともあり、やり方が傲慢になってしまったようです。上から目線で「もうそんなこと必要ないのでしなくていいから!」とか、やりたいようにやったのです。
    結果的に採用には成功しましたが、やり方がまずかった。社長をはじめ幹部の方との関係性が悪化してしまいました。どうしようかと悩みました。長らく勤めた会社でのやり方を踏襲して実行してしまったのですが、別の環境には別の文化があるということをそこで学びました。
    その時に仲の良い友人のお母さんに相談してみたら、「それはあなたが悪いよ」と。「あなたはもともと、上からものを言うところがある。それでは怒られるに決まっているよ」と言われまして。これはもう自分を変えるしかないなと思い、翌日、3人の幹部の方に平謝りしました。思わず涙が出ちゃったりして。そうすると誠意は通じたんでしょうね、「成果を出してくれたから、もうそれで大丈夫ですよ、もう頭上げてください」と。それからはうまく動き出して、「高橋さんも80歳まで働いてください!」と言っていただけるまでになったのです。そのような体験が私の“しくじり”です。

    嵯峨:どうしても短期的に成果を出さなければいけないと、自分のやり方で進めたら、職場のカルチャーが合っていなかったということですね。ですが、慰めてもらうはずの方からダメ出しをされて、高橋さん自身も素直に反省されて謝りに行かれた、というのが素晴らしいですね。

    髙橋:信頼していた方の一言は効きましたね。人間はそれぞれに生きている世界が違うし、文化も違うし、育ったところも違います。相手を尊重して理解しようとすることは、一つの会社に勤めている間はなかなか見えづらかったのですが、大切にしなければいけないと学びました。

    嵯峨:木下さんのお話はHIKIDASHIとスナックひきだしが主だったのですが、もう一つ肩書に、社会福祉士でもいらっしゃいます。国家資格ですよね。

    木下:もう本当に苦労しましたけれども、今年の試験で受かりました。

    嵯峨:社会福祉士を取得するには、福祉の現場などにも行かれますか?

    木下:そうですね、私は障がい者の方の施設に実習で行かせていただきました。知人友人にも障がい者の方が多く、あと実は、お店に福祉系のお仕事をされている方がたくさんいらっしゃって。それで自分自身も興味が湧いて、勉強をさせていただきました。

    嵯峨:「地域参加のトビラ」の中には、地域活動団体のイベントや活動に加えて、「Chot(ちょっと)介護」というコーナーで介護施設でのボランティアもご紹介しています。現在、介護施設では人材不足と言われています。資格をお持ちの方を中心的にお仕事されていますが、そうでない方でもお手伝いできることがありますね。

    木下:あります。私はまったく福祉の世界を知らずに入った人間として、福祉事業所で気づいたことがたくさんありました。施設で活躍されているボランティアの方の中には、70代ぐらいの方で「世の中に何かお返ししたい」と活動されている方もいらして、素晴らしいなと思ってお話を伺っていました。
    一方で、事業所側は忙しいので、お仕事の切り出し方が難しいと思うのですけれど、実際いらっしゃっているボランティアの方が、たとえば事務能力に長けているとか、その人らしい、ビジネスの世界などで培ってきたスキルを持っている人もたくさんいらっしゃいます。介護現場のお仕事は、もちろん人手不足なのでお手伝いできると思いますが、ちょっとした事務のお手伝いなどもボランティアの人にやってもらえるとよいだろうなと、もっとマッチングできたらいいなということが見えました。
    だから、「介護や福祉はまったく知らないから、自分にはできない」と思われる必要はないです。行ってみて、まずやってみる。そして、「自分はこういうことできるんだけど、こういうことでお手伝いできないか」ということをお伝えすればよいのです。
    また受け入れる側もいわゆる作業ベースのことだけではなく、たとえば「資料を整理してもらえますか」とか「ドキュメントのわかりやすいフォーマットを作ってもらうことはできませんか」など、周辺のお仕事をお願いすることもできるのではないでしょうか。プロの方には怒られるかもしれないですけど、少しのぞき見する中でそのように感じたところはあります。

    嵯峨:ありがとうございます。 そうですね。介護施設での活動にご関心のある方は、ぜひ「Chot介護」もご覧いただけたらと思います。

     

    キーワードトーク はじめの一歩の背中を押す、4つのキーワード

    嵯峨:ここからはキーワードトークをお送りします。髙橋さん、木下さんからメッセージとなるようなキーワードを、2つずつ持ち寄っていただいていますので、このキーワードを軸にお話を広げていきたいと思います。

     

    ■キーワード①「小さな一歩が世界を広げてくれる」

    1つ目のキーワードを髙橋さんからご提示いただければと思います。「小さな一歩が、世界を広げてくれる」というお話がありました。髙橋さんお願いします。

    髙橋: 私の実感ですが、その時は本当に小さな一歩でも、大きく広がっていくということ です。私は7年前に、定年を迎えるにあたり会社を辞めてからどうしようと悩んでいた時 、定年をテーマにしたセミナーがあったのです。大江英樹さんという方が開催され ていました。寒い時ですし、行くことをどうしようかなと迷いました。でもやっぱり行ってみようということで一歩を踏み出したのです。そうするととてもいい話だったの で、終わった後に名刺交換しました。セミナーの中で、定年男子の会のような飲み会でこれからネットワークを広げていきましょう、とおっしゃってたので、どうしようと思ったのですが、厚かましく「会に入れてもらえませんか」と聞いてみたら、「いいよいいよ!」と いうことで参加することができたのです。もうそれも勇気がいりました。一つひとつに勇 気がいったのです。 その会で2、3年ほど参加をしているうちに、私が定年活動というのをいろいろ手掛けていることをお知りになり「髙橋くんはおもしろいことをやってるから、一度セミナーで話してみない?」とい うお声かけをいただき、セミナーで話すようになりました。そして、講演のご依頼が増え 、さまざまな人との出会いがある中で、それをまとめてみたいという思いがつのり本にしました。いつもドキドキで、「どうしようか」と思いながらです。なぜか今ここ に座っているというようなことも、今から振り返ると本当に最初の小さな一歩からだったと思い ます。 だから、今はどうなるかわからなくても、必ずその一歩は何かに繋がっていくのではないかということは強く思っています。私の親友は、市役所の職員を65歳で定年退職しまし た。友達づくりが下手だったので先のことを考えて60歳から定期的にウクレレの教室に行き始めました。すると65歳の時には指導的な立場になっていました。その時はわからないのですが、後になってやっぱりやってよかったと思う時が来ることをすごく感じています。

    嵯峨:ありがとうございます。先ほど3つのKとして、お金と健康と孤独という話がありました。その中でも比較的緊急性が低いということで手をつけないのが孤独ですね。でもこれは意外とすぐに手当てができないので、むしろ早く手掛けておいて、数年経てばつながるということもあるかもしれませんね。小さな一歩のお話の中には、現場に足を運ぶということもありましたけども、先ほどの話をもう一度振り返りますと、行政書士の本を買ってみるというようなことも一歩の一つというわけですね。ですから必ずしもどこかに行かなければいけないというわけでもなく、本当にちょっとしたことなのかもしれない。

    髙橋:そうなんですよ。点と点がつながっていくということは、よく実感します。

    嵯峨:ぜひ皆さまも、また周りの方たちにも一歩踏み出す背中を押していただくといいのではないでしょうか。

     

    ■キーワード②「強みで勝負からネタで勝負へ」

    嵯峨:では2つ目は木下さんからいただいたキーワードをお願いします。「強みで勝負からネタで勝負へ」これはどういう意味になりますでしょうか。

    木下:キャリアの話やセミナーなどで「自分の強みを探しましょう」という話がよく出ると思います。お店でも「全然、強みがないんです」と言ってくる人が多くいまして、今、「強みプレッシャー」があるように思えています。自分の強みといっても上には上がいますから、なかなか探すことが難しいと思います。でも私は、強みはないけどネタはいっぱい持っているなと。ネタだったらいろいろと話せるものがあると思えば、気持ちがとても楽になります。ネタとは何かというと今までの経験ですね。うまくいっていることもあれば、うまくいっていないこともあります。先ほども話したようにうまくいかなかったことはいっぱいありますけど、何もやっていないよりは話せるテーマがあるわけです。そして、「こういうことをやったらこうだったよ」と誰かに話した時に、相手にとって参考になることがきっとあると思います。

    だから、強みがないから自分は何もできない、強みがないから誰かに話すこともないと思う必要は、私はないと思います。自分がこうやってみたらうまくいかなかったという話ですらも、その人を形作る、また個性を彩るものであると思うのです。経験があって今があるのであって、隠す必要なないと。だから、経験をもとに、ああいうことはもうやらない、でもいいし、もう1回挑戦してみたい、でもいい。自分の糧として過去の経験を全部消化していけば、無理やり強みを見つけなくても、次の一歩を進むことができるのではないかと思っています。これは自分に対しての言葉のお守りみたいなもので、いつも思ったりしています。

    嵯峨:ありがとうございます。木下さんは先ほどのプレゼンでも、失敗談も含みつつ現在があるということが伝わってきました。

    木下:失敗しかないです(笑)

    嵯峨:髙橋さんは、強みというものの捉え方を、ピンポイントで一点突破するというよりは、もう少し別の捉え方をされているのでしょうか。

    髙橋: 強みは、自然にやっていることで、自分では強みだとは思ってないですよね。セミ ナーの時にも、強みがわかりませんと言われます。そういう時には、「お手紙演習」 をします。誰か家族でも友人でもよいので、私の良いところを書いてみてくださいとお願いするのです。書かれたのを見た時、涙ぐむ人も多いですね。なぜかというと、意外だからです。でもそれは、いつもあなたがやっていることですよね、と。

    木下:息を吐くようにやっていますよね。

    髙橋:こういう見つけ方があります。恥ずかしいですが、お友達などに「この前セミナーでこういうことをやれって言われたので、ちょっと聞くけど…」とネタにしながら、僕の、私のいいところはどこかと聞かれてみると、案外自分の気づかないことを教えてもらえます。それが強みになるのではないかと思います。

    嵯峨:人に言ってもらうということですね。つまり裏を返すと、ないと思っているけど実はあるということですね。

    髙橋:誰にでもあります。自然なのでわからないだけなのです。

     

    ■キーワード③「”できない、もう遅い、今さら”を捨てる」

    嵯峨:ありがとうございます。続きまして、髙橋さんからいただいたもう1つのキーワードです。「“できない、もう遅い、今さら”を捨てる」こちらについても、お願いします。

    髙橋:皆さん思いませんか? このぐらいの年代になってくると、「もう今さら」「もう時間ないよ」などと考えるのです。本当にそうかな? と、私は計算してみました。20歳から60歳の40年間に、自分が自由に使える時間の合計は約3万時間になります。今度は60歳定年から80歳までとしましょう。その20年間は比較的時間がありますよね。1日中使える時間や、もしアルバイトに行っていたとしても7~8時間は使えます。すると、なんと6万時間あるのですよ。若い40年間の2倍あるのです。ということは、その気になればできるということです。先ほどのウクレレの彼は、ずっと弾いていると言っていました。若い方が仕事から帰ってきてウクレレを弾こうと思っても、それほど時間はないはずです。やる気があればできる。だから、今さら遅いということはないと思います。

    嵯峨:ありがとうございます。これはもう元気が出るお話ですね。いつ始めても遅いことはない。

    髙橋:ないと思います。私も63歳で保育士の会社にいましたので、こそこそと勉強をして保育士の資格を取りました。実技試験では、私はピアノができないのでギターで受けました。会場が若い女性ばかりでピアノで試験を受けている中、私だけ流しのようにギターを持って会場に入って「どんぐりころころ」を弾いたという(笑)、そんなシュールなこともありましたが、年齢は関係ないですよ。

    嵯峨:ではでは最後に、木下さんの「合わなかったら、次へ!」というキーワードです。

     

    ■キーワード④「合わななかったら、次へ!」

    木下:髙橋さんも私も、手を変え品を変え、まず一歩出てみると変わるよ、ということをお伝えしていて、実際に私たち2人ともそれで変化してきていると思います。ところが頑張って一歩を踏み出しても、「ここは違う!」ということも、きっとたくさんあると思います。

    私は50個ぐらい習い事をやってきましたが、残っているのはほんのわずか。始めるのが趣味のような感じで(笑)。でも、嫌だったら辞めればいいのです。日本人は、と大きく括るのはあまり好きではないのですが、初めから絶対にここで何か成果を出さなければいけないとか、役に立たなければいけないと思い込みすぎているが人が多いなと感じています。これだけさまざまな居場所やコミュニティがあって、私たちもさまざまな個性を持っているので、いいマッチングもあればやっぱり違ったということもあるに決まっています。そこで、合わないところにずっと我慢しているというのはもったいないですね。後ろはだんだん短くなってきていますから、合わないことをやってる時間は、私はもうないと思っています。

    なので、何か踏み出してみてやってみた。ちょっと違ったなと思ったら、また違うところに踏み出してみる。私はそれぐらいでいいと思っています。合わなかったらまた次に行けると思えば、踏み出しもステップも軽くなると思います。ぜひこの気持ちを持って、一歩踏み出されるといいなと。自分自身も、今もそう思って行動しているので、皆さんにもお伝えしました。

    嵯峨:髙橋さんも深く頷いてますね。

    髙橋:本当にそうだなと思います。自分の未来や夢というものは、自分の想像の外にあると思います。自分の行動がその答えを見つけてきてくれると思っています。

    木下:お店に、悩み相談があると来てくださる方いるのですが、ずっと考えているだけでまだ何もしていませんという方がいらっしゃいます。動かないままの悩みを、私は妄想だと言っているのですが、動いて初めて壁が見えてくると思うのです。そこで初めて肌触りのある悩みが生まれます。それをみんなで一緒に考えればいいと思いますし、乗り越えて解決している人を参考にすればいいと思います。

    考える時間はある程度は必要ですが、一通り考えたら踏み出し、何かに当たったらまた考えて行動する。この繰り返しが結果的に成果を生むと自分自身も感じています。

    嵯峨:ありがとうございます。「地域参加のトビラ」にも言えることですが、気軽に参加できるところが売りではあります。ですから、一方で気軽に断れるというか、一度やってみてちょっと別のところにも行ってみようというのは、私もありだと思うのです。いろんな方といろんな団体とを行き来したりしながら、自分に合うものを見つけていただくのがよいのではないでしょうか。

    木下:私はいつも「やり散らかしましょう」という話をしてます。団体の皆さんも、来てもらう人もしっかり選んではいかがでしょう。合わない人は、必ずいます。一度お試しでボランティアに来ていただいて、終わったところで、お互いにこれからまたやっていけそうかというお話合いをしてもいいかなという風に思います。まずはお互いに接点を作ることを気軽にやれたらよいのでは、という意味で「やり散らかしましょう」と、ちょっと雑な言葉ですが、皆さんによく話しています。

    嵯峨:ありがとうございます。 あっという間にお時間となりました。
    最後に、木下さんの新著『会社を辞めて幸せな人が辞める前に考えていること』で、さまざまな方の事例が多数掲載されている中、最初の章にある「ハッピーエンドではなくハッピーネクスト」という言葉が印象に残りました。何かの節目をハッピーエンドとするのではなく、そこでハッピーネクストを考えていくことが、すべてのアクションにつながると考えています。ぜひ皆さんも、ハッピーエンドよりハッピーネクストでどんどん考えていくと、そんな気持ちで日々の活動や仕事などを捉えていただくといいのかなという風に思いました。

    本当に素晴らしいゲストのお二人のお話で、大変有意義で濃密なセッションだったと思います。ありがとうございました。

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

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