東京ホームタウンSTORY
支援先レポート
制度の間にある課題をネットワークで解決
「地域福祉コーディネーター」の仕事とは?
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地域が抱える課題は、年々複雑になっている
――文京区の富坂地区で、上村さん、保良さんは、小地域福祉活動の推進、支援をする「地域福祉コーディネーター」として活動されています。どんなお仕事なのですか?
上村 地域福祉コーディネーターは、既存の制度ではなかなか解決できないことを地域で解決していく仕組み作りのお手伝いをして、街づくりを進める役割です。私たちが現場に出向き、住民のみなさん、関係機関と何が問題になっているのかということを話し合い、解決の糸口を探ります。
文社協では富坂、大塚、本富士、駒込の4地区に配置していますが、地域福祉コーディネーターは、区によっては「コミュニティソーシャルワーカー」と呼ばれることもありますし、配置していない区もあります。
――実情に応じて配置するのですね。
上村 早くから配置したのは豊島区、立川市、西東京市などで、文京区は2012年から配置を始めました。
課題が早期発見できる仕組みを作る
――既存の制度では解決できない課題とは、ここ3、4年ではどのようなものがあるのでしょう?
上村 課題は非常に複雑になっていますね。例えば、特殊詐欺(振り込め詐欺)、孤独死、虐待、ごみ屋敷、といった課題です。
――それぞれ、かなり難しそうですね。
上村 地域福祉コーディネーターとしては、何に困っているのかに寄り添いながら、少しずつ課題解決をサポートする必要があります。既存の制度では解決が難しくても、複数の関係機関が関わることで、解決できることともあるんです。逆に、縦割りの組織が多いなかで、横につながないと解決できないことも多いといえます。
――具体的にはどう活動するのですか?
上村 早期発見、予防できる仕組み作りです。詐欺被害に遭ったあとでは、お金を取り返すことは非常に困難です。ごみ屋敷も、ごみ屋敷化する前に声がけして、そうなる原因を取り除けば防いでいけます。
振り込み詐欺の場合は「こんなケースがあったんですよ」という情報共有ができること、ごみ屋敷にしても、気づいた人が声をかけられる関係を作ること。要はつながりです。
――被害者のサポートは?
上村 直接的なサポートは関係機関につなぐことですが、相談できる場所、集う場を一緒に作って、相談に行かれるようにお手伝いすることです。
高齢化が進む集合住宅で、交流サロンを作った
――富坂地区では、高齢化が進む集合住宅で、地域の方々が集まるサロンを立ち上げたという成功事例があります。上村さんが深く関わられたということで、ぜひお話を聞かせてください。
上村 地域課題について話し合う住民懇談会を行ったところ、高齢化が進んでいる集合住宅があって、住民同士のつながりがない、一週間以上、人と話さない生活をしているというお話がありました。詳しく聞いてみると、そこは数年前に立て替えて、オートロックになっていたのです。
外からの侵入は防止できるので防犯上はいいとしても、隣の人の気配がわからない、おすそわけの物も持っていきづらい、情報交換ができないので、特殊詐欺があってもわからないといった状況が見えてきました。
――住んでいる人は変わらないのに建物のありようが変わっただけでも 空気のようなものが分断されていくんですね。
上村 カードがないとほかの階に行けないとか、コンシェルジュに問い合わせてもらってからでないと、訪問もできないとか。
そこで聞き取りを行い、集合住宅の管理組合の活動でも使っている集会場に高齢者が集えるサロンを作ろうと。その立ち上げのお手伝いをしました。今ではメンバーのみなさんが企画を行うなど、住民主体の地域福祉活動の場になっています。
――消費だけになりがちなつながりのほかに、社会とつながる仕組みを作る、が、上村さんたちの取り組みということですよね。
上村 そうですね。どんなことをやっていたらみんなが参加しやすいか。体操をしたり、集まってごはんを食べたり。来なかった人には「どうしたの?」と聞いてみるなど。通りがかった人に「これ食べていらっしゃい」というような、昔ながらのつながりを取り戻しました。
――いったんサロンが機能し始めた後は、どんなことに関わるのですか?
上村 運営は地域の皆さんが行いますが、例えば「体操教室の開催のため、講師になってくれる人が必要」といった相談を受けた際は、講師を探すなどのお手伝いをします。
このように、ある程度軌道に乗ると、必要なときに相談していただける環境ができあがります。その段階になったら、地域福祉コーディネーターは、一歩引いてその活動を見守るという姿勢がよいと思います。
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