東京まちかど通信
アイデアを出し合うことを通じてシニアの活性化や社会貢献をしたい
八王子市に、シニアが集ってものづくりのアイデアを出し合い、ひいては商品化を目指すという会があります。脳の活性化を通じて参加メンバーを元気にする効用も。その「八王子アイデア発明研究会」事務局長の渡辺重男さんはじめ、参加メンバーに活動内容やそのやりがいなどについてお話をうかがいました。
最終的には実際に商品化し、それによって世の中に貢献することを目標にしています。
――「八王子アイデア発明研究会」の活動内容をお教えください。
「月1回、メンバーが集まって、アイデア発明の専門家である先生の講演を聞き、その後ある課題にそって実際にアイデアを出し合うワークショップを行います。終了後に懇親会も行います。会員は八王子市の広報紙で集い、隔月で5~10人ほどが新規で加わるという状況です。全部で60人ほどですが、月例会へは毎回30人程度が入れ替わり参加しています」
――アイデア出しはどのように行われているのですか?
「2つのパターンがあります。1つは、会員が『こういうことで困っているが、これを解決できるモノをつくれないか?』とアイデア募集の形でテーマ出しをして、それをみんなで考えるというもの。もう1つは、実際に企業で商品開発にかかわっている方をお呼びして、その意見募集に応える形でアイデアを出すというものです。後者では、その企業の経営者なども来られて、先生とともにアイデアを審査していただき、優秀なアイデアは表彰をしてモチベーションを高めるという工夫もしています。いずれのパターンにおいても、最終的には実際に商品化し、それによって世の中に貢献することを目標にしています」
――どういう人が参加しているのですか?
「大きく2タイプに分かれます。1つは、集まってみんなでワイワイやることを楽しみ、それで活性化するタイプ。もう1つは、商品化を目指し、あわよくばそれでビジネスにつなげようと考えている人です。そういう人たちのために、月例会とは別に、もっと積極的に商品開発を進めるプロジェクトも並行して行っています」
シニアもアイデア発明で頭を使えば脳を活性化でき、痴呆の予防にもつながるだろうし、あわよくば仕事にもつながる。
――「八王子アイデア発明研究会」が発足した経緯をお教えください。
「八王子市の高齢者支援課が『シニア元気塾コーディネーター養成コース』という講座を主催しているのですが、その修了生の有志が集まって、習得した知識やスキルを活かして実際に市内の高齢者の活動をコーディネートしていこうという『八王子高齢者活動コーディネーター会』(通称『八コー会』)をつくりました。『八王子アイデア発明研究会』の会長である与儀清(よぎきよし)さんや私もその設立メンバーです。
ある時、与儀さんと私が情報収集をかねて秋葉原で行われている*『シニア大楽(だいがく)』に参加した時、アイデア発明の専門家の話を聞いて、これは面白いと感激したのです。シニアもアイデア発明で頭を使えば脳を活性化でき、アイデアがよければ、仕事にもつながるし、なんといっても楽しい。これを八王子でもやりましょう、ということになりました。そこで、講師を務めていたその先生に、『八王子アイデア発明研究会』の講師をお願いして引き受けていただくことができました。第1回目は2008年10月に開いて、以降、月例会は欠かさず続けています」
八王子アイデア発明研究会』にて商品化をモノにしたいという人を支援していきたいと思っています。
――活動の成果、手応えはいかがでしょうか。
「活動を始めて第1号目の発明品として、会員の発案で普通のタオルに垢すり用タオルを縫い合わせたアイデアタオルを20本手づくりし、市のイベントに出品したところ、完売しました。うれしかったですね。しかし、そのアイデアタオルはその20本どまり。もっと世の中に知られる商品にしていくためにも、弁理士の先生を交えて製品特許を取り、またビジネスプランを整えたいと考えています。」
――渡辺さん個人としては、どういった思いで活動に参加されたのでしょうか。
「会社を定年退職後、人生の最後は社会の役に立つことをしようと市民活動を行うことに決めました。それで、長年システム・エンジニアとして従事してきた自分は、頭を使って考えることが性に合っていると思って『八王子アイデア発明研究会』に加わることにしたのです。これ以外にも、八王子市のシニア活性推進委員を務めたり、『論語を楽しく学ぶ会』、『吹き矢の会』、『蓮の花の会』といった趣味のサークルにもかかわっています」
――今後の抱負についてお聞かせください。
「まずは、『八王子アイデア発明研究会』にて商品化をモノにしたいという人を支援していきたいと思っています。それと、今、孫の教育に関心持って取り組んでいるのですが、学校の先生や親の管理から離れたところでマナーや社会常識などを教えることを事業化できないかと考えています。図書館などに行くと、よく定年後の居場所がない人がいるのを目にしますね。まだまだ元気で経験や知識があるのに、もったいない。そういった人たちのパワーを集結できれば、一挙両得だと思っています」
同会のメンバーにも、入会の動機と、参加してみての感想をうかがいました。
浜津敦子(はまつ あつこ)さん
「昔からいろいろアイデアを考えることが好きで、市の広報紙を見て興味を持ちました。1回目に参加した時、いきなり考えてもみなかった特許の話でびっくりしたのですが、お話を聞いてその気になりました(笑)。それ以来、何を見てもアイデアの発想をしてみるようになったのです。例えば、庭の木を剪定している時、専用のはさみがちょっと届かないところがあると、何かつないで使えるようにするものを考えたりします。夫にも『こんなものがあると便利じゃない?』なんてしょっちゅう話しかけています。とにかく、この会は参加していて楽しいですし、何だか若返るような気がしますね」
中田美恵子(なかた みえこ)さん
「私も、昔から『アイデア』という言葉が好きで、自宅に『アイデアサロン』と名づけていろんな人をお呼びしてコサージュづくりなどをしてきました。とにかく、世界に一つしかないものをつくるのが喜びです。それをプレゼントすればまた喜ばれるし。そんな私なので、1年前に広報紙でこの会のことを知った瞬間に『これだ!』と(笑)。また、下村先生の勧めで、「感動大賞」に応募したことがキッカケとなって東京新聞のミニコミ紙「ショッパー」へ投稿したところ、取り上げられたのです。それがとってもうれしくて、夢のある毎日が送れるようになりました」
金指征治(かなざし せいじ)さん
「以前から、プライベートでは会社の仕事とはまったく関係のないことをやろうと心がけてきました。40年ほど前のことですが、新聞でアイデア発明に関する記事を読み、非常に面白く感じて、それ以来いろいろな会合に参加してきたのです。モノのしくみを考えるのが好きなんですね。八王子には最近転居したのですが、広報紙でこの会のことを知って、一も二もなく参加しました。こうした活動は一人でやっていてもパッとしません。会に参加すれば強制的に考えるようになるし、同好者が集まっているので刺激にもなるんですね。とにかく楽しいので続けたいと思っています」
堀内進一(ほりうち しんいち)さん
「当会の設立メンバーの一人として、プログラムの企画や司会進行を担当しています。会社員時代は、電機メーカーで開発設計に従事しており、アイデアがないと仕事にならない世界に身を捧げていました。企業とのパイプもあるので、この会にどんどん呼んでこようと思っています。そして、単に集まって楽しむだけではなく、アイデアを製品化することをもっと促進させたいですね。また、この活動を通じて、地方自治体の施策もよく理解できるようになりました。今後もこうした市民活動への参加を通じて、よりよい地域づくりに参画していきたいと思っています」
内田美枝子(うちだ みえこ)さん
「私も設立からのメンバーです。とにかく楽しいことが大好きで、八王子のシニアをもっと元気にしたいという主旨に賛同し、何かお手伝いをしたいと参加しました。受付ぐらいはできるでしょうから(笑)。地域には、一人暮らしの高齢者がたくさん住んでいます。そんな方にも参加していただき、月1回元気な姿を見ることが楽しみになっています。また、アイデアに関しては、みんなでいい考えを出し合って、困っていることを解決させていければいいと期待しています」
*「シニア大樂」:NPO法人シニア大樂が運営するイベント。同NPOは、現役時代に蓄えてきた豊かな知識や経験と体験を多くの人々に語る”講演デビュー”を支援している。
*下村 正:「シニア大樂」講師
*与儀 清:「八王子アイデア発明研究会」会長
八王子アイデア発明研究会
- 電話番号: 090-4934-8707