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    東京まちかど通信

    合唱や演劇を楽しむ上に国際貢献も行い生きがいづくり

    ヴィンガーズ(VINGERS) 世話人・音楽監督 武田洋(たけだ ひろし)さん

    最高齢85歳・平均年齢77歳という、日本最高齢?の合唱団があります。その名は「ヴィンガーズ」。2003年に結成以来、毎年チャリティを兼ねたコンサートを開催し、NGOを通じてラオスの子供たちの就学資金を寄付しています。合唱や芝居を演じることを楽しみながら、観客をも楽しませ、さらに演じる側も観る側も国際貢献を行う――。そんな生きがいづくりの活動について、音楽監督の武田洋さんにお話をうかがいました。

    平均年齢77歳のメンバー全員がセーラー服や詰襟を着て、高校生に扮して熱演。観客には大いに受けました。

    ――「ヴィンガーズ」の活動内容をお教えください。

    「『ヴィンガーズ』は、登録メンバー41人、平均年齢77歳の合唱団です。定期的な活動としては、月2回、千駄木の浄風会館に集まって練習を行っています。そして、昨年までは毎年2回、北区滝野川会館などでコンサートを開催するほか、年5回ほどボランティアで老人ホームなどに慰問してきました。今年からは、負担軽減のためコンサートは年1回となります。このコンサートは入場料をいただきますが、収益金の一部は国際支援活動を行う一般財団法人の民際センターを通じて、貧困のために学校に行けないラオスの子供たちの就学資金として寄付しています」

    ――どういった曲を合唱しているのですか?

    「戦前戦後の歌謡曲を主に取り上げています。また、歌だけでなく、芝居も織り交ぜて演じています。今年1月のコンサートでは、生徒全員が東京大学志望という架空の高校を舞台に、東大の入学試験が中止された1969年のひとコマを題材にした青春コメディーを演じました。平均年齢77歳のメンバー全員がセーラー服や詰襟を着て、高校生に扮して熱演しましたが、観客には大いに受けましたよ。ちなみに、曲のアレンジだけでなく、脚本や演出もすべて私の手づくりです。私は以前、プロとしてオペラ劇団に参加していたことがあり、音楽劇の制作に関しては多少の経験はありますので」

    第3回ファン感謝コンサートから2011年1月22日 第3回ファン感謝コンサートから
    横須賀ダイナマイツのお二人はアラウンド80

    次第に『ヴィンガーズ・サウンド』ともいえる温かみのある独特の合唱ができるようになりました。

    ――では、ヴィンガーズ結成の経緯をお教えください。

    「私の仕事先を通じて、ヴィンガーズの発起人である小林栄一さんから声をかけられました。小林さんは、高齢者の居場所づくりを兼ねて、何か社会の役に立つ活動をしたいと考えて10数人のお仲間を集めていたのですけれども、なかなかフィットするものが見つからなかったとのことでした。そんな時に、私が合唱指導をすることができるという噂を聞きつけられたようです。失礼ですが、『こんなお年寄りが今から合唱を?』と思いましたが、熱心に頼まれるのでお引き受けしました。結成して4年後、メンバーの一人が会社員時代、民際センターに登録してチャリティーコンサートを行った経験があったことから、ヴィンガーズも同様の活動をして何かのお役に立とうという話になりました」

    ――チャリティとはいえ、お金を取るからにはかなりのレベルにしなければならなかったと思いますが、どのように指導されたのでしょうか。

    「最初は大変でした。ほとんどのメンバーは未経験者で、声は出ない、譜面は読めない、リズムはつかめない、と、できないことばかり(笑)。それを一つひとつ、まさに手取り足取り教えてトレーニングを積み重ねていったという感じです。しかし、声帯の筋肉が硬くなってからのトレーニングなので、なかなか洗練された声にはなりませんでした。当初は、私が経験してきたクラシックの合唱にこだわって練習していましたが、ある時に高峰三枝子さんのヒット曲の『湖畔の宿』を練習してみたところ、なかなか味わいがあって良かったのです。素人の高齢者でも、慣れ親しんだ曲には体が素直に反応することがわかり、それ以来はもっぱら歌謡曲を練習してきました。次第に『ヴィンガーズ・サウンド』ともいえる温かみのある独特の合唱ができるようになりました」

    真剣にやっているからこそ感動してもらえ、勇気や希望を与えることができたと受け止めています。

    ――合唱だけでなく、芝居も行うようになった理由とは?

    「とはいえ、なかなか人前に出せるほどのレベルにはなりません。しかし、お金を頂戴できるステージをつくらなければなりませんでした。それに、戦前戦後の歌謡曲だけで成立するのかという問題意識もありました。そこで一計を案じて、芝居を組み合わせることを思いついたのです。曲に合わせて、メンバーが若かりし頃の状況を設定した芝居にすれば、ヴィンガーズにしかできないようなオリジナリティのあるステージができるのではないかと考えました」

    第3回チャリティーコンサートから2010年6月5日 第3回チャリティーコンサートから
    庶民の哀感を歌う下町キャンディーズの3人はオーバー70

    ――1回目のステージはいかがだったのでしょうか。

    「100人ぐらい入る小ぶりのライブハウスを借りました。いきなり歌と芝居だけというのも心配でしたので、お客さまにはお酒を飲みながらくつろいで楽しんでもらおうという思惑があったからです。集客はメンバー全員が手分けをして行いましたが、満員のお客さまが入りました。結果は大成功。お客さまは同世代で知り合いが多いということもあると思いますが、大喜びでした。メンバーはみんな真剣に演じているのですけれども、出てはいけない場面で出てきたり、セリフを忘れたり、動きが滑稽だったりと、そんなドジっぷりにお客さまは涙を流して笑い転げるのです。これは期せずしてですけれども、真剣にやっているからこそ感動してもらえ、勇気や希望を与えることができたと受け止めています。この反響を受けて、メンバーはみんな『行ける!』と自信を持ったと思います。そして、18万円を寄付することができました」

    ――2回目以降はいかがでしたか?

    「1回目に来ていただいたお客さまと、その口コミで来るお客さまが増えました。遠く新潟などから来る方もいました。早くから会場に入って、リハーサルから観ているというファンもできましたよ。1回目は2部合唱で10曲ほどをマスターし、本番に臨みましたが、現在ではソプラノ、アルト、テノール、バスの4パートに分かれて合唱することができます。大した成長力だと思います」

    身の回りの活動に三重四重の効用があると感じています。

    ――ところで、高齢者がヴィンガーズのような活動をすることの効用を、どのように感じていますか?

    「歌うことは全身を使うので、結構な運動になります。その点で、まずは健康的です。そして、コンサートを開いてお客さまに喜んでもらえるという手応えが大きなやりがいをもたらし、精神の健康に良い効用を及ぼしていると思います。さらに、その収益金で世界の役にも立てているという満足感が、生きがいになっているのではないでしょうか。この部分では、お客さまのほうも同様に、自分の出したお金でラオスの子供たちが学校に行けるという満足感をもたらしていると思います。つまり、身の周りの活動に三重四重の効用があると感じることができるのではないでしょうか」

    ――最後に、今後の活動方針についてお教えください。

    「コンサートは年1回のペースに落としますが、基本的には同様の活動を続けます。しかし、あくまでもお金をいただく以上は、もっとレベルを高めて、決していい加減な合唱団ではないとアピールしていきたいと思っています。これまでは歌謡曲が中心でしたが、今後はNHKの合唱コンクールの課題曲など、長尺の本格的な作品にもチャレンジします。もう、最初の頃のようなドジで喜んでもらうといった甘えは許されないと思いますので(笑)。しかしながら、ヴィンガーズの皆さんからは、私も元気をもらっています。高齢になってもまだまだできることはたくさんあると、勇気を得られていますね」

    第3回ファン感謝コンサートから2011年1月22日 第3回ファン感謝コンサートから
    昭和40年のNHK合唱コンクールの課題曲に挑戦

    メンバーの方にお話をうかがいました。

    小林栄一(こばやし えいいち)さん

    「高齢者でも世の中の役に立てるというところを見せたくて、仲間を募って清掃活動などを始めたのですが、『危ない』とか『無理しないで』などと逆に労わられて長続きしなかったのです。そんな時に武田さんを知り、合唱団をつくって活動すれば人に喜ばれて我々の居場所にもなるんじゃないかと思って指導をお願いすることにしました。武田さんは厳しく熱心に教えてくれます。それだけに、メンバーも向上心を持って真剣に、かつ楽しんで取り組んでいますね。うまくなろうという努力が、老化防止になっていると思いますよ。老人ホームに慰問に行くこともでき、世の中の役に立っていることを実感していますね」

    坂下敦子(さかした あつこ)さん

    「お友だちに誘われて、最初は歌えないので断っていたのですけれども、練習を見にいったらとても楽しそうだったので、参加することにしました。学生時代にコーラス部にいたこともあるんですけれども、女子だけでした。ヴィンガーズは男性もいるからいいと思います。歌うだけでなく、いい仲間づくりの場にもなっていますよ。遠くから来る人とも、月1、2回だけでも会っておしゃべりするのは楽しいですし。また、みんなの力を合わせて世界の子供の役に立っているというのも、手応えがあっていいですね」

    ヴィンガーズからの寄付金をラオスに届けているNGOの方にお話をうかがいました。

    一般財団法人 民際センター
    コミュニケーション開発局 第二ファンドレイジング部 部長
    冨田直樹(とみた なおき)さん

    「当センターは、経済的に貧しく学校に通えない子供たちが就学できるよう支援を行う国際協力NGOです。ヴィンガーズのようなチャリティ活動を行う合唱団をいくつか登録していますが、ここまで高齢の方々の合唱団はほかにないと思います。高度成長期を支えた世代の方々ですが、新たな生きがいの対象を見つけて情熱を注いでいるわけですから、皆さんイキイキしていますね。当センターのスタッフも、年2回のコンサートの最初にステージに立ってお客さまにごあいさつをし、ラオスの状況をお話していますが、チャリティの意義をその場にいる全員が感じて一体感が育まれているように思います。このようにみんなで美しいコンサートをつくり、しかも世界の支援につなげるという素晴らしい活動での生きがいづくりがもっと広がるといいと思っています」

    奨学生に奨学金を提供奨学金授与式で奨学生に奨学金を提供(冨田直樹部長・写真右)
    ■プロフィール

    名称/ヴィンガーズ(VINGERS)
    設立/2003年6月
    代表者/小林栄一(こばやし えいいち)
    音楽監督/武田洋(たけだ ひろし)
    活動内容/チャリティコンサートおよび慰問ボランティアコンサート
    事務所所在地/〒190-0011 東京都立川市高松町3-19-17 グランマレー611 有限会社エピステーメ内
    連絡先/042-548-1203

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