東京まちかど通信
公園の樹木整備や観察会で自然を学び親しむ
主に練馬区在住のシニアが集い、緑化や自然保護のボランティア活動および自然観察を楽しむ練馬みどりの推進会。2002年に発足し、これまで月1回の活動を欠かさず継続してきました。その活動内容や成果などについて、会長の吉川篤さんにお話をうかがいました。
区の緑を守り育てていくための活動を積極的に行っています。
——練馬みどりの推進会の活動内容をお教えください。
本会は、原則として練馬区在住者で構成し、自然保護と回復に関して自主的・組織的に地域住民に対して普及啓蒙活動を行うことを目的にしています。現在、42名の会員がいます。その目的を達成させるために、主に4つの活動を行っています。1つ目は、自然保護や回復に関する、東京都および練馬区の緑化行政事業への協力を行います。2つ目は、各地域における緑化の普及向上への取り組みです。3つ目は、会員の樹木や自然に関する知識向上のための観察会や勉強会の実施です。そして4つ目は、会員相互の親睦を図ることです。
——具体的に、どういった活動をされているのでしょうか?
まず、東京都や練馬区の緑化行政事業への協力は、練馬区内にある石神井公園、光が丘公園という都立公園に群生する樹木に取り付ける樹名板の整備を行っています。樹名板の整備とは、樹名板そのものの作成から手がけ、年2回ずつ、各公園の樹木の老朽化した樹名板を取り替えたり、文字がかすれた部分を書き直したり、といった作業を行います。道具一式を持っていって、巡回しながら手直しが必要な樹名板を探し、その場で書き直し作業をしています。区内にはほかに、城北中央公園、大泉中央公園という都立公園もありますが、両公園はスポーツ施設が主で樹木はさほどありませんので、もっぱら石神井と光が丘の両公園で活動しています。また、練馬区は区と区民が一体となって区の緑を守り育てていくために、緑化協力員制度を設置していますが、それにも積極的に協力して区立公園の樹名板取り付けなどの支援をしています。 各地域における緑化の普及向上への取り組みとは、東京都にお願いし年1回200本ほど配給される樹木を、“練馬植樹会”に紹介し地域の家庭に植えるといった活動をしています。但し、この活動は現在は練馬みどりの推進会としてではなく、練馬植樹会と区の緑化協力員が行っています。
自然観察会では、園内を植物学の専門家である先生の説明を聞きながら歩きます
——観察会や勉強会では、どういったことをしているのですか?
春と秋は自然観察会を行います。今年の春は、目黒区にある自然教育園に行きました。園内を植物学の専門家である先生の説明を聞きながら歩くという趣向です。10時から歩き始め、途中1時間ほど昼食休憩を挟み、14時まで歩いて解散、といったプログラムです。高齢者も多く、それ以上だと歩き疲れてしまうので早めに切り上げています。また、念のために保険もかけています。これまで、新宿御苑や清澄公園、トトロの森などに行きました。
冬は、野鳥観察会を行います。浮間公園、東京湾野鳥公園、清澄公園など野鳥が多く見られる公園に出かけています。
夏の勉強会もぼぼ同様です。世田谷区の等々力渓谷や地元の石神井公園で、植物の名前や特徴などを先生から教わっています。
——それ以外の活動についてはいかがでしょうか。
自然観察会や樹名板整備のない月は、連絡会を行っています。年1度の定期総会の内容や、自然観察会および勉強会の内容について話し合っています。定期総会では、当年度の活動報告や決算報告、翌年度の活動計画および予算案の承認を得るのと、当年度の活動の反省や今後の展望についてもざっくばらんに話し合っています。そして、これらの活動を会員みんなで行うことを通じて、会員相互の親睦を図ることも大きな活動目的となっています。
きっかけは実家の庭木の剪定を手伝ったことでした。
――では、練馬みどりの推進会を発足した経緯をお教えください。
それまで、私や副会長の浅見克美さんはじめ、会員の多くは東京都みどりの推進委員として樹名板整備や街路樹の伐採整備などの活動を行っていました。ところが、2002年にこの制度が打ち切られることになったのです。同制度の推進委員は全体で1000人くらいいたと思いますが、そのうち練馬地区には25人いました。この人たちから、ぜひこの活動は存続させたいという声が上がりました。しかし、個人が勝手に都立公園の樹名板整備をしたり、街路樹を伐採するわけにはいきません。そこで、任意団体として当会を立ち上げ、引き続き活動ができるように東京都公認の腕章や旗などを継続して使用させてもらうよう交渉し、それが認められることになり、正式に発足させました。25人のうち、当初は20人弱が参加しました。
――吉川さんご自身は、どのように樹木とかかわってこられたのでしょうか?
定年退職後はまた別の仕事に就こうと考えていたのですが、ちょうど60歳の時に早期胃がんが見つかって手術をしたのです。そして、回復し次の仕事に就くまでの間、実家の庭木剪定の経験や、前々から自然に親しむことは好きでしたので、その作業で樹木に興味を覚えたのです。そこで、ちょっと勉強したくなって、当時文部省認定の通信教育で造園講座を受講しました。そこでさまざまな木の名前を学びましたが、それがとても楽しかったのです。樹名板で木の名前を調べに公園にもよく出かけるようになりました。そして、田無にある東京大学の田無演習林で“森のボランティア”を募集していることを知り、さっそく応募したのです。そこでボランティア活動をしている時に、東京都みどりの推進委員や練馬区の緑化協力員に推薦されました。
散歩していて、目に入る木の名前や特徴がわかると楽しいものです。
――木について学び、森林整備の作業にかかわることに、どういったやりがいを感じますか?
当初は何も知りませんでしたが、次々にわかるようになると楽しいですよね。散歩していて、目に入る木の名前や特徴がわかると楽しいものです。自然に親しむのは気持ちよいですし。
――練馬みどりの推進会での活動では、どんな楽しみ、生きがいがありますか?
会員は皆、樹木や植物が好きで詳しい人ばかりです。同年代の同好者が集まる会ですから、仲間づくりにもなるし、話していて楽しいですよね。活動そのものでは、例えば樹名板を取り付けている時、通行人から『おかげで木の名前がわかります、ありがとう』と言われたりもしますよ。また、“アカメガシワ”と“イイギリ”というよく似た木があって、見分けがつきにくいんですが、ある時、石神井公園で自分が取り付けた“アカメガシワ”の樹名板が裏返されているのを見つけたのです。それでその木をよくよく見たら“イイギリ”でした。自分よりも詳しくてよく見ている人があるもんだ、と逆にやりがいを感じましたね。
また、自然観察会などの時は、観察することになる樹木などの写真と特徴を掲載した冊子を事前に手づくりしています。図書館に行って図鑑を資料にしてつくるのですが、そんな作業も勉強になって楽しいですね。
――最後に、今後の活動について展望をお聞かせください。
基本的には、従来と同様の活動を続けていきます。これ以上欲張っても、年齢的に無理してしまうことになりますから。課題としては、若い次の世代の会員を増やすことですね。ビラなどを公共施設に置かせてもらうなどしてPRしていますが、もう少し積極的に働きかけていかなくては、と思っています。
会員の方にお話をうかがいました。
浅見克美(あさみ かつみ)さん
自然や緑が大好きで、“日本百名山”を70山ほど登りました。よく山に会員仲間を連れて行って、高山植物の説明をしたりしますよ。自然の中で過ごすと、安らぎを感じますね。私のとってはかけがえのないことです。練馬みどりの推進会は、吉川さんなどとともに立ち上げました。会長の任期は2年で、私と吉川さんと交代で就任しているといった状況です。後継者をつくることが課題ですね。