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    東京まちかど通信

    シニアがシニアを支えて 暮らしやすい街づくりを実現

    街のお助け隊 コンセルジュ 代表 青木弘道(あおき ひろみち)さん

    品川区の中延商店街を本拠地に、周辺に住む高齢者のちょっとした生活の困りごとを支援している街のお助け隊 コンセルジュ。”有償ボランティア”というしくみを導入し、継続性と活動する側の責任感を高めていることが特徴的です。養蜂も手がけ、取れたハチミツを配合した「生キャラメル」をつくり商店街のPRにも一役買っています。代表の青木弘道さんと、ボランティアスタッフとして参加している4人の方にお話を伺いました。

    街のお助け隊 コンセルジュ 代表 青木弘道さん(72歳)にインタビュー

    元気な高齢者を中心とする有償ボランティアスタッフが日常生活の様々な困りごとをお助けするという活動を行っています。

    ――まず、街のお助け隊 コンセルジュの活動内容からお教えください。

    街のお助け隊 コンセルジュは、品川区の中延商店街にある商店街事務所に拠点を置いて、半径700mほどの範囲で暮らす約1万人の高齢者をお客様と考え、まだまだ元気な高齢者を中心とする有償ボランティアスタッフが日常生活の様々な困りごとをお助けするという活動を行っています。

    お助けする内容としては、庭の除草や庭木の剪定、網戸の張替え、部屋の掃除、電球の取り替えなどさまざま。基本的に相談いただいて助けられることは何でもやります。ボランティアスタッフに登録してもらう際に、得意なことやできそうなことを書いてもらい、マッチングの参考にしています。

    また、ボランティアスタッフには水道工事業や電気工事業などの専門家も加わっているため、ある程度専門的な依頼にも対応できるようになっています。

    庭木の剪定

    包丁研ぎ

    有償ボランティアのしくみとしては、まずお客様に事務所で1枚1,000円のクーポン券をご購入いただきます。仕事を頼んでいただいた際にそれをスタッフに渡してもらうわけですが、スタッフはそのクーポン券を500円分の品川区内共通商品券と交換できる、というものです。差額の500円は、事務所の家賃や交通費など団体の活動費に充当します。

    「街のお助け隊 コンセルジュ」サービスのしくみ

    商品券という有価証券を報酬にすることで、ボランティアスタッフには「働けている」という喜びと責任感が生まれますね。

    ――「有償ボランティア」にしたねらいとは、どういったことでしょうか?

    活動に継続性を持たせることにあります。商品券という有価証券を報酬にすることで、ボランティアスタッフには「働けている」という喜びと責任感が生まれますね。定年でリタイアしても、まだまだ元気ならば仕事をして世の中の役に立っていたいと考える人は多いでしょうが、とはいえなかなか機会は見つからないと思います。そんな高齢者が誰かの役に立ち、それで手にした商品券でケーキの一つも買って帰れば家族にも喜ばれますし、孫に何か買ってやれるという張り合いも生まれます。家庭が明るくなりますよね。

    50歳からの美容教室

    コーヒーの淹れ方教室

    「着付け教室」の様子

    街のお助け隊 コンセルジュでは、地域コミュニケーションの場として、さまざまな教室も開催しています。

    そして、仕事を頼んだお客様は、困っていたことが解決できて助かるわけです。例えば、電球を交換するだけでも、高いところに登って手を伸ばして、なんてできないわけです。それを電器屋さんに頼もうものなら、5,000円ぐらい取られますね。そんなちょっとしたことに困る高齢者世帯がたくさんあるんです。ですから、ボランティアスタッフが仕事をした時は必ず「ありがとうございます、助かりました」と感謝していただけます。

    さらにもう一つ、スタッフが商品券で買いものをすれば、それだけ地元の商店街が潤いますね。品川区内共通の商品券ですが、ほぼ全額がここ中延商店街で使われています。つまり、有償ボランティアは”三方よし”のシステムなんです。

    ——ボランティアスタッフや利用者はそれぞれ何人いるのでしょうか。

    ボランティアスタッフは90人が登録していますが、常時活動しているのは20人ぐらいです。65~70歳の高齢者が中心ですが、中には20代の学生もいます。この活動に触発され、卒業後に社会福祉分野に進む人もいますね。

    お客様(利用会員)は900人ぐらいですが、そのうち500~600人がよく利用してくださっています。

    ——もう一つ、養蜂も手がけられていると伺いました。

    事務所のある建物の屋上で、17,000匹ほどの日本蜜蜂を飼育してハチミツを採取しています。日本では繁殖力の旺盛な西洋蜜蜂が多くを占め、日本蜜蜂は貴重な存在です。そのハチミツは”幻のハチミツ”といわれているほど。そして、これを原料に生キャラメルを手づくりして事務所で限定販売しています。養蜂はボランティアスタッフの中から4~5人の有志が手がけてくれています。

    朝9時頃の採蜜の様子。先ず巣箱から巣枠を取り出し、蜜を熟成している蜜ブタをポットのお湯で温めたナイフで削り取ります(左)。集めた蜜ブタは水から煮るとミツロウになります。次に巣枠を遠心分離器に入れて回し、ハチミツを絞り出します(中央)。下部のバルブをあけ、中にたまったハチミツをビンに流し込みます(右)。

    ――養蜂を始めた経緯と効果についてお教えください。

    街のお助け隊 コンセルジュの活動を始めたのは、NPO法人バリアフリー協会の当時の理事長なのですが、彼が2007年にたまたまある会合で、銀座ミツバチプロジェクトの代表者と隣の席になり、ビルの屋上での養蜂活動の話を聞いて自分もやりたくなった、という経緯です。我々スタッフも「面白い」と賛同し、さっそく銀座ミツバチプロジェクトに教えを乞いに通いました。

    「毎回、蜂とコミュニケーションしています。日本蜜蜂はまだまだ解明されていないことが多いんです」と、独自で養蜂を研究している金濱さん(左)。

    「女王蜂も働き蜂も女性なんです。女性社会を生きる蜂を見ていると元気をもらえます。」と語る宮本さん(右)。

    生キャラメルをつくりはじめたのは、ボランティアスタッフの一人が北海道に行った際のみやげに生キャラメルを買ってきたことがきっかけとなりました。「これにハチミツを混ぜればもっと美味しくなるんじゃないか」と試してみたところ、非常に美味しい生キャラメルができたんです(笑)。うまくいけば中延名物になるかもしれないという欲もありました。すべて我々の手づくりですから、1回にできるのは200粒が限界です。なくなったらつくる、というサイクルでやっています。とはいえ、テレビ番組などで取り上げられるようになって知られるようになると、これをお土産にしたいという地元のお客様も増えてきましたね。中延商店街のいいPRになっているんじゃないかと思います(笑)。

    日本蜜蜂から採取した幻のハチミツ(右)と、その貴重なハチミツを入れた、中延名物の生キャラメル(左)。

    特に大きかったのは、ボランティアスタッフの仕事の質の高さです。

    ――では、そもそも街のお助け隊 コンセルジュの活動を始めた経緯をお教えください。

    NPO法人バリアフリー協会は、1997年に設立された文字通り街のバリアフリーを研究・実践する組織です。バリアフリーとは段差をなくすといったことだけではなく、日常生活を阻害することを取り除くといったことも含まれます。そこでの活動を通して高齢者が日常生活に困っていることを知りました。そして学問的な研究だけではなく、実際に助けようと思ったのです。これを実践に移すに際し、経済産業省がシャッター街をなくそうとしていた時期ということもあり、当時の協会理事長の地元である品川区の商店街にスポットを当てた、という経緯です。有償ボランティアのしくみも、イギリスの事例などを参考に独自に考案したものです。

    ――街のお助け隊 コンセルジュの活動を始めてから10年経ちますが、この間、どういったご苦労がありましたか?

    街のお助け隊 コンセルジュ代表 青木弘道さん

    最初のサービス開始のお知らせは、区の広報誌や簡単なチラシだけで済ませましたが、なかなか浸透しませんでしたね。まずは”有償”であるという点が理解されにくかったのです。”ボランティアは無償”という固定概念がありますから。また、高齢者は、悪質な事業者に騙される経験をしている人も多く、「困ったことは何でも手伝います」という我々は警戒されてしまったという面もあります。また、一人暮らしのお年寄りの見守りサービスとして学生スタッフが電話をかけると、”オレオレ詐欺”に間違われてガチャンと切られる、ということもありました。

    そうした中でも、一人、二人と利用者が出始め、そういった方々の顔と名前を覚えて街中で会った時など声がけをするといった工夫もしながら、徐々に信頼を得ていきました。特に大きかったのは、ボランティアスタッフの仕事の質の高さです。例えば、庭の草をむしるにしても、きちんと根から抜くので長持ちするんですね。そんなことも口コミで広がったと思います。さらに、マスコミでも紹介されるようになって広まっていきました。

    実は、街のお助け隊創設者が体調を崩したり、赤字が続いていたこともあって、活動をやめると決めたこともありました。それを知った常連のお客様から「利用者を探してくるから続けて。本当に助かっているんだから」という言葉をいただいたのです。そんなお客様が一人でもいるなら、と思い直した次第です。

    ――今後の抱負をお聞かせください。

    このしくみを東京23区内にも広げ、できるだけ多くの高齢者の役に立って行ければと思っています。

    ボランティアスタッフの方にインタビュー

    金濱 和弘(かなはま・かずひろ)さん(73歳)(前職:セメント工場勤務)

    定年後にブラブラしていた時、利用者として水道修理を頼んだことがきっかけで、この活動に興味を持ちました。2008年のことです。話を聞いて、自分もまだ元気なうちに世のため人のため、家族のため、そして自分のためにやれることがあれば手伝いたいと思ったのです。

    私は田舎育ちなので、草取りでも剪定でも何でもやります。そんな中、生き物が好きということもあって、養蜂を始めた時からずっと手がけさせてもらっています。ミツバチだって犬や猫と同じ生き物ですから、可愛いもんですよ(笑)。毎朝、屋上の養蜂小屋に行った時に「おはよう。元気か?」と声をかけるんです。ハチたちは羽音を鳴らして応えてくれますよ(笑)。

    私は50代後半に糖尿病予備軍となりましたが、今ではすっかり治まっています。この活動のおかげだと思っています。

    桜庭 德昭(さくらば・のりあき)さん(66歳)(前職:電気工事業)

    2011年から参加しています。妻がこの活動のことを知っていて勧められました。代表の青木さんに話を聞きに行って、面白そうだと感じて自分もやってみることにしました。

    定年まで電気工事業に携わっていたので、その方面の仕事は一手に引き受けています。それ以外にも、除草から養蜂まで、教わりながらも幅広くやっていますね。

    さすがに夏の暑い時期に外で仕事するのは大変ですが、それでもお客様に喜ばれると嬉しくなりますね。また、体を動かすので健康にいいのが一番じゃないでしょうか。もらった商品券はためて、たまに妻と外食するのが楽しみになっていますね(笑)。これからもできる限り続けたいと思っています。

    古口 誠(こぐち・まこと)さん(81歳)(前職:宅配便配達業)

    5年ぐらい前に新聞で「商店街がミツバチを飼っている」という記事を読み、興味を持ちました。東京のど真ん中でミツバチなんて飼えるのか、と。子どもの頃に田舎でミツバチを飼っていたことがあるからです。さっそく見せてもらいにここまで来て、自分もやらせてもらうことにしました。

    大田区西六郷から中延まで毎日自転車で50分くらいかけて通っています。その往復と、お客様の家の水回りの掃除や庭仕事ですっかり健康的になりました。有償なのも気に入っています。自分には9人の孫がいるんですが、その孫たちに何か買ってやれることが生きがいになっていますね(笑)。

    宮本 聖子(みやもと・せいこ)さん(68歳)(主婦)

    中延会館で行われたイベントに参加した時、管理人さんに街のお助け隊 コンセルジュへの参加を勧められたのがきっかけとなりました。私は主にお客様の家の掃除に行かせてもらっています。自分の家の掃除をしても誰もほめてくれませんが、お客様のところだととっても感謝されて、しかも「若いからいいわねぇ」とまで言ってもらえるんです(笑)。もうイキイキしちゃいますね(笑)。ハチにも元気をもらえています。

    商品券も楽しみなんです。私は、仕事をして、もらった商品券でこの商店街で大根やら人参やらを買って帰るのがとっても楽しみになっています。主婦にとってこの商品券をいただけるのは大きいですよ。

    これからも、ずっと続けたいですね。だって「若い」って言われたいじゃないですか(笑)。

    (取材:2014年7月31日)

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    中延商店街HP

     
    ■プロフィール

    街のお助け隊 コンセルジュ
    設立/2004年
    代表者/青木弘道

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