東京まちかど通信
第17走者 髙山泰明さん
「誰かの役に立てること」。地域の方にセンターが必要とされ、地域の方と一緒になって楽しく
「まちづくり」を行えることに喜びとやりがいを感じています。
——ふだんのお仕事について教えてください。
滝野川西高齢者あんしんセンター(以下「センター」という。)のセンター長と見守り/生活支援コーディネーターという職種を兼ねています。
自治会や民生委員、シニアクラブなど地域とのネットワーク作り、総合相談、虐待防止や成年後見制度などの権利擁護、ケアマネ支援などの業務を行っています。
——特に力を入れている取り組みがあれば教えてください。
見守り活動を行う自治会に対し区が補助金を交付する「地域見守り・支えあい活動促進補助事業」に力を入れています。独居・高齢夫婦・日中独居を色分けにした見守りマップを作成し、自治会をブロックに分けて日頃から顔馴染みの人が見守り、見守られる関係づくりを進めてきました。個別見守り訪問を重視している自治会もあれば、閉じこもり予防・交流を目的にサロン活動が活発な自治会などそれぞれ特色があります。現在、当センターが担当している全ての自治会がこの事業に登録しています。
この活動を通して、単に見守りを地域の方に行っていただくだけでなく、地域とセンターとの太いパイプを築くことができました。例えば、「どこに、どんな人がいて介護を必要としているか」などの地域の中で埋もれている方を発見し支援につなげることができたり、「介護のことなど困ったらセンターに連絡すれば良い」という情報を地域に広げることができたりしています。北区は23区の中でも高齢化率が高いだけでなく、独居高齢者が一番多い区です。地域の方の協力なしでは、この高齢社会を乗り越えることはできません。介護保険サービスだけでは限界がある中で、地域の方のおかげで、センターは支えられていると日々感じています。
——現在のお仕事を始められたきっかけを教えてください。
大学生の時にテレビで「阪神・淡路大震災」の映像を目の当たりにして、同じ日本で今こんなことが起きているのかと衝撃を受けました。「何かできることはないか」と神戸にボランティアに行き、その時に、お互いに助け合い、自分たちの力で自分たちの町を復興させるため、奮闘している地域の方々と出会いました。その経験から、私も何か人の役に立つような仕事がしたいと思い、この道を志しました。
介護の仕事を始めて数年経過した時に、父親が認知症を発症したため自宅でも介護を行うこととなり、家族の立場から葛藤を経験しました。当時の私は、認知症で介護なんてよくある話と捉えられたくありませんでした。相談者にはよくある話でも本人や家族には初めてのことで、個別化されにくい現状があります。
本人や家族はいろんな思いをもって相談に来られます。その思いを大切に、相談されるご本人やご家族に寄り添うことができたらと日々思っています。
——この仕事のどのようなところにやりがいを感じますか?
一人では対応できないことも、職場の仲間、地域の方、他関係機関の他職種の方と一緒になってケース対応や地域課題などを考えていくことにやりがいを感じています。事務所で待っていては何も生まれない。外に出て地域の声を聴く。地域に出ていくことこそが自分達の仕事だと思っています。
相談件数も増えてきていますが、自転車で地域をまわっている時に、いろんな方から挨拶をしてもらえるようになったのは嬉しいことです。地域の方のおかげで「介護などのことで困ったらセンターへ連絡すれば良いんだ」という情報を広めることができました。
「誰かの役に立つこと。必要とされる」ことで自分が生かされる。
地域の方が私たちセンターを必要としてくださることをありがたく感じています。
——地域の方と信頼関係を構築していく上で、工夫されたことがあれば教えてください。
初めの頃は、何から手をつけて良いかわからず、地域に出ても相手にされず、もがいていました。
何度も地域に足を運んだり、自治会の会合に出席する機会を頂いていく中で感じたのは、「こんな夜遅くまで自治会活動は大変だ」ということです。
自治会は警察・消防・役所など様々な機関から協力を依頼されることが多い一方で、担い手が少ないのが現状です。少しでも自治会活動の役に立てたらと、「御輿の担ぎ手がいない」と聞けば担ぎ手に、「餅つき大会で人手がいない」と聞けば餅つきに参加した結果、自治会のいろんな方と顔見知りになり、地域の方から顔を向けてもらえるようになりました。そのように自治会の方と一緒になって地域の行事を盛り上げていくことが楽しく、地域の方とつながっていくことに喜びを感じました。この経験を通じて、地域とつながりを持つにはセンターの髙山という立場の前に、「人と人のつながり」が大事なのだと学びました。
また、見守り/生活支援コーディネーターとして地域の方にお願いしなければいけないことが、地域の方の負担になってしまうこともあります。そのため、「無理のない範囲で行ってください」とお伝えするように心がけています。見守りの活動は「ここまでできたらゴール」というものでなく、「末長く続けていくもの」であり、負担にならないようにしていただきたいからです。また、楽しんでいただくようにもお伝えしています。人間、誰でも自分が楽しくないと感じたら活動は続きませんし、やらされていると感じたらモチベーションも上がりません。サロンなどの活動も自分達が楽しめるように長く続けていくことが、自分自身も安心できる「まちづくり」、ひいてはその地域の高齢者が安心して暮らせる「まちづくり」につながると思います。
——地域福祉の担い手の方やこの仕事を目指している方へのメッセージをお願いします。
地域の方と一緒に活動していると、みなさん、本当に一生懸命に地域活動をされていて頭が下がります。そこには自分の住んでいる町が好き、同じ町に住んでいる者同士、一緒になってこの地域を良くしていこうという強い思いがあるのだと思います。私たちセンターも、一緒になって、自分たちの町を良くしたいという思いは同じです。センターは地域のチームの一員なのだと日々感じます。
私自身、いつもいろんな人に支えられていると感じます。センター職員、地域の方、他職種の方に助けられてばかりです。一人だけでなく、いろんな人とつながり協力し合って築き上げていくことに喜びややりがいを感じています。一人では対応できないことも、いろんな人の協力で乗り越えられる。人とつながる、また人と人とをつないでいく、やりがいのある仕事だと思います。私自身これからも、迷ったら「地域のことは地域の人の声」と地域に出て、地域の方と一緒に「楽しむ」ことを大切にしていきたいと思います。
職場の方から見た髙山さん
とても気さくで熱い人です。地域の方から相談されると、すぐに駆けつけるフットワークの軽さで、地域の皆様からも信頼されています。一緒に活動を行う際には「こういう方にはこういう社会資源を利用して…」などつながりを広げていけるようなアドバイスをいただけます。髙山さんの人望と熱さと人柄のおかげで私達も仕事がしやすいです。
それぞれの人となりや個性を尊重しながら接してくださる、気遣いのできる方です。高山さんの尽力により、担当エリアの全ての自治会さんが、北区の見守り促進事業に手を挙げて活動してくださっています。自治会の方々も年輩の方が多いですし、報告書や計画書など、記載が難しい部分も見て回ってサポートしています。そうしたきめ細かいケアや働きかけなくして全部の自治会さんをつなげることはできなかったと思います。
人を引っ張っていく力のある人です。センター長は何度も何度も地域の人たちのもとへ足を運び、話し合い、活動の立ち上げに注力されていました。私達に対してはトップダウンでなく「一緒にやっていこう」というスタンスで接してくださっています。色々な意見を交換しながら、このセンターが良い方向に向かっていけるよう支え、引っ張っていってくださる心強いセンター長です。
インタビューを終えて
職場の皆さんが口をそろえて「熱い方」と称する高山さん。地域や地域の方に対する「熱い想い」に終始圧倒されるインタビューとなりました。「センターが担当する全ての自治会が見守り促進事業に登録」という素晴らしい成果は、その熱い想いを原動力に、地道に地域に足を運ぶことで築き上げてきた、地域の方との信頼関係によるところが大きいと感じました。
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高齢者あんしんセンターは、正式名称を「地域包括支援センター」といいます。北区では、みなさんにより身近な相談窓口となるように「高齢者あんしんセンター」という愛称で呼んでいます。平成28年10月1日に高齢者あんしんセンターを3ヵ所新設し、現在は、直営型1ヵ所・委託型16ヵ所を設置しています。高齢者あんしんセンターでは、社会福祉士、主任ケアマネジャー、保健師(看護師)、見守り/生活支援コーディネーターなどが中心となって高齢者のみなさんを支援します。それぞれ専門分野を持っていますが、専門分野の仕事だけをするのではなく、互いに連携をとりながら「チーム」として総合的にみなさんを支えます。
(公開:2019年6月18日)