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    事例に学ぶ

    経験やスキルを活かしたボランティア活動=“プロボノ”との協働による
    団体の運営課題解決の事例から、協働のポイントや、支援後に生まれた変化等をご紹介します。

    今後の展開
    運営を分担・効率化
    モチベーション向上

    市民有志で立ち上げた介護予防体操教室を、市内5ヵ所に展開。
    業務の可視化・整理を、次の担い手への受け渡しのステップに

    この事例のポイント
    抱えていた課題

    ・2016年度:活動拠点を増設し、会員も増加しつつあった体操教室の運営業務が、一部メンバーのみに集中していた。

    ・2017年度:高齢となった会長の職務の引き継ぎが必要。規模の拡大に伴い、無報酬を前提とした運営にも無理が生じていた。

    プロボノ支援の内容・目的

    ・2016年度:以後の団体の規模拡大を見据え、運営の担い手の育成、増加を目的とした業務整理を行う。

    ・2017年度:2016年度の業務整理に続ける形で、会長職の引き継ぎを視野に入れながら、さらに業務整理を進める。

    成果

    ・2016年度:会長のなかでのみ整理されていた業務をすべて洗い出したうえで、「本部」と「支部(各スクール)」に分担して“見える化”を実現。この業務整理が、3ヵ所目のスクール開設の際に役立てられた。

    ・2017年度:すべての業務を「会長の意思決定の有無」を基準として仕分けしなおし、業務有償化の可能性の有無も検討。将来的な会長職引き継ぎ後のスムーズな運営移行を見据えた提案となった。

    プロボノ支援のまえ、あと、これから

    まえ
    小さな自主活動グループが、市内に広がる体操教室に

    ある日の午前、揃いのブルーのTシャツをまとった高齢のメンバー16人が、東京都狛江市の公共施設の一室に集合し、講師の朗らかなリードに従って体を動かし始めました。まずは肩幅強の長さの棒を使い、両端を握って椅子に座ったまま上体をかがめたり、ひざの裏にくぐらせたり、立ち上がって両腕をぐっと上にのばしたり、棒を手のひらに立ててバランスをとったり。続く柔らかなボールを使った体操では、両足の間に挟んだり、椅子の背もたれと背中の間に挟んで上体をのばしたり、二人一組になって互いに投げ合ったり。体操の合間には「ふじの山」、「四季のうた」を皆で歌い、参加者からは「運動すると声がよく出るようになる」との声も。バリエーションに富み、ところどころにゲーム要素も交えられた一連のプログラムからは、体と頭を無理なく、楽しみながら動かす心地よさ、塩梅のよさが伝わってきます。

    専門講師の指導のもとで行われる介護予防の体操。飽きのこないさまざまな動きが展開される

    専門講師の指導のもとで行われる介護予防の体操。飽きのこないさまざまな動きが展開される専門講師の指導のもとで行われる介護予防の体操。飽きのこないさまざまな動きが展開される

     

    現在、市内五つの会場で開催されている、「元気スクールグループ」の体操教室。高齢者の転倒防止、寝たきり予防など介護予防の普及啓発を行うとともに、会員相互の親睦を図ることを目的として、2011年より活動が行われています。

    発足以来、会長を務めてきた山口正忠さんは、元は狛江市が主催した介護予防のための歩行教室の一参加者でした。週一回、3ヵ月にわたるプログラムを完了すると、当時80歳間近だった自身の体力測定の数値に改善が見られたことから、「予防体操によって、運動能力を維持、あるいはわずかに増進できる」との実感を得たといいます。この体験と、教室の会場となっていた地域包括支援センターからのすすめを受け、山口さんら有志12名が体操の自主グループを結成。2011年5月、「野川元気スクール」として始動したのです。この活動は、翌2012年には狛江市との共催となり、会員数も順調に増加。2015年、2ヵ所目となる「狛江元気スクール」を開設すると、以後2019年までに「和泉」、「参番館」、「岩戸南」の各スクールを開き、専門講師の指導のもとで介護予防のための体操教室を継続してきました。2017年度以降は、「狛江市介護予防・日常生活支援総合事業」における通所型サービスB(要支援者などの介護予防・生活支援を目的とした、住民ボランティア主体による通いの場)の指定団体ともなっています。

    このように徐々に活動を広げてきた「元気スクールグループ」が、「東京ホームタウンプロジェクト」プロボノ支援プログラムに応募したのは、2016、2017年度のこと。2016年度当時の「元気スクールグループ」は2ヵ所のスクールを運営し、3ヵ所目以降の開設を目指す段階にありましたが、山口さんは、会の発足当初を振り返って「拠点が5ヵ所という、このような大きな活動になっていくとは思っていなかった」と率直に語ります。このころ、会員数は約60人にまで増えていたものの、講師や会員への連絡、会場準備、経理、助成金申請、行政との交渉など多岐にわたる運営業務は、山口さんと、会長代行の田岡恭子さんに集中。文書や資料の作成に関しては、80歳を目前にして独学でパソコン操作を身につけた山口さんが、一手に引き受けている状態でした。そこで2016年度プロボノチームは、以後の規模拡大を見据えて担い手の育成、増加を目的とし、限られたメンバーのみが担っていた業務を整理するワークショップを開催することに。

    あと
    外部人材の新たな視点を入れ、拡大した事業の業務を整理

    【2016年度】
    プロボノチームがまず実施したのは、それまで山口さん、田岡さんのふたりで担ってきたあらゆる業務の振り分けを目的とした、詳細なヒアリングでした。資金調達・経理・企画・マーケティング・(体操の)効果測定・協働・会員向けサービス……といった領域ごとに業務をつぶさに洗い出したうえで、「本部(山口さん・田岡さん)でやること」、「各支部(スクール)でやること」の分担案と、検討の必要な課題を提示したのです(下記)。

    ワークショップを経てプロボノチームが作成、提案した業務分担表。一からの聞き取りにより、細かな業務までくまなく洗い出されたワークショップを経てプロボノチームが作成、提案した業務分担表。一からの聞き取りにより、細かな業務までくまなく洗い出された

     

    ここで試みられたのは、業務のいわゆる“見える化”でした。この手法と成果物は、山口さんにとって有効なものだったようで、「それまで自分の頭のなかで整理し、カルタ取りをするだけだったものを、徹底的に“見える化”していただいたことはとても役に立ち、ありがたかった」と振り返ります。翌年、3拠点目となる「和泉元気スクール」を開設した際には、この業務整理が活用されたそうです。

    【2017年度】
    翌2017年度、新たなプロボノチームが取り組んだ課題は、山口さんが80代半ば(当時)まで務めてきた会長職を後継者に受け渡せるよう、改めて業務を整理することでした。この年、スクールは3ヵ所、会員は約75名にまで増えて業務量が増していたことに加え、会は、次期会長職を現役世代に担ってほしいとの希望も持っていました。そのため、すべての業務をボランティアで行ってきた従来の体制を見直し、部分的に有償化の検討が必要ではないか、との声も内部から上がっていたといいます。

    プロボノチームは、これらの意向を踏まえながら業務の切り分けかたを再検討。そこで新たな基準として設けられたのは、「山口会長の意思決定を必要とする業務か/必要としないか」でした。この視点を盛り込み、将来的な有償化の可能性の有無も検討したうえで、前年度までの業務区分を、さらに「代表業務 ※外部委託・有償化不可」、「副代表(スタッフ)業務 ※外部委託・有償化可能」、「会員(ボランティア)等 ※ボランティアベースのお願いは可能」に大別したのです。完成した業務区分表(下記)には、この3区分を明示するとともに、業務ごとの作業内容、課題なども書き込み、一見してわかりやすい構成に。あわせて、有償化導入の際に参照できるよう、東京都の最低時給金額(958円・2017年当時)に基づいた業務ごとの対価の仮案も作成、提出しました。その後、具体的な会長職の引き継ぎには至っていないものの、プロボノチームの提案は、その当時の運営の実情から、代替わり以降の運営までが見据えられた射程の長いものとなっています。

    「代表の意思決定の有無」という新たな基準を盛り込んで構成しなおした業務区分表(抜粋)。「代表の意思決定の有無」という新たな基準を盛り込んで構成しなおした業務区分表(抜粋)。

     

    二度にわたるプロボノ支援を受けた山口さんは、ボランティアとしてすすんで活動するプロボノワーカーの存在について、「数人集まれば、営業に強い人、経理に強い人、とさまざまな経験を持つ人がいて、例えば表をひとつつくるにしても、どういう形式がよいかなどいろんな知恵が出るんです。私たちにとっては、そこにお金を払うのは大変なことで、『だったら自分たちでやってしまおう』となる部分を大いに助けてもらった」と振り返ります。

    これから
    当初からの目的と、見出された新たな意義をいかに継承するか

    2021年、設立10周年を迎えた「元気スクールグループ」。新型コロナウイルス感染症パンデミック下では、年間の開催回数、のべ参加者数が一時的に落ち込んだものの、現在では回復し、活発な活動を継続しています。

    当会の活動の主要な目的は、まず体操の実践と社会参加により、個人の健康寿命(健康上の問題で日常生活に制限のない期間の平均。令和元年で男性72.68年、女性75.38年<令和5年版高齢社会白書>)を延ばすこと。そして、その健康寿命延伸によって、介護給付費、つまり公費の削減に寄与すること。後者は、会を立ち上げた山口さん自身も当初は想定していなかった目的で、「元気スクールに通っている人たちの健康寿命は、確かに延びているんです。それは、この活動が個人の役に立ち、地域行政の役にも立っているということなのだと、後になって気づいた」と語ります。10周年を機に制作された冊子『元気スクール 10年間の道標』では、今後、同様の活動を立ち上げる人たちの参考となるよう、狛江市における介護給付費の総額などを具体的に示しながら、この新たな価値についても解説。会長代行として現場を支えてきた田岡さんも、「予防をきちんとしていれば、病気にならずに済み、要介護者にもならずに済む。予防事業がいかに大事かということです。日本じゅうで保健所が減らされるなどしてきたなかで、その逆を行く取り組みだと思っています」と、活動をとおして見出してきた意義を語ります。

    それだけに、共に高齢となった山口さん、田岡さんがいまなお運営を担い続けている点は、解決の急がれる課題です。自らが立ち上げた事業を強い意志で確立させてきた山口さんは、「このままこの活動が消えてしまうのはもったいない」と本音を吐露。1スクールごとに世話役・事務担当がひとりずついる体制づくりを目指していますが、5ヵ所のスクールをつぶさに見てきた田岡さんは、「事務作業も、行政とのやり取りも、いまは山口さんがすべてパソコンでできていますが、これからは、高齢者は高齢者なりのやり方でやっていくことも考えなければならないかもしれない」と過渡期ゆえの難しさを語ります。まさにこれからの時代にこそ需要が高まるであろう意義ある活動を、地域のなかでどうつなぎ、持続させるか。打開策を探しつつの歩みが続いていきます。

    (2023年7月取材)

    団体基本情報
    元気スクールグループ
    設立
    2011/平成23年5月
    代表
    山口正忠
    住所
    〒201-0001 東京都狛江市西野川
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