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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    「楽しい」から始める東京の地域づくり
    2017年度総括イベント「東京ホームタウン大学」開催レポート

    基調トークライブ
    山崎 亮 氏
    2018年4月6日

    開催日:2018年 2月 24日(土)
    会 場:明治学院大学 白金キャンパス(東京・白金台)
    登壇者:
    山崎 亮 氏
    studio-L代表/東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)/慶應義塾大学特別招聘教授

     

    ●各分科会レポートはこちらからご覧ください

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    超高齢社会・東京の未来とは? コミュニティデザイナーの山崎亮さんをお迎えし、山崎さんが考える、近未来の東京の課題と、その課題解決に向けたヒントを伺いました。トークライブ後半では、東京の各地で活躍する地域団体の実践者の方々などからの、地域づくりや活動運営についての具体的な質問に回答いただきました。


    人を引き込むのは「正しさ」よりも「楽しさ」

    僕はもともとデザイナーで、空間の設計などをやっていました。2005年ぐらいから人口が減っていくという話が出てきた時に、これからは建物を建てるよりも地域に貢献できるような仕事をしたいと思い、大阪にstudio-L(スタジオ・エル)という事務所を作りました。人と人がつながっていくこと、つながった人たちが自分たちの地域の課題を楽しく乗り越えていく、それを「コミュニティデザイン」と呼んで、各地域を支援するようなデザインをしています。普段は、ここにたくさん地名が書いてある通り、小豆島や家島などの離島地域や中山間地域での仕事が多いですが、今日は東京の話ですので、たとえば秋田市の事例など、都市部の超高齢者社会に対しての取り組みにもヒントになりそうなことを、紹介していきたいと思います。

    ところで皆さん、「ワークショップ」はご存じですよね。そのワークショップを、各地域でやるっていうのが僕らの仕事の一部なわけですが、ワークショップと言えば、いくつかのテーブルの上に模造紙と7センチ角の付箋が置いてある。みんなが嫌いなワークショップですよ(笑)。そこにファシリテーターとかコミュニティデザイナーなんていう人が出てきて「はーいどうも皆さんこんにちはー」なんて、挨拶します。これをやるのが僕の仕事なんです(笑)。それを、どうおもしろいものに変えていくか。今日の主題の一つだと思いますが、人々は「正しさ」だけではなかなか動かない。「楽しさ」がその中に入ってないと動かないんですね。

    自分が楽しいと思えることと正しいと思えること両方の要素が本人に自覚されていないと、いかに素晴らしいシステムを作っても機能しないと思います。もっと言うと、仕事ではない場合、「楽しさ」が若干多い方が、「何かやろうかな」という気持ちに近づいていく。それは、ちょっと小難しく言うと、行動経済学でいう「システム1」と「システム2」です。

    人は、入ってきた情報を2つの脳で判断していて、判断が早い方が先に結論を出す。直感的、感性的な「システム1」で、人々はまず判断すると言われています。システム1とは、「おいしい、美しい、かわいい、かっこいい、気持ちいい」、これです。僕らはまず、これでやることを決めるんです。ラーメン食べた時に「うまい!」というのは、これは予備知識がなくても食べた瞬間にわかることですよね。まちづくりの活動にしても、これ参加しようかなあ、ボランティアしようかなあ、という最初の気持ちはシステム1から入るけど、脳はシステム2の方も考えている。システム2は「正しいのかな、儲かるのかな、効率的なのかな、効果的なのかな」ということです。理性的で、本当に正しいのかどうか、といった判断には少し予備知識が要りますね。

    システム1で瞬間的にこれ楽しそうだし、かっこいいからやってみようかと前のめりになって、その時、システム2で本当に正しいことか、儲かるのか、効果的か、というようなことを考えて、それでもいける、と思った時に「やろう」と行動を起こす。ところがそのシステム2の「正しさ」から入ってもらおうとすると、仲間になってもらいにくい。「人と人はつながるべき」「○○を解決するために」と、「正しさ」の説得に回ってしまうと、それで動ける人は1割くらいしかいないんじゃないでしょうか。残り9割の人は「確かに大事なことだけど、ちょっと仕事忙しいから」となってしまう。だから、楽しそうなこと、おしゃれなこと、おもしろいこと、それをどう組み込むかが大切ですね。今日のイベントもそうです。超高齢社会について考えようという時に、「東京ホームタウン大学」という楽しそうな場を設定し、デザインされたチラシを配布し、素敵な会場を用意する。それによって「参加したいなあ」と思えるわけです。

    わくわくする仕掛けを入り口にする

    ここで具体的な事例として、2015年から2017年の3年間で実施していた秋田市のプロジェクトを紹介したいと思います。秋田市は、住民自身が健康で、しかも楽しく長生きする地域社会を作っていこうという「エイジフレンドリーシティ」を掲げています。それで僕らは、あと10年20年経つと高齢者になっていく40代、50代のまだ若い人たちとともに高齢社会というものを学んだ方がいいと思ったんです。それをどう学ぶか? 書籍で学ぶのもいい、人の話を聞くのもいい、研究会とかやるのもいい。でも今回は、展覧会を作ろう、ということにしました。つまり、何かちょっとわくわくする点がほしかった。

    秋田市にある県立美術館を使って「元気な高齢の方は、なぜ元気で楽しく暮らせているのか」を展示する展覧会を作ろう、と一般の方々に呼びかけたら50人ほどが集まりました。その人たちに実際に高齢住民の皆さんのところに調査しに行ってもらい、話を聞いて集めてきた情報を、おもしろい展覧会にする。要するに、情報を集めて調査してそれを誰かに伝えるというこの行為自体が全部学びになってるんですね。アクティブラーニングです。さらに展覧会に来てくれた人たちを仲間にして、1000人くらいの輪に膨らませて、まちづくりの活動を興していこうという計画でした。いずれ高齢社会に向けた活動をしていくのが目的ですが、まずおしゃれな美術館で展覧会してみましょう、をスタートにしたんです。

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

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