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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    会社から地域へ “私のライフシフト”
    2018年度総括イベント「東京ホームタウン大学2019」 3限目 総括講義レポート


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    東日本大震災をきっかけに
    “これから”をリアルに考え始めた
    (前田さん)

    前田氏:
    ちょっと話がずれてしまうかもしれないんですが、私、デイサービス勤務時代にちょうど3.11の震災がありました。浦安市もかなりの被害があり、私はご利用者さんと一緒に川沿いを散歩していたときだったんですが、まだ私の息子が小学校3年生でどこにいるかもわからずパニックになったんですね。ただ、ご利用者さんの安全確保が第一だったので、数時間、家にも電話できない状態のときに、いろんなことを考えまして、そのあとです。終活のこと、私の両親のこと、私が先に亡くなったらどうなるんだろうとか、いろんなことを考えたことが、介護士を辞めて活動を立ち上げるきっかけの一つになっております。

    「よりみち」の活動を立ち上げて、最初の壁はやっぱり集客でした。当初は40人の参加者でスタートしたんですが、2年後ぐらいに25人、27人というのが3カ月ぐらい続いてしまい、まったくの赤字で私の持ち出しでした。私もまだ子どもも小さいですし、このままやっていけるのか。どうしたらいいんだろうと正直思いました。

    使えるものは使おうと、自ら新聞社に取材してくれと電話して、本当に新聞に載せていただいてから、反響がかなり出ましたね。いくらSNSで発信しても、見ていただけるターゲットは違うので、紙ベースの広報物でも訴えかけなきゃいけないと思っています。そこから徐々に活動の情報が口コミで広がっていって、今、毎月60~80人のシニアの方にご参加いただいています。

    雑誌作りのノウハウを活かし
    地域への恩返しをしたい
    (添田さん)

    添田氏:
    僕は足立区に移り住んだのが、そもそもマンガの編集者の職業上の目的からでした。もう50年ぐらい前ですが、当時、少年誌というのは、地方向けと都会向けで内容が分かれていました。入社してすぐに読者アンケートの担当になって、アンケート回答を丁寧に分析すると、足立区というのは回答結果が全国平均と連動してたんですね。足立区は、地域的には東京の外れで、50年前は畑なんかたくさん残っている。だけど東京都。そういう地域だったんですね。だから足立区に住めば、これは居ながらにして、全国の子どもたちの感性を感得できるんじゃないかと横着に思いまして、それで移り住んだ。たちまち彼女ができ、子どもができて、あっという間に足立区で30年経った。そういう仕事人生でありました。

    その中で、職業柄の好奇心、あるいは生活感のようなものが大事だったりしたので、ネタになるようなものを探しつつ、子ども会とかPTAとか地域活動っぽいことをちょこちょことやっていました。そうした生活の大半を過ごさせてもらった足立区になにか恩返ししたいなという気持ちが芽生えたかもしれませんね。いい仲間と巡りあったおかげで、こういう活動が継続していて、10年目になります。

    内多氏:
    今日の来場者の方からの事前の質問で、都内の地域包括支援センター職員の方から、「認 知症サポーター養成講座の立ち上げをしているいろんな人を巻き込んでいくヒントがほしい」というのがあったんですね。添田さんも、「人生ココから見本市」の実行委員会で多くの人を巻き込んで、一つのイベントを立ち上げたわけですが、このあたりは何かアドバイスはありますか。

    添田氏:
    いや、アドバイスなんてことは言えないんですが、僕の経験から言うと、僕は雑誌を作ってたわけですが、雑誌を作るのとイベントを作るのと、人を巻き込むっていうのはだいたい同じなんですね。まず“つかみ”があること。それからメインのテーマが必要。イロモノも必要。あと結論的なこと。花を添えるようなことでもいいんですが、イベントでも雑誌でも、それらをいろんな活動の中に組み込むというのは、どこか共通のものがあって、ひとつのコツかもしれないなと思います。どんなイベントでも歌の一つもあれば盛り上がったりしますよね。ガチガチのテーマで計算づくでっていうふうにはなかなかうまくいかないところが、おもしろいのであって、それが人を巻き込む一つのコツではないかと。

    自分のしてほしいことを、人にする。
    それがボランティアマインドだとわかった
    (伊藤さん)

    内多氏:
    伊藤さんはいかがですか。

    伊藤氏:
    好きなことを始めたんですから、苦労と思ったことは本当になかった気がします。でも壁はありました。まずは人と金ですね。まず何から、どこから、どういう人から集めようか。私は化粧品関係でやってきたんですが、ボランティア活動をするには、活動するための“セット”が必要です。ネイルカラー、ハンドケアのクリーム、リップカラーなどのモノをどう集めようか。それを勉強するためにはどういう場所でやろうか。会場も借りなきゃいけません。これが最初は大変でした。

    行政担当者に相談に行ったところ「伊藤さん、実績がなかったら行政は貸しませんよ」って。「だって実績作るために、そのきっかけがほしいんです」、「いやいや、人は信用問題ですから」って言われまして、それなら実績作ってやろうじゃないって思ったんです。それで、実は民間の会社が助成金を出してくれたんですね。これが最初、30万円いただきました。まさかいただけると思わなかったけど、必死で申請書を書いたら通ったんです。

    最初って無我夢中だから、大変だけど資金さえあれば、なんとかなるかなと。「人」は、 こんな人がいてくれたらと思ったら、人が集まってくれて、あとは頼りました。私は経理もパソコンも苦手なので。行政の皆さんには、最初の会場を借りるところのサポートなどを本当にお願いしたかったなと思いますが…でも今は大変、行政の方と仲良くさせていただいてます。

    (会場・笑い)

    伊藤氏:
    あとは、自分の精神的なマインドとして、港区の勉強会で「Do for others(ドゥーフォーアザーズ)」、自分のしてほしいことを人におやりなさいという、福祉の心を学んだことですね。そのおかげで自分のマインドが、ボランティアを“する側”になれた。ボランティアとは何のためか、よくわかりました。活動に必要なのは心と人と、助成のお金かなと。絶対、私は赤字を出しません。じゃないと続かないと思っています。ですからどうぞ、皆さま、うちの会員になってください。

    内多氏:
    ありがとうございます。これも来場者からの事前の質問で、練馬区のNPOの方から、健康サロンのような場所づくりのヒントをいただきたい、ということですが、「プラチナ美容塾」の場を立ち上げた伊藤さん、場づくりにあたってのアドバイスがあれば一言お願いします。

    伊藤氏:
    本当に、最初の場所を探すのが大変ですよね。でも私は実はその気持ちがあったから、シルバー人材センターに入ったんですね。シルバー人材センターはスキルや知識がある人には会場を貸してくれる。会員の方に私の知識をご紹介するので、ぜひこの場所を貸してくださいとお願いしたんです。あとは本当に、何回か顔を合わせて信用してもらうこと。私はずっと、どこに行ったら、誰に会ったら、どういう話をしたらいいかを学んできましたから、なんでも聞いてください。

    地道に続けていることで生まれる
    成功の「テールカーブ」

    内多氏:
    すごく頼もしいですね。本当にこう、突破力がすごいですね。

    飯島氏:
    突破力がちょっと半端じゃないですよね。僕、絶対勝てないと思います。特に両側のお2人の女性。添田さん、男性同士、仲良く一緒にやっていきましょうね(笑)。

    先ほどの、人を巻き込むためには、というご質問に、僕自身は答えを持ってないんですよ。ただ、僕も立場上、全国のほかの都道府県の活動の様子も見ていますが、お金も会場もいるし最初の立ち上げ部分は難しいですよね。それでもうまくいってる団体というのは、やっぱり地道に活動を継続してますよね。地道に。最初からスポットライトを求めない。1年から3年、3年から5年…とやっていくと、その活動が自治体の全員あるいは市民全員をつかむことはできなくても、地道に続けていると共感してくる人が必ず出てくるんですよね。

    「テールカーブ」と言うのですが、最初はノロノロ歩きだけども、グワッと途中から急曲線で上がっていく。よく16%、17%なんていう数字が言われたりします。例えばこのボールペンが新商品で、全国民はまだ使っていないものだとする。だけどそこらへんの人は使い始めてきた。そのうち国民の16%、17%ぐらいの割合の人がこのボールペンを使うようになると、このボールペンの会社は宣伝をしなくても売れていくという、ある一定の値があるんですよ。

    それと同じように、最初は1人の市民しか知らなくても、2人、また来年にはやっと4人…と続けて16~17%を超えて20%ぐらいになると、一気に知られてくる。その段階に入った活動って、必ず地道にやってるんですよね。バントを刻むように、目の前の人、またお隣の目の前の人っていう感じでやってきてるんだろうなと思います。

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

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