東京ホームタウンSTORY
支援先レポート
2025年に東京が目指す「人」と「まち」の姿とは
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活動への「共感」ステップの重要性
広石:プロボノ支援を受けた団体の方の話を聞いていて思うのは、「分かってくれる人に話ができる」その価値がすごく大きいんです。自分たちなりに工夫をして活動しているのに、周囲からは本質的なところが理解されていないと感じている団体は多い。ところがプロボノワーカーは話をていねいに聞き、やってきたことをきちんと理解し、そのうえで課題の整理をしてくれる。そのプロセスがとても大切なんです。機械的に「ここが問題です」というだけのコンサルタント的なアプローチとの大きな違いだと思います。
現実的には、プロボノ支援だけではすべての課題の解決は難しいでしょう。しかし、なかなか人に伝えられなかったことをプロボノワーカーが聞いてくれて共感してくれた、だからもう少し頑張ってみようという力になっている。そうした関係性ができているのは非常に興味深いところです。
嵯峨:地域のニーズを引き出し、地域で活動している人の言葉を興味を持って聞き、課題解決に向けて一歩先に進める提案をする。ここが「東京ホームタウンプロジェクトのプロボノ」ならではの特徴だと思います。
永沢:地道な地域活動は「みなさん、楽しそうでいいですね」といった程度の見え方かもしれません。先ほどの稲城市の自主グループの活動にしても、踏み込んだ話を聞き、本当の価値を周囲に伝えてくれる人は今まではほとんどいなかったということです。私たちは中間支援の仕事をしていますが、こうした出会い方が大切なのだなと実感しています。
少子高齢化への「気づき」を得るために
嵯峨:課題は「そうは言っても東京は広い」ということですね。
西沢:(都庁の会議室から外を指して)これだけの人が住んでいるのですから。若者の数が減って高齢者の数がどんどん増えていく、これは東京に住んでいると気がつきにくいことです。平日の日中に地域を歩いてみると、子どももほとんど遊んでいなくて高齢者ばかりですから。
広石:2025年までに残された時間は少ない。
永沢:元気な人も増えていきますから、高齢者が高齢者を支えるシステムはできていくと思います。しかし若い人も一緒になって考えていくということが、東京にとって、暮らしの質みたいなものを担保することになる。
広石:現役世代の人たちは、なかなか高齢化した地域の現実に気がつきにくいところもありますしね。
嵯峨:呼びかけたいことは、今まで手掛けてきた48のプロジェクト、東京ホームタウンプロジェクトウェブサイトに掲載されているこのリポートをぜひ読んでください。
広石:関心を持ったら、自分で活動を見に行ってみてほしいですね。
それから、40代、50代の単身世帯が多いことを考えると、その人たちが高齢者になったとき、単身世帯を前提とした社会制度設計になっていないことの問題が顕在化してくると思います。これまでの医療や福祉には、家族をあてにしているところがあるし、その世代には地域とつながっていない人も多い。家族やコミュニティの新しい姿を作り出すことも必要になってくると思います。
永沢:自立支援という話が出ましたが、困りごとを1人で抱えながら「助けて」と言えない人が増える、本当にシビアな状況になってから問題が発見されることもある。これから2025年にかけて、地域には非常に激しい変化が訪れるはずです。行政や団体が、地域の変化に対応できる地域包括ケアシステムを柔軟に構築しておくことが重要だと思います。
東京ホームタウンプロジェクトは東京都が主催し、私たち中間支援団体も関わる仕組みです。つながりを作るきっかけとして東京ホームタウンプロジェクトで第三者の力を上手に使ってもらえば、長い目で主体的に地域包括ケアを考えるうえで、よい取り組みだと思います。
ただやるべきことが非常に多いので、モデルケースを参考にして、今のうちに地域ごとの横のつながりを作るきっかけにしてもらうのが、このプロジェクトの最も有益な活用方法になるのではないでしょうか。
西沢:2016年度の総括イベントとして開催した「東京ホームタウン大学」では、東京ホームタウンプロジェクトの支援先団体が一堂に会し、自分たちの地域活動の成果を報告していただきました。「地域のために何かしたい!」という想いを持った人が集い、困りごとを相談し、モチベーションを高めあう場ともなりました。これは東京都というスケールメリットを活かした取り組みだと思っています。
3年目に向けて、よろしくお願いします。
写真/相澤和広 文/阿部祐子
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