東京ホームタウンSTORY
地域包括ケア×プロボノセミナー
開催レポート
日時:2016年7月14日(木)
場所:都道府県会館(永田町)
【開催概要】
参加者:78名
プログラム内容:
【1】東京ホームタウンプロジェクトの事業概要について
【2】トークライブ 「大都市における地域包括ケア実現のポイント」
【3】事例紹介(1)【文京区】風のやすみば
事例紹介(2)【板橋区】たまりば・とうしん
事例紹介(3)【稲城市】矢野口地区介護予防ラジオ体操会
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団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、「地域包括ケアシステム」の構築が国を挙げた課題となっています。こうした中、2015(平成27)年度より東京都は、多様な主体の参画を得て、地域包括ケアシステムの構築を進める「東京ホームタウンプロジェクト」をスタートしました。
その取り組みのキーワードの一つが「プロボノ」です。
「プロボノ」とは、ビジネスを通じて培った経験や専門性を活かしたボランティア活動です。国内でもここ数年、社会貢献の新たなスタイルとして広がりを見せています。2015年度の東京ホームタウンプロジェクトでは、120人を超える企業人等が参加し、24のNPO・地域活動団体に対して、広報活動やIT活用、事業計画の策定などを支援しました。支援先の団体だけでなく、地域包括支援センターや社会福祉協議会等の中間支援組織からも大きな手応えを感じるとの声をいただきました。さらに、プロボノ活動に参加した“現役世代” からも、「ボランティアや地域活動に参加するきっかけとなった」「地域包括ケアシステムの概念を初めて知った」などの感想が寄せられました。
地域包括ケアシステムの構築に前向きな一歩を踏み出すため、いま取り組むべきことは何か。東京都の実践事例の報告会として開催された地域包括ケア×プロボノセミナーのレポートをお届けします。
「東京ホームタウンプロジェクト」事業概要について
発表者:
東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課在宅支援担当 西沢 佳
地域の将来像としての地域包括ケアシステム
2025年、4人に1人が65歳以上の高齢者となります。それと同時に団塊の世代が75歳以上の高齢者となる本格的な超高齢化社会に突入します。
2040年には、年間160万人が亡くなる多死時代となり、年間で約100万人の人口が減少するという時代が訪れる(総務省人口動態調査より)。要介護認定率も上がり、介護保険のサービスを必要とする75歳以上の高齢者が増える一方で、保険料を納める人は減っていく。介護保険という制度の維持を考えればかなり厳しい現状がある中、国が描く持続可能性のある地域の将来像として描かれているのが「地域包括ケアシステム」というものです。2025年を目処に、重度の要介護の状態になっても地域でいきいきと暮らし続けられる仕組みとして、住まいを中心とした医療、介護、生活支援・介護予防が描かれています。
いち担当者としても地域包括ケアシステムが画期的だと思う点は、医療や介護といったものと同じ大きさで生活支援・介護予防が描かれている
ところです。保険制度が確立され専門職による適切な医療・介護サービスが提供されることと並行して、生活支援・介護予防分野はいわゆる専門家ではない、地域の住民やインフォーマルな多様な主体が担い手となる、主役になるものとして描かれています。
また、75歳以上の高齢者が増え、地域で在宅生活を営むうえでの困りごとを抱える方が増加の一途を辿る中で、生産年齢人口は減少していくという現状を考えると、いま医療や介護の分野で働いている専門職や、老々介護も多い家族介護者といった担い手だけでこの地域で増え続けるニーズに応えていけるのだろうか? これはかなり心もとないのではないでしょうか。この問いに対して、国は誰もが住み慣れた場所でいきいきと暮らすための方策は2つあると示しています。1つは高齢者にいつまでも元気でいていただくこと。もう1つは専門職以外で地域を支える担い手を増やすことです。ここで重要となるのは、高齢者自身が生活支援・介護予防の担い手となるという社会参加の仕組みをつくるという視点と、もう少し広く、高齢者に限らずより包摂的に、地域の住民が地域の課題をしっかりと見つめて、一緒に解決策を考えていけるような仕組みを整えるという視点、この2つがとても重要です。行政は各地域における取り組みをしっかりとバックアップしていきましょう、と言われています。
地域課題解決に向けて東京の強みを活かす
このような国の施策の流れがあるなかで、都の生活支援・介護予防分野の担当者として地域包括ケアシステムの構築を目指して、東京に暮らす全ての住民が、そこそこ元気に、在宅で生き切るために必要なものとは何か。地域住民やNPO法人だったりというインフォーマルな主体、民間企業も含めた多様な主体にこの人口構造の変化がもたらす地域課題について関心を寄せていただき、いま既に地域福祉分野で活躍されている既存の団体の皆さまが活動の基盤を強化し、動機づけられるような仕組みができないのか。いままで福祉のことなんか考えても来なかった潜在的な担い手をたくさん地域福祉分野に巻き込めないか。そのためにわれわれのような広域的自治体は何ができるのか。こんなことをもやもやと悩み、たくさんの方のお知恵とお力によって、できあがってきたのが「東京ホームタウンプロジェクト」です。
東京の強みである活発な企業活動を活かす、東京で働いている企業人が既に地域福祉の現場で活動している団体の運営基盤強化をプロボノで応援するプログラムや、地域の資源と地域の多様なニーズをコーディネートする人々(中間支援機関)の地域コー
ディネート力を向上するための研修、1年間の取り組みを総括するイベントの実施など、様々な取り組みを行っています。昨年度は24団体をプロボノで支援いたしましたが、支援先団体のみなさま100%が「支援を受けてよかった」と言って下さり事業担当者としてこんなに嬉しかったことはないという経験をさせてもらいました。
今年は昨年度から行っているセミナーに追加して、地域包括ケアに必要となる多様な主体の参加を促すため、参加者の意欲を引き出し、協力を実現するために必要となる「場づくり」の技術を理解するセミナーを開催したり、伴走支援事業といいますが、地域の中間支援機関に対して外部の専門家も招へいして地域の取組課題に寄り添う、まさに伴走しながらの支援も行っています。
東京ホームタウンプロジェクトは「互助」の強化を目指す
東京ホームタウンプロジェクトが目指しているのは、一言で言うと「互助」の強化です。地域団体、NPO、企業のCSR活動等、地域住民のQOLを、地域そのもののQOLを向上させようという様々な活動を行う多様な主体を支援し、ここ東京において人と人とのつながり、「互助」の関係をいかに強化できるのかにチャレンジをしています。
介護保険制度は「共助」として本人負担は1割、残りの9割を保険料と税金で賄うという「公助」の仕組みであり、いままでは国が定めた全国画一のサービスを提供してきました。この中に新しい総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)が位置付けられているわけですが、総合事業はこの全国一律の「共助」の部分を、いかに「互助」の仕組みに近づけるかを試行していると言ってもいい取り組みです。
地域のインフォーマルな活動、地域住民のボランティアによって担われてきた取り組みを「共助」にうまく取り入れることで、今までより多くの受益者に、より地域の実情に応じた多様なサービスを提供できます。これを進めるには、地域の住民、地域の多様な担い手、行政を始めとした医療・福祉の関係者がどのような地域をつくっていくのかという合意を形成し、地域の暮らしの質を担保するような多様なサービスを、共に生み出していくことが今まさに求められています。
【プロボノによる地域活動支援について 概要紹介】
昨年度の東京ホームタウンプロジェクトでは、120人を超える企業人等が参加し、24のNPO・地域活動団体に対して、広報活動やIT活用、事業計画の策定などを支援しました。取り組みの具体的な方法や流れについて以下のスライドを用いてご紹介しました。
- 「地域参加のトビラ見本市」レポート
- 「東京ホームタウン大学2024」分科会レポート
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「東京ホームタウン大学2024」メインセッションレポート
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