東京ホームタウンSTORY
支援先レポート
歌って、動いて、笑って、楽しく介護予防
高齢者が仲間とともに元気になる歌声広場
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集客拡大を図り、メディアやチラシを活用
現在では安定した集客数を確保している「よりみち」ですが、発足から1年経った頃、定員割れが2回続きました。会場の変更で経費が増え、収支が赤字に転じ、今井さんと前田さんが部分的に自費を投じて凌いでいた苦しい時期でした。「もはやこれまでか」と思う気持ちを奮い立たせてくれたのが、参加者からの「やめないで」の声でした。
それまでパソコンで自主制作していたチラシを印刷業者に依頼し、公共施設での設置場所を増やして集客数を徐々に取り戻し、またセレモニーホール(葬儀場)から友引休業日の活用として、出張歌声広場の定期的な開催の依頼を受けて収入源とするなどの努力を続けてきました。
そんな苦しい状況を打開したのが、メディアの活用でした。新聞各社への掲載依頼に何度もトライした結果、2016年11月に読売新聞の地域版「東部よみうり」に歌声広場の取材記事が掲載され、集客が増加。さらに取材した記者の薦めで読売新聞本紙へのチラシを送ってのアピールが功を奏し、2017年4月の朝刊に取材記事が掲載されました。この時の反響はすさまじく、問い合わせや申し込みの電話への対応で、前田さんの昼間の仕事に支障を来すほどで、集客が大幅に拡大しました。
新聞記事に反応したのは、一般の読者だけではありません。
「掲載日に江東区の福祉課から呼び出しの電話がかかりました。これまで『一市民団体に援助はできない』と、補助金等の申請を区から却下されてきた経緯があります。その状況に変わりはないものの、東京ホームタウンプロジェクトへの推薦状を書いていただけることになったのです」。ようやく行政の窓口が開かれた経緯を今井さんは語ります。
東京ホームタウンプロジェクトのプロボノ(※)プログラムに申し込むと、6月に実施されたヒアリングを経て、「プロボノ1DAYチャレンジ」によるチラシ制作が決定しました。月ごとに色遣いやイラストを変えるデザインのバリエーション、パワーポイントソフトを利用した記載事項の変更方法、メンバーの紹介と次回以降の開催告知を掲載する裏面の有効活用などをプロボノチームが提案。事前オリエンテーションから約1カ月で成果物の納品となりました。
プロボノで作成したチラシは新聞の折り込みやポスティングでの配布など、幅広く利用しています。
今後は、「ホームタウンプロボノ」で集客拡大のためのマーケティング基礎調査、収支バランスの改善など運営上の課題を洗い出す支援を受けることを希望しています。
※「プロボノ」:仕事の経験やスキルを活かして社会人が参加するボランティア活動のこと
要介護者を出さない地域づくりに「よりみち型歌声広場」を
今年(2018年)1月、発足以来1,000円に抑えてきた参加費を1,200円に値上げしました。読売新聞の掲載内容から一般の営利団体とみなされ、公共施設の利用が不可能となったため、会場費の高い施設への変更が余儀なくされたのです。伴奏者の楽譜を印刷するインク代、練習時の楽器運搬に派生するガソリン代、駐車料金などの目に見えにくい経費で、依然として前田さんの持ち出しが解消されていません。
思い切って収容人数100名規模の会場を選びました。80名集まれば利益が出る計算で、100名の集客を短期目標として掲げ、今は交通費しか支給していないボランティアスタッフにも、いずれは時給計算の賃金を支払いたいと考えています。
そのための収入源として、これまで開催しているセレモニーホールや有料老人ホームなどでの経費負担が少ない出張歌声広場の拡大、大ホールでのイベントなども視野に入れ、活動領域を広げていく考えです。
その一環としてこの5月、新しい試みでの山梨への日帰り歌声バスツアーを実施します。車中は中西基起さんの演奏で歌いながら、現地では和太鼓演奏付きのランチ、ワイナリー、信玄餅工場見学などを楽しみます。中西さんと間近に触れ合える絶好の機会とあって、40名の定員があっという間に満席となりました。
さらに長期計画として、各地域で発足をめざす「よりみち型歌声広場」の支援をしていきたいと前田さんは語ります。
「正直言って、3年以上の年月をかけて、苦労をしながら育て上げたノウハウを簡単に伝えていいものか、迷いがありました。中西基起という得難い存在があってこその『よりみち』であり、長年の介護経験から得た私達スタッフの見守り視線は簡単に真似できるものではありません。でも、私達が動ける範囲には限りがあると考えを改めました」
同じ志を持つ仲間とつながることが、要介護者を出さない、地域づくり、社会づくりに貢献すると「よりみち」のメンバーは、先を見据えて考えています。
取材・文 大谷 朋子
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