東京ホームタウンSTORY
支援先レポート
早めに知って不安をなくそう。
ウォーキングと脳トレ、社会参加で認知症予防につなげる取り組み
代表 星田正さん(写真右端)と役員のみなさん(左から岡田健治さん、白川さえ子さん、辻野禎胤さん)
2004~2005(平成16~17)年度に武蔵野市で行われた認知症予防モデル事業をきっかけに誕生した団体。認知症の理解促進、認知症予防の手法と実践プログラムの普及を目指して活動を続けている。2016年度東京ホームタウンプロジェクトの「プロボノ1DAYチャレンジ」では、会員募集とイベント告知のチラシ作成支援を受けた。
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東京都のデータによれば都内における2016年の認知症高齢者の推計は約41万人。2025年には約1.4倍に増加すると予測されている。(出典:東京都福祉保健局高齢社会対策部「認知症高齢者数等の分布調査」2017年3月)
NPO法人武蔵野すこやかは、そんな未来にいち早く危機感を抱き、自ら動き出した元気な高齢者たちの集まりだ。代表の星田さんに、活動のいきさつや、ふだんどのような活動をされているのか話を伺った。
地域に入り、現実に向き合う
「認知症予防の三大基本は、有酸素運動、知的活動、そして社会参加です」。星田さん(取材当時81歳)は、よく響く声で元気にきっぱりとそう言い切る。
「日本では、以前は高齢者10人に1人が認知症患者といわれていましたが、いまは4〜5人に1人の割合です。武蔵野市でも十数年前は2,000人弱でしたが、今は高齢者3万2,000人中4,000人が認知症の認定を受けています。そのほかにMCIという軽度認知障害の方が同じくらいいますから8,000人の方が認知症といわれています。武蔵野だけじゃなく、全国で同じような状況です」
「武蔵野市では『予防』に力を入れていて、東京都老人総合研究所(現・地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)の認知症予防対策室が2004(平成16)年から2年にわたって週1回の勉強会を開催、私もそれに参加していました。今のメンバーのほとんどはそのときからの仲間です。認知症予防の第一人者である東京大学高齢社会総合研究機構特任研究員(当時)の矢冨直美先生を中心に開発した認知症予防プログラムを取り入れて、実践し続けています」
星田さんは、1965(昭和40)年から武蔵野市に住居を構えるも、職業柄、全国各地への転勤が続き、会社員時代最後の5年間は東南アジア担当。吉祥寺の自宅に落ち着いたのは67歳で退職してからだった。
「もともと地域に入ることが好きで、現役時代から赴任先で地域活動はしていました。けれども仕事一辺倒で、肝心の武蔵野ではつながりがない状態。会社を辞めたら地元で何かしようと決めていました」
武蔵野市は以前から市民行政が活発で、さまざまな勉強会があちこちで開催されており、環境問題や健康福祉問題に関心があった星田さんは退職後、認知症の勉強会にすぐに参加したという。
「そのとき、勉強会には200名ほどが参加していて、みんなとても熱心でした。2年で終わらせてはもったいないと、その中の120名が自主活動として続け、2008(平成20)年に団体を結成、2011(平成23)年にNPO法人化しました」
グループで楽しく、新しいことにもチャレンジ
武蔵野すこやかの主な活動は、グループで行われている。当初の120名が、ファシリテーター(進行役)の指導のもと料理や旅行、麻雀、パソコンなど好きなテーマを選んで20ほどのグループに分かれた。グループごとに、有酸素運動のウォーキングに加え、それぞれ決めたテーマで2時間ほどを過ごす。会員の入れ代わりなどによりグループ数は減ってはいるものの、今も月に1〜2回の頻度で集い、仲間と楽しんでいる。
料理グループでは、毎回今までにないレシピに挑戦する。季節に合わせてテーマを決め、材料費600円で旬の素材を選び、検討会を2〜3度重ねてから実習に入る。手慣れたものをつくるより、新しいものをつくったほうが脳トレになるという。そうした面白い企画のあるグループは自然と活性化するそうだ。現在は、男性4名、女性6名が参加している。
旅行グループも、当初は複数のグループがそれぞれ自分たちでテーマを決め、行き先や行程を考え、電車の乗り継ぎ時刻や運賃、どこで何を食べるなど細かく予定を立てて楽しんでいた。ただ最近は、メンバーが80代になり電車を乗り継いて歩くのが辛くなったと、パック旅行も活用しているという。現在はグループをひとつにして活動を続けている。
会員なら誰でも好きなときに参加できる「健康麻雀教室」の同好会もあり、女性に大変人気がある。このほか、年に数回、花見ツアーやクリスマス会など季節の行事を企画し会員の交流の場を設けて楽しんでいる。また、団体として、武蔵野市の運営するプログラム「武蔵野市いきいきサロン」にも参加し、毎週土曜日に吉祥寺の学生会館で、地域の高齢者に向けて脳トレのセミナーを開催し、算数ドリルや数字盤、音読などをおこなっている。
「音読は一人でするより、集まってみんなで読むのがいいんです。算数ドリルは、毎日コツコツ、やさしい問題を繰り返しやるというのがいいそうです。加齢医学研究の川島隆太先生もそうおっしゃっています」
さらに、脳を活性化する研究者を招き、一般市民を対象にした講演会も年に2〜3回行っている。イベントでは希望者が有料で受けられる「脳の健康テスト」コーナーを設けている。パソコン画面に散らばった数字を1から順に押していき、制限時間内でどれだけ数字を追えるかをみる。それを何回か繰り返すゲームのようなテストだ。定型的なことを続けてきた人よりも、創造的なことに取り組んでいる人のほうが、高得点を出す傾向にあるという。
武蔵野すこやかの副理事長で管理栄養士の小島さんは全国を講演してまわっている。認知症予防には先の3大基本「有酸素運動、知的活動、社会参加」のほかに、食生活に注意することも大切だからだ。食べるものに気をつけて生活習慣病をふせぐことも忘れてはならない。
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