大手電機メーカー在職中の56歳のときに通信制で美容師免許を取得する。退職後、外出困難な高齢者や障害者らのもとに出向き、ヘアカットなどを行う訪問理美容を提供する会社を設立。現在、美容師ら40人以上の有資格者を抱え、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で事業を展開している。移動式の洗髪台などを積み込んだ車を自ら運転し、老人ホームや高齢者の自宅を駆けまわる日々を過ごす。
東京まちかど通信
VOL.07
地域のお元気さん
お元気なシニアをクローズアップ!健康の秘訣や趣味などをご紹介します。
50歳から美容専門学校に通い、定年後、訪問理美容室を設立‼
藤田 巌(ふじた いわお)さん
(満73歳 世田谷区で会社経営)
〈プロフィール〉
──「訪問理美容室」の立ち上げについて教えてください。
50歳のときから、会社には内緒で通信制の美容専門学校に2年間通いました。卒業後は土日に美容室でインターンとして修行を積んで実技試験に挑みましたが、2度失敗してしまいました。実は専門学校に入る際も2度断られていたのですが、56歳のとき、3度目の挑戦で美容師国家試験に合格しました。さらに、57歳のときにホームヘルパー資格も取得し、60歳のときに無料送迎サービスと在宅・施設訪問サービスを行う「福祉美容室」を開業しました。訪問理美容の仕事が膨らんでいくのにともない、その分野は分社化して平成19年に「出前美容室」を設立しました。
今まで、決して順風満帆にきたわけではありませんが、その都度、何とか乗り切ってきました。
──なぜ美容師になろうと考えたのですか。
定年退職後は、趣味だけに生きるのではなく、何か人の役に立つことをしたいと漠然とは思っていました。そんな中、「施設で寝たきりだった女性が美容師に髪を整えてもらったところ、方々の部屋に顔をだし、施設内を元気に歩くようになった。」という新聞記事を見て、美容師として働こうと考えました。そして、会社を退職する時の挨拶状に「介護のできる美容師」になると書きました。
──趣味や日課について教えてください。
夜9時までに仕事から帰ることができればゴルフを、それ以降であればジョギングをしています。毎年参加しているホノルルマラソンは、今年で18回目になります。走り終わった時の達成感がたまらなくて、東京マラソンも4回出ました。あとは、ブラジル駐在時代に覚えたアルゼンチンタンゴも、月に1回はやるようにしています。
──最後に、シニアの方へメッセージをお願いします。
私の座右の銘は、イングリッド・バーグマンの『私の後悔することは、しなかったことに対してであり、できなかったことではない。』です。人生はマラソンと一緒で、沢山のハードルと挫折がありますが、あきらめなければきっと夢は実現できると思います。
〈インタビューを終えて〉
美容室に来るお客様おひとりおひとりに、笑顔で丁寧にあいさつしている姿が印象的でした。ただ、美容師になるまでの話を聞くと、沢山の挫折があり、そのような笑顔からは想像できないバイタリティーがある方だと感じました。
インタビューにご協力いただきありがとうございました。今後も、ますますお元気にご活躍ください。
団体のお元気さん
地域で活動している高齢者団体を紹介します。
特定非営利活動法人プラチナ・ギルドの会
〈団体プロフィール〉
「シニア世代の社会参画を推進する」ことを目指して、平成24年に設立されました。個々の会員がこれまで培った経験・知恵・人脈を活かして、地域再生・社会企業家支援・福祉活動・被災地支援・NPO支援などを通じて、社会貢献に取り組んでいます。
──「プラチナ・ギルドの会」設立の経緯を教えてください。
プロボノ活動※を仲介するNPO法人サービスグラントの手伝いをしていた理事長の奥山が、平成24年6月に自主団体として友人とともに設立しました。永続的な活動ができるように平成25年10月に法人化し、より多くのシニアが社会参画できる社会の実現を目指しています。現在の会員数は50名ほどで、退職された方が大半ですが、40代50代の方もいます。
※プロボノとは、ビジネススキルや専門知識を活かしたボランティア活動を意味します。
──どのような活動をしていますか。
毎月最終火曜日の定例会では、有識者講演会や各会員の活動報告を行っています。他のNPOの支援や地域活性化にも取り組んでおり、NPO法人福島再生の会やNPO法人グランドワーク笠間、山梨県丹波山村、カンボジアの世界遺産にエコ村を建設する団体へも参画しています。
また、社会で活躍するシニアを顕彰する「プラチナ・ギルド アワード」は平成25年から行っています。さらに今年度からは、これからNPOや地域団体で活動する方向けに「プラチナ・ギルド アカデミー」を開講し、座学での研修と現場視察、団体とのマッチングがセットになっています。
──「プラチナ・ギルド アカデミー」について詳しく教えてください。
この講座は、NPOや地域団体等で活動することに関心がある企業人やシニアの方を対象にしています。全5回の座学研修では、公益財団法人さわやか福祉財団理事長の堀田力さんをはじめ実践者中心の講師陣を迎え、NPOや地域活動への理解を深めます。さらに、参加者同士の交流会やNPOや地域団体等の現場に足を運んで活動状況を自分の目で見る現場訪問・視察があります。最終ゴールは、責任ある立場で関われる団体とのマッチングイベント「ボードマッチ」への参加です。
NPOや地域団体を、理事や顧問、事務局などで経営支援することは大きな市民社会をつくることに繋がります。長年にわたって培った経験・スキル・人脈を社会に還元したいと考えている方には絶好の無料セミナーの機会です。意欲溢れる皆様の参加をお待ちしております。
プラチナ・ギルドの会の理事長である奥山さんにもお話を伺いました。
──なぜプラチナ・ギルドの会を設立しようとしたのですか。
現役時代のロンドン駐在の経験や、その後の海外との関わりから、これからの日本社会は欧米の市民社会のあり方に学ぶべき点が多いと感じています。欧米では、チャリティーやボランティアの精神が社会に根付いており、非営利組織は社会の中心的な役割を担っています。一方、日本では現役時代はもちろん、退職後も地域活動や市民活動を行うことは稀です。超高齢化社会を迎える日本において、シニア世代が今まで培ってきた経験や知恵、人脈、資金等を日本の未来のために活用することが必要と考え、会を設立しました。
もう一つ大きな理由は、私自身の体の変化です。それまでの私は現役時代から、お料理教室やら、スキューバダイビングやら、そば打ちやら、多くの趣味に手を出してきました。しかし、数年前病気で右目を失明してしまい、自分の趣味がほとんど出来ない状態になってしまったのです。これからの人生をどう生きていこうかと真剣に考える中で、たまたまアメリカのサンフランシスコでボードマッチを視察する機会がありました。そこで、シニアの社会参画の重要性を認識し、日本社会を変えるために自ら会を設立しようと考えました。
──最後にシニアの方にメッセージはありますか。
退職後に、ゴルフや旅行など趣味の世界に没頭することは悪いことではありません。しかし、それだけでは、現役時代に培った様々な資源が活用されずもったいないと思います。元気なシニア世代が、社会のためにそのもてる資源を有償、無償であれ有効利用できれば、日本の未来に希望がもてます。私たちと一緒に日本を変えていきませんか。
〈インタビューを終えて〉
会員の方々は皆さん、シニアの社会参画を推進する気概にあふれ、こちらが逆に元気を頂きました。特に、理事長の奥山さんは「日本を変える」という壮大な夢をお持ちで、御自身のスケールの大きさを感じました。
インタビューにご協力いただきありがとうございました。今後も、ますますお元気にご活躍ください。
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(公開:2015年10月8日)