• サイトマップ
  • 都庁総合トップ
    • 大きいサイズ
    • 標準のサイズ
    • 小さいサイズ

    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    楽しみながら支え合う〜心を動かす言葉の力
    「東京ホームタウン大学2023」
    オープニングトークレポート


    ページ:2 / 3

    お一人様社会にみんなで活きる「友だち近居」の取り組み

    嵯峨:東京都内で一人暮らしをしている高齢者の数は、2020年で86.4万人を超えており、いずれ100万人を超えると見込まれています。どのようにして人とつながりをつくっていくかといった課題は、多くの人にとって自分ごとになっていきます。そうした中で村田先生が取り組まれた、「友だち近居」について、お伺いしていきたいと思います。
    まずは簡単にご紹介いただけますか。

    村田:もともとは仲良しグループがいました。旅行などをすると楽しいメンバーです。そんな友だち何人かに、「同じマンションにそれぞれ部屋を借りて、お互いに助け合いながら暮らしましょう」と呼び掛けて、作り上げたものです。
    お一人さまで家族も作らず、地域にもなじめない。そのような暮らしをして、寂しいとか頼る人がいないと愚痴を言っても仕方ありません。でもふと気づいたら友だちがいるじゃない、ということです。

    近居とは、近くに住むという意味で名付けているのですが、いきなりできたわけではなく、友だち近居を始めるまでに4年の歳月がかかりました。どういう暮らし方をしたいか、どこに住みたいかというようなことを色々と話し合って、マンションを探しました。その準備期間を楽しみましょうということで、旅行に行ったりお食事会をしたり、いろんなことを楽しみながら、最終的に友だち近居は7人で始めることになりました。核になる4人と、あとの3人ははじめましてという方です。4年の準備期間は、新しい方とも理解しあうまでのお見合い期間みたいなものだったかもしれませんね。この時間があったからこそ、一緒に暮らしてもいいわと言う決心を、一人ひとりができたのではないかと思います。

    嵯峨:ありがとうございます。2つ質問があります。1つは、地域というより、まずお友だちでつながりを作ってみるという、友だちに注目されたこと。それから、いっしょに暮らすという言葉を使われましたが、一つ屋根の下に暮らしているわけではないというこの微妙な距離感。このあたりに、何かポイントがあるのではないかと思っているのですが。

    村田:そうですね。まずなぜ友だちかという点です。私はNHKで働き続けて定年を迎えました。今まで、家には寝るために帰るような暮らしをしてきて、いざ地域になじまなければいけない、地域の人と仲良くして何か活動しなきゃいけないといわれても、そう簡単にはできないことを突き付けられたわけですね。地域だって、今まで好き勝手にしてきた人たちを、さあどうぞなんてそう簡単には迎え入れてくれない。手ごわいな、ということを当時の私はしみじみ思いました。地域とつながるのが嫌だというわけではないのですが、じゃあどうしたら、と考えると「長年馴染んできた友だちがいたじゃない」と行きついたわけです。

    友だち同士で適度な距離をおきながら、お互いに自立して助け合いながら生きるという暮らし方もあるのではないか。「自立と共生」という言葉を、自立しながら共に暮らす「一人で生きる、みんなで活きる」という意味に捉えました。一人で生きるの「生きる」は生命の生ですね。みんなで活きるには、活動の「活きる」という字を当てたのです。

    一人ひとりは自立してマンションで普通の暮らしを始めましたが、働き続けてきた人間というのは地域に何も還元してきていません。そこで、何かできないかということで「サロン活動」という、月に一回、何かテーマを見つけて、自分たちの知り合いを講師に呼んで、地域の方に呼びかけながら2~30人のグループで楽しむことを始めました。12年、100回以上続けてきました。

    嵯峨:今村田先生が、地域に馴染んでいくことはそう生やさしいものではないというお話をされましたが、友だち近居の7人のメンバーが集まって、自身が地域活動を実行する側に回られたということですね。

    村田:一人ではできないですが、何人かが集まればできるんです。地域活動でもそうだと思います。一人でこういうことをやりたいと思っている方はたくさんいらっしゃると思うんですけど、2、3人の仲間を集めれば、情報も2、3人分集まってきます。知っている仲間もそれだけ増えていくわけですから、一人で頑張らなくてもいいと思います。

    私たちは7人で、2時間の中で誰をお呼びして、何をお茶にするかといったような細かいことをたくさん決めていくのです。会場セッティングをして、お掃除して、ということを仲間同士で自然に分担するからこそ活動できました。

    嵯峨:まさに何人かで企画を持ち寄るパーティーみたいな感じですね。みなさんでちょっとずつ力を集めて、それが活動として出来上がっていって、やりがいというところに返ってくるのですね。

    村田:返ってきますね。とにかくせっかく始めたんだから、せっかく皆さんも楽しみに待ってくれるようになったのだから、継続させようとなりました。継続するためにどうするかというと、7人それぞれが毎月ゲストを探しました。知り合いを頼ったりしてね。私たちの場合は、リーダーがいないのです。横並びなのです。
    7人いたから、7分の1ずつの負担と責任を分け合いました。お金がかかったら、7で割って、労力も7分の1ずつで、誰かに負担がかからないようにする。全て平等にして、全員で責任をもってやるように心がけました。
    そうでないと、誰かを頼ると、その人は燃え尽きてしまいますよね。みんな一国一城の主で、言いたいことを言いますし、時にはめげる人もいるし怒っちゃうこともありますけれど、それでもその前に4年という歳月がありましたから、修復は可能でした。

    嵯峨:非常に参考になるモデルというか、暮らし方ではないでしょうか。とはいえ、マンションの部屋を一つずつ借りるとか、お引越しをして近所に住むところまでは実行に移すのが難しい方も多いと思います。そういう意味でも、友だち同士のネットワークを作っておくというのは、高齢期に暮らすうえではとても心強いですね。

    村田:心強いですよ、友だちは。今家族がいる人でもいずれはお一人様になるんですよね。もうみんな、お一人様になる時が待っているわけです。その時に、長年親しんできた友だちがいたら、どれほど心強いことかと思います。

    これは松原惇子(まつばらじゅんこ)さんというノンフィクション作家の方に聞いた話なのですが、彼女はかなり昔からお一人様を応援する活動をしてきていました。彼女は私たちのように、やはり友だち近居的なことをしたいと思っていたけど、結局できなかったそうです。「松原さんがやってくれたら、私も乗るわ」という方ばかりで、燃え尽きてしまった。じゃあ何を考えたかというと、仲良しグループの電話連絡網を作ったそうです。たとえば地震があった時に、AさんがBさんに、BさんがCさんに、大丈夫ですかと安全確認をする、そういう仕組みを作ったのです。これは安全と安心の、一つの保障の仕組みですよね。その人たちがかなり離れたところに暮らしていても、時にお食事会や、何か映画でも行くというふうな友だちづきあいや仲良しのグループに発展していったというようなことを聞きました。地域でも、家族がいる人が入ってももちろん構わないですし、工夫をすればすぐにできることだと思いますね。

    嵯峨:友だちは安心安全の保障の一つでもあり、たとえ日頃から近くで活動していなくても、何かあったときにサポートしあえるだけでも安心できることがわかりました。ありがとうございます。

    >>次ページ:人を受け入れる地域側の心構え

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

    ページトップへ戻る
    Copyright © 2015-2024 Bureau of Social Welfare, Tokyo Metropolitan Government. All Rights Reserved.