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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    楽しみながら支え合う〜心を動かす言葉の力
    「東京ホームタウン大学2023」
    オープニングトークレポート

    オープニングトーク
    福祉ジャーナリスト 村田 幸子氏
    2023年3月29日

    開催日:2023年3月3日(金)
    会場:オンライン
    登壇者:村田 幸子氏(元・NHK 解説委員、福祉ジャーナリスト)
    聞き手:嵯峨 生馬(認定NPO法人サービスグラント 代表理事)
    動画:YouTubeにリンク

    基調講義レポートはこちら
    分科会レポートはこちら

     

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    2023年3月3日・4日、「東京ホームタウン大学2023」の2日間にわたるプログラムを開催しました。

    「東京ホームタウンプロジェクト」は「いくつになっても、いきいきと暮らせるまちをつくる」をスローガンに、超高齢社会において、身近な地域でさまざまな助け合いやつながりが広がる東京のまちを目指して、東京都福祉保健局在宅支援課主管のもと2015年より続いている取り組みです。

    「東京ホームタウン大学2023」は、この東京ホームタウンプロジェクトの2022年度の取り組みを総括するイベントです。地域団体、プロボノワーカー、行政関係者、社会福祉協議会、生活支援コーディネーターのみなさま、その他、広く一般のみなさまから、約580名のお申込みをいただきました。

    オープニングトークでは、福祉ジャーナリストの村田幸子氏に、地域の仕組みを伝えるときのポイントや、自ら経験された地域デビューやつながりづくりのエピソードなどをお話しいただきました。

    地域包括ケアシステムをいかに伝えるか?

    嵯峨:村田先生は、長きにわたって「伝える」というお仕事を手掛けてこられました。今の冒頭のご発声も、本当に聞き取りやすい、伝わるお話の仕方だなと思ってお聞きしていたのですが、村田先生が人前でお話をされたり、何かを伝えるというときに、どのようなことを心掛けていらっしゃるのでしょうか。
    また、特に福祉の話題となりますと、専門用語や難しい制度の話なども出てきますが、どのようなことに気を付けていらっしゃいますか?

    村田:物事を伝える際には、言葉を使いますね。言葉には、話し言葉と書き言葉があります。
    それぞれの特徴を踏まえて、話し言葉の特徴をよく理解したうえで話すことを常に心がけています。テレビなどの放送の現場では90%以上が話し言葉です。
    書き言葉は、読みながら分からないところは、「これは何だろう」と文章と行きつ戻りつしながら、理解して次に進むことができます。

    でも、話し言葉は、もし嵯峨さんが私の言っている事が分からず「村田さんはなんて言ったんだろう?」と疑問を持ったら、そこにひっかかってしまって、その後ずっと私が話している言葉も分からなくなってしまいます。聞いている人を置き去りにしてしまうわけです。ですから、話し言葉はどんどん消えてしまうのだということをまず意識して、できるだけかみくだいて、わかりやすく話すということがいちばん大事ではないかと思います。

    嵯峨:確かに、一度つまずいてしまうと、そこから先には進めなくなりますね。

    村田:特に福祉というのは、今までは特別な人のために制度としてあるような認識で、一般的には、私たちにあまり関係ないことと思われていました。
    でも今は超高齢社会で、一人暮らしの方も増え、誰にとっても身近な問題となりました。介護保険ができてからいろいろな言葉が生まれてきましたが、介護の言葉についてはかなり理解されるようになってきたと思います。例えば、要介護とは介護が必要な人で、介護予防という言葉も使われていますし、一般の方にも分かるようになってきました。

    一方で、地域包括ケアシステムは、あまり関係のない人にはなじみのない言葉ですね。新しい言葉が出てきた時には、どこかに書いてある言葉をうのみにしたり、誰かから聞いたことをそのまま言ったりするのではなく、私は「翻訳」という言葉を使うのですが自分の言葉で噛み砕いて分かりやすく話すことをしなければ、聞いている側は置いていかれてしまうと思います。

    嵯峨:本日ご参加の方の中には、「2025年問題」という言葉を聞かれた方も多いと思います。
    これは、2025年には人口のボリュームゾーンである団塊の世代が後期高齢者になり、本格的な超高齢社会を迎えると言われています。そんな中、医療や介護の需要が高まる一方で、生産年齢人口が減少し、医療や介護の担い手が不足することが課題となっていることを指します。
    そこに、身近な地域の助けを通じて、介護予防や生活支援が行われ、そして在宅で最期まで暮らすことができる。このようなものが「地域包括ケアシステム」と言われているのですが、詳しい方には理解できても、一般的に耳馴染みがあるかと言われるとまだまだ馴染んでいない言葉がたくさん出てきますね。

    村田:そうですね。「地域包括ケアスステム」という言葉自体は世の中によく出ていると思いますが、それを納得して理解している人というのは、いったいどのくらいいるのでしょうか? あまりいないのではないかなという気がします。
    私はこの地域包括ケアシステムの話をするときに自分で心がけているのは、介護保険制度と何がどう違うのかを伝えることです。地域包括ケアシステムも、在宅でできるだけ長く暮らすための仕組みです。だけど介護保険制度だって、在宅で暮らすことを目指していたわけです。ではなぜ介護保険ではいけなかったのかというところが腑に落ちていないと、なかなか次には進めません。介護保険制度というサービスは、どちらかというと家族を当てにしている制度ですよね。サービス提供だけでは、さまざまな暮らしにくさを抱えた人たちを、とても支えきれない。また、家族を当てにしているから、家族が先に倒れてしまうこともあって、お一人の方や認知症を抱えた方々は施設に入らざるをえないのです。

    高齢者が増え続ける中で、なんとかこうしたことをなくしていこうと新たに提案されたのが、地域包括ケアシステムだと考えています。
    つまり、家にいても施設と同じように、24時間365日必要なサービスが切れ目なく届くようにする、それを目指している仕組み、そういうサービス提供の仕組みが、地域包括ケアシステムだと思います。

    嵯峨:そうですね。介護保険が導入された時には、介護の社会化と言われました。その後、家族のケアだけでは厳しいという中で民間サービスなどを取り入れていう流れができました。すると今度は、民間サービスと家族だけでも厳しいので、地域や社会全体で高齢化社会を支えていこう、そういった形でこのシステムが進んできているところです。これは、ある意味全国的な姿として描かれているのですが、地域ということで考えていきますと、その地域の特性に応じて取り組みを進めていくことが重要になってきますね。

    村田:この図にあるように、お住まいを中心にして、左上側の医療、右上側の介護は専門職が担います。そして下に生活支援や介護予防などを必要な人に届ける具体的な仕組みは、地域によるものですよね。これは、ちょっと困った制度だなと思えば、法律を改正したりして制度を改正していけばよいわけです。

    私がいちばん重要だと考えているのは、生活支援だと思います。これがとても仕組みを作りにくいのです。生活支援は何かというと、ちょっとした困りごとをお手伝いするものです。例えば、ちょっと散歩に行きたいとか、食事のサービスを手伝ってほしい、ごみを捨ててほしい、高いところのものを下ろしてもらいたいとか。体がちょっと悪くなると、今までできていたのに、できなくなることがいっぱい出てきます。そういったことのお手伝いは、わざわざお金をかけなくてもできるわけです。税金や高い保険料を使ってやればいいというものではなく、ご近所様のお互いの支え合い、助け合いでできる。これを期待されているのが、地域住民です。

    だから、地域住民にとっても、地域包括ケアシステムなんていうのは行政が作ればいい、というものではないですね。自分たちの町で暮らしやすさを作り上げるためにも、自分ごととしてちょっとした困りごとを私も担っていくわという、そういう気持ちを持つことが大事です。

    行政と地域住民がお互いに車の両輪となって、自分たちの住む町のケアシステムを作っていくこと重要ではないかなと思います。この意識改革には時間がかかるわけです。

    この地域包括ケアシステムが提案されたのは2013年、それぞれの地域で創り上げようという目標が2025年です。それだけの期間で、自分たちの地域に見合ったものを作っていく。医療がとても進んでいるところもあれば、施設が多いところや少ないところまで事情はさまざまに違います。わがまちの特徴あるシステムを、区市町村が中心となって住民と一緒に作りましょうということを目指していると思います。

    伝える時は、誰に向かって話すか?を第一に。

    嵯峨:ありがとうございます。今村田先生が、例えば生活支援のことを説明されるときにいくつか具体例をはさみながら説明されました。一つひとつ難しい単語を嚙み砕きながら伝えるということは、今参加されている方も、これはちょっとメモしておこうかなといったところがたくさんあったのではないかと思います。

    村田先生はジャーナリストというお仕事でいらっしゃいます。もし先生が、区役所や市役所の職員だったり、あるいは地域のコーディネーターさんで、住民の意識を変えていかなければならない立場に立たされたとしたら、どのような工夫をしながら伝えていかれるのでしょうか。

    村田:誰に向かって話すかということは、相当意識をします。ある程度情報が入ってきて新しい動きを分かっている人たちなのか、それともまったく情報も入らない、福祉や介護に無関係で暮らしてきた人たちなのか。同じ「地域包括ケアシステム」について話すとしても、話し方や言葉選びや文の構成は、違ってくるのが当たり前だと思います。

    割とわかっている人のグループに話す場合、ある程度専門用語を使った話し方をしても理解されます。一方で、まったく聞いたことのない人に話をする場合、専門用語はかみくだいて、こういう内容ですよ、ということも説明しながら伝えていかないと、聞いている方はちんぷんかんぷんじゃないかなと思います。

    それと、話す速度もあると思います。大事なのは、聞いている人のわかり具合を見ることです。なんかちょっと分からなそうな顔をしているなとか、うんうんと頷いてくれたら、ここはよく理解してくれたんだな、というふうに。聞き手が主役なのです。だから、その主役が分からなそうな顔をしているから、もう一度ここは繰り返して説明しておこうとか。そういった相手とのやりとりを頭に置きながら話していくことも考えますね。

    嵯峨:そうすると、話すときに資料やメモだけを見ていてはだめですね。相手の顔や反応をしっかり見ながらお話しするのですね。

    村田:そうですね。あとは、よく、話す内容をすべて書いてしまうことがありますね。書くことは頭の整理になりますからとても大事なことですが、話す時には書いたことをいったんメモにすることが大事だと思います。書いたことをそのまま言おうとすると、ちょっとつっかえるともう分からなくなってしまいます。ですから、言いたいことはメモにまとめる。順番どおりにいかなくても、メモを見れば、これを言い忘れていたなと思ったことは付け加えることができます。

    嵯峨:2025年が迫る中、人々の意識は簡単に変わるものではないという意味では、日々の伝え方でいかに共感を呼ぶか、また支援者を増やすかがとても重要になってくると感じます。

    >>次ページ:お一人様社会にみんなで活きる「友だち近居」の取り組み

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

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