東京ホームタウンSTORY
東京ホームタウン大学講義録
楽しみながら支え合う〜心を動かす言葉の力
「東京ホームタウン大学2023」
オープニングトークレポート
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【質疑応答】人を受け入れる地域側の心構え
嵯峨:ここで、本日の参加者のみなさまから事前にお伺いしていた質問をご紹介したいと思います。
「現役時代の地域参加は妻に任せきりにしておりましたが、定年後のシニア男性としては地域参加に躊躇しがちです。そのような男性シニアに参加しやすい方法、仕組みづくりなどございましたらご指導ください」というご質問です。
それから、似たご質問をいただきまして、「地域との関わりが薄い50代の、特にサラリーマン男性が地域デビューするきっかけの場づくりをしたいと思っています。関心はあるが最初の一歩を踏み出せない、という人たちに、どのようにリーチできるのか、事例やアドバイスがあれば伺いたいです」と言った声です。こちらは地域団体に携わる女性の方からご質問をいただきました。
こういった声は、村田先生にも届いているのではないかと思いますが、いかがですか?
村田:多いですね。地域活動の担い手は女性が非常に多く見えます。どうしてでしょうか?
嵯峨:さきほど村田先生がおっしゃったように、男の人と関わりがないとおっしゃっているのは、日頃は職場と家との往復で、地域に馴染みのない人が比較的多いということだと思います。
村田:それはそうですね。今では女性も定年まで働き続ける人が増えましたけれども、男性が地域社会に参加してくれない、活動に参加してくれないという声はどこに行っても聞きます。一つは、どれだけ早く一人ひとりの男性が沽券を取り外せるかということにもかかっていると思います。その方法の一つとして、ただ地域活動に参加してください、やってくださいと呼びかけるのではなく、「学んで実践」ということを考えてみてはいかがでしょうか。例えば、ボランティアとは何か? 地域ではどういう困りごとがあるのか? とか、介護とは何か? 介護保険とは何か? とか、介護や福祉を取り巻く状況の中に、基礎的なことを学ぶ、そしてその学んだことを活かしながら地域で活動してもらうという仕組みを作るということです。
生涯学習講座や社会人大学などが各地にありますが、学ぶことが中心です。2~ 3カ月間の講座を受けるばかりの学びっぱなしであることが多い。そういうところに取材に行くと、皆さんは「いや~時間つぶしですよ」とおっしゃるんです。なんと勿体ないことかと思うんですが。その学びを地域に活かす仕組みを作れると良いですね。
一例として、東京都江戸川区の江戸川総合人生大学があります。そこは人生大学といって、2年間学んだあと、地域に出て活動してもらうことを目的にしています。
介護・健康学科に私は関わらせていただいたのですが、介護の基本的なこと、それから自分の老いの暮らしのこと、健康のこと、地域の基礎的なことを学んで、そして2年間の間に地域の様々な施設に自分で訪ねていって勉強してくるという実践活動をするのです。卒業したら、必ず地域活動に入っていくんですね。こういう方法を、行政も社協も、NPO法人もやるというふうに、学びの場を設けて男性に入っていただくのも一つではないかと思いますね。
嵯峨:ありがとうございます。村田先生が易しい言葉でおっしゃるので、大事なことが頭にすっと入ってきます。学んで実践、つまり学ぶだけでも実践だけでもダメなんですね。
村田:そうですね。今は実践だけではないですか。実践しに来てください、やってください、だけでしょう。ちょっと学びで心構えを作ってもらう。男性に限らず、基本的にそういう流れがあるといいなと思います。
嵯峨:ありがとうございます。ここで簡単なデータをご覧いただければと思います。
プロボノとは、企業で働いてる方たちが仕事のスキルを活かして地域団体などの非営利組織を応援するというボランティア活動です。実践に近い位置ではあるのですが、プロボノに参加した後、さらに地域活動やNPOといったところに継続的な関係を持ったかどうかを調べてみました。すると、年代が上がるにつれて継続的な参加に繋がってる人が増えていることが分かりました。
また50代ですね、50歳から59歳の年代になりますと、プロボノという、期間限定での支援にとどまらず、その後、継続的に繋がる可能性が60%という数字も出ています。
やはり、いきなり地域に飛び込むのは難しいですが、ホップ・ステップ・ジャンプのように、段階を追って少しずつ進んでいかれると良いかもしれませんね。
村田:数字ではっきり表れていますね。
嵯峨:もう一つ先ほどのご質問で、地域団体の方から、いかに50代のサラリーマン男性に地域デビューしていただくか? といった質問が寄せられていました。
先生は全国各地のさまざまな地域団体をご覧になっていらっしゃると思いますが、団体側も、担い手不足という課題を抱えていながら、新しい人に入りづらい状況もあるのではないかと思います。どのようにすれば、そこの扉が開かれるのか、教えていただけますか?
村田:ただ漠然と「活動してみませんか? 私達の団体に入りませんか?」ではなくて、その団体がどういう人材を求めているか、どういうお役目を担ってほしいのかを発信していくことも大事だと思います。たとえばパソコン仕事をしてほしいとか、経理を手伝ってほしいとか、あるいは大工仕事、力仕事などは女性だけの団体から求められることが多いです。
そのように、「今こういう方に来て欲しい、なんとかお手伝いしてくれませんか」と、具体的に言うと、「自分はこういうことをやってきたからできるかもしれない、ちょっと行ってみようか」という気にもなるのではないでしょうか。発信する側の工夫ですね。
嵯峨:団体さんとしては、とにかくどのような人でもどうぞと言いたい気持ちもあると思うのです。でも、かえって「どなたでもぜひ」と言われると、入りづらいものでしょうかね。
村田:「どなたでもぜひ」も大事だと思いますよ。何もできないけどお掃除ぐらいならできるわと思う人だっているかもしれないし、話し相手だったらという人もいるでしょう。
それに加えて、個別にこういうことで困っているんですという発信をすることが、今はやや欠けているかと思いますね。
嵯峨:そうですね。こうした発信をすることによって「これは私の出番だ」というふうに思われる。
村田:江戸川の例でも、学習支援をしている男の方がいらっしゃるのですが、数学がとても得意な方で。数学が苦手なお子さんのちょっとしたサポートをするとか、プロボノ的に求められることが自分のスキルとぴったり合って、活き活きと活動されているなどの例もたくさんあります。
嵯峨:初めてボランティア活動をする時などは、ボランティアする側も緊張すると思うんですね。見ず知らずの団体にどのようにドアノックしたらいいのか、入り方がわからないことも多いですよね。
村田:私が今まででいちばん感激した、地域活動家の河田珪子さんという方がいらっしゃいます。居場所作りをしていらっしゃる方です。新潟での活動に参加したときに彼女が言っていたのは、「新しく入ってきた方に対して、『あなた誰?』という顔は絶対しないようにって、みんなに言っているのよ」とおっしゃったのです。
もちろんスタッフだけではなく、参加している方にもお伝えしていました。入ってきた時に「あなた誰?」と言われているような顔されると、ギョッとしちゃって、入りにくくなりますよね。入ってきたらそのままさっと座れるような雰囲気や場作りをすることを心掛けてとおっしゃっていました。あれは素晴らしいなと思いましたね。仲間に入ってもらう時の、最初の大事なことではないでしょうか。皆さんにもヒントになればと思います。
嵯峨:簡単なようで簡単ではないですよね。意図的でなくても、少し迎え方が良くなかったりすることもあるかもしれません。オープンでウェルカムな態度というか、空気を示していくということですね。
村田:ポイントですね。あと、自分たちの活動が一番正しくて一番良いとアピールしているところもある気がするのですが、良し悪しではなく、活動をお互いに認め合う心といいますか、そういうことも考えていく必要があるのではないでしょうか。排他的なことは削除して、流行りの言葉でいえば多様性を認め合うということも、必要かなと思っています。
友だちは自らの安全保障
嵯峨:いろいろヒントのあるお話をいただきました。最後にお手元のパネルに、ご覧なられた皆様へ一言メッセージをお書きいただければと思います。
村田:先ほど、友だち近居の話をしました。私は、これからはお一人様社会だと思うんです。一人暮らしの方が東京都内で100万人を超えてくる。今は一人でなくても、みんな一人になっていく心構えをもっていかないと、自分の暮らしをつくるのは難しいというところで、友だちというのはもう最大の安全保障になるというのが私の実感です。
嵯峨:ありがとうございます。友だちが集まってサロンをやって地域活動になったというお話も含めて、友だちから地域を作っていくという進み方もあるんだなと、大変参考になったのではないかと思います。
セッションは以上で終了させていただきます。村田先生、本当に貴重なお話をいただきありがとうございました。
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