東京ホームタウンSTORY
東京ホームタウン大学講義録
データから読み解く、地域参加が豊かにするライフキャリア
「東京ホームタウン大学2022」
オープニングセッションレポート
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良質な人間関係をみつける場所はどこか?
ちなみに、私自身は内向的です。人とつながるのが必ずしも得意ではないので、一般論としては大事だとわかるけれども難しいと思いながら研究してきました。結果的に分かったことが、人とのつながりって、闇雲に増やすと不幸になるんですね。今日の資料には載せていないんですけれども、単純に数が多いだけの人間関係は不幸になるという分析結果がある。その一方で、良質の人間関係は人生を豊かにする。その良質な人間関係って何かというと、ここにある2つが大事なんです。
「ありのままの自分でいられる」「共通の目的がある」。そんな人とのつながりができると、人生が豊かになります。
見ていただくと分かるように、ありのままでいられて共通の目的がある人間関係を持ってると、安心していられる割合も、喜びを感じられる割合も、成長を感じる割合も、将来に展望を持てる割合も、すごく高くなるんです。家族と職場以外の「サードプレイス」といわれる第三の人間関係をつくるなら、自分らしくいられる、共通の目的がある仲間を探すといいです。でも、大人がそういう人間関係を作るのって、簡単なようで意外と難しいですよね。その時に、ボランティアは、この“ありのままの自分でいられて、共通の目的を探せる、誰もが飛び込める場所”になりませんか。
人生がどうしたら意味あるものになるかという研究をしている、サニー・S・ハンセンというキャリア研究者は、人生を意味あるものにするには、『4つのL、Love(愛)、Learning(学び)、Leisure(余暇)、Labor(労働)』が大事だと言います。「今、自分に人生で増やしたいトッピングは何か?」と聞くと、ラブだと思う人もいればレジャーだと思う人もいるだろうし、ラーニングだという人もいると思います。「ボランティア」には、いろいろな活動があります。
福祉の分野だったら断然ラブが強い人たちが多いし、災害復興みたいなところは力仕事も必要。司会の嵯峨さんがなさっている「プロボノ」は、越境学習と言って組織の壁を越えて学ぶ機会を得られる活動です。
今日、私がご紹介するような、オリンピックパラリンピックのボランティアは、スポーツの祭典に一緒になって盛り上がりたいという気持ちで参加している人達も多くいます。
ボランティアと言うと、自分とは遠いと思う人もいるかもしれませんが、今、非常に裾野が広がっていて、いろいろなものが選べる時代になってきています。自分にとって良質な人間関係、且つ自分の人生の彩りを豊かにしてくれるものを探す時、何か一つ、関心に合うボランティアがあるんじゃないかと思います。
実際にオリンピック・パラリンピックのボランティアは、従来の福祉や災害支援などの利他的なボランティアと違う可能性を示しています。東京2020大会後のアンケート調査では、例えば、大会後もスポーツボランティアを続けたいという人が8割を超えていたり、ビジネスパーソンに限れば、ボランティアで経験したことを仕事に活かしたいという人が7割いたり。
今までボランティアを一度もしたことがないけれど飛び込んできた人達も2割いて、パラリンピックがあったことによって、障がい者の人たちを身近に感じたり、その人たちと自分たちとの関わりを改めて考えなおすようになったりしたという方々もいます。
人生を豊かにするボランティアの文化を育む
ボランティアは、個人の人生を豊かにもするし、社会や地域にとってもありがたい活動です。
なぜ今日みなさんと、ボランティアを通じて地域と関わる、社会と関わることについて、共有したいかと言うと、「ボランティアって自発的な活動でしょう。やりたい人がやればいいんだから、他人がとやかく言うことじゃないじゃない」って言われることがあるからなんです。でも、放っておいたら、ボランティアって意外にやりにくいですよね。
内閣府の調査では、ボランティアに関心がある人は6割いますが、経験した人は2割しかいません。4割くらいの人は、何らかの理由でボランティアをできなかったり、しない理由がある。
属性別に集計すると、なんとボランティア活動が一番しにくいのは、会社員やアルバイトといった企業で働く人たちなんです。「忙しいからかな」と思いますよね。でも、同じように働いて忙しい医師や自営業者は、ボランティア経験率が高いんです。どうも企業で働く人たちの中に、時間の忙しさだけじゃない要因がありそうです。
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