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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    「東京ホームタウン大学2024」メインセッションレポート
    2025年、そして、その先へ。超高齢社会・東京のこれまでとこれから


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    テクノロジーで高齢社会を豊かに

    檜山敦氏

    檜山:ご紹介ありがとうございます。皆さん、こんにちは。一橋大学の檜山敦と申します。私からは主に、ICTを活用して地域の中でつながる、動き出すというお話をご紹介していきます。私自身も高齢社会を豊かにするためのテクノロジーの研究開発を15年以上続けてきておりまして、特にこの10年間を振り返ってみるといろいろなことが変わってきているなという印象がございます。私自身、元々の専門はバーチャルリアリティとかロボットのような先端のテクノロジーを扱っている分野ですが、博士号を取得してからこのような技術を社会のために応用していきたいと、世界のトップランナーである日本の超高齢社会を対象にした技術の研究開発を行ってきています。

    特に、どういった課題に取り組んでいるのか、人や社会を支援するという観点から2つの軸で整理したものがこちらの図式になります。

    社会的支援の在り方を四象限で表した図

    水平軸の向かって左側が物理的な支援で、右側が心理的な支援です。垂直軸の下が個人に対する支援で、上は人数が増えていって、コミュニティや社会全体に対する支援を扱うようなものです。順番に左上から見ていきます。

    左上は社会における物理的な支援ということで、 高齢者の行動できる範囲を拡張していくような、ハードウェアとしてのインフラに関わるようなものですね。バリアフリーな環境を作るということや、移動を支援する、行動範囲を広げるという意味で、ロボティックとかモビリティの技術が扱われるような領域になります。左下が個人に対する物理的な支援という意味において、健康や医療が関わってくるお話です。テクノロジーとしてはスマートウォッチなど身に着けるウェアラブルデバイスや、環境にインターネットを埋め込んで見守りをしていくIoTと呼ばれるものがあります。右下は、個人に対する心理的なサポートとして、高齢期における新しいエンターテインメントを生み出そうということで、バーチャルリアリティの技術を活用していく領域です。そして最後、右上が今日のお話につながっていくような、社会における心理的な支援、社会の中のソフトウェアとしてのインフラを、コンピューターのソフトウェアとして整えていくようなお話です。ソーシャルメディアやAIを活用していく領域になってまいります。

    それぞれについて、このような技術を作ってきました。

    四象限それぞれに対する技術のイメージ写真

    左上は、遠隔操作できるロボットやアバターのような、離れた人とあたかも対面でコミュニケーションをしているような感覚で、より親密に交流ができるようなことを目指したようなお話です。左下、「VR吹き矢」は、レクリエーションなどで呼吸機能、嚥下機能をトレーニングするという意味で広まっている「スポーツ吹き矢」を、バーチャルリアリティを活用して狭い場所でも誰でも楽しめるように実現したものです。
    ゲーム感覚で遊んでいると、気がつけば自分の呼吸機能等が強くなって、元気な時間が長くなるというお話です。右下、こちらは福祉施設の中でバーチャル旅行体験を提供している映像です。自由に外出ができない状態や、特にコロナ禍ですと、元気な高齢者にとっても旅行はなかなかはばかられるものだったと思います。そういった時にバーチャルリアリティを使うと、一緒にみんなで思い出の場所や行ってみたい場所に、もう一度旅行をすることができる。そういった体験を定期的に自分たちの楽しみとして展開していきます。あとで振り返ってみると、バーチャルリアリティのすごくいいところとして、自発的な体の動きを引き出すことがわかりました。全身を使って体験するメディアなので、体のいろいろなところを刺激することができます。その意味で、遊びだったつもりが結果として身体のトレーニングや、認知機能を刺激するようなトレーニングにもつながる。楽しいから持続できるという要素も盛り込んでいるのが特徴です。


    地域と住民をつなぐ情報プラットフォーム「GBER」

    檜山:最後が、今日のメインのお話につながる、社会とのつながりをつくる、社会参加を応援する情報基盤としてのICTの活用、情報通信技術の活用に取り組んでいるお話です。情報プラットフォーム「GBER(ジーバー)」というものを、さまざまな自治体と連携しながら提供していっております。

    GBERは、英語のGathering Brisk Elderly in the Region「地域の元気なシニアを集める」という頭文字を取って名付けています。

    1950年の人口構造を表すグラフはきれいなピラミッドの形をしています。ここから100年で、逆の形になっていきます。とはいえ、支えられているだけの存在と思われているかもしれない高齢者ですが、いろいろな経験や知識を持っています。これらを社会の中で活かせるように、できれば安定した地域の中で、自分自身の興味関心にしたがって仲間とつながり、地域を良くしていくようなプロジェクトを実践していく。そういった支援を目指しています。
    1人だとできることは少ないかもしれないけど、今のできることを組み合わせられれば、やがて大きな動きとしてまちを変えていく原動力になります。

    こちらのGBERが目指しているのは、地域の活動、仕事だけでなく生涯学習、趣味の活動やボランティアといったように多様な活動によって、自分自身が無理なく参加できる範囲の中で地域での居場所を見つけていくことを応援していくことです。
    GBERのプラットフォームでは、「モザイク」というキーワードがあります。自分の空いている時間、通える範囲、それから興味、関心という観点から自分に合ったものを見つけて、とりあえず試しに参加してみて合わなければまた別の活動に参加してみるという、気軽に参加することを後押ししていくことを指します。現時点では、最初に、千葉県柏市にあります一般社団法人セカンドライフファクトリーさんで、2016年に実証実験をスタートさせ、とても活発にご活用いただいております。その後、自治体と連携して熊本県から始まり、東京都世田谷区、福井県、神奈川県鎌倉市、今年度新たに埼玉県和光市でGBERの活用が進められています。

    もう1つ、GBERが果たせるかもしれない役割として提案しているのが、地域共創です。

    GBERの社会実装を始めた当初、熊本県でも大きな地震がありました。災害の直後に、地域のベンチャー企業やボランティアと、救援物資をマッチングするような情報プラットフォームを急いで作って現場に持ち込んだという話がありましたが、やはり混乱している現場だと急には新しい技術をうまく活用することができなかったという話があります。地域の人たちが普段からGBERを活用していれば、マッチングの仕組みを生かし、そのままボランティアや救援物資のマッチングに活用できる可能性が出てくると思っています。普段使っているからいざという時も使える、そういう情報プラットフォームがあることで、緊急時のライフラインとして生きていく可能性があるのではないかと思っております。
    私はこのGBERを通じて、1人ひとり、多様な価値観や観点、生き方を考えている人たち、 そういう小さな単位から、これからの10年の新しい地域、新しい社会を作っていくシステムとして成長させていきたいと思っております。

     

    地域活動における大学の役割と取り組み

    檜山:私自身、一橋大学大学院で今年度新たに作られたソーシャル・データサイエンス研究科というところで教鞭を取っているのですが、この秋に私が担当する1年生向けの必修科目「ソーシャル・データサイエンス入門」の一部で、テクノロジーだけでなくリアルな地域とのつながり、そこで大学が果たせる役割はなんだろうか?ということも学生と一緒に考えていくような講義を展開することにしました。
    9月から12月までの期間で実施したのですが、学生70名弱を5、6名ぐらいのグループ、計12グループくらいに分けて、地域でいろいろな活動をしているさまざまなステークホルダーの人たちをお招きし、その地域のリアルな課題について共有をしてもらいます。お招きしたのは一橋大学がある国立市の周辺地域の中で、12くらいの組織・団体さんです。国立市とかボランティアセンター、まちづくり協議会とか公民館、東京女子体育大学、また子どもたちの通いの場などさまざまな拠点があります。その拠点が抱えている課題を共有して学生たちが考え、まちをフィールド調査してデータを集め、分析をして、より良い展開をしていくためのアプローチ方法を提案する授業を展開しました。

    やってよかったなというのは、学生が社会を知る、リアルを知るということでした。しかしそれだけではなく、参加してくださっている地域の団体の皆さんが、自分たちの活動については一生懸命頑張っているけど、近くの団体の活動をあまり知る機会がなかった、横の情報共有ができたことによって、意識がもっと刺激されるということがありました。

    今、私の新しい研究室をキャンパスの中に作っているのですが、地域の皆さんと一緒に作っています。ここを産学官民が集まって地域課題を考えていくような拠点として整備していこうと、壁を塗ったり天井を塗ったりというところから始めています。

    研究室を新たな地域課題を考える拠点にと整備されている様子

    この拠点作りに地域の人が関わることによって場に愛着を持ってもらい、一緒に活動し、ワークショップを開いていくようなことに、勢いをつけていこうかなと思っております。たとえば、今まで日本は健康寿命の延伸によって90歳、100歳に近づくような長寿を達成してきているわけですが、「健康」という医療の視点から老後を考えるだけでなく、社会とのつながりや個人の充実感という観点から生き方を考えていこうという意味で、「貢献寿命」※というキーワードを今発掘していっています。

    さまざまな大学、企業さんとも連携しながら、これからの地域を活性化し、高齢社会を作っていくようなプロジェクトとして展開していきたいと考えております。

    ※貢献寿命延伸への挑戦!~高齢者が活躍するスマートコミュニティの社会実装~ | 公益財団法人 長寿科学振興財団
    https://www.tyojyu.or.jp/zaidan/about-jigyo/koueki1/kokenjumyoenshinchosen-GBER.html

    以上が私からの話題提供になります。ありがとうございました。

    ≫檜山氏の投影資料はこちら

     

    堀田:檜山先生ありがとうございました。 高齢社会の中で、テクノロジーを活用した4つのチャレンジ、とりわけ社会参加という切り口では、GBERの取り組みを中心に、各地そして大学での活動もあわせた取り組みをご紹介いただきました。

    では、続きまして、定年後研究所 理事・所長の池口さんからお話をいただきたいと思います。
    この10年の中で、企業の中での捉え方、あるいは一企業人としての暮らしがどう変わってきたのかということも、お聞きいただければと思います。

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

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