• サイトマップ
  • 都庁総合トップ
    • 大きいサイズ
    • 標準のサイズ
    • 小さいサイズ

    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    「東京ホームタウン大学2024」メインセッションレポート
    2025年、そして、その先へ。超高齢社会・東京のこれまでとこれから


    ページ:4 / 4

    情報インフラは地域課題と出会うきっかけに

    堀田:ありがとうございます。では、ここからはお二人にお聞きする時間にできればと思います。まずは池口さんにお聞きします。GBERの取り組みは、初めてお聞きになりましたでしょうか?

    池口:はい、初めて知りました。

    堀田:池口さんは、ご自身あるいは研究所としても、定年後のキャリアを40代、50代ぐらいの間から考えておこうというご提案ですとか、地域の課題にも触れて、地域デビューのようなことをされているお立場から見ていかがでしたか?

    池口:はい、とても参考になりました。私は大田区の東横線沿いに住んでいるのですが、単身赴任が長かったこともあり、地元のことをまったくわかっていなかったです。自分がまだピンピンしているのに、何かこの大田区のお役に立てるところがないのかと思った時に、このようなプラットフォームがあるといいなと思いました。また私の保険会社のOBOG会では、似たようなプラットフォームを最近作っており、ちょうど金沢では、地震の際に連絡に役に立ったということも聞きまして、先ほどの先生の熊本地震の事例もお伺いさせていただいて、やはりこういうインフラっていうものは必要なんだなと感じました。

    堀田:ありがとうございます。今度は檜山さんにお伺いしようと思うんですが、GBERが導入されている地域ではご案内できると思いますが、池口さんのように一市民として地域デビューしていくという観点と、企業なり色々な人たちが活動を後押しできるには、という観点で考えた時に、 どのように行動するとよいのか、GBERの経験も踏まえつつ、ぜひお話しいただきたいです。

    檜山:なかなか個人の力で動かしていこうとすると難しいところもあるかなと思うのですが、地域のコミュニティ単位として、このようなICTのプラットフォーム導入をやってみたいというような声を、自治体の方にあげていって動かしていくというのがいちばんの近道というのが現状ですね。ただその一方で、一橋大学がある国立市ではまだGBERは導入されていないのですが、地域のコミュニティの方が、私が一橋大学に就任した情報を聞きつけて、地域の中で、自分たちの、さらには定年後の人たちの活動プラットフォームとして導入していくにはどうしたらいいのか?ということを一緒に考える動きが生まれています。このような動きが新しいモデルになるという意味では、地域の大学というのも一つのキーワードになってくるように思います。

    堀田:ご紹介くださった国立市社協さんとご一緒に学生さんたちも巻き込んでおられる昨年度の講義は、GBERはまだ導入されていないかもしれないけれど、その根っこになるようなデータベースを学生と一緒に作っていく取り組みに近づいているようなイメージでしょうか。

    檜山:そうですね。

    堀田:地域の中にそのような文化というか風土を組み込んでいくところから始めていこう。 そして、今は学生が参加の主体になっていますが、学生以外の地域住民もそこに混ざっていくこともよいと思っています。池口さんのお話の中でも、地域のどこでどういう活動をやっていけばよいのかということは、ずっと会社の中にいるとわかりにくいというお話しがありました。池口さん自身、定年が近づいてから大学院に進まれたわけですよね。

    池口:はい、58歳の時に、あわてて大学院で学び直ししました。

    檜山:大学も、実は年齢制限のない学び場なんですよね。これから若い学生さんがどんどん減っていくわけですから、大学には入りやすくなっているのではないかと思います。地域の課題に、若い人も交えて多世代が一緒に向き合っていくような空気を作っていくことに貢献できたらいいなと思います。

    堀田:ありがとうございます。私も大学院の教員ですけれども、早期退職した方や50代後半の方がいらっしゃいます。どちらかというと学部を卒業してすぐの方は少数で、かなり世代が幅広く、世代が違う人たちが語るからこそ、同じ地域の「宝物」も「心配」もガチャガチャと結びついて展開していく場面があるなと、思ったりもしました。

    会社外での人とのつながりが可能性を広げる

    堀田:池口さんは、事前の打ち合わせの時に「スイッチが入る」という言葉を使っていらっしゃいました。池口さんご自身は、5年ぐらい前にこういう登壇でしたら、スーツにネクタイでバシッと決めてこられたのではないかと思うんですけど、本日はふんわりとした素敵なニットをお召しになっています。どの辺りで池口さんご自身はスイッチが入ったのか、そして今、研究所や修士課程でも研究をされて、スイッチをどのようなところに増やしていくとよいとお考えですか。

    池口:このニットは5年ほど前に買ったんですけれども、ほとんどタンスの中に入っていたのを、おっしゃるように今日、ネクタイ締めていくのかどうか迷ってこの格好で参りました。私は、スイッチがいきなり入ったというよりは、53歳で営業現場からキャリアを考える関連会社に移った時に、肩書きが外れて、これから何をしていったらいいのか、さまよい人になりました。そういった時に、キャリアコンサルタントの資格を取ろうと学校に毎週日曜日に行き始めたところ、私が最年長かと思いきや、70歳前後の男性女性の方も割といらっしゃって。一方で、20歳過ぎの大学の就職センターにお勤めの事務員の方など、本当に幅広い人たちがいらっしゃいました。
    そして、キャリアの相談なのでロールプレイングが多いのですが、ある就職支援センターの20代の女性の方から「池口さんってほんとうに人の話が聞けない人ですね」と言われてまして。いや私は聞ける人間のはずだと。会社でずっと管理職をしてきたじゃないか、と反発してしまったわけです。すると「いや、もう池口さんは口を開いた瞬間に、ああした方がいいとかこうした方がいいとか、俺はこうやってきたとか言って、私の話をてんで聞いてくれません」「絶対試験には受からない」と言われてしまって。そこで、自分は30年以上の間、人の話を聞けない管理職を続けてきたのかなと、そこから何か危機感みたいなものも感じました。当時の学校仲間とは、もう5年以上経ちましたけれども、いまだに月1回は集まって近況報告をしています。私にとって、会社以外の空間に出向いたことからスイッチが入って、いろいろな人との結びつきが会社以外で増えてきて。そして、やっとニットを着て人前に出られるようになったという感じです。

    10年後はAIがさらに身近な存在に

    堀田:ありがとうございます。では檜山さんに戻りまして、この先10年経ったらどうなっているだろうということを、残りの時間で考えてみたいなと思います。10年前は、ICTをはじめテクノロジーがこれだけ浸透しているとは想像できていなかったのではないでしょうか。今も着々と新しい取り組みや研究を進めていらっしゃると思いますが、10年後、さらに地域のみなさんが元気で、つながりを作るということを考えた時に、テクノロジーがこんな力を持つ可能性があるよというような、未来に向けた明るいネタがありましたらぜひご披露いただければと思います。

    檜山:インターネットを使う人たちが増えてきて、どの年代でも利用者が増えてきていますが、これから10年で考えると、今度はインターネットでなくAIを使う人がすごく増えてくると思います。今はインターネットやスマホを操作するのが結構面倒だったり、間違えたり、という方もおられると思いますが、ロボットやアバターに話しかけることで必要な情報を得て行動をするような、人間と関わるようにテクノロジーと関わっていける未来になるかなと思います。逆に今度は、自分が再発見するためや新しい一歩を踏み出すための、背中を押してくれるような存在になるようにも思います。

    堀田:未来が見えるからこそ、それぞれがもう一歩考えておくといいことや、もう一歩やっておくといいこと、のようなメッセージがあれば、ぜひいただけると嬉しいです。

    檜山:そうですね。いつまでも好奇心を絶やさずに、新しいことは難しいかもしれないけど、とりあえずちょっと触るだけ触ってみようと挑戦してみてほしい。わからなければ教えてくれるようなところが、国や自治体の取り組みの中でも作られていくと思いますので、そういう環境を積極的に活用しながらぜひ踏み出していってほしいと思います。

    地域との関わりは、豊かな生き方の一つに

    堀田:ありがとうございます。池口さんは、10年後は71歳になられますが、10年後にこれだけは実現していたいこと、あるいはこんな風景が見られるといいなということはありますか。

    池口:今、ご縁の少ない大田区の地域で人と交わって、そこで自分もしっかりとした役割をいただいて、お金ではない感謝のようなこともいただきたいなと、綺麗事のようですけれど感じます。また私たち大量採用世代で、この大手町中心の企業に電車で通われているたくさんの方々が、いずれ65歳、70歳で地域に戻っていかれることになると思います。今日会場ではたくさんの魅力的な活動団体のブースが出展されていますし、このような機会に何かフックを見出して、自分が次に生かしてもらえる場所を、地域の皆さんとの関わりの中で作っていければと思います。これからもっと還元していけるところでお役に立てる自分でありたいですね。

    堀田:ありがとうございます。さらにもう一つ池口さんに伺いたいのですが、企業が社員の定年後のキャリアまで考えてくれるのは、やはり、だいぶ体力のある大きな会社なのではないかと思っています。今日、会場には比較的若い世代の方々も来られていて、必ずしも企業の側から定年後のキャリアを考えるように研修してくれるとか、そのような働きかけはないかもしれないと思うのですが、そのような世代に向けて何かエールがあればお願いします。

    池口:自分の息子夫婦も30歳を過ぎて、お父さんのような生き方はしたくないとはっきり言われています。彼らは共働きですが地元に目を向けて仕事をしています。そういう意味で、今は法律も変わって男性も育児休暇を取らないといけなくなっているほどですから、自分の時の、早朝と深夜に通勤して地元は単なる通過駅…というのではない生き方が、若い方々にはフィット感があるだろうと思います。また、私の実家は中小企業なのですが、地域にとても根差しているのを感じます。私が伺った大田区の就労支援施設も、蒲田の町工場からの仕事を請け負われています。そういう意味では、私のような大企業であちこち転勤してきたのとは異なる、地域密着型の生き方というのは、中小企業だからこそハブになってできるのではないのかと思います。

    堀田:ありがとうございました。好奇心を持ち続ける、あるいは今までずっと会社ばかりだった方はちょっと違うところに出向いてみる、地元で活動したことがなければどこかに行ってみるというところから、もしかしたら次の一歩が見えてくるかもしれないですね。テクノロジーは随分それを助けてくれるような役割をすでに果たしつつありますし、10年後はさらに進むかもしれないという希望を見せていただいた、お二人だったと思います。

    それでは、ここまででお二人のセッションは終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。


    東京ホームタウンプロジェクトでは、地域団体と地域活動に関心のある方をつなぐオンラインプラットフォーム「地域参加のトビラ」を運営しています。

    “まちとつながる はじめの一歩”を見つける場として、ぜひご活用ください。

    ▽地域参加のトビラ
    https://hometown.metro.tokyo.jp/tobira/

    メインセッションの最後には、2限目の分科会のご登壇者でもある、さまざまな活動をされている地域団体の方、中間支援機関の方4名を、活動内容とともにご紹介しました。4名の方の活動の詳細は分科会レポートでご覧ください。

    (地域活動実践者)
    藤井 敬三 氏 NPO法人 シニア大楽 理事長
    室津 瞳 氏  NPO法人 こだまの集い 代表理事
    井上 温子 氏 NPO法人 ドリームタウン 代表理事

    (中間支援機関)
    浦田 愛 氏  文京区社会福祉協議会

    分科会レポートはこちら

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

    ページトップへ戻る
    Copyright © 2015-2024 Bureau of Social Welfare, Tokyo Metropolitan Government. All Rights Reserved.