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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    超高齢社会、自分らしく生きるための地域とは
    「東京ホームタウン大学2022」
    メインセッションレポート


    ページ:3 / 5

    制度と住民をつなぐ、活動や情報の「入り口」に

    広石:全体的なこれからの人口のことから始まって、地域福祉の課題なども話していただきましたし、健康寿命を延ばすには社会のつながりがすごく大事だということもあれば、その新しいつながり方という話もありました。秋野さんいかがでしたか?

    秋野:私も65歳になりましたから、介護保険の通知書も来ましたし、高齢者が増えていくという事実をあらためて服部さんのお話を伺いながら実感しました。国の財源にだって限りがありますし、自分でどれだけ健康でいられるかが大切だなと思いました。そのためには、運動したり食事に気を付けたりしなきゃいけないけれど、もっと地域の人との関わりにも目を向けていかないといけないなと、自分自身を振り返って感じました。

    広石:秋野さんはすごく健康に気を付けていらしたり、健康に過ごすための工夫もされていると思いますが、どんなことを意識されていますか?

    秋野:やっぱり先ほど服部さんがおっしゃったように、まず転ばないことですよね。転んで入院すると、どうしても足腰が弱って認知症になっていく方も大勢いらっしゃると聞きますので、やはり足がちゃんと上がるとか、運動をこまめにやっていくってことも大事ですし、食べるもので人間の体はできていますから、なるべく体にいいものを口に入れるように気を付けて暮らしています。
    でも、今コロナ禍でソーシャルディスタンスが必要な時代になってしまって、そのなかでいかに地域の人とつながっていくか、どういうふうにして入り口を見つけていけばいいのか? っていうのはきっと今日視聴してくださっている皆さんも考えているんじゃないかなとは思います。
    服部さん、理想のまちづくりを考えてくださっていますが、そうした情報は私たちには、どういうふうにして届いてくるんでしょう。

    服部:そうですね。先ほど、最初にお話しした人口増減のジェットコースターみたいな話も、きっとご存じない方が多いですよね。

    広石:私は秋野さんみたいに身近なところで体操をされている方の存在が、すごく大事なんじゃないかなと思っています。というのも、今は福祉の専門家やお医者さんが中心となって地域福祉のことをされているんですけれど、「地域で誰が認知症かっていうのはお医者さんが最後に知る」という話を以前聞いて、なるほどと思ったんですね。

    どういうことかというと、「うちの親は大丈夫かな(認知症ではないかな)」というのは、まず家族がだいぶ前から思い始めていたんだけれど、「でもきっとそんなはずはない」と思っていた。それで、ある時病院に行って先生が診断したら認知症が進んでいたんだけれど、その後に病院の受付の人たちは、みんなが「やっぱり」って言ったそうなんです。実はその受付の人たちは「あのおばあさんは最近いつも支払いの時に一万円を出すから、たぶんお金に自信がなくなってきたんじゃないのかな」って思っていたんですよね。かれこれ一年ぐらいそう思っていたそうです。

    いいお医者さんがいれば地域が良くなるんじゃないかと思いがちですが、実は身近な人はもっと早くから気付いているんですね。「あの人ちょっと足腰弱ってきたな」とか「この間ちょっと転んで足痛めたって言ってたけど大丈夫かな?」とか「ちょっと最近よく間違えるよね」と、何となくは気付いているけれど、あんまり大ごとにしたくないからと、専門職には届かない。一方で、専門職が情報を届けようとしても、身近なところでないとなかなか伝わらないのです。

    そこで、その間にいるような人って誰なんだっけ? と考えると、私は秋野さんのような活動をされているような方が、実は制度と住民の方をつないでいただける可能性があるのかなと思うんです。

    秋野:私に何ができるかなぁ・・・。

    広石:みんなよくピンピンコロリなんて言うけれど、服部さんの今日のお話のように、実際には12年くらい介護が必要になっているんだよ、ということや、「何かあった私にも声掛けてね」と言ってくださるだけで、実はすごく大きなきっかけになるんじゃないかと思います。

    服部:秋野さんの存在はすごく大事ですよね。それに、女優さんで地域活動をされてる方というのもあまり聞かないので、ぜひ伝えていってほしいですよね。

    秋野:そうですね。伝えていって、一緒に活動していくことが大事だと思いますし、「一つの入り口になる」っていうふうに自分の今後の活動を考えた方がいいなとあらためて思いますね。

    人との関わりは煩わしいもの。それでも、つながっていくことが大事

    広石:秋野さんが地域の活動をされてから、ご自身の中にも変化があったのではないでしょうか。そのこと自体がみなさんにとってすごくヒントになっていくんじゃないかと思いますが、秋野さん、いかがですか?

    秋野:そうですね・・・やっぱり人と関わっていく、いろいろな人とコミュニケーションをちゃんと取っていくって、実は面倒くさいですけれど(笑)。でも、だからといって二の足を踏んでしまうと広がっていかないので、やっぱりそこは多少面倒くさかろうが、いろいろややこしかろうが、とりあえずつながっていくことが大事かなと思います。例えば、今私はラジオ体操の指導員で、一応ラジオ体操指導員二級なんですけれど・・・。

    服部:資格制度があるんですね!

    秋野:ラジオ体操の資格の勉強ってすごく大変なんですよ! 筆記も何十問もありますし、実技試験もあります。ラジオ体操って先生は鏡面で逆なので、自分が覚えている形と逆から入らなくてはいけないからすごく難しいんです(笑)。

    いろいろな場所でラジオ体操をやるんですけれども、やはりラジオ体操って、みんなができるもの、体に刷り込まれているものなんですね。年代的に、小さい頃からやってこられたので、(ラジオ体操の)音が鳴ると自然とできるんです。同じことをみんながちゃんとできるっていうのは、非常につながってる感じがあるんですよね。そこに、私たち指導員が、「正しい形でやりましょう」「今この筋肉を伸ばしますよ」「ちゃんとやるとすごくいい運動なんですよ」とお伝えすることによって、コミュニケーションが取れて、言葉と動くことでも共通項が持てます。
    ですから、みなさんラジオ体操の免許まで持たなくていいのですが、一緒にやろうという機会があったら、そんなお知らせが回覧版で回ってきたら、ぜひ出掛けていくことが大切なのかもしれません。

    広石:今のお話でもヒントがたくさんありますね。介護予防のために何か新しいことをしなければとなると、やっぱり覚えるのも大変だし続かないけれど、自分の体に染み込んでいるようなことなら自然とできますよね。
    あと、つながりが大事だとなると、「つながらなきゃ」となってしまいがちですが、実は一緒に体操をするとそこに共感が生まれてコミュニケーションになる。そういったところが、今の地域においてすごく大事なんじゃないかなと思いました。

    人を巻き込み、みんなで活動を育てていく

    広石:服部さんは、地域の活動について、思っていらっしゃることはありますか?

    服部:地域活動は収益が上がるものじゃないので、立ち上がりにくいし持続しにくいんですよね。だから活動を広げていこうと考えたら、そういう性質があることを理解して、応援するような仕組みを用意しないとなかなか難しいと感じます。今日のイベントもそういう趣旨ですよね。やはり、住民の方のちょっとした気付き、「あそこの人困ってるんじゃないかな?」とか、秋野さんが福島で感じたような気付きって、まさにマッチの先の火みたいな本当に小さな灯火なんです。それを燃え広がらせるためには、薪を用意しなきゃいけないし、風を送らなきゃいけない。

    広石:みんなで育てていくってすごく大事ですよね。秋野さんは、積極的に人を巻き込んでいくのが得意な方なんじゃないかなと思ったのですが、いかがですか?

    秋野:人を巻き込んでいくことは大事かなと思ったものですから、なるべくたくさん声を掛けています。一緒に仕事をしている人たちや、ママ友にも。子どもたちが小さい時に知り合った方たちですが、子育てが終わってもずっとお付き合いが続いていて。それ以外のお付き合いの方たちも、今一緒に活動しています。みなさん気持ちはあるけれど、ただやり方が分からないだけなので、これからも巻き込んで、女優さんたちも含めて声を掛けていきたいなと思います。影響力のある人たちに広がっていくと、またそこから広がりが生まれたらいいですよね。

    服部:秋野さんの活動が続いてるコツは、やっぱり仲間を集めようとしていることですよね。さっき“薪”と言いましたが、燃え続けるものを集めてきてやらないと続かないし、単独で燃えていても消えてしまいますからね。

    秋野:そうですね。いろいろな人の力があった方が大きな力になると思います。私一人でやれることには限界があるので、力を貸してくださるってとても素晴らしいことですし、そのためにも人を巻き込んでいかなきゃいけないなと思いますね。

    無理はせず、自分自身が幸せだと思えることを

    広石:あともう一つお聞きしたいのが、秋野さんが仕事もお忙しい中で地域活動を継続するために、どういう工夫や心がけをされているのでしょうか。

    秋野:自分のためにやってるんですよね、私は。自分自身が幸せだと思えることをやっているという認識なんです。結果、誰かのためになったのかもしれないけれど、自分が幸せになる時間を一日のうちの何時間でもいいから使えればいいなって思っているので、無理はしていないですね。無理をすると続かないので。そして、自分自身が楽しいと思う時間に友達にも入ってもらえたらいいなと。

    広石:自分がやっていて楽しくて幸せな時間だからみんなに分けてあげたい、みたいな気持ちだといいですね。やらなきゃいけないから、大変だからあなたもやりなさいよって言われると、みんな引いてしまいますから。あとは、最初はそういう気持ちで始めたはずなのに、どこかで「やらなきゃ」に変わってしまうのもよくないので、今の「無理をしない」ということは実はすごく大切なポイントなんじゃないかなと思います。

    秋野:あとは、子どもたちの読み聞かせは、すごく活力になりますよね。子どもたちの近くにいるだけで、こちらも気持ちがアップしていきます。だから、高齢者と子どもとの関わりみたいなことをうまくシステム化して、例えば幼稚園の子どもたちが老人ホームを訪れるとか、もちろん感染対策やいろいろな課題も考えなくてはいけませんが、なにか子どもたちと高齢者をマッチングできるような仕組みがあるといいなと思います。

    服部:先ほど地域共生社会と言いましたけれども、どうしても高齢者の福祉の中でどうしようかとか、子どもの中でどうしようかと縦割りで考えがちですが、地域にはいろいろな人が住んでいるし、そもそも多世代なんですよね。ですから、仕組みから考えずにやれば、むしろ自然に多世代になるはずだと思います。

    広石:たしかに、近所の子どもたちも一緒にやろうよと声をかけているうちに、気付けばいろいろな人が混ざっているといったこともできますよね。

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