2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

東京ホームタウン大学講義録

超高齢社会、自分らしく生きるための地域とは
「東京ホームタウン大学2022」
メインセッションレポート

メインセッション
秋野 暢子 氏
服部 真治 氏
広石 拓司 氏
2022年5月24日

開催日:2022年2月19日(土)<br>会場:オンライン<br>登壇者:<br>秋野 暢子氏(女優、一般社団法人0から100 代表理事) <br>服部 真治氏(医療経済研究機構 主席研究員)<br>広石 拓司 氏(株式会社エンパブリック 代表取締役)<br>動画:YouTubeにリンク

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健康寿命を延ばす鍵は「社会とのつながり」

服部:先ほど、65歳以上の人を“支えられる人”とすると、だんだん1人で1人を支えるようになっていくとお伝えしましたが、「65歳以上の人を“支えられる人”というふうにしていいのか?」 というお話です。政府の健康寿命延伸プランでは、「自然に健康になれる環境づくり」を掲げています。それは、国から健康を強制されるというのも変な話ですから、たとえ健康に無関心であっても、ただ生活していれば健康になれるような、そんな地域づくりが必要だということです。そのなかで、介護予防や認知症の予防、フレイル対策として、さまざまな事業が今実施されていることを共有させていただきたいと思います。

まず、健康寿命という考え方にはいろいろありますが、ここでは要介護認定を受けないような、介護の必要がない期間を延ばそう、というものとします。実はあまり知られていないのですが、現在は、みなさん結構不健康な期間が長いんです。男性は平均8年、女性は12年、亡くなるまでの間に要介護状態を経ている。これは長過ぎませんか? っていう話なんですね。もちろん個人差はありますが、なんとかこれを短くしたいということで、私たち研究者は原因を調べています。

すると、介護が必要になる原因として男性で一番多いのは脳卒中(23%)なのですが、女性と男性の2位以下が共通するのが、認知症とフレイル(虚弱)です。そして、女性の1位は、骨折転倒なんですね。先程、秋野さんが地域のみなさんと体操をされているお話がありましたが、骨折転倒の予防には、やはり運動が利きます。転ばなければ骨を折りませんし、運動すると骨の量が増えていくいうことが分かっているので、対策としては有効です。

では、認知症やフレイルをどうするか。認知症はWHOの予防のガイドラインがありますが、適度な運動、禁煙、適正な飲酒、バランスを取れた栄養ということで、当たり前のことを当たり前にやりましょうということなんですね。そして、フレイルというのは、健康ではないが、歩行に介護が必要というような状態でもない中間的な状態を言いますが、可逆性があると言われていて、早く見つければ元に戻せるのです。

このフレイルに早く気付き、早く元に戻す。それから予防することも大事です。フレイルは、きっかけが人それぞれで、例えば、骨を折って入院して、ベッドで数週間寝ていたので筋力が落ちてしまった、みたいなものもありますし、年齢を重ねてだんだん活動の量が減っていったり、または旦那さんが亡くなるなど何かのきっかけで気持ちが落ち込んでしまったり、ということもあります。では、フレイルをどう予防するか。それを考えるうえで、興味深い研究結果をご紹介します。

東大の研究ですが、フレイルのリスクの高さを数値で表しています。身体活動・文化活動・ボランティア・地域活動を全部やっている人のリスクを1とすると、何もしていない人は16倍リスクが高い。一方で、運動だけやっていて地域活動や文化活動をやっていない人と、運動はやっていないけれども地域活動や文化活動をやっている人を比べると、なんと運動習慣はないけれど地域活動をやっている人の方がリスクが低いという結果が出ています。

こういったところからだんだん分かってきたのが「フレイルドミノ」という考え方です。フレイルとは体が虚弱になるということですが、最初のきっかけは、遡っていくと「社会とのつながり」が切れて生活の範囲が狭まることにある。ですから、この辺りをまずしっかりと倒れないようにすることが重要だということが分かってきました。

ですが、どうしても高齢者は「社会とのつながり」が切れてしまいやすいです。先ほど単身世帯が増えていると言いましたが、伴侶のどちらか亡くなればそうなりますし、仕事を辞めたというのもつながりが切れることになります。すると対策として必要なのは、やっぱり「つながり」をたくさん作っておくことです。秋野さんが女優以外にもさまざまなつながりを作っていらっしゃるのと同じだなというふうに思いました。

「つながり」を作って地域で活動していることの効果は、多数確認されてきていまして、例えば滋賀県米原市での調査では、ボランティア活動をしている人としていない人を7年半追跡していったら、自立の割合が変わってくるという結果が出たそうです。人のためになる生きがいや、自分が活動することで人が喜んでくれる、そんな活動をしていくことが重要だということですね。

これからの社会を支える「つながりや参加による“第4の縁”」

服部:ここまで、「健康寿命を延ばすために、社会とのつながりを切らずに活動していきましょう」ということでしたが、それに関連して今、「地域共生社会の構築」と言われている、社会保障の仕組みについてもお話したいと思います。

高齢者が増えていくということは年金、医療、介護といったものがこのままで行って大丈夫かということになりますが、こういった制度というのはそもそも日本人の中で多くの人が当てはまるリスクについて仕組みを作っているので、制度と制度の間に隙間ができるんですね。高齢者の制度、障がい者の制度、というふうに作ってきましたから、どうしても隙間ができます。その隙間を今まで埋めてきたのが、家族の力や、血縁です。それから、近所に住んでいる人同士の地縁、あとは会社の中での福祉制度ですけれども、それも弱くなってきます。さらに人口が減って、担い手が減ってと、日本全体が非常に苦しくなっている状態です。

そこで、解決策として今、地域を見てみると、血縁、地縁、社縁ではない4つ目の縁として「つながりや参加による縁」が非常に重要だと言われています。東京の秋野さんと福島の栄養士さんがつながる、そういう縁ですね。これがすごく大事で、しかも地域を救ってきているいうことが確認されています。それから福祉に限らず、農業とか住民自治などもつながっていくというような、「新たなつながりづくり」が私は日本の唯一の希望だと思っています。

これを福祉の分野から言うと、制度から考えて制度に当てはめるのではなく――例えるなら、靴に足を合わせにいくみたいな話じゃなくて、足に靴を合わせるように、人の暮らしから課題を考えていくようなことが必要だと思います。そうした専門職の支援と、「こういうことに困ってる人がいるから、私はこういうふうにしてあげたい」「この地域を良くしていきたい」「地域を元気にしたい」という地域住民の興味・関心・思いによるまちづくりが融合するようなプラットフォームづくりができないか。これを、地域共生社会と言っています。

制度で縦割りにするとか、支える人・支えられる人を年齢で区切るということをしないで、多様なつながりをつくっていく。例えば居場所づくりとか社会とのつながりづくりですね。それが生きがいになったり、あるいは担い手づくりや雇用の創出になったりと、みなさんがいろいろなところでつながって循環していくような社会を作っていけたらと思っています。

東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

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