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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ホームタウン大学講義録

    超高齢社会、自分らしく生きるための地域とは
    「東京ホームタウン大学2022」
    メインセッションレポート


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    支援側の課題は、いかに情報を届けるか

    広石:先ほど服部さんのお話の中で、専門職だけではなく住民のみなさんの力が大事であったり、社会参加がフレイル予防になるというお話もありました。今後、市町村や地域では、活動をどう支援していけばいいのでしょうか。

    服部:支援や応援ですよね。自発的な活動なので、支援しようとか応援しようとなり過ぎると危ないと思います。市町村の職員の中ではまれに「住民にボランティアしていただく」とかっていう人いますが、それは違いますよね。ボランティアは自発的にやるもので、支援してやってもらうものではない。でも支援は大事としたときに、自発的な住民の活動って何から生まれるかといったら、やっぱり「情報」ではないでしょうか。支援側がやるべきことは、まず地域の課題を知ってもらう。あるいは仲間とつなげるところなんですよね。

    広石:地域包括ケアの仕組みの中でも、もっと住民に参加してほしいという気持ちがあるからこそ「どうやってボランティアしてもらうか」とか「サロンをやってほしい」みたいな考え方になりがちだけども、それよりも、住民のみなさんが考えるきっかけや、入り口、接点みたいなものさえあれば、実はいろいろな思いを持っている人が多いので動き始めるのかもしれないということですよね。

    服部:あとは、先ほど言ったように、なかなか立ち上がりにくいし持続しにくい性質があるから、財政的にどう支援するかですね。仲間とつながるための支援って結構大事で、例えばホームページを作るなど広報をしたいときにも、技術がなかったりといった課題があります。そこで作り方を支援するとかっていうのは重要で、東京ホームタウンプロジェクトのプロボノ支援がやっているのは、まさにそれですよね。

    秋野:「情報」といったときに、「私ちょっと地域とつながってみたいわ」「何かしてみたいわ」という方が、どこにどう連絡すればその情報を得られますか? 

    服部:そこなんですよね。今日のイベントもそうですが、いろいろなチャンネルで情報を出していかないといけないですよね。

    広石:私は情報から近づくことが大事だと思っていて、以前にも、東京ホームタウンプロジェクトで「地域で高齢者の集まる場を作りたいです」という専門職の方がいらして、「一生懸命に広報しているんだけれどなかなか人が来なくって」とおっしゃるんですね。じゃあ「高齢者の方ってどこで集まってるんですか?」って聞いたら、「みんなカラオケにいるよ」って。
    どうしても(住民の側から)福祉の方へ来てくださいってやりがちですが、カラオケや将棋の会に地域の人が集まっているなら、そこに専門職の人が行くのもいいですよね。みんな趣味のためにやっていて福祉のためには当然やっていないけれど、「みんながこれから健康に生きていくためにはこういうことも知っておいた方がいいじゃん」みたいなノリで専門職を呼んでほしいなと思うし、専門職の方もそういう場所に行ってほしいなと思います。
    それこそ、秋野さんが健康体操をされていて、みなさんがすごく楽しそうに参加されている姿って、意外と介護の仕事をしていたら知らなかったりします。そこに地域の福祉の人が来て、こういう制度があるんですよと話すことで、コミュニケーションが広がっていけばいいなと思います。

    服部:情報を届けるところには相当力を入れないといけないですよね。例えば、秋野さんのところに届いた介護保険の決定通知ですが、神奈川県秦野市では、その決定通知にボランティアの案内とかを入れているんです。必ず見ちゃうものに入れるという工夫ですね。

    秋野:それいいですね。あとは、商店街の自治会などが足場になって、地域で物を買いに来た人たちに情報が行き渡る、みたいなことができたらよさそうですね。

    服部:秋野さん、さすが鋭いですね。まさに共生社会は、産業とのつながりということなんですよね。

    広石:服部さんが、こういう問題に気付いている人はまだまだ少ないとおっしゃいましたが、今日このイベントを見てくださっているみなさんも、「少し情報を外に届けてみよう」とか、「ちょっと接点を持てばいいじゃない」などと、みんなで協力して発信していくことも大事だと思います。

    なんでも「してあげる」のではなく、できることは「一緒に」

    広石:ここからは、視聴いただいている参加者の方からご質問もご紹介しましょう。「高齢の方がご自分の体調を見ながら活動をされているが、地域活動への参加のテンションが下がりがちになってしまっていて、どうすればよいか」という質問が来ています。自分自身が楽しむこともヒントになりそうですが、秋野さんならどうお答えになりますか?

    秋野:まず、なぜテンションが下がっているかですよね。例えば、ご自身の健康がちょっと心配だからなのか、サポートしてくれる友人がいないなど環境の問題がある可能性もありますよね。なぜモチベーションが落ちているのかをお考えになるといいかもしれないですね。

    広石:たしかにそうですね。なんとかやる気にさせようというばかりじゃなくて、「なんでかな」をちょっと丁寧に考えてみるとヒントがありそうです。一人一人の気持ちを丁寧に見ること、すごく素敵で、大事なことではないでしょうか。ありがとうございます。

    続いての質問です。「これから本格的な超高齢社会になっていく中で、本当に今の介護保険制度で大丈夫か。これからデジタルやAIなども含めて変える必要があるのではないでしょうか」ということで、服部さんいかがですか。

    服部:今のままでは、持続しないんですよね。これだけ後期高齢者が増えて、支える人が減るわけですから考え方を変えなければいけない。お互いにですが、利用する高齢者側は「今まで保険料を払ったんだから好きに使っていい」ではなく、自分でできることは自分でしつつ、必要なところの支援を受けるという考え方が必要だと思います。
    一方で、福祉を提供する側にも課題があります。介護の世界では自立支援とよく言いますが、海外だと何でもしてあげてしまうことを「手を後ろに回したケア」と言うんです。「してあげる」ということは高齢者にとっては活動を奪うことにもなるので、これは先ほどのフレイルの考え方でいうと、余計に悪化してきてしまう。買い物に困っている人に、ヘルパーが全部買い物をしてあげると、その人は必要な能力をどんどん失っていってしまいます。

    広石:「お年寄りだから座っていればいいですよ」ってよく言いますが、むしろ一緒にやってもらう方が、体を使ったりしてよかったりするんですよね。もちろん必要な方は介護サービスをどんどん使ってほしいのですが、一方で、なんでも使えばいいやじゃなくて、ご自身の健康づくりなどを日頃から気を付けることも大事ですね。ありがとうございます。

    人間関係の煩わしさこそ、認知症予防に!?

    広石:参加者のみなさんから、先ほど秋野さんがおっしゃった「人と関わるって煩わしいよね」というところに対して、すごくいい反応がいくつも入っています。
    例えば、「地域での活動の人間関係の面倒くささや煩わしさこそが認知症の予防に大事じゃないか」とコメントされている方がいますね。あまり嫌な思いをされては良くないですが、いろいろな人間関係があるからこそ考えることもありますし、あえて煩わしさを避けずに、煩わしいこと自体も楽しんじゃうぐらいの気持ちでいられるといいですよね。秋野さん、いかがですか?

    秋野:人との関わりが、いかに煩わしくても面倒くさくても、許容できるのがいい年の取り方なんじゃないかと思います(笑)。若いうちは喧嘩もするでしょうけれど、いろいろ経験して、「こういうことはこうなんだな」と乗り越える力を持てるのも年齢を重ねたからこそ。煩わしいことを引き受ける、それもまた楽しいと。何もないよりいいですよね。

    広石:穏やかに暮らすことも大事だけれど、多少意見が違う相手をどうやって説得しようかとか、何か提案してみたけどうまくいかないから次はどうしよう、みたいなこともモチベーションになりますよね。

    秋野:たまには怒ることも必要じゃないですか。時には文句も言うし、ありがとうも言う。それがいいんじゃないかな。

    服部:ボランティア活動が健康の維持にいい、とお話ししましたけれど、ボランティア活動をやっている人の中にも、役員をやっている人とそうじゃない人と、どっちが健康維持できるかという研究もあって、役員をやっている人の方が認知症リスクを伴う要介護認定の割合が2割減るという結果も出ているんです。やはり煩わしいことをやった方がリスクは減るんですね。

    広石:人間関係を考えたり、お金の計算をしたりと、いろいろ考えることも大事なのかもしれませんね。
    あと、こちらも参加者のコメントで「地域共生社会が地域“強制”にならないように」というものも来ています。

    服部:そうですね。そこは国も考えていて、健康寿命の延伸と言っても、やっぱりそこは自発的なものであって、決して強制されるものではないということですよね。

    東京ホームタウンプロジェクトの支援先、参加者、協力団体などをご紹介します。

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