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    地域づくりの台本

    地域リビングプラスワン(板橋区)

    ページ:5 / 7

    参考になる運営ノウハウ 〜「地域リビング」継続の秘訣〜

    地域リビングの実際の運営について、さらに詳しく見ていきましょう。ここでは、人々のつながりを生む多世代交流の居場所の拠点として、コミュニティスペースをうまく機能させたいと考える人のために、地域リビングが大切にしている3つの運営方針(コンセプト:日常のシェア、多様性、やりたいことをやる)をご紹介します。

    登場人物

     

    地域リビングにおける役割

    補足情報

    代表

    (井上さん)

     

    【地域リビングのリーダー】

    地域リビングを訪れるほとんどの人が知っている存在。自らもごはん番などのボランティアをしている。現場の運営は、コーディネーターやボランティアに任せている。

     

    地域リビングを運営するNPO法人 ドリームタンの代表。

    コーディネーター

     

    【地域リビングの毎日の運営を支えるキーマン】

    ボランティアのサポートや場づくりのコーディネートや会計・事務など運営全般にかかわる業務を担当している。ときには、ボランティアの相談相手にもなる。人々がつながり合う地域リビングの雰囲気づくりに欠かせない存在。

     

    2018年11月現在

    8名が活動。子育て中のママさんが多い。

    ボランティア

     

    【一人ひとりが得意分野を活かして運営を担う】

    ボランティアとして地域リビングの運営に携わっている。おかえりごはん、おうちごはんでは料理(ごはん番)や利用者の対応やお掃除(おうち番)などを分担して担当している。利用者からボランティアになった人が多い。 

     

    ボランティアスタッフは約50名。月1回から参加可能。

     

    利用者

     

    【地域で共有するみんなの「リビング」に集まる人たち】

    「地域リビング」に来訪する近隣の住民等の利用者。

    子どもから高齢者まで幅広い人が利用している。障がい者やホームレス状態の人など、社会的な弱者も分け隔てなく場を共にしているのが特徴。

     

     

    1. 「日常」を「シェア」する

    地域リビングは、「日常のシェア」を基本的な運営方針(コンセプト)としています。「日常」とは日々の家事や食事の時間のような、その中での楽しいことや困りごとのことです。「シェア」は日本語では「共有する」ということですが、地域リビングでは、みんなで同じ時間を過ごし、みんなで楽しみ、みんなで課題を解決していくということを意味します。多様な人が集まり日常の生活をシェアするという意味において、居場所であるリビングが活動の中核的な存在となっています。

    なぜ、「日常のシェア」を大切にしているのかといえば、それは、地域リビングを訪れるひとたちのつながりを生むためです。つながりを生み出すことで、お互いに助け合いながら暮らすことができるようになります。一人だと大変だった日常の困りごとが、誰かとシェアすることによって簡単に解決できるようになるなど、友達や相談相手ができることで、一人でいるよりも日常生活が豊かになることを期待しているのです。

    「日常のシェア」エピソード①
    〜子供を保育園へ迎えに行く〜

    【シチュエーション】
    共働きで毎日フルタイムで働いているAさん。子どもを保育園に迎えに行ったあとに、地域リビングのおかえりごはんに来ていました。今日はちょっと不安そうな表情です。

    利用者Aさん:「小学校に入る時点で平仮名書ける子が多いらしいんだよね。うちは、保育園行かせているし、帰ってから教える時間なんてないから不安。こうやって色々な経験に差が生まれちゃうのかな。」

    井上さん:「そっか、そんな悩みがあるんだね。地域リビングで教えてあげられたらいいけど、お迎えが・・・。」

    利用者Bさん:「私は○○ちゃんなら、慣れているし、お迎え行ってあげるわよ。でも、知らない人だし、引き渡してくれないかしらね。」

    井上さん:「保育園に聞いてみようか。これが出来たら、すごいことだよね。地域の人がお迎えに行くって。」

    利用者Aさん:「子どももBさんだったら大丈夫って言っているし、保育園に聞いてみるね。」

    井上さん:「うんうん、聞いてみて。」

    利用者Bさん:「結果分かったら、教えてね。」

     

     

    【後日談】
    その後、利用者のAさんは保育園のお迎えを頼むことができ、Aさんのお子さんはひらがなを楽しく学ぶことができました。

     
    「日常のシェア」エピソード②
    〜作り置きおかず〜

    【シチュエーション】
    一人暮らしだと、野菜を買っても、余ってしまったり、何品も作るのは大変。仕事をしていると、時間がなくて何を作るか考えるのも、つくるのも大変。お惣菜を買っていると、結構高くつく。そんな日常のおかず作りもシェアしようという、最近の試みである「作り置きおかず」のエピソードです。

    【インタビュー】井上さん:
    最近は、作り置きのおかずをみんなで作ることにチャレンジしてみました。きっかけは、友人が作ってくれたおかずがすごくおいしくて感動して、こういうのを日常的に、家でも食べたいって思ったこと(笑)
    それで考えたのが、「作り置きおかずの会」。本当に単純で、みんなで大量におかずをつくって、みんなで分けて持ち帰るというもの。
    「おうちごはん」や「おかえりごはん」に来て食べるのではなく、家の食卓を豊かにしたいという方のニーズにも答えられるなと思いました。

    例えば、週に1回作り置きの会を実施して、おかずをいっぱい作る。会のメンバーをたくさん集めて、月に1回作りに来れば、他の週は他の誰かが作ったおかずをもらえる。そういう仕組みだったら、とてもありがたいですよね。自分ではつくらないような色々なおかずが食卓にならぶので、それだけで食が豊かになります。
    一人暮らしの人や働いている人は、食事のしたくも大変。工夫して、少し楽ができて、人のつながりもできればなぁなんて思って。
    そんなことをみんなで話していたら、すごく盛り上がったんです。それで、実験をしてみています。

    これも、「家で、おいしいおかずが食べたいな~」という“日常”のぼやきから生まれたことです。

    【代表・井上さんより】
    「女性の活躍」と言われていますが、女性は仕事をしながら家事(子どもがいる人は、子育ても)まで期待されているのが現状です。男性にも担ってほしいというのはもちろんですが、残業が多くて深夜帰りの方も多い。「作り置きおかずの会」は、地域を単位に家事を楽にする仕組みですが、背景にはそんな事情もあると思います。
     
    「日常のシェア」エピソード③
    〜父子家庭にとってのおかえりごはん〜

    【シチュエーション】

    父子家庭の小学生C君のお父さんは、地域リビングから少し離れた職場で働いていますが、残業になる事があります。お友達のD君のお母さんは、夜C君が自宅で一人、お父さんの帰りを待っている事があると聞いて、何か出来ることはないかと考えました。D君のお母さんは、C君のお父さんと相談し、学童保育の後に一緒に地域リビングへ行くことにしました。

    ある日のC君親子とD君親子の、放課後の様子を見てみましょう。

    C君は学童保育で、友達のD君やほかの友達と一緒に過ごしています。

    17:15
    D君のお母さんが仕事を終えて、C君とD君の2人を学童保育に迎えに行きました。

    17:30
    C君とD君とD君のお母さんは3人で地域リビングにやってきます。

    18:00
    地域リビングの「おかえりごはん」で、ボランティアさんの手作り料理をみんなで一緒に食べます。

    19:00
    D君とD君のお母さんは先に帰宅しますが、C君はコーディネーターさんや他の利用者のみんなと一緒に時間を過ごしながら、お父さんのお迎えを待っています。

    20:00
    残業を終えたC君のお父さんが、地域リビングにC君を迎えにきました。

    (日常のシェア エピソード①の例と類似)

    【代表・井上さんより】

    子どもにとっては家で一人でお留守番をして、ひとりの寂しい時間を過ごさなくてもすむし、友達も一緒で楽しそうです。父親にとっても、子どもを一人にする不安はないですし、夕飯の心配もいらない。安心して、仕事をすることができます。

    お迎えを頼める人がいて、お父さんが帰宅するまでのあいだ、地域の人たちと食事を一緒にとって、共に過ごすことができる。地域リビングでの出会いをきっかけに、そのような信頼のおける関係性が自然と出来上がっていることが、嬉しいです。

     

    2. 多様性を大切にする / 排除をしない

    地域リビングは、そこに集まる人たちの多様性を大切にしています。多世代の利用者がいることは地域リビングの特徴のひとつです。午前中からお昼にかけてはおうちごはんの利用者である高齢者の方が多く訪れます。おかえりごはんがある日には、夕方から夜にかけて子どもたちや子育て中の親御さんなどでにぎわいます。また、どの時間帯も、特定の世代しかいないわけではなく、高齢者の中に混じって子どもたちが遊びまわっていたり、学年の違う子どもたちが同じテーブルで一緒にご飯を食べていたりする光景をよく目にします。

    例えば、人々がつながり、互いに助け合える関係性をつくるうえでは、同質のつながりだけよりも、異質な人とのつながりがあるほうが、それぞれの足りないことを補い合うことができることもあります。また、ある理事の方は、「この場所はあまりにも多様な人が居過ぎて、もしくは各々が違い過ぎて、一般社会のように他者と比較される感覚がない。それが居心地がいい理由の一つかもしれない」と言います。

    中の人を排除したり、追い出したりしない

    地域リビングでは、多様な多数のボランティアが関わっています。多くの人が関わるということは、意見の違いや不満が生まれやすいということでもあります。多様な利用者やボランティアが気持ちよい関係を築いていくためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。

    地域リビングの行動規範には、「排除しない」、というキーワードがあります。これは、ボランティアの方などに対して「出入り禁止」などの対応をしないという意味です。また、ボランティアの方が仲間内で誰かの行動を否定したり、他人に物事を強要したりする雰囲気にならないように気を付ける、ということです。さらに、自発的に活動できる雰囲気をつくりつつも、ときには、やらなくてもいいという緩さを出すことで、堅苦しさを出さないようにも気を付けています。

     

    「うまくやっていくためのコツ」エピソード①
    〜料理に小さな不満がでたとき〜

    【シチュエーション】
    おうちごはん や おかえりごはん ではボランティアの1名が日替わりで料理を作っている。あるボランティアの方が、他のボランティアの方の作った料理に不満があり、「あの料理は出さないほうが良い」という意見がでました。もちろん、ボランティアの方にはこれからも料理をしてもらいたい。こんなとき、どう対応したのでしょう。

    ボランティアEさん:Fさんの作る料理は少し手抜きなんじゃないですか?出さないほうが良いですよ!

    コーディネーターさん:あの料理も、Fさんの味があって素敵だと思いますよ。

    ボランティアEさん:そうですかねぇ、私は出さないほうがよいと思います。

    井上さん:作りたいといった人には、作ってもらいましょう。うちはレストランではないし、美味しくなかったら「おいしくない」って言ってもらえばいいじゃないですか。私が作った料理だって、そんなに人気ないけど続けているし(笑)

    ボランティアEさん:うーん。そうかもしれませんね(笑)Fさんもお料理を楽しんでますしね。

     
    「うまくやっていくためのコツ」エピソード②
    〜担当作業に小さな不満がでたとき〜

    【シチュエーション】
    おうちごはんの会計を担当してくださっているボランティアのGさん。この日は、コーディネーターさんに手伝いをお願いしました。そのときの会話です。

    ボランティアGさん:「井上さんに会計をやってほしいって頼まれたからやっているの」

    コーディネーターさん:「大変ですよね」

    ボランティアGさん:「なんで私が、こんなことしないといけないのかねぇ」

    コーディネーターさん:「やりたくないなら、やらなくてもいいんですよ」

    ボランティアGさん:「こういうのはね、認知症の予防にもなるから、私がやるのよ」

    コーディネーターさん:(心の声)「やりたいと思ってもらえていて、よかった(笑)」

     

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