2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

人と人とのつながりが元気なまちをつくる ~最新フレイル予防の視点から見る地域活動の意義~
2018年度総括イベント「東京ホームタウン大学2019」 1限目 基調講義レポート

1限目 基調講義
飯島 勝矢 氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授/医師/医学博士)
2019年5月11日
開催日:2019年 2月 23日(土)<br>会 場:津田塾大学 千駄ヶ谷キャンパス(東京・千駄ヶ谷)<br>登壇者:飯島 勝矢 氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授/医師/医学博士)<br>⇒1限目 基調講義 全編動画はこちら<br><br>●2限目 テーマ別分科会レポートはこちら<br>(リンク先の分科会一覧よりご覧ください)<br>●3限目 総括講義レポートはこちら

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400人以上の参加者が集まり、大盛況となった「東京ホームタウン大学2019」。1限目「基調講義」では、東京大学教授の飯島勝矢氏を迎え、飯島氏が立ち上げた「フレイル予防」の取り組み、そしてその3本柱の一つとなっている「社会参加」の要素に注目し、地域における人と人とのつながりの重要性についてお話いただきました。

東京大学高齢社会総合研究機構の飯島と申します。僕自身、週末という週末は地方を回っていて、市民講座などで全国のいろんな市町村に呼ばれたり、アドバイザリー的な形で入ったりという機会が多くあります。そうすると「やっぱり東京は強いな」と感じるんです。

なぜかというと、東京は単に日本の人口の約10分の1、1,000万人以上が住んでいるという人の多さだけではなく、情報も多く、情報に対するアクセスもクイックである。あとは当然、東京に住んでいる方の中で元気の方もいれば当然要介護の方もいらっしゃる。これはどの都道府県も同じですけども、歩かざるを得ないロケーションにあるというのは強みだと思います。地方では100メートル、200メートル先のコンビニに車に乗っていく現実があります。万歩計つけてたらそれこそ800歩ぐらいしか歩かなかった、なんていうこともある。ですから、歩かざるを得ないロケーションにあるっていうのは、やっぱりこれは強みです。地下鉄に乗るためにアップダウンがある、これも強みなんです。

さて、今日のイベントに3~4人で来たという方もいらっしゃれば、1人でチラシを見て来たという方もいらっしゃる。今回の講義のタイトルに、人と人とのつながり…とあって、この「つながり」が重要だということを否定する人はいないですよね。

だけど例えば僕自身が70代半ばぐらいの年齢になったときに、今日のような集いがあったとして、東京ホームタウン大学なんておしゃれなネーミングのこういうチラシを見て「よし、俺も土曜日空いてる。行こう」って、思えるかどうか。そうした中での人とのつながり方、そして最新のフレイル予防の観点から、今日お集まりの何百人という方々が地元の活動に戻ったときに反映いただけるように、話題提供できればと思っています。

「虚弱」を「フレイル」と言い換え
前向きに予防していく

このスライドをご覧ください。

たくさんの写真がありますが、写真の共通項は、黄緑色のTシャツ、ポロシャツを着ている方々。関東から九州まで、僕の立ち上げたフレイル予防を、地域のまちづくりの一環として、俺たちが主役になって一緒にやろうじゃないかという「フレイルサポーター」たちです。

フレイルサポーターが地域に何をしてくれるのか。元気シニアがサポーターとなって同世代の市民の方々を迎え入れ、調和した楽しい雰囲気、ワイワイした感じの中で、どうお互いの関係を築きあうのか、同じ方向性を見出せるのか、みなさんで考えながら地域を作っていってほしい、と思っています。地域の元気シニアが市民フレイルサポーターとなって地域内を闊歩するというのが、今、全国の約40の市町村で始まってきています。2019年春からもどんどん増えていく予定です。

千葉に住んでいる僕の母親は、昭和9年生まれで80代半ば。階段を下りるときに膝が痛いとか、ダンス大好きだけど今日はやめておこうか、なんて言っていることもある。薬も5、6種類飲んでる。だから本人も虚弱だというのはわかってるけど、「あんたから虚弱だと言われたくはない」という気持ちがあるわけです。空虚の「虚」に「弱弱」しい、漢字そのものズバリだから。

そこに新しい風を入れようじゃないかと、いろいろ考えて片仮名戦略をとった。それは「メタボ」、「ロコモ」と来てたからです。僕は当初は3文字にこだわっていた。「虚弱」は、英語では「frailty(フレイルティ)」。それが形容詞になると「フレイル」で、つまり、「虚弱」という言葉を片仮名で言ったんだ、ということですね。虚弱というのは病名ではなく、状態です。我々が生まれて20歳ぐらいをピークに徐々に下り坂となり、特に50歳を超えたぐらいから坂道が急になっていく、その自然な人間の老いにより虚弱という状態になります。そしてフレイル予防のうえで僕がどこに軸足を置いたかというと、国民に対して明るく、前向きな気持ちで虚弱状態への予防意識を高めてほしいっていうところなんです。フレイル、フレイル…言いやすいじゃない。フレイル…明るく聞こえるじゃない。フレイル…なんか早く言えば3文字に聞こえる、みたいな。それもすべて計算済みで「フレイル」という言葉を出したわけです。

フレイルになっても
自分次第でもとに戻せる

次のスライドが前半戦の一番重要なスライドです。虚弱=フレイルとは、どういう意味なのか。まず①として、フレイルは「健康と要介護の中間」です。資料の三角形は、生まれてから死ぬまでではなく、老いの坂道です。この坂道はずっと向こうまで長くなる人もいるし、入退院をしたりしていわゆるアップダウンの多い方もいらっしゃる。老いの坂道のスタート地点がかならずしも50歳とは限らないし、一方で、有名な人でいえば歌手の加山雄三さんや、登山家の三浦雄一郎さんのように、80代にもかかわらず剛健な方もいる。この坂道のかたちは、何百人いらっしゃれば、何百通りあるんです。

体の衰えと同時に、例えば定年して早3年、この1週間でも釣り堀に1回行っただけ…という男性もいたり、気持ち的な衰えもありますよね。とくにリタイアされた男性というのは、社会的な要素や人とのつながりも含めて、いろんな老いが出てきやすい。要介護ではない。だけど気を緩めちゃうとズルズルと行ってしまうかもしれない、要介護の一歩や二歩、手前の状態を「フレイル」と言います。

次に、なぜフレイルを“要介護の一歩手前”と定義したか。その理由は②の「可逆性」にあります。リバーシブル、つまり頑張れば戻せる、だから頑張ろうぜという感覚を国民の耳に、ハートに、届けたかったんです。国民が、「はいはい、フレイルね」と言うだけではなく「そうか。俺次第なんだな」と思ってもらうために、「可逆性」としたんです。高血圧や血糖値を下げる薬によって戻るのではない、戻せるかどうかは「あなた次第なんだ」というメッセージを込めたわけです。それがないと、本人の継続性というものが生まれてこない。

1人で歩く1万歩より、
誰かと歩く8,000歩

そして③として「多面的」という要素があります。

体が衰えるのは「身体的フレイル」。なるべく運動をして、歩くんだったら5,000歩より、8,000歩、1万歩行ってくれという教育を、昨日も今日も全国でやってるわけです。確かに歩かないより歩いたほうがいいけれど、それに加えて「心のフレイル」、「社会的フレイル」もある。社会的フレイルを具体的に言うと、例えば「孤食」。同居家族がいるのに孤食という方もいるんですよ。こうした多面的な側面の衰えが、この図の歯車のように絡み合っている。しかも一番上の「社会的フレイル」という歯車は、実は妙に大きいんだということが、科学的根拠にも裏づけられてきています

1万歩に意味があるんじゃない。むしろ8,000歩でもいいから、あなたは誰と歩くのか。あなたが歩いたあとに何が待ってるのか。そのほうが重要なんだということです。毎日のようにジョギングするような運動習慣を持っている人は偉いと思うけれど、5キロジョギングするとか1万歩達成とかより、あなたがもう3人ぐらい誰かを呼んで一緒に歩くことと、歩いたあとに、そこらのファミレスに行って生ビールで乾杯して2時間ぐらいしゃべっちゃう。そのほうがあなたにとってはフレイル予防になる、というのが僕の考え方です。


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