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    東京ホームタウンSTORY

    2025年の東京をつくる 東京ホームタウンSTORY

    東京ライフシフト

    【レポート】7月20日開催 第2回 ライフシフトセミナー


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    -地域と、人と。「つながり」とは何か

    岸:「地域のつながりを作る、というとき、必ずしも町会じゃなくてもいいのかな、と思います。町会というと、組織として捉えている人が多くて、町会の加入率が下がっているとか言われるのですが、私自身は、町会は活動のことだと思っているので、そんなにこだわらなくてもいいのでは、と。町会という言葉をなるべく使わないように意識しています。イベントで「町会員じゃないと参加できないんですか?」と聞かれることはありますが、町会費を昔から出してくれている人もいて、でも町会に入っていない人も参加できるような、フラットな形がいいと思います。
    地域活動の話をするときに「善意だけを当てにしてしまうと疲弊する」とよく言われるのですが、善意というのはすごく大きな力だと思うのですね。そこをうまくつないであげる工夫が必要なだけであって、そのためには、ある程度、待つ余裕とか、自由にやらせてあげる、ということなのだと思います。

    藤井:「人のつながり、でいえば、町会など住む地域単位も大切ですが、私は地域のボーダーラインは取り払うべきだと思うんです。地域にこだわらないボランティア団体がどんどん出てきていて、趣味や関心で繋がるなど、既存の町会以外に楽しいことがあって同じ思いを持った人がつながればいいじゃないか、と思います。
    老人クラブというのが各エリアにあって、行政の高齢者福祉課などがバックアップして新しい組織になろうと工夫をしています。名称にこだわらず、顔を出してみるといいと思います。また、私たちシニア大樂は、秋葉原、飯田橋など都心で活動していて参加者は男性が多いんです。マスコミの方に男性参加者の多さに感心されます。自分の住んでいる地域だと男性は参加しにくいのと、面白いものがあれば電車賃を払ってでも出てくるのが男性。エリアの考え方を取っ払って、だれでも参加しても良い活動が増えていくといいと思います。」

    -3ヶ月我慢して、3年続いたら本物

    最後は、それぞれから地域活動に関わる中で気づいたことを紹介いただきました。

    藤井:「シニア大樂はNPO法人として活動しています。NPOというのは特定非営利活動法人のことです。NPOはお金を儲けてはいけない、という概念が昔はありましたが、その発想が強かった団体は、今は活動できなくなってしまったところが多いと思います。人が集まるような楽しいことをやって、多少の参加費をもらい、利益は来年度の活動の資金源にする。NPOも会社も同じ法人であり、人集めのためにはマーケティング的発想が大事だということに気づきました。
    プロボノの話が出ていましたが、会社に勤めながらNPO活動もする、ボランティアをやる、これを今はやりの言葉でいえば「二刀流」なんです。働き方改革という言葉もよく聞かれますが、働き方改革は会社だけではないという発想です。会社と地域活動の二刀流をすることによって、結果的に会社の仕事にも幅が出てくると思います。あとは、いろんなところに顔を出していくことですね。私もセカンドライフセミナーに講師として呼ばれて、これから定年を迎える人にアドバイスなどお話をすることがありますが、必ずお伝えするのは、「どこでもいいから地域活動に入りなさい。外から見るのと中に入るのとでは全然違います。中に入って3ヵ月間は我慢しなさい。3ヵ月で自分に合わなかったら別のところを探せばいい。」ということです。これが3年間続いたら本物です。自分の心が喜ぶことを見つけて、とにかく足を踏み入れてみて、居心地が悪かったら、やめたらいい。やめたほうが組織にとってもありがたいですし、いろいろ渡り歩いていただきたいと思います。」

    岸:「地域活動に関わってからの私自身の変化でいうと、自営業なので一人で仕事をしていて、まちの人と接しなくても仕事はできます。でも、地域活動も好きだったので関わってみると、社会が広がっていく。仕事と地域活動、二つのことをやっているというよりは“ひとつのことが広がっている”という感覚を持っています。これは、必ず自分のプラスになっていくものだと思います。
    まちの中に寛容な雰囲気というのか、思いやりの雰囲気が広がってほしいと思っていて、仕事をしながら町会の仕事をしているのは、それに繋がると思うから。自宅でガラス工芸に向かう仕事と、近隣の地域活動の比率を考えると、昔は仕事ばっかりでした。でも、今は地域活動に力を注いでいます。経済的なことを考える尺度ではないところで、人と一緒に何かをやって作り上げるというのは自分を支えてくれるものだと思います。そういうものが欲しくなる時というものがあって、みんなと作り上げていく活動によって自分が健康になっていくと感じています。

    尾関:「岸さんのお話にもありましたが、組織を作ると組織を維持することが目的になってしまいがちです。だから、何を目的にやるのか、を明確にしていくことが地域づくりで重要だと思います。例えて言えば、バスに乗車している時にタイヤがパンクした。30人乗っている赤の他人同士でその危機を乗り越えるにはどうしたらいいのか、みたいな、何のためにということをはっきり持つこと。そして、東京は人がいっぱいいて、お互い何をしているか知らない状況があるわけですが、明確な目的を共有しながら、地域にいろいろな人がいて、多様な価値観があること、それを、お互いが知って認め合うことの必要性を感じています。
    私自身、50代になって最後にどこに住むかを考えたら、東京でした。うちの主人は会社員で、地域で夜の活動があると「それは仕事なのか?」と聞いてきます。仕事としての夜の活動も、地域の活動も実はつながっていて、地域の活動に参加をすることで仕事にも膨らみが出てくる。仕事と地域活動を分けて考えない頭になってきました。」

    岩木:「私が53歳で今後の第二の人生をどう過ごそうか、と思ったとき、『社会貢献』というキーワードが出てきました。でもそういう話を会社の中でしなかったし、してもたぶん通じないだろうな、という感じで、会社の中で共感してくれる人を見つけられなかった。だから、外に出ていくしかないと思いました。
    ひたすら仕事をしてきて、地域活動もしなかったし、趣味の活動もあまりない。そこに、プロボノに関わることで全く知らなった世界を知った。それは自分自身への成長にもつながると思っています。そう思えることがこのプロジェクトに参加した一番の大きな利益だったと思います。
    53歳にこれ、と決めるまで私も模索していて、ライフセミナー、キャリアセミナーに参加したり、自分のスキルチェックや仕事のアセスメントなどをやって、自分のキーワードを集約していきました。そうすると、色々あった興味関心がだんだんと絞られてきました。次に何をどうしようかと迷っていらっしゃる方がいれば、まずはそういう整理と集約をするような活動をするとよいのではないかと思います。」

    -新しいつながりが、まだ無いものをつくる

    セミナーの最後には、登壇者から会場の参加者へ以下のようなメッセージが送られました。

    藤井:「とにかく二刀流を目指してください。まずは足を踏み入れてみることをお勧めします。」

    岸:「過去に2回、プロボノの支援を受ける立場でプロジェクトをご一緒しましたが、非常に参考になりました。新しい視点、違う角度からの意見をいただいて、新しいイメージが立ち上がっていく感じは、関わっていて楽しいです。人と人との結びつきによって、まだないものを作っていく道筋は無限にあると思います。プロボノのようなプロジェクトに参加をして一緒に作っていくこと、を考えていただくと楽しい体験ができるのではと思います。」

    尾関:「違う世界を見ると刺激になるなと思います。広告デザインとか建築家とか、いろいろな人と会うといろんな視点が見えてきます。自分ができる範囲は些細なことでいいと思います。私は人と何かをすることが大好きなので、まずは一歩のぞきに行ってみる、そして、もし合わなければ帰ってくればいい。それくらいの気持ちでいろいろなところに顔を出していただいて、どこかで皆さんにも会えるのを楽しみにしています。」

    岩木:「自分のゴールを早めに決めてしまったほうが行動しやすい。模索しながらよりは、自分の到達点をまずは決めてそれに向かっていろんな行動をするといいと思います。思い立ったら吉日、機会とチャンスは逃さない、今日プロボノの募集があるよということであればすぐに申し込む、それが大事です。
    そしてその行動を生むには、仕事の比率を減らさないといけません。24時間働くぞ、とやってきましたが、「精神的に」仕事以外に意識を向けることが大切で、50歳を過ぎてから思い切って有給休暇を取れるだけ取るようにしています。部下にも休むぞ、と言い始めました。そういう時間をきちんと確保して、プロボノや趣味の活動などに意図的に時間を使うようになり始めました。皆さんの参考になれば幸いです。」

    様々な金言が飛び出したゲストトークに続いては、参加者同士の感想の共有と交流時間、質疑応答の時間に移りました。
    会場からいくつか質問が出ましたので紹介します。

     

    -Q&A

    Q:会社の中でプロボノを広げるためにはどこにコンタクトをすればよいと思うか。
    A :「社内に部署があればCSR部にアクセスして、社員のライフシフトにもなるし、会社のCSRにもなるよ、と話すことが一歩目としては良いと思います。」(岩木さん)

    Q :団体運営の難しさを教えてください。

    A :「シニア大樂は14年間どこからも支援を受けていません。全部手弁当で電車賃も自前です。交通費も払わず維持していこうと思ったら、楽しくやりがいがあること、それが求心力の一番の源です。辞めていく人は引き止めません。来るものを拒まない、去るものを追わない、それが続けていくポイントだと思います。
    シニアライフアドバイザーの仲間たちで団体を立ち上げましたが、ジェロントロジー(*4)の考えがベースにあります。このジェロントロジーで有名な南カリフォルニア大学のデビット・ピーターソン博士は、シニアのボランティアは有償ボランティアでやるべきだ、と話しています。ボランティアを提供する側と受ける側には契約が成立していていい加減なことはできない。その為にも有償ボランティアの形態のほうが良いということなのですが、私たちも、必ず参加料はいただく、講師料が発生したら事務局運営の為にバックマージンをもらう、など、何らかの形で報酬が入るように組み立てて運営をしています。」(藤井さん)

    *4ジェロントロジー・・・人間の老化現象を生物学、医学、社会科学、心理学など多面的、総合的に研究する学問。

    「私たちの町会では基本的に善意で動くことを重視はしますが、実際に全部善意だけでできるか、というとできなくなってしまう部分があります。事業の継続性を考える時、メンバーがいくら前向きでもモチベーションが萎えてしまうこともあるので、事業を維持するような感覚、ソーシャルビジネス的な考えを入れていかないといけないと思います。そうしないと、高齢化が進む今の町会のままでは10年、20年後には組織的に崩れてしまう。お金があればなんとかなるかというと、やっぱり善意だよね、という二つの間のいい按配を見つけるというのは難しいのですが、「未来の地域の公共」の形をどう作っていこうか、はまだ答えが出ていない難しい部分も大きいですが、考えていかなければいけないことだと思います。」(岸さん)

    「地域コミュニティを立ち上げた経験から、コミュニティを作ろうとすると人と場所とお金が必要です。人は、代表がどれだけ熱い思いを持っているか、非常にフランクなんだけど思いは強いものがあるというのが大事です。場所やお金の話では、区や社会福祉協議会から助成金を得るアプローチもあるので検討されても良いかと思います。」(岩木さん)

    Q:地域団体もどこも人材不足で、特に退職した男性に参加してほしい、という期待がありますが、実際にはなかなか男性の地域活動への参加は進んでいません。どうしたら参加してもらいやすくなるでしょうか?

    A:「地域の課題として男性の参加が少ない、という話題はよく出ています。私が関わっている団体の事務局は男性なのですが、非常に重要な事務局機能を担うのは男性が向いています。男性は役割を明確に伝えていくと動いてくれる。代表は女性でサブに男性が入るとうまく回るという話を聞くことがあります。有償ボランティアのような仕事風に持っていくのか、あくまでボランティアに徹するのかは、参加する人たちで決めていくことが良いと思います。」(尾関さん)

    「町会でも、男性をイベントに誘い出すとか、登場してもらうのは難しいことで、昨日も仲間たちと話していました。一般的な話でよく聞くのは、会計が足りないから会計を頼みたい、とか地域の堅い仕事をお願いするとやってくれる人が多い。でも、もっと仲間として入ってくれるような関わり方は難しいですね。男性は社会性が足りていないのかもしれません。例えば、招待状を送るとか、引っ張り出す技術を工夫する必要があるのかな、と思っています。」(岸さん)

    「会社勤めだった時は、地域の活動は妻の仕事でした。ずっと不義理を続けてきていまさら地域活動に戻れないと思っていたら、「あなた落語をやるんでしょ、公民館で落語やってください」と引っ張り出されて5年前から地元で公民館寄席を始めました。すると、けっこう男性が来るんです。既存の組織の中には今更いけないという人も多いので、男性が来やすいような新しい組織を作ることも大事なんじゃないかなと。男性の引きこもりがすごく多くなると言われていて、引きこもりが認知症を促進させとも言われています。できるだけ男性がコミュニティの中に入っていくことが重要で、そのコミュニティは町内でなくてもいいのでは?が私の発想ですが、町内の場合でも、既存の組織ではない新しい組織を作る方法もある気がします。」(藤井さん)

    休日の午後、元中学校という学び舎を利活用した会場で大人の学びの時間を過ごしたライフシフト セミナー。レポートは以上です。

    東京ホームタウンプロジェクトでは、11月に「スタディツアー」を予定しています。様々な現場で、地域の方々がどのように活躍しているか、リアルに見学することができます。
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