プロジェクト詳細
NPO法人 Dカフェまちづくりネットワーク
一般のビジネスとは異なる自立した事業モデルを実現し、認知症と一緒に歩める地域をつくる。
東急東横線祐天寺駅から徒歩数分、閑静な住宅街にある「Dカフェ・ラミヨ」。ここは、Dカフェまちづくりネットワーク(以下、Dカフェnet)」の代表・竹内弘道さんがご自宅の2階の広々としたダイニングスペースを開放して運営する、認知症カフェです。
Dカフェの“D”は、英語で認知症を意味する「Dementia(ディメンシア)」の頭文字であると同時に、みんなが自分のこととして認知症を考える「だれでも」の“D”、そして「District(ディストリクト)=地域」の交流ステーション、という意味合いが込められています。
竹内さんは20年間にわたり、認知症のお母さんを介護した経験があります。目黒区には、もともと「たけのこ」という認知症家族会があり、竹内さんもそちらの活動に携わっていましたが、次第に、当事者家族だけの会では限界を感じるようになったことがDカフェnet立ち上げのきっかけでした。
「認知症の当事者家族で集まれば、もちろん知識は高まり、助け合いもする。一方で社会的には認知症に関する知識や見解は一向に改まらない。認知症患者が徘徊をして鉄道を止めた、というようなニュースが流れるたびに、認知症に対して怖い、いやだ、というイメージがついてしまう。認知症になっても周りのコミュニティが一緒に歩ければ、何も変わらない生活が送れるのに。そういった現状を変えるには、当事者だけの集まりではだめだと思い、誰でも集まれるスタイルで、笑顔で認知症のことを話し合う会を始めました」(竹内さん)
2012年、竹内さんがお母さんと暮らすために建てたご自宅に、「Dカフェ・ラミヨ」をオープン。その1年ほど前にお母さんを98歳で見送りますが、フランス語で仲間を意味する「ラミ」にお母さんのお名前「伊代(イヨ)」を組み合わせて名付けた、このDカフェ第1号を皮切りに、2014年からは目黒区事業となったことから区内に次々とDカフェを開設していきました。その数、2017年時点で区内10カ所。数年の間にここまでの広がりをみせてきたのには、大きく三つのポイントがあると言えます。
一つは、「だれでも」というコンセプトの通り、認知症の当事者とその家族、医師や介護関連の専門職、そして認知症に関心のある一般市民まで広く参加する会であること。
「Dカフェは、同じ空間に認知症当事者も、その家族もいる。でも少し離れたところでお互いが過ごすことで、家族は当事者の様子が見えつつも、相談や雑談ができる。認知症の方をデイサービスに預けて、家族は介護者の会に行く、というのでは当事者が取り残されてしまう。一緒に解決する取り組みが必要なんです」
次に、10カ所のDカフェは、すべて異なる名前が付いていて、それぞれの特徴を活かして運営されていること。「ラミヨ」のほかにも、Dカフェには「さんま」、「せらぴあ」、「YORO」など、ユニークな名前が並びます。病院内スぺ―スで開催される「さんま」では、医師や看護師に体調について相談ができ、「せらぴあ」は言語聴覚士などセラピストが中心となって運営し、「YORO」は、なんとあのチェーン居酒屋が会場となっているカフェです。各カフェの運営は、介護経験のあるボランティアが何人かのチームで担当しています。
「自分の近所はいやだけど、電車やバスで離れたところなら案外行く人もいるし、職場と近い方が行きやすい人もいる。今日は介護職のプロに話が聞きたい、今日は気軽におしゃべりがしたい、と選んで何カ所行ってもいいし、全部行ってもいいんです」
そして三つ目のポイントは、Dカフェを増やしていく際の、竹内さんの、とある工夫にありました。カフェを開設する場所・時間帯として、「病院の空きスペース」「デイサービスの空き時間」に注目し、Win-Winの関係性をつくったのです。
病院の看護師など現場の方から「認知症患者が病院を退院後に、地域で元通りに在宅で暮らしていけるようにしてあげたい」という声を聞き、そうした思いに応える形でカフェ開設の提案をできたことも功を奏し、施設側の理解を得られたと言います。
また、Dカフェは、竹内さんをふくむ運営ボランティア、関わる専門職、当事者家族、全員が参加費300円を支払うというのも特徴です。「認知症カフェは、基本的にビジネスにはならないし、自治体等からの補助金が仮になくても“みんなの場所”を維持していける仕組みが必要」と話す竹内さんは、その実現に向けて新たな試みも始めています。
その一つが、「コラボ会員制度」。企業から一口2万円の出資をしてもらい、認知症に関する知見やノウハウを提供するサービスです。企業が認知症についての勉強会を開く際に講義をしたり、介護用商品の研究開発試験の場としてカフェを利用してもらう、といったことを想定しています。さらには、介護保険ではまかないきれない部分で、当事者家族が必要とするようなサービスを自主事業として立ち上げたいという計画もあります。
こうした、竹内さんの中にフツフツと沸いてきているさまざまなアイデアを事業化していくために必要とされているのがプロボノチーム。活動全体を広い目で見て、次の世代にも引き継げるような事業を見据えた、活発なディスカッションが期待されています。
(本記事は2017年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- NPO法人 Dカフェまちづくりネットワーク
- 活動開始時期
- 2013/平成25年3月
- 代表者名
- 竹内弘道さん
- 所在地
- 〒153-0053 東京都目黒区五本木1-5-11
- ホームページ
- http://d-cafe.kazekusa.jp/
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進捗率
進捗状況
Dカフェnetの活動拠点のひとつ「Dカフェ・ラミヨ」をヒアリング訪問しました。
事前オリエンテーションを実施しました。
事前のチームミーティングを実施して、質問事項のリストアップも行いました。14日・15日には、団体の活動現場を訪問予定です。
活動体験・現場視察を実施しました。
当日オリエンテーションを実施しました。
プロボノワークを実施しました。
成果物の提案を実施しました。
支援先からのフィードバックを実施しました。
1DAY当日のディスカッション・提案内容をまとめた資料を成果物として納品しました。
成果
活動の継続性を高めるための、客観的な視点による新しいアイデアや企画が、団体内部の議論を活性化。
1DAYチャレンジ当日は、今後、行政からの補助金の終了が見込まれる中で、Dカフェnetが活動を継続・発展させていくために求められる課題を整理しました。
その中から、Dカフェnetが提供する価値をより明確に伝えるためのキャッチコピー案や、企業に向けた会員制度の創設、会報誌「でぃめんしあ」を活用した記事広告の作成、Dカフェnetに集う認知症の当事者や家族などから集めた声を活用したグッズの制作など、さまざまなアイデアをプロボノチームが提案しました。
団体からは「外部からの新しい視点を取り入れることで、団体内部の議論の活性化につながる」といった声が聞かれました。この日の提案を今後につなげていくことが期待されます。
チームメンバー
- メンバー
- 黒澤さん 八代さん 唐城さん 糸嶺さん