プロジェクト詳細
一般社団法人 みつ蛍
気軽に立ち寄れる居心地のいい場所であり、住民発の新たな活動の発信地であり続けたい。
広尾駅から徒歩15分、“港区白金”という真新しいマンションのイメージとは一味違った、昔ながらの一軒家が建ち並ぶまちの細い路地を入ると、こじんまりと、温かく訪問者を待ってくれているのが「みつ蛍」です。
戦争で焼けることのなかったこの辺りは、古くからの住民も多く、港区の中では高齢化率が最も高い地域です。ですが、地域包括支援センターへ行くには坂道を上り、福祉施設へ行くにも徒歩20分。高齢者の方にはなかなか大変な道のりです。路線バスも、コミュニティバスもこの辺りには走っておらず、不便なことも多いといいます。
こうした環境の中、みつ蛍は、地域の居場所として発足し4年が経とうとしています。
元々仕事のつながりで交流のあった中野さん、中村さん、村上さん、國松さんの、普段の、お蕎麦屋さんで食事をしながらの何気ない会話がきっかけでした。就労支援など、まちから外へ出ていく部分には行政によるサポートがあっても、仕事を終えて戻って来る場所、地域のコミュニティがなければ人の暮らしは豊かにならない。そんな話から、誰でも立ち寄れる居場所を作りたいという思いで、いま理事となっている4人が立ち上がったのです。
テーブルと椅子を並べて20人も入るといっぱいのそのスペースでは、体操、編み物、トールペイント、歌、折り紙、ギターなどのサロン活動が、それぞれ月に2回ほどのペースで、住民によって行われています。「自分たちのやり方を押し付けず、住民のニーズを掘り起こしながら運営をしていこうと決めていた」という中村さんの言葉どおり、いまの活動は、住民の皆さんが特技を活かして、やりたいと言って始めたものばかりです。
それ以外の日は誰でも立ち寄れるフリースペースとして活用。オープンにしている時間帯は必ず誰かスタッフがいます。利用者の皆さんは、お茶を飲んだり、持参したお弁当を食べたり、おしゃべりをしたり、思い思いの時間を過ごします。地域の会合などでこのスペースを利用してもらうこともあります。
「みつ蛍」があるこの辺りには、3つの町会があります。この居場所でできたつながりをきっかけに、高齢男性向けの料理企画「スープの会」を実施するなど、3つの町会の合同で、新しい展開も始まっています。
その発案の素地として、ここで生まれた人と人とのつながりが活かされていることに、運営メンバーとしては喜びを感じています。みつ蛍が主催するイベントもありますが、あくまでも、ここは居場所、人がつながる場所でありたい。その思いが利用者の皆さんにも伝播し、町会をつなげながら、たった4年で「居場所」に留まらず、新たな活動の発信場所となるまでに発展してきました。
「ここの住民の皆さんは本当に素敵な方ばかり。住民の皆さんの力で活動が広がってきました」と話すのは、代表理事の中野さん。理事の皆さんがそろって深くうなずきます。
住民に愛される場所としてはとても順調といえる「みつ蛍」ですが、大きな課題があります。
実は、運営費用のほとんどが、理事たちの個人的な負担です。
一番大きいのが家賃。小学校の空き教室など、どこか他の場所を探せるのかもしれません。しかし、今のスペースは、通りに面した大きなガラス窓から、前の通りを歩く人がちょっと中の様子をのぞいてみることもでき、中からも外の様子が目に入ります。一人で歩いている高齢の方や子ども連れのお母さんに、ちょっと寄っていきませんか、と声をかけて入ってもらうことも。まちの様子が見えるこの場所を手放すことは、今の活動の意義に大きく影響を与えます。
現在の収入としては、1杯200円のコーヒー代、そして近所に買い物する店が少なく新鮮な魚や野菜を手に入れにくい、という声に応えて、知り合いの漁業組合の方から魚介類を取り寄せるなどして販売している商品の売り上げなど。でもそれも住民の皆さんに喜んでもらうための活動で、利益を上げる趣旨ではありません。団体利用にはスペース使用料をいただくことはあるものの、使いやすいスペースであるために、使用料は上げたくない。近隣の皆さんによるバザーの売り上げも、収益源とまでにはなりにくい状況です。
この居場所の意義を保ちながら、今後継続していくためには、どのような方法で収益を上げていくことができるでしょうか。次世代へのバトンタッチを考えても、この運営体制では次の担い手も探しにくくなってしまいます。「みつ蛍が無くなったら困る」と言ってくださる住民の皆さんの期待に応えるためにも、運営体制を見直すことは大きな課題です。
そこで今回のプロジェクトでは、課題整理をしながら、運営のための収益について考えます。
いつの間にか近所の方が入り口の前のお花に水をあげてくれる、将棋の会をしようと言えば手作りの将棋パイをすぐに持って来てくれる人がいる、そんな、地域に根づいた住民の居場所を継続していくために、いまがとても大切なタイミング。プロボノワーカーがこれまでの経験と知恵を絞ります。
(本記事は2017年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- 一般社団法人 みつ蛍
- 活動開始時期
- 2013/平成25年9月
- 代表者名
- 中野 敏子さん
- 所在地
- 〒108-0072 東京都港区白金6-2-4
- ホームページ
- http://www.mitsuhotaru.net/
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進捗率
進捗状況
みつ蛍さんの活動拠点にてヒアリングを実施しました。
事前オリエンテーションを実施しました。
活動体験・現場視察を実施しました。
インターネット調査を実施しました。
質問事項のリストアップを実施しました。
事前に、現状の収益シミュレーションなどを行って、当日の作業に備えています。
当日オリエンテーションを実施しました。
プロボノワークを実施しました。
成果物の提案を実施しました。
成果物の納品を実施しました。
支援先からのフィードバックを実施しました。
成果
仲間どうしの活動から、団体としての継続的な運営へ移行していくために。運営資金面の課題と方策を整理し、明日からできるアクションを具体化。
今や、地域住民にとってなくてはならない居場所となっているものの、運営資金面での課題をかかえている「みつ蛍」。仲間どうしの活動として続けてきたことを、団体としてどう“運営”していくか、そのための課題整理を1DAYチャレンジで行いました。
これまで、団体の立ち上げメンバーのみで大枠でしか把握していなかった収支の全体像をまずプロボノチームが整理し、かかっている経費などを明らかにしました。そのうえで、家賃等、いくつかの減らすことができない必要経費以外に減らせるものはないか、ボランティアの方々に手伝ってもらえることはないか、また収益部分をアップさせる方法はないかを検討。平日、あまり使われていない時間帯のスペース利用率を向上させること、そのために必要な広報活動やイベント実施の際の人手は学生ボランティアに協力してもらうこと、などを提案。そこに向けて団体側がやるべきことは何か、が具体的になりました。「第三者の目線で、課題と行動が明確になった。勇気づけられました」、と感想をくださったみつ蛍のみなさん。さっそく学生へのアプローチなどを始めていく、と力強い言葉を頂いています。
【支援のその後】
みつ蛍では、課題整理ワークショップで組織内の課題と施策を提起されたことをきっかけに、メンバー内に現状を改善しようとする意識が醸成され、有償ボランティアから無償ボランティアへの切り替え、イベントの企画、スペース貸し出しの価格の見直し、などこれまで様々な方面で取組を始められたそうです。
特に、財政改善のために活動拠点を移転したことや、助成金獲得による「来て見展」?(*1)イベントの開催が後押しとなって、以前とは比べものにならないほどの人数の町会・商店街関係者や学生とつながりができ、結果的に定期的な「終活ワークショップ」の開催に加えて、地域住民や他団体を巻き込んだコラボレーションの機会が多数生まれるようになっているそうです。
今後の課題としては、財政、IT(情報発信)、次世代の担い手の確保問題を挙げておられ、解決に向けてプロボノによる支援にも期待されていました。
*1:「まちを画廊に来て見展」アートで白金北里通りの街を盛り上げよう!と、地域住民の力で企画・運営されるイベント。みつ蛍は実行委員会のメンバーであり、事務局を担当している。
(2019年7月、プロボノワーカー 木村さん、金丸さん取材)
チームメンバー
- メンバー
- 金丸さん 神山さん 木村さん 平出さん 山竹さん