プロジェクト詳細
一般社団法人日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会
ケアを受ける側の「主体性」を引き出すケアのあり方。
障害をポジティブに反転させる新提案。
平成27年度版の高齢社会白書によると、65 歳以上の要介護者等について、介護が必要になった主な原因の第一位は「脳血管疾患」で、全体の17.2%に上ります。「認知症」「転倒・骨折」を上回る比率を示しており、脳血管疾患などに起因する脳損傷は、高齢者に顕著な障害と言えます。
しかし、です。日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会の代表を務め、日頃は世田谷区三軒茶屋を拠点にリハビリテーションの訪問診療に奔走する長谷川幹さんは、声を大にして言います。
「障害がある人は、暗くていろいろなことができない、という否定的で暗いイメージがある。でも、それを乗り越えた人はすごい。そこまで行くには時間がかかるかもしれないが、我々が引き摺られるぐらいのパワーを持っている人がいる。障害のある人との接触を増やし、彼らが元気になるとどのぐらい元気になるかを見てもらい、そのイメージを払しょくしたい。それが学会を始めた趣旨です」
毎年500人近くを集めて開かれる学会の大会では、様々な地域から、医師、ヘルパー、理学療法士をはじめ、障害者も多数参加し、さらに、哲学者・社会学者・心理学者などの分野を超えた多様な専門家が集います。そして、この学会から活動が発展したのが、毎月の研究会です。ここでは、それぞれが医療や福祉の現場で向き合っている具体的な場面を思い浮かべながら、ケアをする側・される側の立場をいかにして対等なものにするか、障害者や介護を受ける当事者が、その状況を乗り越えて、どのようにして自分らしさを発揮できるようになるか、を話し合っています。
「こうしてたどり着いたキーワード、それが『主体性』という言葉です」
学会では、「主体性」が生まれるプロセスや方法論の構築を最大の研究テーマとして、2016(平成28)年夏に、1冊のブックレットを発行します。ネガティブな感情がポジティブに反転する心理の流れと、それを可能にする、本人の人間性や主体性をはぐくむような医療・介護とはなにか。多様な専門家が集う中から生まれた、これからのケアのあり方に向けたユニークで画期的な提案が、医療・介護の現場に投げかけられようとしています。
また、ケアをされる側の「主体性」を実現するためには、地域が重要なカギを握る、と長谷川さんは続けます。
「病院にとっては、患者さんを退院させることが最重要目標ですが、本人にとっては、その後に続く生活の中で、次の症状を予防したり、社会とのつながりを持つことがなければ、主体性は生まれてこないでしょう」
障害をネガティブに捉えるのではなく、むしろ、強く、積極的に生きる力とする。
そのような画期的な意識の転換が、果たして可能なのでしょうか。医療や福祉の現場は、そして、地域は、こうした提案をどのように受け入れていくことができるのでしょうか。ケアの現場を変えていくためにはどんな課題や対応策が求められるのでしょうか。
病気や障害を持ちながらも、残された人生を生き切るには・・・。誰しもに待ち受ける「老い」という現実や、そこから生じるさまざまな障害を、どこまで肯定的に受け入れ、そのことを周囲がどのようにして支えていけるのか。そんな普遍的な問いに真正面から向き合います。
(本記事は2016年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- 一般社団法人日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会
- 活動開始時期
- 2009/平成21年
- 代表者名
- 長谷川 幹さん
- 所在地
- 世田谷区下馬2−20−11−303
- ホームページ
- http://caring-jp.com/
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進捗率
進捗状況
チームとしての初めてのミーティング(キックオフ事前ミーティング)を実施しました。 自己紹介からはじまったミーティング。 はじめは、お互いさぐりさぐりだったチームメンバーが、 ミーティングが進むにつれ、 プロボノや支援先への思い、プロジェクトの具体的な進め方など、 初対面とは思えないほどの熱い議論にを交わすように。 楽しみながら、みんなで精一杯プロジェクトを進めていこう! というゴールも共有でき、とても良いスタートがきれました。
団体さまとチームが初めて顔を合わせるキックオフミーティングを行いました。 プロボノチームのしっかりとした事前準備と、 団体さまの協力的なご対応で、プロジェクトの目的・ゴール・進め方について、 積極的に意見を出し合いながら合意することができました。 いよいよ、プロジェクトが本格的に始まります!
活動現場見学・体験を実施しました。
対象事業・商品・サービス等の現状把握を実施しました。
調査方針提案を実施しました。
提案に対するフィードバックと承認を実施しました。
第一回の個別ヒアリングを実施しました。12月中旬の中間報告に向けて引き続きヒアリングを続行中です!
中間報告を実施しました。 ヒアリングを通して見えてきた強みや今後の課題を整理し、さらに調査を深めていくポイントを提案しました。 調査も後半戦、最終報告にむけて外部へのアンケートやヒアリングが始まります。
最終報告会が無事終了しました。報告後は、団体の今後の活動に対するワークショップも実施。その後の打ち上げも大変盛り上がりました!
成果
学会関係者や外部の方へのヒアリングを徹底分析。見えてきた強みや課題から、「主体性回復モデル」の効果的な普及方法を提案
病気や障害等のケアをされる側の「主体性」を実現するための「主体性回復モデル」。本プロジェクトでは、学会関係者やこのモデルを導入する側である医療関係者・利用する当事者本人へのヒアリングを実施。組織運営上でのメンバーの意見や課題意識、そして実際に利用する側の当該モデルに対する理解度や導入に際する課題を探りました。
「主体性回復モデル」は、現状ではまだ研究段階であり、2017年内中の研究成果の冊子化や学会・論文発表を目指しています。
そのため、チームは、学会内部・外部へのヒアリング結果から、今後の組織運営におけるメンバー同士の情報共有のあり方や、同モデルを導入する医療機関及び利用者本人の理解・活用方法の最適化について提案を行いました。
今回の調査によって、関係者のほとんどが主体性の重要性を認識していることが分かりました。しかし、医療関係者といっても、医師、介護士等それぞれの立場によって「主体性」という言葉に対する捉え方に差があることも明らかに。最終報告後のワークショップでは、主体性回復モデルの今後の理解向上に向けた効果的な普及方法について、チームとの間でさらに議論が交わされました。
本学会代表の長谷川さんからは「本当に優秀なチームに担当していただけて良かった」と感謝の言葉をいただきました。
【支援のその後】
多くの脳損傷者の方を救うために研究されている、「主体性」に関する研究を進める上で、プロボノチームから客観的な意見をいただいたことはとても重要でした。研究スケジュールの提案をしてもらったり、研究に関する意見を議論したりすることで、研究全体を客観的に見ることができました。現在は計画案や意見出しなどベースを作ってもらったことで、研究が進み、被験者に対するアンケートの作成までできています。次はアンケートを実際取っていく段階へと進んでおり、将来的には全国の病院や施設などとの繋がりを作り、多くの患者を救っていきたいと思っています。
[2019年8月、津田塾大学 森川ゼミ・伊藤(由)ゼミの協力により取材]
チームメンバー
- アカウントディレクター
- 岡田 真希子
- プロジェクトマネージャー
- 喜屋式 珠美
- マーケッター
- 金村 仁美
- マーケッター
- 濱多 智昭
- マーケッター
- 豊田 祐介
- マーケッター
- 渡邊 翔太