プロジェクト詳細
一般社団法人 輝水会
楽しいこと、“もっとできる”という自信こそが、回復の原動力。「リハ・スポーツ」の可能性。
「輝水会」が実施するリハビリテーション・スポーツ教室の紹介ビデオに映っていたのは、脳疾患の後遺症で重度の麻痺がある方、高齢で体の一部に不自由のある方々が、水中でいきいきと体を動かす姿。水中運動をはじめ、さまざまなアクティビティを組み合わせて身体機能や体力の向上をはかりながら、楽しんでスポーツに参加することにより、本人自身の主体性を引き出そうという「リハ・スポーツ」の取り組みが始まっています。
2012年に設立した「輝水会」の代表で、「リハ・スポーツ」の指導員を務める手塚由美さんは、学生時代は競泳選手として活躍し、30年以上に渡って子どもから高齢者までの水泳指導に携わってきました。ケガや病気からの運動機能の回復を幅広くお手伝いしていましたが、脳卒中による麻痺のある人との出会いをきっかけに、障害を持つ人のリハビリに関わるようになったそうです。
「医師から水中リハビリがいいと言われたものの、どこに問い合わせても対応してくれる指導員がいない、と相談に来られました。その女性をプールにお連れしてみたら、麻痺があっても水中ならぐっと自由に動けるのを目の当たりにし、これはまだまだ可能性がある!と直感的に思ったんです」(手塚さん)
日常生活では杖などの装具が必要な人でも、プールでは浮力で体重が軽減するので、自分を支える筋肉をたくさん使わなくても体を動かすことができる。体を浮かせた姿勢ならば、脚などの可動域も大きく広がります。また、独特なゆらぎや抵抗のある水の中では、自然と体幹などの筋力トレーニングができ、全身のバランスが整うことも特徴です。
「腕が上がらないと思っていた方でも水中なら軽く動かせて、発見や気づき、自信につながる。体が変わっていく、という体験がとても大切なんです。プールは絶対無理と思っていた方も、入れたことだけでも人生が変わるくらいの意識の転換につながります」
その手塚さんの話に大きくうなずくのは、輝水会の理事を務める三嶋完治さん。三嶋さん自身、10年前に脳出血になり、その後遺症により当時は全失語(「聴く」「話す」「書く」「読む」の能力が重度に障害された状態)と診断されました。
「医師からは社会復帰は難しいと言われ、電車に乗るのも怖くなっていました。でも水中でのリハビリテーションに取り組むようになって、なにより楽しいから、気持ちの面でとても元気になった。まだできる、もっとできる、という自信や目標も生まれてくる。心の回復、人権の回復につながる。リハ・スポーツのおかげで、人生が充実しています」
と三嶋さん。もともと泳ぎが苦手だったにも関わらず、水中ではスイスイと泳げる楽しさを味わううち、1年で4種目を泳ぐという目標を達成。日常生活にも活力がわき、今では普段の会話やコミュニケーションもスムーズになりました。
輝水会では、昨年度、世田谷区と区内在宅医、世田谷区立総合福祉センターとの連携のもと、週1回、全10回のリハ・スポーツ教室を開催しました。60〜80代を中心に脳血管疾患よる片麻痺のある人やパーキンソン病の人などが参加し、水中運動と卓球、ボッチャを組み合わせたプログラムで、各参加者の得意なことを引き出しながら、「できた!」という達成感を積み重ねていきました。実施後のアンケートでは、体力面の向上のみならず、病気をして以来失われていた自信を取り戻し、積極的に外出するようになったといった変化も見られました。この時の参加者は、教室終了後も現在に至るまで、週1回、自主的な活動を継続しているそうです。さらに今年度(2017年度)も、世田谷区保健センターとの連携で、6人を対象にリハ・スポーツ教室を実施中です。
「リハ・スポーツは、複数のスポーツを行うことで、実はこんな動きもできる、という発見や、これはできなくてもこっちはできる、という体験ができます。水中運動以外の卓球やボッチャは、スペースさえあれば専用の道具がなくても机を並べればできるから、費用もあまりかかりません。サポートする方も専門家がそろう必要はなく、今回も私(手塚さん)以外のスタッフは、主婦の皆さんにお願いしました。育児の中で子どもに目を配っているお母さんたちは、気が利いてパッと動いてくれて、すごく向いていると思います」
病院やデイケアなどで専門職だけが携わるものとしてではなく、誰もがサポーターになりながら、クラブ活動のように楽しく続けられるリハビリテーションの形がある。手塚さんたちがそのことを一番伝えたいと思っているのが、地域で障害者や高齢者の暮らしの近くにいる在宅医療者や介護者の皆さん。当事者個人の体の特徴をよく知っていて、家族ともコミュニケーションが取れる存在に「リハ・スポーツ」を紹介することで、情報が届くべき人に届き、参加に向けて本人の背中を押してくれるはずだと考えています。今回のプロボノプロジェクトでは、そうした方々に向けた説得力のある情報も盛り込みながら、リハ・スポーツを伝える手渡し媒体としてのチラシを作成し、まずは世田谷区の他の地域にも活動を広げることを目指していきます。
(本記事は2017年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- 一般社団法人 輝水会
- 活動開始時期
- 2012/平成24年7月
- 代表者名
- 手塚 由美さん
- 所在地
- 〒158-0083 東京都世田谷区奥沢8-30-10
- ホームページ
- http://kisuikai.com/
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進捗率
進捗状況
輝水会の活動拠点にてヒアリングを実施しました。
事前オリエンテーションを実施しました。
輝水会の活動紹介動画を視聴しました。
質問事項のリストアップを実施しました。
当日オリエンテーションを実施しました。
プロボノワークを実施しました。
成果物の提案を実施しました。
支援先からのフィードバックを実施しました。
当日終了後、チーム側で仕上げの作業を行ったチラシを納品しました。輝水会の活動イメージに合う水色のデザインで、在宅医療者に向けて活動内容を伝えるメッセージを集約。団体の方からも「私達にとってなくてはならないチラシです。心に響くメッセージをありがとうございました」とコメントを頂きました。
成果
活動内容が明快に伝わると同時に、参加者の変化をイメージできるような説得力あるチラシが完成。
身体機能の回復のみならず、障害者の方の心の回復や生きる力にもつながっていく活動の意義、そして在宅医療者や介護専門職といった人たちにそれをどう説得力をもって伝えるか、といった難しい要素を含んだ今回のチラシ制作。1DAYチャレンジ当日は、団体代表にくわえ、団体の理事の一人でもあり、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の方に参加いただき、現場の専門職から見た、この活動の効果や実際の参加者の様子などをヒアリングしました。
限られた時間の中で、「このチラシで達成したいことは何か」「このチラシを読んでほしい人が考えていることは何か」「説得材料として何を用意するか」などの項目建てをして、チラシに掲載する要素をプロボノチームが整理。活動内容はシンプルに伝えつつ、“参加者の変化”に着目したキーメッセージと、実際の参加者や家族の声を入れることで、本プログラム参加に向けて障害をもつ当事者の背中を押してもらえるようなチラシが完成しました。団体の方からは「当会の活動を客観視いただき、今後の活動を推進するうえで、なくてはならない成果物を作成いただきました」と嬉しいコメントを頂きました。
輝水会の代表・手塚さんより、1DAYチャレンジ終了から半年後、嬉しい「その後」のメッセージを頂きました! 『昨年の1DAYチャレンジで作成していただいた成果物の「リハ・スポーツ」のチラシは、大いに活用させていただいており、それを見た医療者や関係者の皆様から、「リハ・スポーツとは何かが一目でわかる」と高評価をいただいております。
今年度、5月から始まる「リハ・スポーツ教室」の参加者募集にも生かすことができました。ほんとうにありがとうございます』
チームメンバー
- メンバー
- 浦郷さん 大道さん 児玉さん 中沢さん 松原さん