プロジェクト詳細
みんなのリビング葛が谷
生家を開放し、ご近所の健康を日常的に支える拠点へ。他地域のモデルとなれる事業を目指して。
新宿区西落合を流れる妙正寺(みょうしょうじ)川。川沿いから少し入り組んだ小路の先に現れる小さな民家が、「みんなのリビング葛が谷(くずがや)」です。
代表者の佐藤雅明さんが生家の1階リビングをコミュニティスペースとして開放。2016年には “みんなのリビングをみんなで作ろう”と呼びかけ、「場づくりのがっこう」というイベント仕立てで、このスペースの漆喰塗りやカーテンづくりなどを地域の方々と一緒にDIY。ちゃぶ台の置かれたモダンな和風の空間を作りました。現在、活動の中心となっている月2回開催のコミュニティカフェ「こみちをぬけて」では、近所の高齢者から子どもたちまでさまざまな人が、おいしいコーヒーやカフェごはんを楽しみながら、交流を深めています。
佐藤さんは、なぜ仕事とかけ持ちしながらこうした活動を始めたのでしょう。
「僕は2013年までここに住んでいましたが、転勤をすることになったとき、比較的若い世代が近隣にいなくなること、家が空き家になってしまうことに危機感を持ちました。このあたりは戦後からずっと住んでいる人が多く高齢化が進んでいます。妙正寺川が氾濫して被害を受けたこともありますし、住宅密集地なので火災を心配する人もいます。」
結果的に転勤は短期間で済んだのですが、佐藤さんは志を同じくする仲間からアイデアを募り、また近隣地にある介護サービス施設と連携するなどして、地域の居場所づくりを進めてきました。
いまでは、コミュニティカフェの開催時に看護師さんに常駐してもらい、気軽に健康相談ができる「ちょこっと保健室」など、新しい試みも始めています。今後、カフェから発展させて「コミュニティ食堂」を作るというアイデアも出ています。
「高齢者を中心に、子どもたち、忙しいビジネスパーソンなどさまざまな人に平日の昼夜の食事をリーズナブルに提供する、惣菜として販売する。高齢者向けには見守りを兼ねた配食なども手がけていければと思っています。高齢の方はもちろんですが、この地域の人たちみんなが、家庭的で健康的な食生活を送れるようにしたい。」
そうしたいろいろな構想がある中で、いままさに実現に向かって動き出しているのが、高齢者にとって「食べる能力の維持」が大切なことから、口(口腔)の機能を維持するために、口を使った運動会的なイベントとして人気が高まっている「くちビルディング選手権」という手法を取り入れたサロン活動の事業化。「梅干しの種飛ばし」といった面白い競技を行いながら“楽しいから参加し、結果として健康になる”企画として、地域の方々と一緒に運営していきたいと考えています。早ければ2017年中に、地域住民に対してこの事業の説明会を開くというのが目標です。
しかし、佐藤さんが仕事と掛け持ちしながら企画から実行までのすべてを行うのは難しいこと。事業の骨子は企画書にまとまっているものの、そこに住民のニーズを反映したり、地域の人たちに運営の担い手としても活躍してもらう方法を考えたり、継続的に来てもらうための仕掛けをするなど、肉づけが必要になってきます。
プロボノワーカーによるマーケティング基礎調査を通じて、肉づけに必要な素材を集め、「みんなのリビング葛が谷」が地域の持続的な居場所となれるよう、そして住民の健康を支えていく身近な拠点として、ゆくゆくは他地域でも展開できる事業となっていけるよう、サポートします。
(本記事は2017年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- みんなのリビング葛が谷
- 活動開始時期
- 2015/平成27年4月
- 代表者名
- 佐藤 雅明さん
- 所在地
- 〒161-0031 東京都新宿区西落合2-8-26
- ホームページ
- https://www.facebook.com/minnanolivingkuzugaya
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進捗率
進捗状況
みんなのリビング葛が谷にてヒアリングを実施しました。
キックオフ事前ミーティングを行いました。
「みんなのリビング葛が谷」の活動拠点にてキックオフミーティングを実施しました。チームが作成したプレゼンテーションをベースに、「みんなのリビング葛が谷」のこれまでの活動、現状と今後に向けた課題などの認識をすり合わせることができました。
キックオフミーティングの様子【2】 代表佐藤さんが地域にまつわる歴史や、そこに住む人々、そしてより住みよい街を築いていくために活動をしている方々の話を詳細に語ってくれました。終盤は、この活動をより一層面白くするための色々なアイディアを全員で出し合う、とても楽しい時間になりました。
活動現場見学・体験を実施しました。
対象事業・商品・サービス等の現状把握を実施しました。
調査方針提案を行いました。地域にお住まいの方々がDIYで作った椅子に座り、「みんなのリビング葛が谷」の運営の担い手を確保するための調査の方向性を確認しました。これまでのヒアリングの結果をもとに、活動のビジョンや理念を言語化することや、次の事業のアイディアを出す段階から人を巻き込んでいくことが、担い手の候補となるひとが継続的に関わってくれることにつながるのではないか、という提案をしました。「みんなのリビング葛が谷」代表の佐藤さんにもこの2つの提案にご納得いただくことができました。次のアクションとして、(1)これまで過去に代表佐藤さんが草案されたビジョンをプロボノチームで外部の人にもより伝わりやすいものにしていくお手伝いをすること、(2)次の事業の検討段階から人を巻き込むための「アイディアソン」・「ハッカソン」 を実施することに決定しました。
調査方針提案の様子【2】
提案に対するフィードバックと承認を実施しました。
個別ヒアリングを実施しました。
ヒアリング以外の調査を実施しました。
調査報告を実施しました。
報告に対するフィードバックと承認を実施しました。
成果
ボランティアや民生委員などへのヒアリングから、団体への期待や課題を見える化。担い手を集めるための募集要項を作成
プロボノチームは約半年間にわたって、支援先団体の運営の新たな担い手を獲得するための調査を行ってきました。まず、現在ボランティアとして参加してくれている方々、地域の民生委員や社会福祉協議会の担当者へのヒアリングを実施しました。
そこから見えてきたのは、地域のために自分のスキルを生かしたいと思っている人の存在や、地域住民同士のつながりに対するニーズでした。一方で、「みんなのリビング葛が谷」がどのような活動をしていて、誰を対象としているのか、といったことが地域住民やボランティアをしてみたいと思っている人々にうまく伝わっていないという課題も明らかになりました。
そこでチームは、団体のビジョンや活動内容を分かりやすく伝えるための人材募集概要を作成するとともに、「みんなのリビング葛が谷」で地域活動を行いたいと考えている人を集めたワークショップを行いました。ワークショップでは、参加者それぞれが実現したいアイデアを出し合った後、実現性の高い案を選出。それをさらに具体化するため、再度打ち合わせを行うことが決まりました。
【支援のその後】
プロボノプロジェクトでは、活動の担い手に獲得につなげていくためのマーケティング基礎調査を支援メニューとし、結果として人材募集概要の作成、ワークショップの実施等を行いました。当時、構想を練っていた「くちビルディング選手権」を2018年11月に開催しましたが、短時間で大人数に経験してもらうことを優先したことなどから、食や口の健康の大切さを伝えられなかったことが課題となりました。現在、みんなのリビング葛が谷では地域住民の孤食問題対策のみに限らず、あらゆる世代の家事や育児、介護を地域住民が互いに支えあっていける居場所を提供することを目標にしています。今後はコミュニティカフェを行う交流のとしてだけではなく、シェアハウス、シェアオフィスの場としても活用していきたいと考えています。それに向けて、団体の活動に関わり、イベント等の企画を担当する人を増やしていくことが現在の課題です。
[2019年8月、津田塾大学 森川ゼミ・伊藤(由)ゼミの協力により取材]
チームメンバー
- アカウントディレクター
- 守分さん
- プロジェクトマネジャー
- 辻田さん
- マーケッター
- 赤浦さん 橋本さん 服部さん 細羽さん