プロジェクト詳細
NPO法人 日本失語症協議会
理解しても伝えられないという困難。「失語症」を広く知り、患者を支えていく社会を目指して。
失語症(しつごしょう)は、脳の言語野(げんごや)が傷つくことで起きます。精神的なショックなどで声が出なくなってしまう失声症(しっせいしょう)とは違い、その多くは、脳血管障害などの病気、事故による脳損傷などが原因です。推定値では年間3万人が失語症を発症すると言われています。
失語症は、脳の中の思考、感情部分には、それほど影響がありません。ただ、聞いたことを言語的に理解したり、言葉でアウトプットしたりすることが難しい状態になります。失語症そのものに対する薬物的治療はないため、損傷を受けていない脳の言語野の部分を刺激するリハビリを行いますが、「読む・書く・話す・聞いて理解する」に大きな影響が出るため、社会復帰に困難を抱えてしまう人が多くいます。
「私は、8年前に脳出血を発症し、後遺症の失語症になりました。好きだった本、新聞を読むのは苦手になりましたが、今は散歩をしながら図書館に行き、『地球の歩き方』などを見たりします。遅くはなりましたが、メールの返信はしています。自宅では、テレビを見たり、DVDの映画を楽しみます」と語るのは、病気の当事者でもある日本失語症協議会理事の亀澤大介さんです。
失語症の症状はさまざまで、周りの人にとっては意味のわからないことを話してしまう症状として出てくる場合もあります。
「理解はしているのに、言語化できないので伝えられない」。記憶障害や、認知症の人が「覚えていない」ということとは根本的に違うのですが、一緒に生活する家族であっても、このことを理解するためには時間が必要になります。
「失語症の人が年齢を重ねるにつれて認知症など別の病気を患うことも多く、状況はより複雑になります。若い人に比べると回復が遅い高齢の患者は、とくに困難を抱えています」と、失語症患者の家族を持つ、副理事長の園田尚美さん。
日本失語症協議会は、障害者団体や当事者とその家族の相互の情報交換や親睦、失語症に対する啓発といった中間支援や、福祉環境の是正を国に提言するといった活動を行う、90団体が加盟する全国的なネットワーク組織しています。
その前身は1980年代に発足という、歴史のある団体です。国への働きかけを続けたことで、2015年から、一部の失語症患者の障害者年金認定基準も是正されました。
ただ、失語症患者自身が声を上げることが難しいこともあって、失語症への理解はなかなか進んでいません。日本失語症協議会は家族が中心となって運営しているため、常に資金不足を抱えていることも、大きな課題です。
そうした中、団体では2017年に、書籍『家族が失語症になったら手に取る本』を発行しました。当事者や家族はもちろん、医療関係者、あるいは企業が職場として失語症患者を理解するのにも役立つような幅広い内容です。
今回、プロボノチームは、必要としている人にまだ十分に行き届いていない状態のこの書籍のさらなる頒布、販売に向けたマーケティング基礎調査を行います。販売対象、戦略などの検討を行い失語症の認知度向上、そして団体の財政的な安定にもつながるよう、販売対象、戦略などを検討していきます。
(本記事は2018年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- NPO法人 日本失語症協議会
- 活動開始時期
- 1983/昭和58年9月
- 代表者名
- 八島 三男
- 所在地
- 〒167-0051 東京都杉並区荻窪5−14−5 405号室
- ホームページ
- http://www.japc.info/
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進捗率
進捗状況
キックオフ事前ミーティングを開催! チームメンバー全員での初顔合わせでしたが、 終始、団体さんへのサポート意欲に満ち溢れた会議ができました。 今から最終報告書の内容が非常に楽しみです。
キックオフミーティングにて失語症の当事者でもおられるスタッフの方にお話をお伺いしました。ご自身のリアルな経験を時系列でしっかりと聞かせていただいたことでメンバーの理解が大きく一歩進む時間になりました。文字が読みにくくなったり、聞いたことを忘れがちになるため、例えば、鍵の開け方や戸締まりなどを映像にして共有しておくといつでも取り出してみて対応が出来る、など、日常生活を安心して送る為のコツなど、確かにこれは便利で安心!と膝を打つお話も。
ミーティングの最後にはなんとアップルケーキのおもてなしが!全員で顔をほころばせながらサプライズに感謝しながらいただきました。お気遣いありがとうございました。
失語症カフェの見学に行きました。
協議会のメンバーの方へ、大瀧さん、寺崎さん、太田さんの3人でヒアリングを実施しました。
団体を取り巻く多様な関係者の抽出と、失語症当事者とその家族が、どういう方々とどのタイミングで接点を持つのか理解を進めています。ヒアリング対象者として、主に、言語聴覚士(ST)、友の会の会員、言語聴覚士養成校の先生と生徒さん、障害者相談支援センターの方、失語症協議会様を支援している企業の方について団体からもご紹介をいただいて更なる情報収集を進めて行きます。病院、理学療法士、作業療法士、メディカルソーシャルワーカー、臨床心理士、デイサービス団体など普段の生活では知らない世界の社会科見学、一歩一歩進めています。
今回のミッションである失語症になった方のご家族に向けた書籍のユーザーの視点での情報を得るため、友の会の会員の方に「失語症になり困ったこと」「友の会の情報入手先 ・会員になられた背景やご期待」 などについてお伺いしました。
言語聴覚士(ST)の方に、「失語症患者様やそのご家族からよく受ける相談の内容」「相談に対してのアドバイスの事例」「現状感じられている課題」「失語症に関する本の感想」などをお伺いしました。
対象事業・商品・サービス等の現状把握を実施しました。
中間提案を前にチームのミーティングを実施しました。
年末ギリギリのタイミングですが、中間報告を開催。 様々な関係者のヒアリング内容を図式化できたことで、想定読者へのアプローチがかなり見えてきました。 団体さんからのフィードバックも踏まえ、より具体的なアプローチ方法を検討し、最終報告に繋げていけそうです。 忙しい中、関係者の皆さん、ありがとうございました!
最終提案を控えて、今回のミッションである会が出版されている本の拡販方法、これまでのヒアリング内容のまとめについてチーム内ミーティングを実施しました。参加できないメンバーも事前の意見出しを行うなど、チームワークの一体感もばっちり。
最終提案の場として、調査報告を実施しました。
報告に対するフィードバックと承認を実施しました。
成果
情報を届けていくための有効な手段とは何か?より具体的に、より突き詰めて考える良い機会。
ガンや心筋梗塞といった病気に比べて初めて耳にする人が多いだろう「失語症」について2017年にまとめられたのが「家族が失語症になったら手に取る本」です。全85Pに渡る本書は「失語症とそれに関連する疾患」「失語症者の家族の想い」「失語症者を支える社会の仕組み」の大きく3つから構成され、不安を抱える患者ご本人、そして支え手となる家族や医療従事者にも参考となる知見が織り込まれています。
今回のプロボノプロジェクトは、この本を必要とされている方に確実に届けるため、いつ・どこで・どのようなアプローチを行なって行くべきかを外部の視点から整理、ご提案することをミッションに取り組みました。
プロボノメンバー全員が初めて「失語症」に触れるという、全く予備知識のないところからのスタートでしたが、協会の皆様のご協力も得ながら、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、患者本人とそのご家族が集う友の会関係者、言語聴覚士養成学校の講師や生徒、団体を応援されている企業など、失語症協会を取り巻く幅広い関係者のヒアリングを実施しました。失語症に関係する方々がそれぞれにどのような情報ニーズがあるのかを探りながら、本の感想、どのような人がどのタイミングで本を手にすると良いか、配布先の推薦などの情報を獲得していきました。また、失語症の急性期、回復期、生活期のステージ毎に、本を手にとってほしいターゲットがどのような心理状態にあって、どのような行動を取るのかを1枚の絵にまとめながら、いつどこでどのようにアプローチをかけられると購買が伸びる可能性が高いかを明らかにしていきました。
その結果、本を届けるメインターゲットを、失語症者及びその家族、言語聴覚士・作業療法士・理学療法士を目指す学生とし、回復期に病院に移る前後、もしくは、回復期に病院を退院した初期段階、もしくは、医療を学び始め失語症を理解したい段階にある時に、救急病院・リハビリ病棟、居宅支援事業所、地域包括支援センター、市役所や、各医療従事者養成学校などの資格取得専門学校で手に取ってもらう。そのために、チラシやサンプル本の配布を積極的に進めていくことを提案するに至りました。
協会の方からは、「情報を届けていくための有効な手段とは何かを、再度、再々度考える良い機会となりました。」というコメントをいただき、具体的な配布チラシについて話題を進められるなど、外部の力を味方に、本の頒布により一層の意欲を高められた手応えを感じました。
チームメンバー
- アカウントディレクター
- 須藤さん
- プロジェクトマネジャー
- 大瀧さん
- マーケッター
- 太田さん 寺崎さん